優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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生徒会役員達の日常

ちゅるっ

 

「ん〜まい! これはまごう事なき杏仁(きょうにん)を使った本格派杏仁豆腐!」

「ふふ、お粗末様」

「おかわり!」

 

 食後のデザートの手作り杏仁豆腐を堪能しながら、話を続ける。

 

「ところでさぁ。漫画とかだと生徒会って、生徒の絶対的頂点的な存在で、校内で強権振るってたりする設定が割とあるんだけど。実際のとこ現実の生徒会って、何してるん?」

 

 おかわり杏仁豆腐を待つ間、足をプラプラさせながら何気ない感じでエリスから質問が飛んできた。

 

「んー、そうだね。まあ少なくとも、漫画に出てくる生徒会はほぼフィクションだと思うよ。普段やる事がちょっと増えた程度だったからね」

「うむ」

「それも、生徒会役員というより生徒会長が、でしたわね」

「ふみゅ、具体的には?」

「んーと……せっかくだから、生徒会長になってからどんな日常を過ごしてたかを交えながら話そうか」

 

 日記を開き、生徒会活動を始めた時期のページを開いて、当時の日常を思い出す。

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 生徒会役員発表が終わり、週明け闇曜日の放課後。前期生徒会役員と現役員とが生徒会室に集まり、引き継ぎの会合が行われた。

 

「ちなみにですが。栄陽学園の歴史の中で一年生が生徒会長に選ばれたのは、過去に一例だけだったようです」

「そうなんですね」

「珠州野守先生からの情報によりますと……20年程前、ミーナ・スターフィールドという女生徒が選ばれたようです」

「……うん?」

 

 あれ。なんかその名前、どっかで聞いたことあるような……

 

「ふむ、血は争えない、か」

 

 姉さんの楽しげな顔での呟きで思い出した。

 

(あー……母さんが結婚して、改名する前に名乗ってたって言ってた名前だ…………えー……)

 

 なんか、予め僕が一年生で生徒会長に選ばれるのが決まっていたかのように思えて、複雑な心境になった。

 

 まあ、そんな衝撃の事実を聞いたりしながら、生徒会長の仕事内容を教わった。

 

 まず、武闘祭・寧花祭・生徒会長選出会の学園三大行事の運営の補助。まあ簡単に言えば、トラブルを見かけたら報告する、程度のものだ。大体の事は学園側が上手く運営してくれるらしいので、生徒会がする事はあくまでおまけみたいなものらしい。

 

 普段の仕事は、学園の顔として、栄陽学園生として相応しい行動を心がけること。その一つとして、朝鍛錬を積極的にすることが挙げられた。武を尊ぶ学園生としても模範になるから、らしいけど。

 

「あの。朝鍛錬は今までもほぼ毎日やってきたんですけど、つまりは今まで通りで良いってことですか?」

「はい、その通りです。というかですね。生徒会長に選ばれた理由の一つに、優輝さんが朝鍛錬をほぼ欠かさずしていた事も含まれています」

「あー……」

 

 もうその時点で、纐纈元会長さんには会長候補として目をつけられてたって事かあ……まあ、朝鍛錬は長年の日課だしね。やらないと落ち着かないから、仕方ないね。

 

 その他の仕事として、週の中日(なかび)の放課後に校内全域見回り、週頭の朝に昇降口前に立って生徒に挨拶、などがある。両方とも会長は必ず参加で、必ず後1人生徒会役員を連れる事、らしい。

 

「なんか生徒会って言うより、風紀委員っぽいですね」

「はい、生徒会は風紀委員も兼ねています。この学園に風紀委員がないのがその理由ですね」

「なるほど……」

 

 ……とまあ、こんな感じで僕が元会長さんから業務内容の説明を受けている間、

 

「蒼月ちゃんは〜、シャイタンのお姉さんでシャイタン大好きちゃんだから〜、ハーちゃんで〜」

「……渾名の命名理由が意味不明なのですが」

「多分、月影ちゃんの可愛さにいつもはーはーため息付いてるから、だと思うわ」

 

横では、別な話題で盛り上がっていた。

 

 まあ、仕事が多めなのは生徒会長の僕だけだし、長瀞先輩は前期から引き続き役員だから、聞きたいことがあったら彼女に聞けば良いし。今一緒に聞かなければらならないって事はないから良いんだけど……仲間外れっぽくて、ちょっとだけ寂しい。

 

 

 

 

 というわけで。纐纈元会長さんから引き継ぎした業務内容――生徒会長になってからの日常行動を書いてみよう。

 

 まず、朝鍛錬。これはまあ会長云々以前、実家にいた頃からの習慣だから、特に変わりはない。

 

「優輝会長! おはようございまーす!」

「おはようございます。今日もお互い頑張りましょうね(にこり)」

「ンアーッカワイイ! ガンバリマス!」

「グワーッカワイイ! ガンバリマス!」

 

 ただまあ、会長になってから、よく声をかけられるようになった。早朝から、黄色い声と野太い声がグラウンドに響き渡るのが日常風景になった。

 

 次に、昇降口前での挨拶。

 

「おはようございます(にこり)」

「ンアーッカワイイ! オハヨウゴザイマス!」

「グワーッカワイイ! オハヨウゴザイマス!」

 

 黄色い声と野太い声が、闇曜日朝の昇降口に響き渡るのが日常風景になった。

 

 放課後の見回り。

 

「これから部活動ですか? 訓練の授業で疲れているでしょうから、ハメを外し過ぎない程度に楽しんで下さいね(にこり)」

「ンアーッカワイイ! ツカレフキトビマス!」

「グワーッカワイイ! ヤルキマンマンデス!」

 

 黄色い声と野太い声が、週一で放課後の校内に響き渡るのが日常風景になった。

 

「会長さん大好きっ! あたしと付き合って!」

「会長! 好きッス!」

 

 あとなんか、放課後見回り時に告白される事が増えた。しかも男女両方から。前までは、大体が下駄箱ラブレターだったんだけど……

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

「モテ自慢キタコレ!」

「優輝だからな」

「いやいや、気持ちはありがたいけれど、よく知らない人からいきなり交際を申し込まれてもね」

「んじゃ、全部即お断り?」

「そりゃあね、初見の人とお付き合いするつもりはなかったし。まずはお友達になりましょう、とかなら、まだ一考の余地もあったけんだけど」

「ふみゅ。いきなり「恋人になって」はNGと」

「告白の男女比率は、どの程度だったのでしょう?」

「えっと……会長になる前は、男子9女子1。会長になってから……というより、武闘祭以降、男子6女子4、だったかな」

「ラブレターの頻度は?」

「毎日最低一通は入ってたかな」

「モテモテですわね」

「だねぇ。1人くらいちょっと良いかもって思える男子、いなかったん?」

「いやいや……男子と付き合う気は、今も昔も微塵にもないからね?」

「ふみゅふみゅ。で、本音は?」

「いやいや本音言ったから……敢えて言うなら、好きになった人がお付き合いしたい人、だよ」

「優輝さん大好き付き合って下さい!」

 

 エリスがなんの脈絡もなく告白してきた。いやまあ、割とよくあるけど……それに対する僕の応えもいつも通り。

 

「エリスは好きだけど、二股する気はないからごめんなさい」

「グワーッ! マーケター!」

 

 エリスがわざとらしく飛び上がり、空中で3回転捻りしてからフワッと宙で静止する。精霊術の無駄遣いだし、何より意味不明だ。

 

「ハッ雑魚が」

「その喧嘩買った」

 

 姉さんの罵倒に、エリスが体を捻って姉さんに顔を向け、挑発的な笑顔でそう言った。

 

「はいはい、進まないから話を戻すよ」

「ほーい」

 

 素直に返事して、スイーと滑るように中空移動して席に着くエリス。

 

 さて。生徒会長の日常風景まで話したから……次は、生徒会役員との交流を話そうか。

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 週末の放課後には、一週間の活動報告会という名のお茶会が生徒会室で開かれていた。

 

「報告会を始めます。何か変わった事やクレームはありましたか?」

「特にはないわね」

「ご意見ボックスの投書は?」

「優輝を賛辞するカワイイの声がウルサイ、というクレーム(怪文書)がたまに届くくらいだな」

「それに関しては本当に申し訳ない……はともかく、姉さん変なルビ振らないの」

 

 うん、まあ。学園の(アイドル)ゆえに変装したりする訳にはいかないし、このクレームが来てしまうのは仕方ない。

 

(……はあ。あー、恥ずい……)

 

 普段は顔に出さないようにしてるけど、みんなに可愛い可愛い言われて嬉しいやら恥ずかしいやらで、素面を保つのが辛い。

 

 でまあ。報告会でその事を思い起こしてしまい、つい思い出し照れ顔を晒してしまう。そんな僕の表情を見た生徒会メンバーから、

 

「「会長カワイイ!!」」

「ん……(こくり)」

「優輝だからな」

「ふふっ捗ります」

 

という声が挙がるのが恒例になってしまった。恥ずい。

 

「ありがと……こほん。それより、他の意見は?」

 

 振ってみたけど、誰からも発言はない。

 

「会長、もうなさそうだし、お茶にしよ〜?」

「……そうですね。では、今回はこれにて終了です」

 

 僕が報告会終了を告げると、ただでさえ緩い雰囲気だったのがさらに緩み、早速既に並べられていたお菓子とお茶に手を伸ばす面々。みんな毎回早く終わらないかソワソワしてるし、長引かせるのは気が引けるんだよね。

 

 ちなみに、お茶は長瀞先輩がほうじ茶を、お菓子は僕と女部田先輩の手作りが二品だ。

 今日は、僕がバニラと抹茶の市松模様アイスボックスクッキー。女部田先輩は、鮮やかな緑と白のマーブル模様の生地に緑色のホイップクリームを巻いた、抹茶ロールケーキ。抹茶で被っちゃったけど、どっちも美味しいから良いよね。

 

 

 

 

 しばらくティータイムを楽しみ、だいたい20分後。

 

「さて。そろそろ始めましょうか、女部田先輩」

「うー、もう? あ、あと30分くらい……」

 

 僕が切り出すと、先輩は苦虫を噛み潰したような顔になりそう返す。

 

「こら、駄目ですよ、美少女がそんな顔しちゃ」

「……すっぴんで超絶美少女な会長に言われてもね」

「はい、教科書の付箋の所からですよ、開いて下さいね」

「はーい……」

 

 しぶしぶ「数学」と書かれた冊子を取り出す先輩。

 

「0<θ<π/4……ねぇ、これってほんとに現代で使われてる文字列なの……?」

「そうですよ。授業で先生の説明をちゃんと聞いてれば、おおよそのどう公式を使えば良いかわかると思うんですけど」

「うぐ……授業中もアイ活動のことばっか考えててすんません……」

「……単位円を使って……視覚的に、とらえるようにすると……」

「んー? つまりこの公式は……サインでコサカイがタンジュンな…… あ゛〜意味わかっんない! 数学なんて大っ嫌いよ!」

 

 最近は、報告会ティータイム後の生徒会室で、女部田先輩へ勉強を教えるようになっていた。主に僕と月影ちゃんが。僕ら一年生なんだけどなあ……まあ、長瀞先輩から教科書を借りて読み込んだから、一応簡単に教えられる程度には理解したけど。

 

 武を尊ぶ栄陽学園だけど、知を軽んじているわけではないので、通常の学科の成績も3年進級に多少影響がある。

 ただ、やはりあくまで武を尊ぶので、学年末考査で戦闘座学を除く全座学赤点で追試まで赤点でも、クラスAレベルの戦闘能力さえ示せれば、進級は可能なのだ、けど。

 女部田先輩はクラスBで、戦闘力も座学も中の中。つまり、前にも言ってたけど、今のままだと進級ギリギリアウトらしい。

 

(せっかく仲良くなれたのに、3月でお別れは嫌だからね。先輩の歌、もっと聞いていたいし)

 

 ので、女部田先輩とは週末放課後に勉強会、それに朝の鍛錬もよく一緒するようになった。朝鍛錬は、僕時々たまに参加しない姉さんが主に見てあげていた。

 

 ちなみに、姉さんによる女部田先輩の戦闘力評価だけど。

 

「弱い。駄目だな」

「あははっ直球過ぎる評価に逆に笑えてくるわー」

 

 即悪い方に太鼓判を押す程度は、才能がないらしい。まあ、それでも栄陽学園本校で中の中なので、分校でならトップクラスではあるんだけどね。

 

「保有霊力自体は、クラスAレベルらしいんだけどね。やっぱり戦闘のセンスがねー……世知辛いわ」

「うむ、大天才の私にはわからない悩みだな。だがまあ、進級は出来るだろう」

「おぉう、まさかの良判定。飴と鞭が上手いわね」

「事実を述べたまでだ」

「姉さん悪い冗談は言っても、嘘は言いませんから。おめでとうございます、先輩!(にこり)」

「うっ……! ……いやーやっぱ優輝さんの笑顔、破壊力パないわね……」

「優輝は最強美少女妹だからな」

 

 笑顔で賛辞を贈ると、先輩が胸を押さえて苦笑いを浮かべ、姉さんがいつも通り僕を褒め称える……

 

(妹、じゃないってば、もう……はあ……)

 

……一応、心の中でツッコミを入れておく。

 

「……うん、今夜使おう」

 

 女部田先輩が、何やら意味深な呟きをした。

 

「……どういう意味です?」

「ウェ!? いやなんでもないっ! なんでもないわよ!?」

 

 思わず聞き返してしまうと、先輩は異様に顔を真っ赤にして何かを否定する。なんだろ?

 

「優輝のスーパー聴力では、今の呟きは普通に聞こえているからな。優輝が視界に入っているなら、不用意に呟かない方が良いぞ」

「……うん、今後は十分気をつけるわ、うん」

「えー、2人で自己完結しないで教えてよ。何を何に使うの?」

「あなたわかってて言ってない!?」

「え?」

「え?」

 

 何故か疑問符が被った。なんだろ、ナニをナニに使うって発言で、先輩のこの発言は…………あー、ナニね……そういう事か。

 

 長瀞先輩からの女部田先輩情報を思い出す。あんまり思い出したくはなかったけど……

 

 

「マッキーはね〜。精力強い上に両刀(バイ)気があるから〜。あんまり誘惑しないであげてね〜」

「唐突に友人の性癖暴露しないであげて下さい、反応に困ります」

 

 

 ……つまり。女部田先輩的に、僕の笑顔は「使える」らしい……正直気付きたくなかった。恥ずい、いや気まずい。

 

「だから不用意に発言するなと。優輝の頭脳はスペシャルだ」

「え?」

「簡単に言おう。お前のオカズが優輝にバレたぞ」

「えーと……こういう時なんて言えば良いのか……光栄です、とか、かな……あはは……」

「え? ウェ!?」

 

 お互い顔を真っ赤にして俯く。朝から何してんだろ、僕ら……

 

 ……とまあ、こんな感じに、生徒会の先輩達と親睦を深めていった。

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