「学食の話で思い出したが。アイツらと出会ったのは、学食が最初じゃなかったか?」
「うん、そうだよ。流石に姉さんも、2人の事ならすぐ思い出すね」
「ふ、当然だ」
そう。最初の学食での話をするのなら、彼女達の話は必ずしなければならない。なにせ、僕らの大切な親友にして戦友との、初邂逅だからね。
――――――――――
「ん、あれは……」
クラスSの人が食事を受け取りに並び始めてすぐ。物凄く目を惹く娘がいた。
髪型は、ロングを左右黒いリボンで結んだ、いわゆるツインテールだ。その髪型自体は時々見かけるけど……1番目を惹く理由は、やっぱり髪色だろう。
「銀髪だねー……」
「うむ……綺麗な銀だな」
「ほう。世界には銀の髪の者がいるのは聞いたことがあるが、実際に見るのは初だ。なるほど……遠目だが、神秘性すら感じるな」
精霊国では、銀は神聖さの象徴とされていて、金よりも貴重度が高い。由来は、精霊剣を打つのに必要不可欠な合金・神霊石の精製に、銀が最も相性が良いからと言われている。
光を反射して本物の銀糸のように煌めく少女の髪は、確かに神秘的な美しさがある……それが1番目を引いた理由だけど、もう1つ。
「あの娘、身長低すぎないか?」
「だよなー。巻も結構低いけど、あれはさらに……」
ふむ、巻さんか。自己紹介を思い出してみる。
「ども、はじめまして。
……だったかな。身長と胸・顔のアンバランスさを、本人はとても気にしているらしい。
そんな低身長を嘆いている巻さんだけど、同じくらい胸が大きい(らしい)ヒロに比べて、身長は10cm以上低く見える。
「あー、あれか? 飛び級とかってヤツ」
「いや、栄陽学園に飛び級制度はないはずだよ」
銀髪ツインテールの彼女は、巻さんよりさらに10㎝くらい低い。ヒロと比べると、頭1つ分以上低く見える。130cmもないんじゃないかな。
「しかし、本当に美しい銀だ……嫁候補だな」
『うわ』
その発言に、思わず引いて出てしまった声が他のみんなとハモった。ちなみに姉さん以外の3人のだ。
「なんだその反応は。同じ年齢なら何も問題ないではないか」
「あー、まーそう言われればそうだけどよー」
「小さい女の子を好きな奴、ロリコンって言うんだっけか? 俺初めて会ったぜ」
「ロリ云々もそうだけど、さっき僕に言い寄ってたのにもう他の娘に目移りするのは、さすがに誠実さに欠けるんじゃないかな……」
「ふ、安心しろ。我が王になったなら一夫多妻制にするからな。当然お前が第一王妃だ」
「当然じゃないから……姉さん?」
こういう会話の時は必ず割り込んでくる姉さんの反応がない。視線からして、銀の少女を見ているようだけ……あ。
「…………」
銀の少女が、振り返ってこっちを見ていた。まあ、自分の低身長は理解してるだろうし、嫁候補だのロリだの言ってればさすがに気になるか…………あ〜、成程……姉さんが黙り込んでた理由が分かった。
「なんと……美しい」
飯屋峰君の言葉に、今度は誰も引かない。それくらい、彼女の顔は可愛くて、同時に美しかった。完璧な黄金比と言ってもいい。銀だけど。
まるで世界一の人形作家が作り上げたビスクドールのような、完成された顔立ちに白い肌、遠目でも分かる髪と同じくらい美しい銀の瞳。全てにおいて銀、まさに神聖さをそのまま具現化したと言っても過言ではない、神々しさすら覚える超絶美少女だった。普段僕以外どうでも良いと宣っている姉さんさえ、思わず黙り込み見つめる程の。
「
手前に並んでいた黒髪超ロングの娘が振り返り、銀の美少女……月影ちゃんに話しかけた。親しげに呼んでいるし、親友かな。
「ん……妙な言葉、聞こえた、ので……」
おぉ……声も綺麗だし、同時に可愛くも感じる。名前も容姿に似合ってるし……うーん、非の打ち所がない。
というか、友達?の黒髪超ロングの娘も、かなりの美少女だ。類は友を呼ぶって奴かな?
「妙な……?」
それを聞いて、少し不機嫌そうに眉を顰めた彼女がこちらの方を見て、
「っっ!!」
なんか、「電流走る」て感じの衝撃顔をされた。ていうか今にもこちらに駆け出しそうな体勢になったので思わず身体を緊張させて身構える。
「
「あっ……そ、そうですわね」
月影ちゃんに諭され、列に並び直す黒髪……蒼月さん。
それより。蒼月さんの僕を見る視線の感じ、どこか……
「ふふ。予想通りなかなか楽しめそうだ。入学して良かった」
「え、うん、まあそうだね。僕もそう思うけど……どしたの? いつも以上に上機嫌みたいだけど」
「ふむ、そうだな……思惑通りに話が進むと気分が良いだろう? つまりはそういうことだ」
「……そっかあ」
姉さんの思惑通りかー……要するにそれは、僕らの周りが騒がしくなるってことだ。
姉さんが楽しそうだから、まあいいけど。僕的には、もう少し静かに過ごしたかったかなー……
「すいませ〜ん! ご飯大盛りに出来ますか〜!」
クラスDの番になって並び始めてすぐ。前方のアキが少し大きな声で厨房にそう尋ねていた。
「元気なお嬢さんですね。ええ、出来ますよ」
それに機嫌を悪くすることなくにこやかに対応するストゥルガノフ氏……大人だ。
というか、今まで見ててご飯の量を尋ねた人いなかった気がする。初日だし、みんな遠慮してたのかな。
「大盛りにしますか?」
「普通で!」
「普通かよ!」
珍しく雅がツッコミいれていた。雅の気持ちはわかるけど、よく考えてみればアキの気持ちというか、行動理由もわかる。
「美味しいものが好きって言ったけど、沢山食べるのが好きとは言ってないよ?」
「あー。そういえばそうだな」
食事を受け取ってから振り返り、雅にそう答えてから席へ戻るアキ……じゃあなんでわざわざ聞いたかって言えば。
「あ、あのその……ご飯、大盛りで……」
「……なるほど。はい、了解しました」
ストゥルガノフ氏が納得言ったという顔で、おずおずと注文するヒロのご飯を山盛りに盛ってあげる。
アキは「美味しいものが好き」。ヒロは「食べるのが好き」。自己紹介で言っていた通りだ。
「ふふっ……ほんと、友達想いだね、アキは」
「え、なんでそこでアキなんだ? ……ああ〜そうか!」
ちょっと鈍い雅も、僕の補足でようやくさっきのアキの行動を理解したらしい。
「なるほどなぁ、アキはいい奴だな。俺、そういう事サラッと出来るヤツ好きだわ」
「す!?」
雅の発言にガタタッと椅子を鳴らしてこっちを見たのは……まあ、アキだ。ちょっと頬が赤い。可愛い。
「雅の思考パターンは解ってきたけど……そういう台詞は誤解を招くから気を付けようね?」
「え? どういう意味だ?」
「うん、まあそう来るよね。わからないなら良いよ」
それも雅の個性、魅力だしね。矯正を促す程ではない。
「これだから天然は……見てる分には面白い」
「優輝……お前の姉貴、微妙に性格悪いよな」
「はは……まあ、あれで空気は読める方だから、大目に見てあげてよ」
「おう、りょーかい」
山本さんの呆れ顔の呟きに簡単にフォローを入れると、軽いノリでそう返された……まあ姉さん、読んだ上でワザと地雷を踏みに行ったりとかの愉快犯的行動をたまにするから、完全に否定は出来ないけど。
学食最初のメニューは、ライス、コールスローサラダ、ワカメスープ、チキンステーキアスパラ添え。デザートにイチゴのミニパフェまで付いていた。バランス面も味も大満足。ご馳走様でした。
もぐもぐ……もぐもぐ……
「あっそういえば、優輝はトマトが好きって言ってなかった?」
「うん。だから、チキンステーキのソースがトマトベースで凄い嬉しかった。ふふっ」
で。今は、食事が終わった人から食堂内限定で、親睦を深める目的でしばらく自由行動となっていた。
もぐもぐ……もぐもぐ……
「あ〜やっぱりかぁ! 間近で美味しそうに食べる優輝の顔、見たかったな〜」
「ふっ、残念だったな。超可愛かったぞ」
「ぐぬぬ……その顔ムカツク……いいもん、3年もあれば見る機会なんていくらでもあるし!」
「姉さんには言われ慣れてるからまだいいけど……アキ、本人の目の前でそういう会話しないで欲しいかな。なんか妙に気恥ずかしい」
「その恥ずかしがってる顔がまた可愛い! ん〜あざと可愛いっ!」
「うむ、激しく同意だ」
「えぇ〜……」
今現在、姉さんと僕、アキは、ヒロのいるテーブル席に集まっていた。
ちなみに雅は「よく考えたらクラスの男子とまだ話してないな」と言って、男子で固まってなにやら楽しそうに話している……ちょっとさみしい。
「もぐもぐ……もぐもぐ……♪」
「……ヒロはすごい幸せそうに食べるね。可愛い」
「うんうん、毎回すっごい美味しそうにいっぱい食べてくれるんだよ〜。そんなヒロが可愛くて大好き!」
「というかいつまで食べているんだこいつは」
そう、ヒロだけまだ食べていた。食べるのが遅いわけではなく、おかわりだった。ほとんどの人が食べ終えてるのに1人もくもくともぐもぐしていた……食事中は精神が図太くなるらしい。
「楽しく談笑中、失礼致しますわ」
「うん? あ、えーと……確かクラスSの」
あの時の黒髪超ロングの美少女……蒼月さんが話しかけて来た。後ろには月影ちゃんもいる。
「はじめまして。私、
そう言い、たおやかにお辞儀をして優しげに微笑みを向けてくる蒼月さん。
どこかのお嬢様だろうか? 月影ちゃんとは違う方向で綺麗で可愛い。
「これは、ご丁寧にありがとうございます。僕は水城 優輝と申します。よろしくお願いします」
礼には礼を。椅子から立ち上がり、再び母さんとの自己紹介練習を思い出しながら、更に蒼月さんの綺麗な動作を取り入れてお辞儀を返す。
「うっ……」
……なぜか、笑顔のまま呻いて固まられた。この反応の感じ、やっぱり……
「すぅー……はぁー……」
と、蒼月さんは唐突にくるりと綺麗に半回転してから深呼吸しだした。なんだろ?
「……はじめ、まして……
と、その間に、月影ちゃんからも自己紹介された。
同じ名字ってことは姉妹……なのかな? でも容姿は全然似てないし……血の繋がりは、なさそうかな。
「あっどもども、海老江 茜葵ですわ! こっちの食べてる娘は友達の鯨井 ヒロちゃんですわよ!」
「優輝の姉の天才美少女、水城 瑞希だ。よろしく」
良いとこのお嬢様っぽい超絶美少女姉妹だからか、クラスSという自分より遥か格上の実力者だからか。あまり物怖じしそうにないアキが珍しくテンパってお嬢様言葉モドキで挨拶する。姉さんはいつも通りだけど。
「…………。ん……よろしく、お願いします……」
ゆっくり僕らに視線を彷徨わせてからそう言い、ぺこりと小さくお辞儀する月影ちゃん。可愛い。
「……ん」
頭をあげてから蒼月さんの方に向き、服の裾をちょんと軽く引っぱる。何してもいちいち可愛い。
「はっ!? あ、ああ、月影ですか」
「……目的」
「ええ、わかっていますわ……間近で接したら予想以上で、少し我を忘れただけです……ふぅ」
どうやらただ親睦を深めに来た訳じゃなく、明確な目的があるらしい。蒼月さんのこの浮かれた雰囲気……まさか、一目惚れからの告白? いやいやないない、こっちはどう見ても女の子だし、既視感のある視線からしてない……よね?
「水城さん……姉妹共にとてもお美しいですか、特に優輝さん! あなたを一目見た時、私は大きな衝撃を受けたのです! ビビビッと来ましたわ!」
「え、あ、はい」
「ふふ」
確かに最初目があった時、そんな感じの反応してたけど……というか姉さんが満足げ顔してる時点で、やっぱり……
「水城 優輝さん!」
刹那考え事をしている隙に突然ズイっと急接近され、ガシッと手を掴まれ、
「私のモノになって下さいませ!!」
告白をされた……? あれ、有り? 無しと思ったんだけど……どっちかわかんなくなって来た。
「……ふぅ。ごちそうさまで……え?」
『ええええええええええ!?!?』
アキと、タイミング良く?食事を終えたヒロの驚きの雄叫びが、食堂中にビリビリと響き渡った……耳が痛い(物理)。
「あらあら〜……青春ですねぇ〜、学園長さん」
「ええ。若いとは良いものですなあ」
登場人物紹介
容姿:灰色髪ロング編み込みポニー・太眉・可愛い系
瞳の色:黒
身長:141cm
性質:善
好きな食べ物:チーズ
嫌いな食べ物:ワサビ
趣味:猫を愛でる
精霊属性:地・闇
マイペース系女子。語尾に「っす」と付ける癖がある。
胸は大きいのに、身長がかなり低いことを気にしている。しかし、身長を伸ばす様々な方法を試してもほとんど効果が出なかったので、半分くらい諦めており自虐ネタにしている。一応、完全には諦めてはいないらしい。
栄陽学園本校にギリ合格出来る程度には戦えるが、基本的に戦闘はあまり得意ではない。ただし、治癒術系の術の実力はかなり高く、治癒術に特化していると言えるレベル。それゆえにクラスDに割り振られたまである。