タキオンに騙されて古代ローマにタイムスリップしたら、ローマ皇帝シンボリルドルフの担当になっていた件について   作:砂糖と蜂蜜の牛乳割り

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へぇ、古代ローマにも競馬ってあったんだぁ〜
そういえば、シンボリルドルフって、神聖ローマ帝国の皇帝の名前からだったよな……せや、ルドトレをタイムスリップさせて担当組ませよ!

ノリと勢いです、続いたら奇跡ですわ


プロローグ ルドルフトレーナーは古代ローマに飛ばされる

 

 

 トレセン学園生徒会室。

 そこで僕はようやく山積みにあった書類仕事を終え、ぐっと伸びをした。

 

「やぁ〜っと、終わった〜!」

 

「すまないね、トレーナー君。本来であれば、私たち生徒会がすべき仕事を手伝わせてしまって……」

 

 隣を見れば鹿毛のウマ娘——シンボリルドルフが申し訳なさそうに耳を垂れさせていた。

 生徒会長として忙しい日々を送っている彼女に比べればこれぐらい、全然気にすることないのに。

 

「ううん、僕がやりたかっただけだから。これで少しでもルドルフの力になれてたのなら良いな」

 

「……ありがとう、トレーナー君。私は本当に良いトレーナーに恵まれたよ」

 

 そう言い、すこし嬉しそうにルドルフは目を細める。

 その表情を見たいから、僕はいくらでも頑張れるんだ。

 

「あ、そうだ、今日のトレーニングはどうする、ルドルフ? 忙しいようなら、今日はお休みして翌日にするという手もあるけど」

 

「今日ばかりはそうしてもらえると助かるよ。エアグルーヴ、ブライアンが準備に向かった、生徒会と先生方との合同会議がもうすぐ始まるからね」

 

「となると……もう僕の手伝えることはない、か」

 

「トレーナー君もこの機会に休んではどうだろうか。見たところ、ずいぶん疲労が溜まっているようだ」

 

「うーん、それじゃあお言葉に甘えて休もうかな」

 

 言われてみれば、ここのところあまり羽を伸ばす機会が少なかったように思う。僕はそれでも全然構わないんだけども。

 

「さて、私は会議に向かうとするよ。また明日芝コースで会おう、トレーナー君」

 

 ルドルフは席から立ち上がり、生徒会室から出る前にこちらに軽く手を振る。その口に穏やかな微笑みを浮かべて。

 だから、僕も頬を緩めて手を振りかえした。

 

「うん、また明日」

 

 ルドルフが生徒会室を出たあと、少しして僕も部屋を出た。

 

 ♦︎

 

 

 特に予定もなく廊下をひた歩く。

 

 このあとはルドルフとのトレーニングを予定していたから、一気に手持ち無沙汰になってしまった。

 この時間をどうやって有効に使うべきか……。

 いやいや、せっかくの休みなんだから気を抜いていこう。

 

 

 

 おっと、そうだそうだ。忘れていた。

 

 

 

 やあみんな! 紹介が遅れたね!

 僕はルドルフの担当トレーナーさ!

 ん? 僕の自己紹介はどうでもいい?

 じゃあ、名前まで言わなくていっか。

 ルドトレとでも呼んでよ!

 

 ところで今思い出したんだけども、今日はアグネスタキオンに実験室へ来いと言われていたんだった。

 

 そうして度々こき使われているんだども、まあ、今日も実験に付き合わされるといったところだろうね。なぜ僕なのかは不明だし、拒否権もないらしい。

 

 ちなみに、彼女は僕の担当ではない。

 そう、担当じゃないんだ。

 大事なことなので、二回言いました。

 

「はぁ、行きたくないなぁ……」

 

 溜息を吐いているうちに実験室に着く。

 そのままノックなどせずに、無遠慮にスライド式ドアをガラッと開ける。

 

 すると、まず目に入るのは耳の他にアホ毛を頭のテッペンに生やし、嬉しそうに尻尾をブンブンと揺らす少女——否、ウマ娘だ。

 

 そう、彼女こそが、このトレセン学園において、数々の実験を行い、度々、問題を起こしているアグネスタキオン。

 

 タキオンは、自身のトレーナーに怪しい薬を毎日、実験と称して飲ませ、体を眩しくカラフルに光らせたり。

 彼女の友人であるマンハッタンカフェにも実験を繰り返していたり。

 と、その実験に対する情熱は認めるが、周りの目を気にしない所は直して欲しいと思う。

 

 ドアを開けたことで、僕の存在に気づいたタキオンはこちらに振り返る。その顔にはニチャアとニタァの間くらいの粘つくような悪い笑顔を浮かべていた。マッドサイエンティストなのかな?

 

「やあやあ、トレーナー君。イイ所にきてくれたねぇ〜、ちょうど君に用があったんだよ」

 

「ちょうども何も、君が僕を呼んだんでしょ?」

 

「おっと、そうだったね。私としたことが、実験に夢中で忘れていたよ」

 

「それで、用って何?」

 

「そうだね、時間は有限。早速本題に入ろうか」

 

 タキオンはそう言うと、実験室の奥にある靴を取り出した。

 

「この靴を君に履いてもらって、芝コースを走って欲しいんだ」

 

 その靴をスッと渡される。靴は持った感じは、金属が仕込まれているのか重く、手触りも非常に硬い。よく耳を澄ますと、キュイイーンって機械音が聞こえるし。

 

「なんか、走り辛そうな靴だけど、今までの実験よりかはずっとマシだね」

 

「辛辣だなぁ〜、私はずっとマトモな実験しかしていないというのに」

 

 マトモ? あれが? 嘘でしょ、自覚すら無いなんてありえない……。

 

「あっ、そうそう。また忘れる所だったよ。走る前にこのコンニャクを食べて、このリュックを背負ってくれたまえ」

 

「まあ、良いけど。このコンニャクって身体能力向上に必要なものだったり? それにこのリュックは?」

 

「コンニャクはそんなところさ。リュックは計測と観察に必要なものなんだ、必ず〈何があっても〉持っていてくれたまえよ!」

 

 僕にズイッ!と近づき、そう念を押しするタキオン。あ、圧が凄い。

 

「わ、わかったよ。じゃあ、コンニャクいただきます」

 

 手のひらサイズぐらいのコンニャクを少しずつ齧って食べる。

 味は思っていたのと違って、ハチミー味だった。変な所で気をつかうなぁ……。

 リュックも背負ってっと。

 

「さあ、早く芝コースへ行くんだ。さあさあ!」

 

 実験が待ち遠しいのか、興奮気味に顔をほんのり赤くし、耳や尻尾を振って、僕の背中を押して、急かしてくるタキオン。

 

「わかったから、押さないでくれー!」

 

 いや、もう押すどころか。引き摺られてる?

 

「うわあああぁぁぁ!!!」

 

 手を掴まれ、ウマ娘の膂力で引っ張られる僕はその勢いに呑まれ、悲痛な叫びを上げながら芝コースまで引き摺られていった。

 

 

 ♦︎

 

 

 ようやく、トレセン学園引き回しの刑が終わり、芝コースに着いたタキオンと所々服が裂けてボロボロな僕。

 

 僕、よく無事だったな……。

 本当に、もうこういうのはやめて欲しい。

 

「ほら、はーやーく〜! はーやーく〜! 走ってくれよ〜!」

 すぐに走ってくれと可愛く、駄々っ子のようにお願いしてくるタキオンの姿が今だけは悪魔に見える。

 そんなに、この実験は彼女にとって重大なのか。

 

「わかった走るから、その観察とかはしっかりしててね! やり直しなんて嫌だよ!」

 

「そこは安心してくれ、やり直しなんてあり得ないさ。それと左周りで走っておくれよ」

 

 先程から、やけに含みのある言い方が気になるが、気にせずに言われた通りに左周りに走ることにした。

 

 走りだしは金属を使っている靴だから、当然遅い。

 遅いけども、徐々に加速しているのが分かる。

 僕が加速させてるんじゃない。

 靴が勝手に速くさせてるんだ。

 

「ねぇ、タキオン。この靴、段々と速くなる靴なの?」

 

「……そろそろ種明かしといこうじゃないか」

 

 ボソッと聞こえたタキオンの言葉に僕は冷や汗をかく。

 非常に嫌な予感がする。こういう時は決まって悪いことが起きるって、本能が訴えかけてくるんだ。

 

 そうして、タキオンは懐からメガホンを取り出して、向こう正面を走る僕にも聞こえるように言う。

 

「その靴はね、タイムマシンなんだ」

 

「はあっ……!? タ、タイムマシンだって!?」

 

 あの架空の未来道具の!?

 

「ああ、そうさ。あのタイムマシンだよ。タイムマシンを靴型にしたのさ。走った距離一メートルにつき、一年分、右周りに走れば未来へ、左周りに走れば過去に行けるようにね」

 

 それじゃあ左回りの僕は過去に行くってこと!?

 しかも既に、1000メートルは走ってしまっている!

 

「と、止めて! お願い!」

 

「実験には犠牲がつきものだ。諦めたまえよ」

 

「そ、そんな……じゃあ、僕はいつの何処に飛ばされるんだ……!」

 

「確か2000メートルほどで過去に行くように調整したから、2000年前のローマ、つまり古代ローマだね」

 

「なんで古代ローマなの!?」

 

「その時代のそこで、ウマ娘がレースをしていたと書かれた文献をたまたま見つけてね。昔のウマ娘の走りのデータがとれたら、ウマ娘の限界を超える速さという夢を叶える材料になると思ったのさ、これで納得してくれるかい?」

 

「納得しないよォーー!」

 

「おっと、そろそろ2000メートル走り切るよトレーナー君」

 

 徐々に加速し続けたお陰で、僕の速さはウマ娘の子達よりもずっと速くなっていた。2000メートルのラインまであと少し。

 

 

「大丈夫、古代ローマで3年も過ごせば戻れるように設定してあるから」

 

「それって言い換えれば、三年しないと戻ってこれないってことでしょ!?」

 

「データは取ってくるんだよ〜、トレーナー君。取ってこないと、また三年間古代ローマ行ってもらうからね〜」

 

「タキオーーーーン!!!」

 

 恨みを含んだ断末魔を上げたのを最後に、僕は意識を失った。

 脳裏に浮かんだのは鹿毛の少女。

 

 ルド、ルフ……。

 

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