優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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生徒会長選出会・結果発表

 二年生の会長候補者は、ロールさんの他に男女2名計4名いたのだけど。ロールさんの魅力と勢いに怖気付いたのか、そもそも会長になる気があまりなかったのか。無難なマニフェストを淡々と語るのみだった。

 

 4人は、武闘祭二年生の部の上位4名らしいけど……失礼だとは思うけど、二年生の部は正直あまり印象に残っていなかったので、マニフェストを語るまで気付かなかった。

 

 さて。そんなこんなでアピールタイムも全員終了し、全校生徒の投票も終わった。今日は授業もないので後はほぼ自由時間なのだけど、即日開票されて午後には校内放送および掲示板にて結果が発表されるので、部活に向かう人はいても学園外に出ようとする生徒はほとんどいない。

 

 更には、結果発表までが選出会なので、お昼まで出店がある。ので、打ち上げ目的なのか、出店には長蛇の列が出来ていた。

 

「うー、屋台飯……」

 

 ヒロが恨めしそうに列を眺めて呟く。パフィンさんとそれに付き合ったサチさんは、根性でクレープ屋台の列に並んでたけど……ヒロがアレに並んでたら空腹の限界で途中でへたり込みそうだしね、仕方ないね。

 

 なので僕らは、アイ研出店の近くのベンチで、自前のお菓子でプチ打ち上げをする事にした。

 

 何故アイ研近くでなのかと言うと、

 

「まぁ、毎年アピタイ後はこうらしいからね。知らない一年生は、どうしても出遅れちゃうのよね」

 

私生活(マッキー)モードの女部田先輩が、出店で店番しているからだ。アピールタイムで競い合った?ので、ぜひ一緒に打ち上げをしたかったのだ。

 

「ライブ、お疲れ様でした。とても心震える素敵な歌でした」

「最高に滾りましたよ、先輩!」

「あははっありがと。今回のは私が作詞作曲までしたから、そう言ってもらえるとめっっちゃ嬉しいわ!」

 

 僕と雅の感想に、本当に心底嬉しそうな眩しい笑顔で返す先輩。可愛い。

 

「優輝会長も、素敵な剣舞だったわ。流石、一年生にして守護者有力候補って噂されるだけあるわね」

「ありが……いやいや、まだ僕が会長になるとは決まってないですよ。ロールさんの歌、凄かったですし」

「いやぁ、今回の選出会、私が投票1位なのは確実だろうけどね? それでも多分、生徒会長には選ばれないだろうね」

「……前回と同じ理由で、ですか?」

「だね。貴女達の剣舞見た瞬間、あーこれは無理だわって思ったしね。栄陽学園では「武」がなにより尊ばれるもの、だからさ」

「その割には、全力全開の熱唱だったように見えましたわ」

「……(こくり)」

 

 天王寺姉妹がそう感想を告げる。確かに、魂の籠った歌だった。お世辞ではなく感動した。

 

「そりゃあ、優輝さん達が全力だったんだもの。こっちも全力で当たらないと無作法ってものでしょ」

「んーみゅ、そっかなー。ロールちゃんはどっちみち絶唱した気しかしないけどなぁ」

「まぁそうだろうけどね。でも、優輝さんが全力だったから、私は全力以上が出せた気がするわ。なんか2曲歌っただけなのに、妙に疲れたし」

 

 アキの感想に、わざとらしく手をプラプラさせ疲れたアピールをする女部田先輩。可愛い。

 

「ふむ、やはりか、面白い」

 

 何やら楽しそうに呟く姉さん。何企んでるんだか。

 

「まぁ、それはそれとして。お互いお疲れ様って事で……はい、これおごりね」

「わあ、ありがとうございます」

「うむ、いただこう」

 

 そう言って手渡してくれたのは、紙皿に乗ったローケーキだ。例の「ロールちゃん手作りローケーキ」だろう。

 

「やっぱ、疲れた時は甘いものよね!」

「気にはなってたんですけど、毎日売り切れてたんですよね。御馳走様です」

 

 後で聞いた話によると、ロールちゃん手作りローケーキは一番人気商品で、物販開店10分もすれば売り切れてしまうらしい。まあ、女部田先輩個人が一度に作れる量的に、即完売は仕方ないね。

 

 ……あ、となると。

 

「じー……」

 

 やはり予想通り、まだ食べたことがなかったのだろうヒロが物欲しそうに、ロールちゃん手作……長いからロールロールで良いか。ロールロールを見つめていた。

 

 むう、あの顔で見つめられたら「あげようか?」と言いたくなるけど、僕もロールロール食べてみたかったし。なやめる。

 

「あははっ今日はお客が他に流れちゃってて少し残ってるから、みんなもどーぞ」

 

 そう言って、クーラーボックスから包装されたロールロールを取り出し皿に出す先輩。

 

「ありがとうごさいまぁす!!」

「先輩、最高です!」

 

 アキヒロが差し出されたロールロールを受け取

 

ひょい

 

「「へ?」」

 

れない。2人が皿を掴む瞬間、先輩が手を引いたからだ。

 

「一個200円になりまーす」

「汚いな流石アイドルお金に汚い」

「先輩、最低です」

「おうふ、そこまで言う? 一応これ商品だから、タダではあげられないだけだからね?」

「ぶーミズキーズにはタダであげたのにー」

「おごりって言ったでしょ、タダじゃないわ。2人の分は、私が自腹でお金入れたのよ。ていうか、自分で作った物にお金払うの、妙な気分だったわ」

「ふふっ、冗談ですよ。ほらアキちゃん、素直に買お? そもそも売り切れで買うことさえ出来なかったんだし、更に言えば今日は最終日だよ?」

「んまぁ、そだねぇ。てなわけでっ! くーださーいなっ!」

「はいはーいマイドアリ!」

 

 軽く漫才をしてから2人が支払うと、先輩からロールロールを受け取る。

 

「はむ……なるほろ、ほれは、なはなは、こくん。美味しいです!」

「結構自信作なのよって早っ」

「あっははっヒロ食べんの早すぎぃ!」

 

 受け取ったのを確認した直後味自慢しようとしたら、すでに食べ始めていたヒロに思わずツッコむ2人。なんかほっこりするやり取りだ。

 

「他の3人は? まぁ、あと二個しかないけど」

「では、いただきますわ」

「ほーい。シャイタ……月影ちゃんは?」

「……(ちら)」

「! 甘くて美味しいです!」

「……遠慮、します……」

 

 甘過ぎるのが苦手な月影ちゃんがヒロをチラ見すると、意を汲んで甘さ加減を伝える。なにこのやり取り尊い。

 

「じゃあ、俺いただきます」

「了解。よっし、今日もロールケーキ完売っと」

 

 最後のを雅が買って、みんなにロールロールが渡ったのを見届けた所で、僕も口に運ぶ……うん、確かに月影ちゃん的には苦手かもだけど、しつこくない甘さで良い感じ。生地もフアフアで、ベテランパティシエレベルとはいかないけど、普通の洋菓子店レベルはある。

 

「うん、とっても美味しいです」

「料理部部長にそう言ってもらえて何よりだわ。一応お菓子作りも、アイドル活動の一環みたいなものだからね」

「お菓子作りが、ですか?」

「そ。普通の料理って割とアドリブが効くけど、お菓子は効かないっていうか、色々と正確さが求められるじゃない? それが集中力を高めるのに良いのよね。つまりお菓子作りは、私流の精神統一の儀式って感じなのよ。だから、ライブやる前日の夜には、毎回必ずお菓子作るのよ」

「なるほど」

「まぁ、アイ活関係なしに、試験とか受験とかの大舞台前にはやってた儀式なんだけどね」

「ロールケーキなのは、アイドル名にちなんだ願掛けですか?」

「そだね。美味いロールが作れるなら、明日もロールとして上手くいく、的なね」

 

 にかっと笑いそう言う先輩を見て、彼女はとても素敵で満足した学園生活を送れているんだな、と思った。

 

 

 

 

 その後、列から戻って来たパフィンさんが、多分パフィンさんに見せつけるためにわざとゆっくり食べていて半分残していた姉さんのロールロールを見て、ゆるふわ系美少女がしちゃダメな顔(具体的には血涙流しそうな顔)になったり、それをサチさんが慰めて自分のクレープを譲ってあげてうわ尊い、と思ったり。そんな感じで、昼食前まで打ち上げを楽しんだ。

 

 

 

 そして、昼食後の午後一。せっかくなので女部田先輩と学食で一緒してまったりしつつ、結果発表の放送が流れるのを待っていた。

 

 ちなみに、開票作業は監督の教師と、現生徒会役員で行っている。先輩は会長候補者だから特別に除外されており、1人だけ時間を持て余していたから物販屋台にいたらしい。

 

ピンポンパンポーン

 

 先輩含む友人達と雑談していると、校内放送前のチャイム音が鳴り響く。いよいよ発表か。

 

『生徒の皆さん、お待たせしました。集計が滞りなく完了しましたので、発表致します。まずは8位です』

 

 纐纈会長さんが、投票結果の読み上げを進める。下位から順に全員読み上げるらしい。

 

 

 

 

『4位は、票数19。加藤 透華さんです』

「なぜですの!?」

「うわびっくりした」

 

 結果に納得いかないのか、加藤さんが不満の叫びを上げてガタッと立ち上がる。すぐ近くにいるとは思ってなかったからちょっと驚いた。

 

 当然放送相手には聞こえていないので、発表は無慈悲に続いていく。僕・蒼月さん・女部田先輩がまだ出ていないので、今テーブルで一緒しているメンバーが上位3名だ。

 

 というか、先輩の読み通りなら、先輩が1位、僕が2位らしいから、次に呼ばれるのは――

 

『3位は、票数31。天王寺 蒼月さんです』

 

――やはり、蒼月さんか。

 

「……予想より投票していただけましたわ」

「アピタイで部費の事を言ったからだと思うわ。やっぱ部費は少しでも多い方が嬉しいからね」

 

 蒼月さん的に、31票は予想外だったらしい。

 

「さってと。やっぱ私達が1・2位だったわね」

「ですね」

 

 ここまでの投票数の合計が、ちょうど100票。生徒数が500なので、残り400票が僕ら2人に入ったという事だ。

 

『残りは上位2名ですが、投票数は僅差、8票差です。先生方によると、ここまで僅差なのは珍しいそうです。上位2名の人気の高さが窺えますね』

 

 む、僅差なんだ、先輩の圧勝かと…………8?

 

(先輩を抜かして、姉さん含む同じ卓を囲んでいる親友は、8人……あれ、いやまさかね)

 

 たまたま似た数字になっただけ、先輩が1位なはず。だってあんなに自信満々だったのだし……

 

『いよいよトップ2の発表です。2位は、票数196。女部田 真貴さん』

 

 ……あれ?

 

『1位は、票数204。水城 優輝さんです。おめでとうございます』

 

 ……。えー……

 

「私が1位なのは確実、だったか? ふふ、今どんな気持ちだ?」

「……なんか、大見得切っといて、なんか……ほんと身の程知らずですんませんした……」

 

 煽る姉さんと、真っ赤な顔を手で覆って震える女部田先輩……凄く可愛い、のはともかく。

 

 選出会1位に向けて必死に頑張ってきただろう女部田先輩をイジるのは、流石にいただけない。人の努力は貶すべからず。

 

「姉さん、先輩イジめちゃダメだよ。アキ達が僕と友達になってなかったら、多分僕が普通に2位だったろうし。誤差でたまたま勝っただけで、先輩の魅力は確かなものなんだから」

「ふむ、そうだな。先輩殿、失礼した」

「え? あっうん、いやまぁ、うん。別に謝られる程の事ではないけど……」

 

 姉さんの謝罪に戸惑いつつ、未だ恥じらいで赤い顔を見られるのがイヤなのか、視線を彷徨わせる。可愛い。

 

 さて、姉さんの煽り自体はそれ程気にしていないようだけど。今回の結果でロールさんのこれからのアイドル活動に良くない影響が出ると、色々と申し訳ない。

 

 ので、僕からも励ましの意味を込めて一言。

 

「僕は先輩の歌声、大好きです。これからも元気いっぱいに歌い続けて欲しいです」

「――――」

 

 ……うん? なんか、先輩の反応がおかしい。何故か、呆然とした顔で僕を見ている。

 

「――っは! やっばいわー流石だよ! 1位になるよそりゃあ!」

 

 我に帰ったかと思ったら、さらに顔を赤くして胸に手を当ててそうまくし立てる。

 

「えーと……どういう反応です?」

「うむ、優輝の発言に胸キュンなようだな」

「ほんっと、優輝は天然タラシよねぇ」

「え? ……あー……」

 

 ……今の自分の台詞を振り返ると、反論出来ないので困る。また無意識に恥ずかしい発言してしまった。

 

「「……新たなライバルの予感……」」

 

 女部田先輩の反応を見て、ヒロとサチさんが危機感を抱いた顔でそう呟いていた。僕には聞こえてるからなおさら反応に困る。つい目元を覆い、赤くなる顔を隠して俯いてしまう。

 

「優輝は可愛いなあ……」

「見ている分には楽しいですわ」

 

 ……ちょっとムカついたけど、まあ気にしない。

 

 その後、若干気まずい空気が流れる中、長瀞先輩が女部田先輩を連れて行ったことでお開きになり、各自部活やら外に遊びに行ったりやらした。

 

 

 

 

 後日の全校集会で、次期生徒会役員の発表がされた。役員は全員壇上に上がり、役職と名前を呼ばれたら前に進み出て挨拶をする、という流れだ。

 

『生徒会長に選出されたのは、1-Dより、水城 優輝さんです』

 

 そして、生徒会長に選ばれたのはやはり僕だった。纐纈会長さんからマイクを受け取り、一言。

 

『この度会長に選出されました、水城 優輝です。至らない点もありますが、これから一年間、よろしくお願いします』

 

 手短に無難に済ませたのだけど、

 

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

 

割れんばかりの拍手で迎えられた。う、うーん、ちょい気恥ずかしい。

 

 

 さて、僕の後に1人一言挨拶した訳だけど……まあ盛り上がった所はほぼないので、後は役職と名前を書いて終わりにしよう。

 

 生徒会長 水城 優

 生徒会副会長 去年に引き続き、女部田 真貴

 書記2名 天王寺 蒼月 天王寺 月影。

 会計2名 長瀞 まひる 水城 瑞希。

 

 以上が、次期生徒会役員だ。

 

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