「それで会長、どこまで話したんですかー?」
話が一段落した所で、話を戻そうと会長さんに振る副会長……いや、今はロールさんって言った方が喜ばれるかな。
「アピールタイムについての説明を、だいたい終えたところですね」
「んー。じゃあロールちゃんがぁ、全校ライブの追加説明するねー☆」
全校ライブ……まあ流れ的に、アピールタイムの事だろう。
「個人に割り振られるライブの時間は、10分間! その間はどんなアピールでも可! 普通にトークだけでも良いし、アタシみたいに歌って踊るのも当然アリ!」
「ああ、ライブってやっぱりそういう意味ですよね」
「セクシーアピも、度を過ぎなければアリだよ! 大量の女子が敵になるかもだし、あんまあからさま過ぎると、会長にはまず選ばれなくなるけどね!」
「後半の情報必要ですの?」
「アタシの同期でやらかした娘がいるよ。過激過ぎたせいで生徒会入り不可どころか謹慎処分受けたよ。みんなも気を付けてねー?」
「そ、そうなんですのね……」
ロールさん、明るく言ってるけど、目が笑ってない。アイドルなめんなって心で言ってそう。
というか。
「ネイ先生、数年どころか、去年の話じゃないですか」
「ここ6年くらいは出なかったんですけどね〜、ズズ……」
のほほんとそう言い、ほうじ茶のおかわりをすするネイ先生。
「全校ライブについてはこんなもんかなー。何か質問ある?」
んー……聞きたい事はだいたい聞けたし、僕はすぐには思いつかないかな。
「アピールタイムに出れるのは、ソロでのみか?」
姉さんが、手を挙げると同時に質問する。
「ユニットでも可! ただまぁ大人数過ぎるのはダメだよ! アイドル候補含めて多くても3、4人くらいだね!」
「ふむ……」
それで聞きたい事は全部なのか、姉さんは黙り込んで何やら考え込む……なーんとなくイヤな予感。
「よろしいかしら? 副会長さんのその、アイドルモード? とやらですれけど。疲れませんの?」
「それ聞いちゃうんだ……」
今度は加藤さんが質問したけど、アピールタイムとは直接関係ない質問だった。僕もちょっと気にはなってたけど……加藤さん、微妙に聞き辛い事をよくズバッと聞けるなあ。
「ロールちゃんはこれが素だからぁ、とーぜん! 疲れたりなんかしてないよ☆」
にぱっ!と完璧なアイドルスマイルを披露して、カケラも無理してない様を見せつける。とても可愛い。
「……まぁ、化粧落として私生活モードに入った時にちょっと来るけど」
と思っていたら、一瞬すんっとなって本音を暴露する――
「やはり無理してらっしゃるんじゃありませんの」
「無理なんてしてないってー! マッキーモードになる時、確かにちょこーっと来るけどぉ、達成感ていうか心地良い疲労ってカンジだし? むしろ癖になってるんだよねー! あっは☆」
「そ、そうなんですのね……」
――と思ったらまた一瞬でアイドルモードに戻って、魅力溢れる笑顔で反応に困ること言い出した。ていうか加藤さん、若干引いてる?
「ふむ。つまりは注目されるのは疲れるが気持ちが良い、と」
「まぁ簡単に言っちゃうとそんなカンジ!」
「つまりアイドルモードとは自慰――」
「姉さん」
「うむ」
何を言おうとしたか気付いたので急いで止めた
「あははっそうなんだよねー! アタシ性欲強いみたいでさー!」
のだけど、ロールさん自身が暴露してた。
「こら、ロールちゃんそこまで。知り合いしか居ない生徒会室だからって、はしゃぎすぎだよ〜」
「あっ……は、はーい」
彼女の方は、長瀞先輩が止めてくれた。ほとんど言い切っちゃってるけど、ロールさん若干顔赤いから、ノリで言ってしまっただけで羞恥心はちゃんとあるようだ。可愛い。
「さてそれはそれとしてー! ライブと関係ない質問出たし、選出会の説明に戻そっか! てなわけで、会長に引き継ぎまーす!」
「はい、任されました。アピールタイムの次は、投票日ですね」
唐突に振られた流れそのままに話を引き継ぐ会長さん。手慣れてるなあ。
「投票は、応援期間終了翌日の、朝の全校集会にて投票箱が設置され、投票券を入れるという流れです。投票は即日開票され、放課後に発表されます」
「即日ですか……それって、その時またお祭り騒ぎになりませんか?」
「なりますねぇ」
「あっは☆ 1位になったらぁ、ゲリラライブのチャンスだよー!」
……引き篭もりたくなってきた。まあまだ会長に選ばれると決まってはいないけれど……
「とまあ、生徒会長選出会の流れはだいたいこの様になっています。最後に幾つかの注意事項を」
変わらず穏やかな口調ながら、真顔になって一呼吸置く会長さん。なんだろ?
「ここまで説明した通り、選出会は小規模なお祭りイベントの側面もありますが。会長に相応しくない方の篩い分けの場でもあり、候補者の支持率を見計らう機会でもあります。なので、会長に推薦されたみなさんには、どんなカタチであれ真剣に向き合っていただきたいと思っています」
「それはまあ……期待されて推薦されたのだから真面目に取り組まないと失礼ですし、当然ですよね」
僕の発言に会長さんが再び「ほぅ」と感心したように一息つき、暖かい眼差しを向けてくる。
(あー……会長さんの中の僕の株、さらに上げちゃった感……)
「こほんっ」
すぐに我に帰った会長さんが咳払いを1つして、すぐに注意事項に戻る。
「そしてもう一つ。すでに知っている情報かとは思いますが、選出会はあくまで会長候補生の評価点の一部分でしかなく、それらを加味して全教職員と現生徒役員が話し合った結果、最も学園生の見本として相応しい生徒が会長に選ばれます。何が言いたいかと言うと――選出会で1位になった生徒がそのまま生徒会長に選ばれる訳ではない、という事です」
あー、そうだった。二学期頭にHRで簡単に説明されてた……
(……あれ。そうなると、高く評価されてる現状、選出会期間中に頑張らなくても、生徒会入りはすでに決まってるようなものじゃあ)
「「ちっ」」
僕の表情から、僕が重大な事実に気付いた事を察して、纐纈てめえ余計な事言いやがってとばかりにネイ先生と姉さんが舌打ちする。
「こらこら、美人教師と天才美少女が舌打ちしない」
「はは……ですがまあ、1位になった候補生が生徒会長に選ばれケースがほとんどなのですが」
「となると、去年の選出会は纐纈会長さんが1位に?」
蒼月さんがそう質問するけど……話の流れ的に。
「とーぜん! 学園のアイドル☆ロールちゃんが、1位取ったよー!」
「ちなみに私は2位でした」
「ですよね」
だと思った。わざわざ会長さんが「1位=即会長決定ではない」って言ってたしね。
「ちょっと待って下さいまし! それでは「生徒会長選出会」という名はなんなんですの!? 1位の方が必ず生徒会長になる訳ではないのでしょう!?」
まあ、当然のツッコミだよね。ていうか、今日は加藤さんのツッコミが冴えている。可愛い。
「ですから、お祭り兼篩い分けです。生徒会長の最終選考に大きな影響があるので、意味はありますよ」
「む……そ、そうですのね……」
現生徒会長にハッキリ意味があると言われては、さすがの加藤さんもそれ以上はツッコめないらしい。
「ちなみに、ロールさんが会長になれなかった理由ってなんなんですか? 確か生徒会長には、アイドル的な意味合いもあると聞いていたんですが」
このアイドル性の高さで1位になったのだろうし、そこだけが疑問だった。
「そうですね……端的に言って、アイドル過ぎたせい、ですね」
「多少のアイドル性は求められてるけど、ガチレベルのアイドル性はなんか違くない? だってさ!」
「TVのアイドルと栄陽学園でのアイドルとで、求められている性質が違うということですな!」
「マッキー、戦闘力も学力も中の中くらいだしねー」
当時の選出会を知っている現生徒会メンバー全員から、口々に理由が語られた。
「なるほど……TVのアイドル性+咲さん――守護者のような国防的アイドル性が基準、ですか?」
「はい、そのような感じです」
それなら、ロールさんが会長でないのも仕方ない、かな。今年の二年生、正直あんまり強くないし。
まあ、超越者になれるかは精神面の強さがモノを言うらしいし。つまり、戦闘力が低い=守護者になれない、ではない。
だから、もしかしたらロールさんが守護者の1人に、なんて事もあるかもしれない。すべては胆力+精霊神剣に気に入られるかどうか次第だ。
ちなみに、纐纈会長さんはわりと文武両道で、武闘祭でも上位4人には惜しくもなれなかったけど、最後の試合まで残れる程の実力者だったりする。
「さて、説明会は大体こんなところでしょうか。ポスター張り出し開始は今週末からなので、応援期間まで約二週間あります。各自気を引き締めて下さい。では、本日はこれにて解散という事で」
「あ、はい」
これ以上話すことはないとばかりに、半ば強引に説明会は終了された。もう少し聞きたい事もあったのだけど、現生徒会メンバー全員が一斉に帰り支度を始めてしまったので、今は難しそうだ。
「あっそだ! コレあげるねー!」
「はい?」
僕らも退出しようと動き出した直後、ロールさんに引き留められて、何やらチケットを渡される。
「明後日の水曜の放課後に、ミニライブやるから! 絶対見に来てねー☆」
どうやら、ロールさんの部活動風景を見学させてくれるらしい。場所は音楽室で、小規模ながら物販もあるようだ。
「……私がどれだけ生徒会長選出会に本気なのか、見てもらいたいから。絶対来てよね」
「わかりました」
「うむ」
「楽しみにしています」
「え、ええ……わかりましたわ」
ロールさん――女部田先輩が去り際に発した台詞は、無碍には出来ないと思わせる、真剣な声色だった。彼女の情熱の程を垣間見た気がした。
(部活動でのミニライブだけど。もしかしたら、事務所所属アイドルレベルのが見られるかも)
そう思うと、ちょっと楽しみになって来た。