優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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二学期スタート!からの、精霊剣との契約

 二学期始業式が終わって教室に戻り、ネイ先生が夏休みの宿題を回収してから、二学期最初のLHRが始まった。

 

「さてみなさん、あらためまして、お久しぶりです〜。夏休みはぁ、十分満喫出来ましたか〜?」

「はい! とても充実した夏休みでした!」

「ふふふ〜、それはなによりです〜」

 

 ネイ先生の問いかけに、ヒロが元気良く答える。いつもだったらここはアキの出番だけど……まあ、徹夜明けでぐったりしてるから仕方ないね。何故か顔は笑顔だけど。

 

「さてさて〜。今日のホームルームはぁ、二学期の行事について、お知らせしま〜す」

 

 そう切り出し、大まかに説明を始めるネイ先生……大まかとはいえそれなりの情報量があるので、要約するけど。でもまあ、最初の行事は今日この後に行われるので、詳細に語ろう。

 

 さて、その最初のイベントだけど。

 

「二学期、と言うか、今日のことですね〜……お渡しするのは、今日の訓練の授業の最後になりますが〜。ななな、んとっ。ついにみなさんの精霊剣が、学園に届きましたぁ〜! ぱちぱちぱち〜!」

『…………』

 

 ネイ先生の口拍手が、静まり返った教室内に響く。どうやらクラスのみんなは、ほんわかボイスでサラッと朗報を伝えられたからか、すぐには飲み込めなかったようだ。

 

「や――」

 

 数秒後。

 

「ヤッッッッタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

最初に奇声……もとい、|喜声(きせい)上げたのは、アキだ。

 

「アアアア……あーー……」

 

 そして力尽き、再び机に突っ伏す。可愛い。

 

「あーもうアキちゃんったら、寝不足なんだから無理しちゃダメだよー?」

「ぁぃ……」

 

 とまあ、そんな一幕を挟んで場が和んだのか、みんなは冷静に情報を理解し、次第に歓喜の声が湧き出した。

 

「いやー、ついに俺も契約者かぁ?」

「待ってましたって感じだよな! でも思ったより早かったよな、早くて秋くらいかと思ってたんだけどな」

「そういや、ユエっちはどんな精霊剣頼んだんだっけ?」

「ウチは治癒術特化にしたかったんで、無難に水属性の杖型っすよ」

 

 待ちに待った朗報に、自然と雑談が弾むクラスのみんな。

 

 うんうん、気持ちはよくわかる。僕も始めて精霊剣と契約した時、かなりテンション上がったもの。

 それを理解しているのだろう。ホームルームの途中に雑談を始めたみんなを咎めることなく、しばらく黙ってニコニコ眺めるネイ先生。

 

 栄陽学園本校の生徒は全員、この時期に入学中精霊剣を貸し出させるされる事になっている。入学中に貸し出し、なので、退学になった場合は国に回収される事になる。銃器と同等かそれ以上の武力なのだ、当然の処置だろう。

 

 各生徒は入学前に、各人の性格や主に使っている武器の形状・戦闘スタイルを聴取し、それから条件に合った精霊剣を世界中から探してもらい、みんなの手に渡る。

 ただし、どうしても自身の希望に合わない場合は、新たに造ることもあるらしい。造るとなると、誰かが言っていた通り秋ぐらいになるはず。

 

 精霊剣の数は、結構多い。正確な総数は把握できていないけど、精霊国が名前を確認出来ている剣だけでも40000以上。その内少なくとも半分以上は、栄陽戦国時代に造られたものらしい。

 その数だけみると、驚異の武力に感じるけど。世界総数の半分近くが精霊国内にあるとはいえ、国に登録済み精霊剣の9割方は下級の剣だし、そもそも精霊剣は契約者がいなければ、異様に丈夫なだけの骨董品だ。

 実際、登録されている契約者はその10分の1以下だし、確認されている精霊剣のほとんどは下級の剣だ。銃器と違って暴発することも(基本的に)ないし、本当に骨董品のようなものなのだ。

 ただ、最下級の剣でも契約者有りなら銃器レベルの危険物になりうるので、国内からの持ち出しとかには幾重もの審査が必要になるのだけど。

 

 まあ、精霊剣の事情とかはこのくらいにして。

 

 雑談が始まってから数分。会話が落ち着くタイミングを見計らって、ネイ先生が続きを話す。

 

「というわけなので〜。本日の訓練の授業は、半分は夏休み明けの体を慣らすための運動。後半が、みなさんの精霊剣契約タイムになります〜。良き出会いがたくさんある事を、願っていますよぉ〜」

 

 ちなみに、僕を含めた何名かの精霊剣契約済み組は、その時間見学らしい。契約成立でテンション上がりすぎて、ハッチャケて暴れちゃう事が稀にあるらしく、その抑止力として剣持ちは待機するのだ。

 

「さてさて〜、直近のイベントに関してはこれくらいにして〜……次は、二学期の三大イベントに関してです〜」

 

 栄陽学園本校での、三大イベント。それは、武闘祭、学園祭、生徒会選挙だ。

 

 栄陽学園には体育祭の代わりに、武闘祭がある。

 基本全員参加で、組み合わせは学年毎のくじ引き形式。

 試合時間は1組3分。時間内に決着がつかなかった場合の勝敗は、審判員の判定か、治癒術士が治癒を完了するまでに使用した霊力の少ない方が勝利となる。

 

 栄陽学園本校の生徒数は500人。模擬武器とはいえ実戦形式なので、危険を鑑みて同時試合は同会場内で2組まで、しかも病欠や試合で気絶したなどの事情がない限り、全生徒は試合のリアルタイム観戦が義務付けられている。ので、どうしても時間がかかるので、武闘祭は五日間に渡って開催される。

 そうして勝ち残り、各学年4名になったところで学年別の試合は終了。武闘祭の目的は、各生徒が実力を見せ合い守護者候補として切磋琢磨することにあるので、順位決めやメダルの授与等はない。

 とはいえ、武闘祭の学年上位4名まで勝ち残るということは、超エリート学園である栄陽学園本校の学年の頂点という事の絶対的証明になる。守護者候補生なら、目指さない理由はないと言える。

 それに、学年上位に勝ち残った者には、上級生の学年上位者に挑戦する権利が与えられる。だいたいは上級生の方が強いので、胸を借りるって感じだけど……勝ってはいけない、なんてルールはないので、お互い全力で立ち向かうことになるだろう。

 

 ちなみに余談だけど。各国の様々な競技では、上位3名に金、銀、銅の順で記念メダルを授与するのが慣例になっているけれど。精霊国の国内限定の競技においては、上位3名に銀、鉄、金の順でメダルを授与する慣例になっている。これは、精霊国に置いて神聖視される金属の順位から取られており、精霊国独自のものである。

 

「武闘祭に関してはこのくらいにしまして〜。二番目に大きなイベント、学園祭についてです〜」

 

 栄陽学園の部活は、ほとんどが文化系であり、運動系の部活は数えるほどしかない。剣術部、格闘部、射撃部の3つのみ。

 ようするに、それらの部活はスポーツ目的ではなく武力鍛錬、訓練の授業の延長。放課後の時間も徹底的に己の力を磨きたい人用の部活であり、何かの大会に出場する等の目的はない。

 その他の文化系の部活も、何かのコンクールに出場する等の目的は一切ない。つまり、栄陽学園においての部活とは、学園が用意した娯楽の同好会、完全に趣味の場という意味合いが強い。

 

 そんな文化部が一同に会して開催するのが、栄陽学園学園祭『寧花祭(ねいかさい)』。

 名前の由来には、

「守護者に至り、人々の心に安寧をもたらす者となれるように」

「守護者を目指して日々自身を厳しく律している者に、一時の安らぎの場を」

という願いが込められているらしい。なので、ネイ先生は関係ない。多分。

 

 学園祭は三日間開催され、一日目は各学年毎に話し合っていくつかの出し物をし、二日目三日目は各部活が食べ物系や遊戯系の屋台、手作り衣服や小物、写真、漫画・小説等の展示会、演劇や日々鍛えた肉体を使ってのアクロバットショー等があるらしい。

 

「最後に、生徒会長選出会です〜。と言っても、1年生のみなさんには、あまり関わりないかもですが〜」

 

 栄陽学園での生徒会の役割は、基本的には普通の高校と変わらないらしいけど……生徒会長の選出は、独特のものとなっているらしい。

 

 まず、全生徒による選挙制ではなく、基本的に現生徒会役員と教師による推薦で何人かを選出。推薦された候補生の顔写真ポスターが貼り出され、性格や周囲からの評判等の簡単な情報がプリントとして配られ、それらを見た生徒が好みの生徒を応援し、その人気度を加味して現生徒会役員と教師が議論して決める、というややこしい方式らしい。

 

 つまり、単純に優秀な生徒やアイドル的人気のある生徒が選ばれる、という訳ではないらしい。有利ではあるだろうけど。

 ただ、応援期間中はアイドルの推し戦争さながらの応援合戦になることもあるらしく、大いに盛り上がるので一種のお祭り状態みたいになるらしい。

 

 なお、余程の理由がない限り、生徒会役員に選ばれた生徒に拒否権はないらしい。

 

(まあ、僕達にはあんまり関係のないお祭りだね。ネイ先生が言った通り、まだ1年生だもの)

 

 基本的に、新生徒会役員は2年生から選ばれるらしいし、何より、特に人気者な訳でも目立った行動をしているわけでもない僕が選ばれる理由はない。ので、僕が気にするべきは武闘祭と学園祭くらいだね。

 

「大きなイベントについては、だいたいこんな感じです〜。後はぁ、遠足と期末試験くらいですね〜。ではでは、次に質疑応答です〜」

 

 その後は、ネイ先生が話したイベントについていくつか質問が上がったりして、二学期最初の授業はつつがなく終了した。

 

 

 

 

 休み時間を挟んでの、本日最後の授業である、訓練の後半。いよいよ、みんなの待ちに待った、精霊剣との契約タイムが来た。まあ、僕と数人は、見守る側だけど。

 

「んーやっっと頭が起きてきた感じ! よーーしっ頑張るゾー!」

 

 適度な運動をしたからか、まだいつものテンションに比べたら少し控えめに感じるけど、ようやく普段のアキらしくなってきていた。

 

「んでさぁ。頭ボーっとしたままホームルーム聞いてたから、うろ覚えなんけど。どーゆー流れだっけ?」

「もー、しょうがないなぁアキちゃんてば。えっとね……」

 

 苦笑しつつ、アキに説明してあげるヒロ。

 

 今回の精霊剣との契約方法は、各人が希望していた精霊剣の属性や形状から、出来る限り合致した剣を並べ、その中から「君と契約したいよー」って感じの気配を発している子を探し出すスタイルだ。剣が契約オッケーかどうかの判断は、だいたいが手に持ってみれば伝わってくる。

 

「うん、この子が良いわ」

「さっちゃん速攻で決めたね〜」

 

 お、どうやらサチさんはもう相棒を決めたらしい。アキの方は、最初のナイフを手に持ったまま、角度をいろいろ変えて眺めながらうみゅうみゅ唸っている。アキは時間かかりそうかな。

 

 ちなみに。同じクラスで今日以前までにすでに契約済みなのは、僕と姉さん、ヒロとパフィンさん、あと飯屋峰君だ。彼は遠足の時は未所持だったから、ヒロと同じく夏休み中に契約する機会が巡って来ていたらしい。

 

 さて……みんなの様子を眺めているのも悪くはないけど、ちょっとだけ手持ち無沙汰な気分……と、そういえば雅はどうかな?

 

「んー……あ、いた」

 

 数秒辺りを見回して、見つける。

 

「………ほあー………」

 

 ……惚けた声を出して、掲げた大太刀型の剣を見つめ続ける雅。これは……

 

「気に入った?」

「……そう、なんかな……なんていうか……目が離せないんだよな……」

 

 感慨深げにそう呟く雅。

 

「ふふっ。それはきっと、お互いがお互いを気に入ったってことだよ。初めて持ったはずなのに、初めてじゃないような気がしない?」

「そんな感じだぜ……ああ、そうか……これが、契約オッケーって事なんだなぁ……ははっそうか! これからよろしくな、ユメユメ!」

 

 雅も宿題を終わらせるために徹夜したはずだけど、今はアキ以上に活力に満ち溢れていた。どうやら、剣との相性も抜群に良さそうだ。最後に言っていたのは、精霊剣の名前かな?

 

 

 

 

 そんな感じで1人また1人と、順調に契約完了していき、クラスメイトは全員無事契約することが出来た。

 ちなみに今回は、いつも勢いで突っ切ろうとするアキが最後だった。二振りの契約候補が出てしまい、授業終了ギリギリまで悩みに悩んでいたためだ。まあ、剣との出会いも一期一会、悩むのも当然だよね。

 

「いやーこれで友達みんな精霊剣持ちね!」

「おうっ! これでやっと真のスタートラインって感じだな!」

「まあ、私と優輝はそのスタートラインとやらはとっくに通り過ぎていた訳だが」

「もう、姉さん意地悪いわないの」

「そればかりは仕方がないわね。けど、すぐに追いついて見せるわよ」

「はい! それどころか追い抜いちゃいますよー!」

「その意気だよ〜。んまあアタシは、マイペースでゆる〜く行くけどね〜」

「あ、ちなみにだけど。蒼月さんのはオーダーメイドで一から造って貰うらしくて、手元に来るのは10月に入ってかららしいよ」

「えっマジ? あれ、それ武闘祭に間に合うのん?」

「んー、どうだろ。後で聞いてみようか。まあどっちにしても、武闘祭は模擬武器だから、間に合わなくても問題ないけれど」

「あれっそだっけ?」

「ちゃんと話は聞け寝不足娘」

「むぅー、瑞希だってしょっちゅう授業で寝てるじゃん」

「ふ、私は年季が違うからな」

「いやいや、寝不足は自慢することじゃないからね? ていうか姉さんもちゃんと寝なさい」

「うむ、努力する」

「うみゅ、あたしも努力するー!」

 

 あはははとみんなで笑い合う。剣と契約出来たからか、いつも以上にみんな上機嫌だ。

 

 

 

 

 ちなみに、今日友達が契約した精霊剣は、

 

  アキは、二本一対ナイフ型火属性・第8級 熱烈(ねつれつ)

  雅は、大太刀型風属性・第10級 努努(ゆめゆめ)

  サチさんは、太刀型風属性・第7級 明敏(めいびん)

 

とのこと。見事に等級分かれたね。

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