優輝の日記 〜国立栄陽学園での日常〜   作:繭浮

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小話集その2

・癒円さんと姉さんは仲良し?

 

「そういえば、少々気になっていたのですが。瑞希さんと癒円さんは、同じクラスDでしたよね」

「ん? ……誰だ?」

「低身長で、ヒロさんと同じくらい胸部が豊かな方、で分かりますか?」

「ああ、ロリ巨乳の事か」

 

 つい最近癒円さんの話したのに、もう名前忘れてる……

 

「その覚え方はどうかと……まぁ、その方です。癒円さんと瑞希さんは、どうやって仲良くなられたのですか? お二人が仲良くなれそうなきっかけを、どうにも想像出来なかったもので」

「ふむ……私の計画に役立ちそうだったから取り込もうとした、のだったかな」

「あぁ、そういう流れでしたか……」

「ロリ巨乳……ああ思い出した、確か略してロキと呼んでいたな。ヤツと親交をそこそこ深めるようになったきっかけの話なら、優輝の方が覚えているだろう。優輝、話は任せた」

「いやまあ覚えてるけどさ……近寄って行った本人が忘れちゃうのはどうなのさ。せっかく慕ってくれてるのに、癒円さん可哀想じゃない」

「私の期待に応えられなかった時点で、ロキへの興味はかなり減ったからな。別に邪険に扱うようになった訳でもなし、良いではないか」

「もう、しょうがないなあ……とりあえず話すね」

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 親友、とまではいかないけれど、それなりに会話が弾む、友人と言っても過言ではない人は複数人いる。

 

 Dクラス内では、席が近かった山本さんと、もう1人。バストが豊満(同じ悩み持ち)だからかヒロと仲の良い、巻 癒円さんだ。

 学年が二年生になってからは、真貴さんと混同しないように、下の名前で呼ばせて貰っているのだけど……まあそれはそれとして。

 

 癒円さんと友達関係になったのは、ヒロを通してではない。なんと、姉さんを通してだった。さらになんと、姉さんの方から癒円さんに接触を計ったらしい。

 

 その事を姉さんから教えられたのは、とある日の学食、昼食後。二年生になってから、教室で姉さんと癒円さんがよく会話するようになったので、何を企んでいるのか尋ねた事がきっかけだった。

 

「調査の結果、ロキは治癒術の天才だと判明したからな。是非懇意にしたいと思ったのだ」

「へえ……癒円さん本人も攻性術より得意だとは言ってたけど、姉さんに天才判定されるまでとは凄いね。それで、本心は?」

「私の計画の一部(パーツ)に使えるかと思ってだな」

「だよね」

 

 姉さんが、僕のためか私欲以外で、自ら進んで誰かと仲良くなろうとするはずないよね。

 

「師匠! もしかして、今ウチの話してなかったっすか?」

「うむ、まあそうだな」

 

ぴょこん

ゆさんっ

 

「……師匠?」

 

 僕らの会話内容が自身の事だと気付いた癒円さんが、スキップするような足取りで近付いてきた……跳ねる度にゆさっと動くそれに一瞬目を取られ、一拍反応が遅れた。

 

 それはそれとして。何故癒円さんは、姉さんを師匠呼びしているのだろうか。一年生の頃は、普通に「瑞希さん」呼びだったような。

 

「師匠は師匠だから、師匠っす!」

「姉さん、翻訳お願い」

「ふむ、そうだな。その事も含めて話したい事がある。出来れば、この三人だけで話したい内容だ。部室へ行こう」

「はいっす、どこへでも付いていくっすよー!」

 

 癒円さん同級生だけど、なんか言動が体育会系後輩っぽい。可愛い。

 

 

 

 

 という訳で、部室へ移動。先客の部員が何人かいたので、今度手料理をご馳走すると約束して快く退出していただき、僕と姉さん、癒円さんの三人だけになる。誰かが入って来たり聞き耳を立てたりしないように、静海に部室前での見張りを命令する徹底ぶりだ。

 

 ここまで内密にするとなると。

 

「やっぱり、国家機密?」

「一応そうなる。ロキに納得してもらい存分に治癒術を使わせるために、静海の事を説明したからな」

「いや〜、最初にメイドさん――シズさんが精霊剣だって聞いた時は、めっちゃ驚いたっす」

「静海に、治癒術……もしかして姉さん、まだ血を……」

「優輝に怒られたからな、流石に致死量ギリギリではない。が、まだまだ静海に必要だからな」

「おぉ、流石っすね優輝さん。僅かな情報からの超速理解っぷり、師匠と双子なだけあるっす!」

 

 静海に自分の血を与える、つまりは自傷しなければならないから、天才的な治癒術の使い手である癒円さんを側に置いて、いつでもどこでも高レベルの治癒術を受けられるようにしたい、と考えたのだろう。

 

 まあ、他にも意図がありそうだけど。パーツ扱いだし……それはともかく。

 あからさまに便利道具扱いされてるにしては、癒円さんの好感度が妙に高いのがやっぱり気になる。

 

「それで? どうやって癒円さんをタラシ込んだの?」

「なに、ただ単に、ロキ本人も自覚していない能力の高さを教え説き、自覚させただけだ」

「はいっす、師匠の話にそれはもうめっちゃ感激したんっす!!」

 

 姉さんと癒円さんの話をまとめると、だいたいこんな事があったらしい。

 

 

       ――――――――――

 

 

 私の計画に必要なピースは、大まかに言うと三つ。私の血液を使用して造った神話級精霊剣、超強力な補助術士、超強力な治癒術士だ。

 

 正確に言えば、ピースはもう一つ必要なのだが……まあ、私の予想通りに事が進めば、ついでで手に入るだろうから今は気にしない。

 

 精霊神剣と補助術士の目処は立った。故に最後の一つ、治癒術士の仕込みの開始だ。

 

 調査は完了済み。クラスメイトだったのは灯台下暗しといった気分だが、まあ良い。

 

 という訳で、とある日の放課後、授業終了直後。目的の人物は、同じクラス、低身長、巨乳……

 

「お前か」

「うん? なんすか瑞希さん」

 

 クラス内に視線を走らせ、目的の人物を見つけて声をかける。名前はなんだったか……身長だけでなく、顔も幼い系だな。つまりはロリ巨乳。

 

「名前が思い出せなくてロリ巨乳だから、略してロキと呼ばせて貰うぞ」

「いきなり失礼っすね!? ウチは巻 癒円っす!」

「ロキ、お前に話がある、来てくれ」

「話を聞いてくれないっす……まぁいいっすけど……」

 

 

 了承を得たので、普段人気ひとけのない部屋、ライブ時に控え室として使用している部屋に連れて行き、勧誘を始める。

 

「単刀直入に言おう。ロキ、お前の治癒術の腕は素晴らしい」

「え? それはどうも、ありがとうっす」

「潜在能力的に言えば、天才的と言えよう。すでに国内でも上位と言えるが、その能力を最大に引き出せるようになった暁には、歴史に名を残す程の治癒術士になれると、世紀の大天才である私が保証しよう」

「えっ……マジで言ってるっすか? た、確かに治癒術に自信ありっすけど、そこまで褒められる程度のものでは……」

 

 言葉は否定的だが表情は満更でもなさそうだな、チョロい。もう一押しニ押しすれば落ちるな。

 

「この学園では、いかに敵を打ち倒すかを重視する傾向にある。ゆえに、公然と治癒術の方が得意だと明かす者は少ない。それを知った上で治癒術の威力向上に努めるお前を、私は高く評価している」

「い、いやぁ、そんなそんな……てへへぇ」

「治癒術の威力向上は、傷を治す事。そのために、自傷もしているな?」

「そりゃまぁ……治癒術の自主練するなら、それが1番手っ取り早いっすからね。痛いのはイヤっすけど、そのためだけに他の人に傷付いて貰うなんて出来ないっすから」

「その意思こそが重要だ。他人が傷付くのを嫌うその精神。潜在能力は元より、最高の治癒術士になるにはそれが不可欠なのだと私は思う」

 

 その思想、優輝が好きそうだからな。そういった意味でも、私はこいつに目をつけた。

 

「そっそんなに褒めないで下さいっすよ〜! なんかむず痒いっす〜!」

 

 赤くした顔の前で腕をブンブン振るうロキ。もう煽ては十分か。そろそろ本題を告げよう。

 

「私はお前ならば、治癒術の極地まで辿り着けるのではないかと踏んでいる」

「治癒術の、極地……死者蘇生レベルのを、ウチが……?」

 

 私の台詞に、唖然とした顔をするロキ……だがその目には、期待の煌めきを宿していた。

 

「その域に達するまでの道は、私が整えよう。さあ」

 

 そう言って、ロキに手を差し伸べる。

 

「…………」

 

 私の手を見ながら、しばらく考え込むように黙り込む。突然の話に、まだ迷っている様子だな。ならば、手を取り易くしてやろう。

 

「ふむ、論より証拠だな。私の提案に真実味を持たせよう。今度の光曜日は暇か?」

「へ? そうっすね、特別用事はないっす」

「ならば行こうか」

「……どこへっすか?」

「首都にある、とある研究施設だ」

 

 

 

 

 約束の光曜日、精霊剣研究施設を案内しつつ、私が立ち上げた神話(マイソロジー)計画(プロジェクト)や静海の話、静海の強化に私の血液を使用している事を中心に、私が今現在関わっている計画ついて説明し、是非ロキも治癒術士として参加して欲しい旨を伝えた結果。

 

「ウチ、頑張るっす! ご指導ご鞭撻、よろしくお願いするっす!」

「うむ、期待している」

 

 目をキラキラ輝かせ、私の手を取った。

 

「瑞希さん! これからは師匠って呼んでいいっすか!?」

 

 

       ――――――――――

 

 

「――とまあこういう経緯だ。妙な呼び名でもなし、許可したのだが」

「いやいや、妙だからね?」

「そうか?」

「そうっすかね?」

「普通は同級生を師匠呼びしないから。というか、結局何で師匠なの? 人生の師匠(メンター)的な意味?」

「ずばりその通りっす! えへへぇ、流石優輝さんっす!」

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

「はー……なんと言いますか……」

 

 2人の親交のきっかけを話し終え、蒼月さんがため息と共に、一言。

 

「やはり双子は似ますわね」

「……どういう意味?」

「2人とも天然ジゴロって事だよ」

「優輝はともかく、私もか?」

「いやいや、僕だってジゴロでもタラシでもないからね?」

「自覚ない時点で2人とも天然だってばよ。ロールさんも癒円さんも、その話の時点で2人にゾッコンラブじゃん」

「せいぜいライクだろう」

「姉さんはともかく、癒円さんと僕は普通の友達だと思うんだけど」

「だから天然、と言われてしまうのですわ」

「だよねぇ」

「えー」「むぅ」

 

 僕と姉さんの不満の声が同時に発せられた。解せない。

 

 

 

 

・キングの挑戦。

 

「そういやさぁ。王様気取りで私の優輝さんを嫁呼ばわりしてたふざけたヤツ」

「いやいや、エリスのじゃないからね?」

「優輝さんのイケズ。まぁそれはともかく。アイツ、これまでの思い出話の中でついで程度にしか出てこないじゃん?」

「うんまあ……彼とのイベントは、あんまり思い出したくない部分が多めだからね……」

「やっぱ苦手な相手だから?」

「だいたいそんなとこ。なに、飯屋峰君の話聞きたいの?」

「優輝さんに袖にされ続けただろう無様な姿に、ちょっとだけ興味があるんよねー」

 

 そう言って、にししと笑うエリス。意地悪いなあ。

 

「まぁ、優輝さんを不快にしてまで言わせたくはないから。ほんのちょっとの好奇心だよ」

「んー……」

 

 まあ確かに、入学当初に始まり二年生中も定期的に続いたあの熱烈アタックの内容、ほとんど話してないし。あまりに話に出さないから、エリスが気になるのも最もかな。

 

「せっかくだし、飯屋峰君の挑戦の日々、要約したものだけど話すね」

「おー、なになに?」

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

 それは一年生の、武闘祭明けのある日の朝。

 

「我が第一王妃たる水城 優輝よ」

「王妃じゃないから」

「お前に決闘を申し込む!」

「へ?」

 

 いきなりの宣言に戸惑う。

 

「なんで決闘?」

「うむ。我は運悪く敗退してしまい、優輝と戦えなかったからな」

 

 あくまで運のせいにする所が、なんとも彼らしい自意識過剰さだ。誰がどうみても蒼月さんの圧勝だったのにね。

 

 まあそれはともかく。

 

「僕に決闘を申し込むって事は、初戦敗退したせいで得られなかった名声を、学年上位4名の1人の僕に勝つ事で手にしたい。そんなところ?」

「うむ、それが近い。だが1番の理由は、嫁より弱いと思われるのが気に食わんからだな」

「嫁じゃないから。蒼月さんに負けたのに僕に挑むのは、僕がクラスメイトだから?」

「お前が第一王妃だからだな」

「ならないからね?」

 

 相変わらず嫁だ王妃だとしつこいなあ。めんどい、けど、沈黙したら認めたみたいで癪だし、面倒でも否定し続けないとなんだけど。

 

「とりあえず、これから寧花祭の準備で忙しくなるから、今は勘弁かな。という訳で、お断りするよ」

「む、そうか。ならば致し方あるまい」

 

 おや……寧花祭の話を出したら以外に大人しく引いてくれた。まあ食い下がられたら面倒だったし、いっか。

 

 

 

 

 その後しばらく、飯屋峰君が言い寄ってくる頻度が減ったのだけど。

 

「お前の繁忙期も過ぎて余裕が出てきた事だろう。さぁ、決闘だ」

「流石に覚えてたかー」

 

 僕が生徒会長になって引き継ぎやら何やらが終わった頃、再び挑まれた。

 

(俺様系だけど、思ったより相手を気遣えるんだなあ。忙しくなくなるまで待てた律儀さは、嫌いじゃないかな)

 

 んー……その気概には好感が持てるから、条件付きで受けてあげようか。なんだかんだクラスSレベルの実力はあるし、鍛錬の相手としては悪くないしね。

 

「はあ……仕方ないなあ。とりあえず決闘するなら、賭けるモノとルールを明確化する所からね」

「おぉ、ついに受けるか! はははっまったくこやつめ、我を弄ぶのが上手いな!」

「人聞きの悪い言い方しないでよ。僕が受ける側だから、僕が決めるけど良いよね?」

「うむ、その権利はあるな」

 

 さて……とりあえず明確にしたいのは、飯屋峰君が何を欲しているか、かな。

 

「飯屋峰君が欲しいモノは、僕に勝つ事で得られる学園での名声。それ以外に求めるものはある?」

「お前からの愛の囁きだな」

「愛してないから無理かな」

「はははっ相変わらず照れ屋だな、愛いやつめ」

 

 あー……軽く頭痛が。早まったかなー……

 

「……他には?」

「ふむ。そもそも我がこの決闘で求めるものは、勝利する事ではない。つまりはお前に勝てなくとも、接戦に持ち込めればその時点で我の目的は達成したと言える」

(お……これは予想外。勝利は重要じゃない?)

 

 僕が不思議に思っていると、続けてこう言われる。

 

「お前と肩を並べられる実力を周囲に認めさせられれば、それで良い。我が王妃に求めるものは、庇護される弱さではなく、我と共に歩める強さだ。そして、お前は十分に強い」

「……そっか、ありがと。王妃にはならないけどね」

 

 とはいえ正直、ちょっと見直した。なるほど、その芯の通った精神性、ファンが出来るのも納得だ。僕が普通の女の子だったら、ちょっとはグラっと来たかもしれない。

 

(……まあ僕はそもそも男子と恋仲になろうとは思えないし、それ以前に好きになれない部分は相変わらずだから、結局彼に対する好感度はまだまだマイナスなんだけど。とにかく勝手に嫁扱いするの、やめて欲しいなあ……)

 

 それはそれとして。誠実に心の内を明かしてくれたようだし、誠実には誠実を。相手の流儀に合わせよう。

 

「それじゃあ……決闘方法は、お互い模擬刀の二刀流。制限時間は3分間で、僕に一本入れられたら飯屋峰君の勝ち、捌き切れたら僕の勝ち。君が勝ったら、僕は君の強さと魅力を大々的に宣伝してあげる。僕が勝ったら……特にないかな」

 

 どうせ「嫁呼ばわりはやめて」と誓わせても、言い方や手段を変えるだけでアプローチはやめないだろうし。

 

「随分と我に有利な内容だな。我を侮っている、という訳でもなさそうだが……お前は得意武器でなくとも良いのか?」

「生徒会長選考会の僕の演舞、見たでしょ? 最終的に大剣をメインに選ぶまで、僕はいろんな武器を試した事があるんだよ。そして――二刀流での戦いは、今の君より強い自信があるよ」

「ほう……いいだろう、取り敢えずはそれでいこう」

 

 ……とりあえず、という言い方がちょっと気になる。とはいえ飯屋峰君はすでに教室を出て訓練棟の方へ行ってしまった。まあ、決闘後にでも聞こう。

 

 

 

 

 でまあ。

 

「勝者、水城 優輝さん!」

「ん、ありがとうございました」

 

 危なげなく僕が勝った。ちなみに審判は、公平を期して武闘祭で飯屋峰君を倒した蒼月さんに頼んだ。

 

「はぁ、はぁ……くっ、何故なのだ……何故、一撃も入れられない!?」

 

 彼の剣は、僕に掠りもしなかった。理由は単純。彼は戦闘センスは確かにあるけれど、結局は我流だ。

 

 対して僕は、二刀流での戦い方を知っていた。調べ、知識を積み上げ、実践していた。

 詰まる所、技術力の違いだ……というか僕、メインを大剣にするか二刀流にするかで迷うくらい二刀流好きだったし。昔取った杵柄だ、技術の伴っていない我流の二刀流に負ける気はしない。

 

「まだだ……いずれ、お前に打ち込んでみせる! それまで待っていたまえ! 我が嫁、水城 優輝!」

 

 そう捨て台詞を残して足早に訓練棟を出て行く飯屋峰君。模擬刀を持ったまま出て行ったから、これから素振りするつもりなのだろう。

 

「まあ、一回で諦めたりなんかしないよね、やっぱり……あと嫁じゃないから」

「モテモテですわね、優輝さん?」

「好意を向けてくれる事自体は、嬉しいんだけどね……」

 

 茶化してくる蒼月さんに適当に返しながら、飯屋峰君の出て行った扉を見つめる。彼の僕への挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

       ――――――――――

 

 

 

 

「……とまあそう言う訳で。その最初の決闘の後は、週一で挑まれる日々が続いたよ。長期休み中以外は、だけど」

「ふーん……それで? 一本取られた事はあるのん?」

「掠らされた事はあるけど、最後まで一本は取られなかったよ」

「最後って?」

「二年生の終業式の週だね」

「ふみゅふみゅ、一年以上かー。何度でも諦めず挑戦し続けた気概だけは、評価出来るかなぁ」

「そうだね、それは僕も同意見」

「だが優輝さんを嫁呼ばわりし続けたのは許さねぇ」

「そこもまあ概ね同意見」

「うむ、己の器を知れ、だな」

「ですわね」

「えーと……まあ、今となっては良い思い出……いややっぱり良くはないかなあ」

 

 毎回決闘を申し込まれる時と終了後に、大声で告白やら嫁宣言されたのは、極めて迷惑だったのを思い出す。

 

 うん。やっぱり今でも、彼の事は好きにはなれそうにない。

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