「ネタバレタイトルな気がするんだけど!?」
いきなりエリスがツッコんだ。
んー……まあ、あえて言わない。全部聞いた後のエリスの反応が気になるからだ。
「では話をやめようか?」
「オチを聞かないと落ち着かないから話して」
「だろうな」
エリスがサラッと入れたダジャレを無視して話の続きを始める姉さん。
「さて。佐藤は、サチを美少女だと認識するようになった訳だがーー」
――――――――――
「なぁ塩谷、確かお前、こういうの好きだったよな?」
「キーホルダー? あら可愛い。ムササ……いえ、モモンガかしら。どうしたのそれ?」
「んー、なんとなく買った」
「なんとなくって、あなたね……まぁ、サイズや造形からして大した値段じゃなさそうだし、いいけれどね……」
《瑞》無意味な衝動買いをしたと言ったから、いつものような小言が続くと思ったのだろう佐藤の表情が、一瞬硬くなったらしい。小言が続かなかったため、すぐ軟化したらしいが。
「うん、やっぱりな……お前最近、性格柔らかくなったよなぁ」
「……そう? というか唐突に何よ……何か企んでる?」
「別に、思った事言っただけだよ。それよりこれ、お前が好きそうな小物キーホルダーだなって思ってなんとなく買ってたんだけど、よく考えたら俺は使わないし。だからこれ、お前にやるよ」
「まぁまぁ可愛いし、くれるならありがたく貰うけれど……あんたがこんなことしてくるなんて、やっぱり怪しい。何か企んでるでしょ?」
「企んでねぇよ。ま、いらねーなら他の好きそうなヤツーー」
「いる」
「だよな。ほれ」
「うん……えっと、あ、ありがと」
「おう」
《優》あー、そういえば一時期、キーホルダー見ながらニヤニヤして「モモンちゃーん」とか呟いてたような。
「……最近のお前、なんか可愛いよな」
「ぅえっ!? ななっなによ唐突に!! なんに対するお世辞!? やっぱり何か企んでるでしょ!?」
「だからちげぇ……でもないか。ああ、企んでるよ」
「堂々と企んでる宣言するとは……ちょっとは男らしい部分も見せる様になったわね」
「んだよ、今まで女々しい奴とでも思ってたのか?」
「色ボケしっぱなしのしょうもない弟、かしら?」
「弟、ね。てことは、一応男として見てくれてたんだな」
「え? それはまぁ、そうよ。どう見ても男の子でしょ、あなた。頭に「エッチな」ってつけたくなるけど」
「失礼だな。HはHでも「惚れやすい」のHだぞ」
「ふふっ物は言いよう……いえ待って、それ変態の方のHとあまり意味変わってなくないかしら……?」
「そうか? んで、そのだな……最近のお前、なんか可愛いよな」
「話がふりだしに戻ったような…………え? も〜ももももももしかしてーー」
「あーなんかお前相手だといつも通りいかねぇ! 今日はここまでっまた明日な!」
「えっちょまっ!? 言い逃げなんてヒドイわ!!」
《瑞》この様な感じで、佐藤がサチの気を引こうと色気を出し始めたらしい。
それに対してサチは、最初は訝しげだったが、その内満更でもなさそうな顔をするようになる。
《エ》ふみゅふみゅ。それってつまり、さっちゃん元からサトウ君のこと気になってたのかなかな?
《優》まあ、入学当初の言い合う姿を見て、ネイ先生がおもわず「痴話喧嘩」って言ってたしね。そういう感情が、お互い多少はあったのかもね。
《瑞》ふむ……まあそのあたりは、話を進めていけばわかる。
「さっちゃんさ〜、なんか最近機嫌良さげなとき多いよね〜」
「え、そうかしら?」
「そだよ〜。サトー君がチョッカイ出すよになってから、特にね〜」
「そ、そう……」
「でもさ〜。なんてゆ〜か〜……ダイジョブ?」
「大丈夫って、何が?」
「ぅ〜、アタシ、ユキさんみたいに上手く伝えんの上手くないからさぁ……なんて〜かねぇ……履く靴間違えて、スベってコロんで頭をぶつけないよに、注意してね〜?」
「んー?? いまいち何を心配しているのかよくわからないけど……まぁ、気を付けるわね」
《エ》……ほんとに何伝えたかったのかわかんないねぇ、パフィンちゃん。
《優》んー……パフィンさん、時々野生の勘的な感じで何かを察知する事あるから、それかな。
《瑞》ちなみにこの時パフィンが言おうとしていたのは、「二兎を追う者は一兎をも得ず」的な事らしい。
《優》あー。履物云々言ってたから、二足わらじ的なのかと思った。
《瑞》ふむ、まあある意味そちらの諺も含んでいたかも知れんが。
《エ》んむぅ? ……それってさっちゃんが、二足わらじで二兎を追ってたって事?
《瑞》ふむ……思春期的用語に要約するならーー2つの想いの間で揺れていた、だろうか。
《エ》……あっ(察し)
《優》……(あえて何も言わない)
《瑞》しかしサチは、思春期な恋する乙女であったとはいえ間抜けではなかったし、何より生真面目だった。
「ただいま……」
「さっちゃんおか〜……おこ?」
「……。そうね、私、少しムカムカしてるわ。だから今はーー」
「話してほしーな、グチでもいーからさぁ。ルームメイトでぇ、お友達だし?」
「……そっか、友達……なら、うん。愚痴、聞いてくれる?」
「は〜い、お手柔らかにね〜」
《瑞》ーーというような会話を、寮に帰宅したサチとしたらしい。
《エ》……さっきもちょい気になったんだけどさぁ。その二人の会話、静海ちゃんに部屋に忍び込ませて盗み聞きしたりとか、してないよね?
《瑞》心外だな。優輝の信頼を裏切るような行為を、私がするとでも?
《エ》あー確かに、それもそだね。優輝さんが理由なあたり説得力あるわー。
《優》姉さんはこう見えて、基本法は遵守するタイプだから、それはないよ……犯罪スレスレの事はたまにしてるみたいだけど。
《瑞》ちなみにこの話は、パフィンから端的に聞いたものを私なりに予測した会話だ。ゆえに、使った単語の正確さ等はあまり気にするな。
《エ》ふみゅ。二人の寮部屋での会話あたりが、残り3%ってことね。
「んでぇ。何があったん?」
「えっと……今日は、佐藤に誘われて、二人で遊びに出かけたんだけど」
「へぇ、デートかぁ」
「……デート。そう、そうね」
「なんか歯切れ悪いねぇ。つもりで一緒したんじゃないん?」
「……出かけるちょっと前は、疎遠気味だった弟と、久しぶりに遊びにいくような感覚だったのよ。でも、出かける直前に、かなり浮かれてる事自覚して、慌てて軽くおめかしし直したのよね。それで、今パフィンに指摘されて、佐藤は最初からそのつもりで……するつもり、だったのよね……」
「むむぅ……なんかスケベェなこと言われた?」
「……デ、デート終わりくらいに、らー、ららら……ブホテルハイロゥテヤァ!?」
「あ〜、無理して言おうとしなくてい〜よ〜、だいたいわかったから〜……んもぅ、さっちゃんウブなんだから〜」
「……そんなつもりなかったのに、いきなり連れ込まれそうになったら、貴女だって混乱するでしょ……」
「あ〜うん、わかんなくもないけど……え、つもり全然なかったん?」
「当たり前でしょう!? そういうのって、正式にお付き合い始めてひとつづつ段階を踏んで、それで、つまるところ、そういうとこ行くのは、段階的に……最後の最後よ! それなのに最後がいきなり最初なんて、おかしいわ!」
(お堅いなぁ〜……んま、その生真面目なんがさっちゃんの魅力だけど〜)
「……なによ。真面目に話してるのにニヤついて」
「さっちゃん、生真面目でメンドクサイな〜て」
「酷くないっ!?」
「ゴメン、ゴメンて〜。アタシはそんなさっちゃんの生真面目なとこが、苦手でしたぁ」
「まさかの追い討ち!? ……え、でした?」
「今はわりとしゅき〜。友達だし〜?」
「っ……そ、そう……あー、あ、ありがとう?」
「は〜いだよ〜」
《瑞》――ようするにだ。真剣な恋がしたかったサチにとって、正式な男女交際前に合体要請が来たものだから、逃げるように帰ってきた、と言うわけだな。
《優》サチさん、真面目可愛い。
《エ》わかる……けど、ウブ過ぎんのも問題だねぇ。
《優》うーん、そっかな? 僕は可愛いとしか思わないけど……
《エ》…………
《優》ん? エリスどうしたの?
《瑞》ふむ……背負った時に薄れたモノ、と言ったところか。
《エ》……だいたいそんな感じ。
《優》??
《エ》それより話の続きはよ。
《瑞》うむ。時間は次の日に飛ぶがーー
「ねぇ佐藤、貴方ってその……女の子とのデートの日に、毎回あんなこと、いつもしてるの?」
「最近大人しくなったと思ったら、また小言始まったよ……はぁ、ヤル気失せた」
「そっか……佐藤はもう、経験あるのね……私とも、したかったの?」
「じゃなきゃ、誘わねぇよ」
「……。最初から、体が目的だったって事?」
「んだよ、可愛い女の子とヤリたいって思うのが悪いのかよ?」
「…………。悪いとは、言わないわ」
《瑞》その台詞でサチは悟る。体は大人に近づいていたが、佐藤の本質はほとんど変わっていなかった。
幼少の頃よりの幼馴染で、一時期淡い恋心を抱いていたが、佐藤はちょっとでも容姿が良い女には、誰とでも仲良くしようと口説き出す奴だったらしい。
サチは、女にだらしない佐藤に何度も小言という体で矯正しようとしたが全く変わらず、その内恋の熱は冷め、腐れ縁で手のかかる弟のような男と見るようになり、実際そう接するようになっていた。
サチの再燃しかかった恋心は、佐藤の「可愛いければ誰でも彼でも大好き野郎」ぶりに一気に冷める、どころか、世話の焼ける弟的な情すら薄まったそうだ。
だかしかし、色を知っていた奴の女好きは、さらに酷い方向に磨きがかかっていた。
「ちぇっ、昨日はヤル気満々だったのに……いつもの女の子は、その日にヤラせてくれたのになぁ」
《エ》うわ最低だコイツ。
《瑞》恋より色、イチャイチャデートより即合体。しかも言い方や口調からして、関係を持ったことのある相手は一人や二人ではない事を匂わせていた。
《優》うーん。その発言はさすがに僕も、擁護できないなあ……
「……ほんっと、先輩といい貴方といい、男子ってどうしてこう……いえ、さすがに貴方と男子全体を一括りにするのは失礼ね。それに、迷惑極まりないとはいえ、まだ金堂先輩の方が一途な分マシね」
「はあ? あんな野猿な先輩のどこがマシだってんだよ。あんなモテない万年発情猿の方がマシって、お前変わってるな」
「……一般論と事実を言っただけよ?」
「どこがだよ。あの先輩が誰かとヤレたら、そん時は俺でも優輝さんとヤレてるぜ」
「……。今、なんて言った?」
《瑞》佐藤の存在に興味を無くしかけていたサチだが、その一言で再び興味を持つ。ゼロに近い位置から、マイナスへ。
「はぁ、優輝さん超可愛いよなぁ、ヤリたい。性格もかなり良いし。胸はまぁ……いやむしろ、俺がマッサージして大きくしてやりたい、あ〜、ヤリたいぜ」
「佐藤」
「あん? なんだよ」
「黙りなさい」
「何をだ? 優輝さんとヤリたいってーー」
「去勢されたいの!?」