優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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栄陽学園式遠足その2

「ちなみに、先程の勧誘者は、ミズキーズファンクラブツインズ派による情報だ」

「えっ何そのファンクラブ知らない」

「てか、瑞希いつから聞いてたの?」

「今来たばかりだが」

 

 いつの間にか、姉さんが会話に加わっていた。

 

「というか、お二人のファンクラブなんてモノが存在していたんですね」

「ちなみに、テンノーズファンクラブというのもあったな。ミズキーズより後発ではあるが」

「はー、そうでしたか……えっ?」

 

 すぐに何を言われたか分からなかったらしく、少し間の抜けた反応を返す蒼月さん。可愛い。

 

「……そういえばその◯◯ファンクラブって、僕らの含めて何種類あったの?」

「ふむ……数字だけで良いか?」

「んー。出来れば、誰のファンクラブがあるかまで」

「ふむ。優輝関連が3、私が1、ミズキーズが1。月影関連が3、蒼月が1、テンノーズが1。ヒロ関連が1で、後は確か……加藤家3人組で1、キングなんとかが1……の、計13だったかな。私の周りの人間が関係していないクラブならまだあったはずだが、興味なかったので覚えていない」

 

 思ったよりあるなあ……というか、

 

「……なんで優輝と月影ちゃん関係の、3つもあるのん?」

 

僕が言うより先にエリスがツッコんでいた。

 

「ふふっ、優輝さんと月影だから当然ですね!」

 

 なぜか蒼月さんが自慢気にそう言う。

 

「いやいや……まあ蒼月さんの気持ちはわかるけどね、月影ちゃん可愛い過ぎるし」

『おまいう』

 

 3人に総ツッコミされた。スルーする。

 

「それで、クラブの名前は?」

「ふむ。1つは、いわゆる普通のファンクラブだ。それ以外は、少々アブノーマル系だな」

 

 あっ。聞くのやめよっかな……あーでも、怖いもの見たさ的なので聞いてみたくもある。

 

 姉さんは僕の考えを読み取ったのか、一拍間を置いてから続きを話す。

 

「優輝のは普通が1に……もう1つは僕っ娘同好会、もう1つはフタ◯リっ娘愛好会だ」

「フタ……!?」

 

 ……やっぱり聞かなきゃ良かった。特に後半の方。

 まあ一応、クラブ名的に秘密がバレていたわけじゃないからまだマシ……ダメだマシとすら思えないその名前って事はつまり特殊な性癖の人達にそういう目で見られてたって事だしあううう……

 

「月影のは確か、ちびっ娘愛好会とロリっ娘愛好会だ。ノータッチの精神で活動していたらしい」

「……その2つの違いがいまいち理解出来ないのですが。なんにしても、遠くから見守るだけのクラブだったようで安心しました」

 

 月影ちゃんのは、僕に比べればまだまとも(多分)だった。良かった良かった。

 

「ふみゅ。ちなみにヒロは? 巨乳っ娘愛好会とか?」

「ああ、ずばりそうだ」

「……あーマジかー」

 

 エリスは当てずっぽうで言ったようだけど、当たりらしい。

 

「ファンクラブ関係の話はここまでにして、遠足の話の続きをして良いかな?」

 

 ……これ以上ファンクラブ系の話を聞いてたら精神に更なるダメージを負いそうなので、無理矢理話を戻す。

 

「うむ」

「ほーい」

「どうぞです」

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 公園の庭園をみんなで雑談しながら散策し、庭園に見事に咲く季節の花を楽しんでいる途中、

 

『園内の栄陽学園の皆様にお知らせします。魔獣の発生が確認されました。速やかに、集合して下さい。繰り返しますーー』

 

と園内放送が。

 

 自由行動開始してまだ30分程度だけど、今回はここまでらしい。んー、もうちょっと見て回りたかったけど、仕方ない。

 

 

 

 

 公園入口に集合してクラス毎に点呼を行い、全員揃ったことが確認された所で移動を開始する。ここから観測所までは約1kmとわりと近いので、徒歩での移動となる。

 

「そういえば、瑞希と優輝さんはともかく。アキヒロマミヤ君は、連休中に討伐体験したのよね」

「そだよん」

「はっはい、一応」

「おう」

「今日の討伐の参考にしたいから、改めて感想聞かせてくれないかしら?」

「ふっふふふー! おっけーぃ!!」

 

 いつも以上に元気にそう答え、自慢気にあの時の戦いぶりを語り出すアキ……多少誇張されてるけど大体は合ってるので、特に注意はしない。

 

「ふん、一度聴いているからつまらんな。優輝、お前はどう対処したかを私に聞かせてくれ」

 

 みんながアキの語りに夢中になって聞いている中、飯屋峰君だけつまらなさそうな感じで僕にそう振って来た。

 

「完全に我流って言ってた飯屋峰君の参考には、ならない気がするけど……僕の対魔獣の戦法の基本は、一撃必殺・二の太刀いらずだよ」

 

 訓練で見た感じの飯屋峰君の戦い方は、パワーでゴリ押しして相手に攻撃の機会を与えないタイプだ。魔獣討伐の経験はないらしいから、魔獣とも戦法は変わらないと思われる。

 

「ふーむ。イマイチわからんのだが。我と何が違う?」

「1つの技を鍛え上げて必殺としてるから、ただのゴリ押しな君の戦い方とは似て非なる、だよ」

「優輝、さらっとコイツに辛辣な言葉混ぜるよな」

「え、そっかな?」

 

 山本さんに指摘され、確かにそうかもと思った。けどまあ、飯屋峰君相手だから仕方ない、とはいえさすがに、無視までするのは人として気が引けるし……

 

「ふん、勝てれば良かろう。それに我は、優輝以外に負ける気はしない」

「ほう、随分と大見得を切ったものだ。つまりは私には勝てると?」

「瑞希、貴様の短剣の腕程度で我より上のつもりか? ふ、なかなか可愛い意気がりだな、さすが我が嫁の一人よ」

「姉さん」

「うむ」

 

 ……多分僕が止めなければ、彼が逆上しかねない事を言いそうな顔をしていた。まったく、油断ならないなあ。

 

「飯屋峰 王者。そこまで言うのなら、無様は晒すなよ」

「晒すわけがなかろう。ふっ、心配性だな、愛い奴め」

 

 案の定皮肉が通じていないけど、まあ高代望楼だし。彼の実力なら普通の活躍は出来るだろう、多分。

 

 

 

 

 そんなこんなで雑談していれば、1km程度の距離はあっという間だ。

 

「現在確認されている魔獣は、接近してきている小型犬の群れが4、群れ毎の個体数は3〜4。後続に同規模の群れが9迫って来ています。また、距離が離れているので接近に時間がかかりますが、さらに後方に同規模の小型犬6の群れ、猫型と思われる群れを4確認しています」

「はいはい、了解しました〜。魔獣の誘導、無理のない程度に頑張って下さいね〜」

「はっ! お任せください!」

 

 駐在さんが、発生した魔獣の規模をネイ先生に報告している。魔獣討伐の生徒の編成・指揮は、ネイ先生が担当だからだ。

 

 あの喋り方でいつもほんわか空間を生み出してるけど、ああ見えてネイ先生は咲さんの娘だし、魔獣討伐のエキスパートでもある。担当するのは至極当然なのだ。

 

 ネイ先生をよく知らない分校生のほとんどは、「あの先生で大丈夫なのかよ……」って感じの視線を向けているけど……ふふっ。ネイ先生の変貌ぶりを見たら、クラスDのみんなも含めて凄く驚くだろうなー。

 

「さてさて。ふぅぅ〜〜〜…………んっ」

 

 ネイ先生が整列した生徒達に向き直り、赤子の頭サイズの金属球のようなものが付いている金属棒を、球を地面側にして置く。棒の先端が胸の高さ辺りになり、それに両手の平を重ねるようにして乗せ、瞼を閉じ長く息を吐く。スイッチを入れたらしい。

 

「改めて自己紹介する。私の名は寧、クラスDの担任教師で、魔獣討伐訓練の教官役だ!」

『!?!?』

 

 先程のほわほわ具合から一変、まるで軍人のような声と表情になり、ハキハキと話し始めるネイ先生、改め、寧教官。

 

 寧さんは普段、いかにもいつも眠たいです〜と言った雰囲気を振り撒いているけど、それは寧さんの体質によるものだ。

 けど、その「眠くなってしまう体質」を、限定的に超改善させる手段がある。それは、剣精霊術の肉体強化術を使用している時だ。

 

 寧さんは剣強化術中のみ、眠気を完全に飛ばす事が出来、意識しなくともハキハキ話せるようになる。

 

 さらに、剣強化術使用と長く息を吐く事、2つセットでスイッチとして、口調を「教官モード」に変える事が出来る。

 こうなると、もはや声から雰囲気から、ネイ先生によく似た別人レベルである。まあ、生徒思いの優しい性格自体は変わっていないけど。

 

 ちなみに寧さんの精霊剣とは、眼前で杖代わりにしている、金属球付きの金属棒の事だ。

 第4級戦杖型精霊剣『威風』。変わった剣精霊術を持っている訳ではないし、会話も出来ないけど、彼の気配を感じていると、不思議とやる気が出てくる。

 

「今回の討伐に関して、見本となるよう、先行して討伐する代表生徒を予め選出している。加藤 透華、天王寺 蒼月、天王寺 月影、前へ!」

「はいですわ!」「はい!」「はい……」

 

 呼ばれた3人が返事と共に前に出てきて、寧教官の隣に並ぶ。

 

「魔獣が迫っているので、手短に説明する。このスリーマンセルは、バランス型だ。加藤 透華が戦鎚による攻撃役、天王寺 蒼月が弓による後方からの援護射撃役、天王寺 月影が防御結界等による壁役を担当する」

 

 テキパキと3人の役割説明を済ませる寧教官。

 

「さて、例年なら、先行討伐の代表は1組なのだが、今回は特別にもう1組いる。梅雨入り前に某所で魔獣討伐を体験していた者がいたので、その者達に代表として参加してもらう事にした」

(おや?)

 

 栄陽学園に入学した以上、学園の許可なく緊急性のない魔獣討伐に参加する事は、原則禁止されている。

 そして、梅雨入り前の討伐体験だから……要するに、5月連休中に魔獣討伐に参加した僕らのことだ。

 

 でも、僕には声がかけられていないし、姉さんから話も来ていないから、水城ツインズ(ぼくら)ではない……つまり。

 

「海老江 茜葵、鯨井 ヒロ、間崎 雅、前へ!」

「は〜〜い!!」「はっはひっ!」「はいっ!」

 

 やっぱり、アキヒロ雅の3人だった。

 

 あー。さっきの移動時、アキがいつも以上にノリノリで魔獣討伐体験の話をしていたのは、これが理由かな。

 

「3人は全員前衛向きだが、だからこそ出来る戦法がある。ゆえに別の戦い方の見本として、代表討伐に参加してもらう事にした。では代表生徒諸君、先導者に着いて行くように!」

「了解ですわ!」「わかりました」「んっ」「任せてくださいっ!!」「がっ頑張りましゅっ……うー……」「了解っ!」

「他の生徒は、彼らが第1陣の討伐を完了するまで見学とする! よく観察し、己の糧とせよ!」

『はい!!』

「良い返事だ。生徒諸君の健闘を祈る。これより魔獣討伐体験を開始する! 各クラスの担任教師の指示に従い、速やかに配置に付け!」

『了解しました、寧教官殿!』

 

 ……何故か最後、生徒の多くがよく訓練された軍人みたいになっていたけど。一応補足すると、栄陽学園は軍学校ではない。今回は、寧さんの『威風』さんの雰囲気に飲まれただけだ。

 

 ということで。栄陽学園式遠足、本格的に開始である。

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