タキオンに騙されて古代ローマにタイムスリップしたら、ローマ皇帝シンボリルドルフの担当になっていた件について   作:砂糖と蜂蜜の牛乳割り

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ルドトレは、ルドルフの夢の圧倒的な賛同者。

心情とか色々書いてたら長くなっちゃった☆ きゃぴ☆


テイオーとのお話し合い、ルドトレはその『足』に気づく

 

 

 

 『トウカイテイオー』。

 

 

 現役三年間を競うトゥインクルシリーズにおいて、皐月賞、日本ダービー、菊花賞のうち二冠を達成し、三度の骨折にもめげずに果敢に挑み続けたウマ娘。

 なによりもルドルフを目標として掲げていた彼女のことを、僕はよく知っている。

 

 

 そしてそんな彼女が今、目の前にいる。

 

 この古代ローマの地下牢で……!

 

 

 

「あれ? なんでボクの名前を知って……あっ、もしかしてキミってボクのファン〜? まだデビュー前なのによく知ってるね〜」

 

 

 鉄格子の外で、かんしん感心と頷くテイオー。

 その言葉の中で、聞き逃さない単語が混ざっていた。

 

 で、デビュー前? テイオーは何を言っているんだ。

 

 彼女はもうトゥインクルシリーズを駆け抜け、今はドリームトロフィーリーグで活躍していたはずだ。

 

 それが、デビュー前なんてありえない。

 

 

 

「なんでここにテイオーが……同じくタイムスリップしてきたのか、いやそもそも君は本当にテイオーなのか……?」

 

 

「たいむすりっぷ? よくわからないけど、そうだよ! ワガハイこそが『最強無敵のテイオー様』ぞよ! いつかコウテーみたいにバシバシとレースに勝って、歓声をいっぱい浴びるウマ娘になるんだ♪」

 

 フンスと偉そうに胸を張るテイオーの姿は、記憶にある姿と全くもって同じ。

 

 嘘をついているようにも思えない。

 本当に彼女はテイオーなのだろう。

 

 でも、だとしたらタイムスリップもせずに、同一人物が過去の世界に居るなんてあり得るのか?

 

 いや、完全に一致するわけじゃないか。

 どうやら今のテイオーの憧れは、ルドルフじゃなくて皇帝なるウマ娘(?)らしいし、微妙に今と違うんだよね……。

 

 

「……うーん」

 

 

「どうしちゃったの? いきなり難しい顔で悩んだりしちゃってさ」

 

「あ、ううん、なんでもないよ」

 

「ふーん」

 

 

 何か訝しげにテイオーはこちらを見つめてくる。

 

 なんなんだろう……。

 

 不思議に思っていると、少しして彼女の方から話を切り出した。

 

 

 

 

「ところでさ、君がコウテーの命を狙ったのって本当?」

 

 

 

 底冷えのする声だと思った。

 高いのに、低い。

 そこには普段の子供っぽいテイオーの姿はない。

 どこまでも深い敵意が滲んでいた。

 

 一瞬にして牢屋内の軽薄な雰囲気は消し飛び、雑談でゲラゲラ笑っていた囚人達は押し黙った。

 

 当然、目の前にいた僕なんかは、恐怖で身動き一つ取れなくなった。

 

 

 そうか、僕がテイオーの憧れである皇帝を暗殺しようとしたと思われてるから、それで……!

 

 

「ち、違う! 皇帝を暗殺しようだなんて微塵も思ってないよ! 訳もわからないうちに、こうして牢屋に入れられてて……! 僕はやってないっ!」

 

 

 震える手をムリヤリ動かし、格子を強く掴んで必死に訴える。

 

 誤解だ! と何度も。

 

 けど、それでも向けられる目は冷ややかなものだった。

 まるで虫を見ているかのような、そんな。

 

 

 

「じゃあ、証明して見せてよ。キミが皇帝の敵じゃないってさ。そうしたら、ここから出してあげる」

 

 

 

 ジャラリ、とその手が掲げたのは一束の鍵。

 おそらくはその中に僕の牢屋を開けるものが混じっているのだろう。

 

 

 

 

 だけど、果たしてそれは証明できるのか……?

 

 

 

 

 

 とりあえず考えられた選択肢は三つある。

 

 一つ、正直に未来から来たことを話して説得する。

 二つ、利用価値を示して、生きながらえる。

 三つ、テイオーからムリヤリ鍵を奪うか……。

 

 

 

 まず、一つ目は無理だ。

 

 未来から来たなんてどうやったら証明できるんだ。

 証拠となるスマホやそれらしき物は未来に置いてきてしまったし、あるのは使い方もわからないタキオンの秘密道具だけ。

 唯一、可能性のあるのは靴型のタイムマシンだけど……この牢屋じゃ狭すぎて使い物にならない。

 

 それと未来の出来事を言い当てるなんてのもあるけど、僕はローマに詳しいわけでもない。完全など素人。

 正直、話にならない。

 

 

 

 

 次に、二つ目。これはまだ可能性がある。

 

 古代ローマ帝国にはない、現代の科学知識が僕の中にはある。科学者ほどではないけど、ルドルフと並び立つためにそれなりには勉強してきたつもりだ。

 それを広めて科学の進歩を促すと誓えば、僕の命は救われるかもしれない。

 

 ……けれど、それをしてしまったら未来への影響が計り知れないものとなる。

 自惚れかもしれない。それでも万が一、科学技術が発展すれば、その分それを利用した戦争だって起きるだろう。

 その戦争に巻き込まれた僕の祖先が死んでしまったら、存在そのものが消えてしまうことになる。

 

 何よりも、ルドルフまでそうなってしまったら?

 僕は自分のことを一生恨むだろう。

 

 不可能ではないけど、絶対にやりたくない。

 

 

 

 

 最後に、三つ目……。

 

 すぅーー、ふうっ……。

 

 

 『ウマ娘に人間が勝てるはずないだろ、良い加減にしろっ!!!』

 

 

 

 というわけで無理ゲーでした。完全に詰みです。

 

 享年25歳かぁ……長いような短いような人生でした。

 

 

 

 

「あれれ、もっと焦ってアレコレ言ってくると思ってたけど、何も言わないんだ。このままだと明日には処刑になっちゃうんだよ? いいの?」

 

「よくない、けど、無理に足掻いて大事な人を傷つけるようなことはしたくない……」

 

「へ〜、大切な人がいるんだ……」

 

 

 

 ボクもだよ、とテイオーは静かに呟いた。

 すると次には、くるりと素早く軽やかに身を翻して、最後とばかりにこちらへ手を振る。

 

 

 

「それじゃ、もう何もないならボクはこれで。また明日ね」

 

「待って、テイオー」

 

 

 

 足早に去ろうとするテイオーに、僕は待ったをかけた。

 まだ行かせるわけにはいかない。

 

 

 

「どうして呼び止めたのさー、もう言い遺すこともないんでしょ?」

 

 

 声を掛けられて、振り返ったテイオーは不思議そうに首を傾げる。

 

 彼女が去ろうとする時見せた、あのキレのある動き……まだこの時代のテイオーがそうなっていないのであれば、トレーナーとしてこれだけは伝えなければならない。

 

 

「うん、僕個人としては言い遺すことはないよ。ただ、テイオーの『足』のことが気がかりで……」

 

 

「『足』? ボクの足がどうしたって……」

 

 

「テイオーはさ、足首が柔らかいよね。バネのように弾性のある足首だから、スイスイ走って行ける。流石だよ」

 

 

「ふふんっ♪ トーゼンだよ、無敵のテイオー様をもっともーっと褒め称えるといいぞよー!」

 

 

 褒められて嬉しそうに飛び跳ねるテイオー。

 

 その喜びに水を差すようで悪いけども。

 でも、と付け加える。

 話はここからだ。

 

 

 

「あまりにも『柔らかすぎる』んだ、君の足は。それだと近い将来、必ずケガをする。ウマ娘にとって命の次に大事な足を骨折するという形で」

 

「……っ!」

 

 

 

 告げると、テイオーは大きく目を見開き、僕を注視する。

 

 

 レースどころか走れなくなってしまう可能性の提示。

 そういった反応になってしまうのも仕方ないのだと思う。

 

 

 未来ではテイオーは復活を遂げていたけど、この時代でテイオーがどうなるかは分からない。それでもう二度と走れなくなるかもしれない。

 

 それに……あんな辛い思いを二度とテイオーにさせてなるものか。

 

 

「キミならトレーニングを積んでいけば、その足柔らかさが無くとも頂点に立てるはずだよ。だから、お願い。どうか無茶だけはしないで」

 

 

「……」

 

 

 

 それはテイオー自身も薄々わかっていたのだろう。

 日々トレーニングをこなすうちに、足首への疲労が蓄積していくのを。

 

 テイオーは真剣な目つきで問うた。

 

 

 

「キミはなんでそんなことをボクに言うの。もうすぐ死んじゃうかもしれないのに、自分のことよりも他人のことを心配してさ」

 

 

 

 あの情景に魅せられたから。

 

 ルドルフが『すべてのウマ娘が幸福な世界を創る』というのなら、僕は。

 

 

 

「『すべてのウマ娘を幸福にする』。彼女とその夢を叶えるためなら、僕は死んだって構わない」

 

 

 それはルドルフのトレーナーになってからの覚悟だった。

 視座を共にし、歩むための。

 

 死ぬその瞬間まで、僕は救えるウマ娘がいれば救いたいんだ。

 

 

 

 

 

「……そっか。うん、やっぱり決めた」

 

 

 

 

 納得したようにウンと一つ頷くと、テイオーは持っていた鍵束の中から一つの鍵を取り出し、閉まっていた鉄格子を開けた。

 

 

「いいよ、出て。それとキミは『無罪』ってことにしとくからねー」

 

「えっ、いいの?」

 

 

 突然のことに、僕は頭が追いつかなくなる。

 牢屋から出してもらえるとは聞いたけど、こんな簡単に死罪人を解き放っていいものなの……?

 

 

「不思議って顔してるねー。でも、キミはボクのサイリョーで自由にしていいってコウテーからは言われてるからね、問題ないよ」

 

 

「いや、普通は裁判とかで無罪にするんじゃ……僕が言うのもなんだけど、そんな頻繁に軽く無罪にしてたら、秩序とかが崩れたり……」

 

 

 僕が心配していると、テイオーはドヤ顔で「チッチッチ」と人差し指を振り、解説し始めた。

 

 

「んっふっふ〜♪ こんなこと滅多にないから安心して。最初ボクは『出してあげる』とは言ったけど、『無罪にする』とは言ってないでしょ?」

 

 

 はっ、た、確かに言ってない……!

 

 もしかして、碌な信頼を得られずに言われるがまま牢屋から出てたら、そのまま死刑台送りにされてた!?

 

 

 ぶるり、と体を震わす僕に、テイオーはイタズラっぽく笑う。

 

 

「ニシシッ、有能なキミがこれから活躍することを期待してるからねー!」

 

 

 古代ローマ時代のテイオーは今よりも強かなウマ娘だったらしい。

 

 

 牢屋内では仰ぐ空もないけど、「なんてこった」と僕は天井を見上げた。

 

 






 シリーズ色々と書きすぎて、手が回らなくなってるっすわ…
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