ブライトラップ 〜ヤンデレブライトにゆっくり溶かされていく〜 作:砂糖と蜂蜜の牛乳割り
物語の進行上、エピローグで始まりますが、これで終わりじゃないですよ!(汗
まだまだヤンデレは続くよどこまでも。
——ポチャンッ、ポチャンッ。
……どこからか雫の滴る音が聞こえてくる。
ゆっくりと静かで、けれど強かに。
——ポチャンッ、ポチャンッ。
……まただ。
ふと気になり、音のした方へ目を向けてみる。
するとやはり、水滴が地面へ落ちて小さな飛沫をあげていた。
その上へと視線を送れば、石で作られた天井に少しだけ罅が入っており、その割れ目から水滴が垂れてきているようだった。
……外はきっと雨なのだろう。
霧がかったひどく鈍い頭で、薄ぼんやりとそう思った。
閉め切られ光の差し込まない、冷たい地下の一室からは雨のザアザアとした音もあまりに遠く聞こえない。
だから、そう思うしかなかった。
——ガチャリッガチャリッ。
寒さにブルリと体を震わせれば、今度は手足から無機質さを纏った音が聞こえてくる。
そちらにも視線をやると、どうやら手足に枷が嵌められているようだった。
痛いほどに締めつけてくるそれは、鎖で床と天井にピンと張るようにしてそれぞれ繋がれている。
……きっと、もうここからは抜け出せないのだろうな。
そんな確信に近いものを感じていた。
——シュルリ、シュルリ。
今度は随分と近くから聞こえてきた。
音のした正面に目を向ければ、『深淵』が俺の瞳をじっと覗き込んでいた。
以前のような金色の輝きを失ったそれは、何もかもを吸い込んでしまいそうな深い暗さをもっている。
その暗さとは違った陽だまりの暖かい香りを放つ、ふんわりとした鹿毛のロングに。
湿り気を帯びた息と、薄く上気した頬。
椅子に座る俺へと覆いかぶさっているウマ娘は——担当のメジロブライトであった。
……いや、だった・・・か。
「んんっ……」
暗く閉ざされたこの空間に響く、ブライトの艶やかな声。
どうやら音の正体は、二人のすっかり薄くなった布同士が擦れ合う音だったようだ。
もはや布一枚の互いのそれ。
ウマ娘特有の温かな体温と柔らかな感触が直に伝わり、頭の中がゆっくりと溶かされるような感覚を味わった。
「わたくしとトレーナーさまは今日、ようやく一つになれるのですね……」
耳朶を優しく打つその声に、暗い安心感すら覚える。
このまま身を委ねてしまおう、そんな諦めにも似た安心感が。
つよく、どこまでも強く体を蝕んでいく。
さらに頭の鈍りが増していく中、しかし視線だけは少女らしさを纏ったその薄い唇に釘付けになる。
彼女はゆったりとした動作で両手を俺の頬に添えた。
「……トレーナーさま」
やがて自然と近づいていく、互いの紅。
そして触れる瞬間、彼女は小さく呟いた。
「……ずっとお側にいてくださいまし、トレーナーさま……もう、決して離れませんように」
暗い瞳からこぼれる一雫の涙。
それは今にも壊れてしまいそうな彼女の、切なる願いであった。
どこで間違えてしまったのだろうか。
正しく鼓動していた世界は突然に狂い、二人を呪った。
どうして——どうして俺は忘れていたのだろうか……大切な彼女との約束を。
はじめての甘く溶け合うようなキスは、深い後悔の味がした——