優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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僕らの学園祭デート

「鈴鹿様は、服飾部の展示会場にいらしていたので、私が声をおかけしました。竹田様は、月影達の宣伝している様子を眺めていましたわ……どうやら、大きいのがお好きなようです」

 

 蒼月さんが、先輩達が来た理由を教えてくれる。鈴鹿先輩は蒼月さんに誘われて、竹田先輩はヒロに釣られて、か。

 

「勘違いしないで欲しいんだが。確かに俺は彼女の美巨乳に心惹かれたが、俺は女の子の胸はサイズ関係なく愛でるもの、と思っている。だから、君達水城姉妹や天王寺姉妹のような平坦なのも等しく好きだぞ」

 

 言い訳のつもりなのか、竹田先輩が性癖を暴露し出した。なんか視線がいやらしくないのが逆にいやらしい。

 

 個人的には割とどうでも良い、のだけど。一応「貧乳を気にしている設定」なので、ジト目に低めの声色で一言。

 

「最低ですね」

「ですわね」

「どうでも良い」

「エッチなのはイケナイと思います!」

「……(無言の視線逸らし)」

「ま、女子には理解出来ない、男の美学ってヤツだな」

 

 竹田先輩、なんか格好付けて言ってますけど。否定的な内の1人は女の子じゃないんですよ。

 

「んまぁ、さっきの金堂先輩みたいに騒がないなら無問題! 竹田先輩は迷惑客じゃないでーす!」

「思春期男子の頭ん中なんてぇ、ちゃけばそんな感じっしょ〜」

 

 まあ、パフィンさんの発言はともかくとして、アキの言う通りだ。

 

 という訳で。帰ってきて早速だけど、ヒロにはオーダーを取ってもらい、月影ちゃんには僕ら調理組のサポートに入ってもらう。

 

 

 3人の注文は、蒼月さんが魚、先輩2人が牛だった。両方とも平均的に注文されるね。

 

 ちなみに、蒼月さんの注文を取った時、

 

「勿論魚コースで。月影が選んだシロダイ、堪能しない理由がありませんわ」

 

と静かに熱く主張していた。相変わらずの月影ちゃんラブっぷりである。可愛い。

 

 

 先輩2人が食事を終えて退店してから、ヒロ月コンビのお土産を食べつつ、蒼月さんと雑談をする。

 

 うん、ちょっと冷めちゃってたけど、美味しい。パクチーの香りが食欲増進させる。(やす)風海鮮お好み焼きか、今度調べて作ってみよ。

 

「2人は宣伝してみて、どんな感触?」

「うーん……一応好感触、なんでしょうかね? たくさん寄って来ましたしメニューも見てくれてましたから、私達の格好(メイド姿)や美少女っぷりは効果抜群だったと思いました!」

 

 自信満々に、自身が美少女であると大きな胸を張ってのたまう。可愛い。

 

「……花好きの方、が……花束を見て、近付いて下さったり、なども……」

「造花でも、予想通り効果あり、だね」

「でも、宣伝を見てお店の方向に向かった人は、あんまりいないんですよねー」

 

 ふむ。ヒロが疑問形なのは、それが理由かな。

 

「……実際、現在お客様ゼ……1人……」

「レストランは、お昼時が勝負時でしょうから。宣伝の効果の程は、まだ不透明でしょう」

「まあ、そうだよね」

 

 今河先輩にも宣伝頼んだし、サチさん達や加藤さん達も、頼んではいないけどしてくれるだろうし。

 現在11時30分。正午付近には少なくとも、席の半数埋まるくらいは来てくれる、はず。

 

 

 なんて考えていたのが10分程前。

 

(うわあ、なんだか凄いことになっちゃった)

 

 店内は、半数どころか満席になっていた。ヒロ月コンビの宣伝力、強い。

 

 ちなみに、蒼月さんは突然客足が増えたので、

 

「お邪魔になるのでお暇します」

 

と言って去ってしまった。服飾部の様子とかもう少し聞きたかったけど、まあ仕方ない。

 

「巨乳の100万パワー+ロリの100万パワーで200万パワー! そこに2つの異なるの美少女(チカラ)2倍が加わり200万×2の400万パワー! お前を超える宣伝(チカラ)だーっ! 勝ったなニャハハ!」

「いやいやお前って誰さ」

 

 突然の大盛況による大忙しに、アキが謎理論を語り出した。意味はわからないけどスゴみは感じる。まあ、大忙しでアキ自身何言ってるかわかってないだけなんだろうけど。

 

 

 

 

 昼の12時半過ぎ。クレープ以外の食材がほぼ尽きた。

 初日に用意していた食材は、様子見で少なめにしといたとはいえ、予想より1時間以上早い。

 

「シロダイラスト1食!」

「牛ステーキラス2ー!」

「ふむ」

 

 姉さんが入口に視線を向ける……店外にはまだ十数名並んでいるようだ。

 うーん。申し訳ないけど、ほとんどの人にはお帰り願わないといけないかな。男性が多いから、クレープ単品を頼む人は少ないだろうし。

 

「初日でここまで来るとはね」

「だねぇ」

「嬉しい悲鳴ってヤツ〜」

 

 大繁盛で嬉しい反面、悩みどころでもある。

 

(これは明日の食材入庫数、予算と睨めっこして見直さないと。連絡も早めに、あとみんなと緊急会議も――)

 

 調理をしつつ明日以降の事を計算していると、

 

「優輝にアキ、今のが作り終えたら話がある。来てくれ」

「はーい」

「ほーい!」

 

姉さんからお呼びがかかった。なんだろ?

 

 

 

 

 注文分の調理の仕上げを月影ちゃんに、運ぶのをヒロに任せて調理室を出ると、廊下に列を作っていたお客さんが……だいたい20人位いた。

 

「という訳で、ここにいる連中とジャンケンしてもらおうか」

「いやどういうワケよ!」

 

 姉さんの突然の指示に、アキが当然の疑問を返す。僕も意味がわからない、と言いたいけど……姉さんの思考を予測すると。

 

「僕らに勝った人に、残りの料理を注文する権利をあげる、てとこかな?」

「うむ」

「あーなるなる。ふみゅ、なんかアイドルのイベみたいで面白いかもっ!」

「僕なんて、アイドルみたいな大それた存在でもないけど。まあ、了解」

「アタシもオッケー!」

 

 注文権獲得方法には特に問題は感じなかったので即了承した、のだけど。

 

 

「これは……ちょっと意外かな」

「んーみゅ、なんとも言えない」

「ん? 当然の結果だと思うが」

 

 僕を、というか魚コースを選んだお客さんが16人、アキの牛コースが5人と、だいぶ差があった。

 さらに詳しく言えば。魚コースの人のほとんどが男子なのに対し、牛の方の男子は1人だけだった。

 

(んー。高校生男子なら、牛ステーキの方が好きそうなものだけど……この差はなんだろ?)

 

 まあ、たまたま魚の気分な男子が集まったのだろう。魚を選んだ男子の今河先輩に宣伝頼んだのも、理由の1つかもしれない。

 

「というわけで、ジャンケン開始だ。まずは少数の牛コースからだ」

 

 そんな訳で、残りの料理をかけてのジャンケン大会が始まった。

 

「ちなみに負けた者には、後日優先して食事が出来るよう、この優待券を渡す。明日以降それを提示した者は、今日と同じ状況になった場合でも優先してお客様だ」

「何それ、僕初耳なんだけど……」

「同じく!」

 

 いつの間に券なんて用意してたのか……姉さんには、この状況は予測済みだったらしい。

 

「では始めようか。最初はグー」

 

 

 

 

 とまあ、品切れ前にそんなイベントが(姉さんの独断で)起きたのだけれど。一応無事クレープ以外全て捌け、片付けを済ませて現在午後2時近く。

 

「では始めようか。最初はグー」

 

 何故か、再びのプチジャンケン大会が始まっていた。

 参加者は、姉さん、ヒロ、月影ちゃん、あと何故かいるサチさん。

 

 なんでこの4人でジャンケンしているのかというと、

 

「優輝と学園祭、2人きりでイチャイチャデート」

「したいからです!」

「……で……デート、という訳では……」

「学園祭を2人きりで周るのはデートイベントの定番、と聞いたわ」

 

らしい。

 

 まあ、友達全員でゾロゾロ行動したら通行の邪魔になるから、人数を絞るのは賛成だけど……サチさんの「聞いたわ」て、どこ情報?

 

「さっちゃ〜ん、負けたらアタシとスイーツ食べ歩きだかんね〜」

「ええ、わかってるわよ」

 

 ……パフィンさん情報っぽいかな。愉快犯大好きな姉さんかもしれない。まあどっちでも良いけど。

 

 ちなみにアキは、再びサチさん一緒に来た雅と2人、ウキウキスキップでデートに行ったので、既にいない。

 

「「「ジャンケンポン!!」」」「……ぽん」

 

 という訳で、順位が決まった。

 

「ふっふふふ……私の勝ちです!!」

「……2番……」

「3番か。微妙なところだが、まあ良い」

「くっ……多分無理よね」

 

 1位がヒロ、2位が月影ちゃん、3位が姉さんで4位がサチさんに決まったらしい。

 順位は僕と周る順番で、1番と2番が今日、つまりは今からで、3位が明日、4位が明後日最終日らしい。

 

 明日以降が、僕らのお店アルストロメリアの本番で、今日の状況的にかなりの大忙しになるから、こういう振り分けらしい……んー。返答は予想済みだけど、一応訊ねておく。

 

「3人1組とかじゃダメなの?」

「「「駄目だ」です」よ」

「ん……出来れば、その……」

 

 なんか駄目らしい。

 

 いやまあ……心の中でとぼけるのはそろそろ止めよう。さすがの僕でも、そこまで鈍感じゃない。

 

 姉さんが僕の事を好き過ぎるのは、誰から見ても分かるからともかく……月影ちゃんは、よくわからないけれど。ヒロとサチさんの僕に対する感情には、すでに気付いている。

 

(2人は明らかに、僕の事、好きだよね……恋人になりたい的な意味で)

 

 2人の、僕との仲を積極的に深めようとする態度は、「普通の友達」から「親友」になろうとするものと、似てるようで違う。恋愛経験ない僕でも気付ける程度に。

 というか、ちょくちょくアキがヒロを、パフィンさんがサチさんを焚き付けてるの見てるし。それに対し2人とも満更ではない顔なのだから、僕でも気付く。

 

(とはいえ、どうしたものかなー……)

 

 僕との学園祭デートで一喜一憂するヒロとサチさんを見て、悩む。

 

(2人とも、親友だと言えるくらいには好きだけど。どうにも僕にはまだ、恋愛感情っていうのがどういうものなのか、ハッキリとはわからないんだよね……)

 

 漫画やラノベでは、胸が締め付けられるとかキュンキュンするとか表現しているのが多いけど。そういうの、友達の可愛い行動を見た時に感じるし……というか、友達とまで言わないまでも仲の良い人にも覚えるし。やっぱりよくわからない。

 

「さあ優輝さん! デートっデートですよ!! アキちゃん達に負けないぐらいイチャイチャしましょう!!」

 

 それはともかく。はしゃぐヒロがとても可愛い。なんだかこっちも嬉しくなってくる。

 

(仲を深めようとはしてくるけど、直接告白はされていないし。それに、もし告白してきたら、秘密は明かしたい……今は現状維持、かな)

 

 我ながら、ちょっと優柔不断だなとは思うけど。僕自身がハッキリ恋心だと思えるまでは、親友のままが良い。

 

(……この関係が崩れて、親友と疎遠になっちゃったら嫌だしね。悲しい顔も見たくないし……まあいずれ、ヒロかサチさんか、もしくは他の誰かと恋人になったら、誰かしらは失恋で悲しませちゃうのだけれど……うーん、悩める……)

「優輝さん?」

 

 おっと、考え込んでたらヒロに不思議そうな顔をされてしまった。

 

「それじゃ、いこっか」

「はい!! さぁ何から食べにいきましょうかねー、悩みますね!!」

 

 まあ、とりあえず今は、ヒロとの学園祭デートを楽しもう。




 塩谷 幸子というキャラは、当初は同じクラスにいる単なる委員長系モブキャラの予定、だったのですが……どうしてこうなったか、作者自身謎です。
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