妖怪少女がストレージに入ってる世界   作:シャケ@シャム猫亭

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「それで、なんで強くなりたいのかな?」

 

 流石に遅い時間に外出しているのは大人として見過ごせず。

 ユウキ少年と週末に会う約束をして、そして今日、チェーン店のカフェで席代のコーヒー片手にこうして向き合っている。ちなみにユウキ少年はオレンジジュースだ。

 カードショップのデュエルスペースで良いじゃんと思ったそこのアナタ。決闘盤が普及しているこの世界ではデュエルスペース=バスケットコートなので、小さな店にはまず無い。テーブルがないわけじゃないが大抵使われてるし、そもそも盛況なので騒がしくて、落ち着いて話すような場所じゃない。

 それと、見ず知らずの人に頼むくらいだ。あまり公にしたくない事情があるかもしれないということも考慮している。

 

「えっと、来月カードショップWORLDの大会があるじゃないですか。僕、優勝したいんです」

「いやー、厳しいでしょ」

 

 思わず本音が溢れた。

 アマチュア大会とはいえ、大手カードショップが大々的に開く大会だ。そのレベルは推して知るべし。

 

「予選で何勝かは出来るかもしれないけど、優勝は無理だと思うよ」

「でも、どうしても優勝したいんです!」

「そこだよ。そもそも何で優勝したいの?」

 

 強くなりたいのも、大会で優勝したいのも、どちらも手段でしかない。

 その目的は何なのか。それが大事だ。

 

「それは……」

「言えないことかい? それとも言いたくないことかい?」

「…………優勝賞品のカードを取り戻したいんです」

「取り戻す?」

「あれはっ!……あの神聖魔導王(しんせいまどうおう)エンディミオンは、父さんのカードなんです」

 

 一瞬激情に駆られたユウキ少年であったが、それをぐっと堪え、ぽつりぽつりと事情を語り始めた。

 

「僕の両親はプロデュエリストだったんです。フジワラ夫妻って聞いたことないですか?」

「Aリーグのデュエリスト夫妻だよね。たしか数年前に失踪したとかネット記事で見たことが────」

 

 待って。両親がいないってそういうこと?

 

「そうです。ワールドタッグトーナメントに出場するためアメリカに行ったっきり帰ってきてません……」

 

 今は叔母が彼の保護者となっているようだが、その叔母も多忙でほとんど家に居ないらしい。

 辛いことを言わせてしまった罪悪感が生まれた一方、実に主人公らしいと納得してしまった。しかし、肝心なのはここからだ。

 

「半年前、家に空き巣が入ったんです。でもお金とか通帳とかは取られなくて、父さんのデッキだけが盗まれました。警察の人が言うには、初めからデッキが目的だったんだろうって」

「そう……ん? ユウキ君の父さんはワールドタッグトーナメントに向かったんならデッキは持っていったんじゃないのかい?」

「珍しいんですけど、父さんはシングル用とタッグ用で2つデッキを持ってたんです。シングル用のデッキは家に置いていったので……」

 

 それは確かに珍しい。数枚カードを入れ替えることはあっても、まったく別デッキを使うデュエリストというのはなかなかいない。それが出来て、尚且つプロというなら、ユウキ少年の父親は相当なデュエリストだ。

 話を戻そう。

 盗まれたデッキ、そのエースモンスターこそ神聖魔導王エンディミオンだった。ユウキ少年にとって憧れのカードであり、何度も父親に頼んで見せてもらっていたから、細かいキズだって覚えている。だから、大会の賞品になっているのは、間違いなく父親のカードだと確信をもって言える。

 だが、ユウキ少年がそうだと言ってそれで返却されるかは別だ。なにせ証拠がない。イラスト違いのワンオフだったらそれが証拠で即返却だっただろうけれど、そうではないのだ。

 だったら買い取ればいい? バカ言えレアカードだぞ。少年が手を出せる金額のはずがない。

 

「だから大会で優勝して、取り戻すしかないんです」

 

 そのためには今の実力じゃダメだ。それはユウキ少年もわかっている。

 けれど今からデュエル塾に入ったとして、果たして1ヶ月でどれだけ強くなれるというのか。

 

「お願いしますシドウさん! 僕を鍛えて下さいっ! ひと目見て僕のデッキのことをわかってくれたシドウさんなら、シドウさんに鍛えてもらったら1ヶ月で強くなれると思うんです!」

 

 お願いします!

 そう言ってユウキ少年は頭をテーブルに付くほど下げ、そのまま下げ続ける。子供に頭を下げさせる大人の、なんと見栄えが悪いことだろうか。

 困惑して、逡巡して、結局1分ほどで折れた。

 

「はぁ……わかった。でも指導の経験なんて無いからね。強くなれる保証はしないよ」

「大丈夫です! 強くなれます!」

「その根拠のない自信は何なんだ……」

「デュエリストの勘です!」

 

 勘かよ。何の根拠も──むしろ信頼できるのか?

 やっぱりいまいちデュエリストの思考に慣れない。

 

「それにしても、大会は来月か……」

 

 短い。

 デュエルマッスルを鍛えてドロー力を上げるとか、瞑想積んで心眼鍛えるとかは出来なそうだ。いや、有用なのは間違いないのだけれど、今からじゃ効果が微々たるものしか得られない。

 それにそもそも、もっと根本から鍛えないといけないのは、この間デッキを見たからわかっている。

 

「そうだね……うん、まずはユウキ君の実力を見せてもらおうかな」

「ということは、デュエルですね! 近くのショップのデュエルフィールドを予約します!」

「あー……まあいいか」

 

 言うか早いか、ユウキ少年はスマホを操作し始めた。

 観客がいっぱい居るところでデュエルして、手の内明かしてどうするんだと思ったが、そういえば対戦相手のデッキに合わせてメタカードを入れる人は稀だった。

 

「今空いてるみたいです。行きましょうシドウさん!」

 

 急かす少年に苦笑しながら彼の分も一緒に会計を済ませて店を出る。ここから徒歩10分くらいにある、ユウキ少年行きつけの店だそうだ。

 彼の後を付いていきながら、さてどうするかとぼんやり考えた。

 今からでも逃げて無かったことにしたいが、そうはいかない。少年の意思の強さというか我の強さというか、それはもう十分に体感した。次に逃げたらハンガーストライキでも始めるんじゃないか?

 彼を鍛える。これはもう避けられない。じゃあどう鍛えるかは?

 わざと手を抜く? 無いな。

 デュエリストとして真っ当に鍛える? これが1番丸い。

 こっち側になるよう鍛える? 無いな。主人公が対話拒否とか邪道すぎんだろ。

 いやもちろん、まだユウキ少年が主人公とは決まったわけじゃない。遊の字が複数いたことだってあるし、そもそもマジの一般人って可能性も残ってる。

 ──残ってるかぁ? 先攻でアルデク立てられたぐらい厳しくない?

 結局、真っ当に鍛えるくらいしか択がない。変に弱いままだと、2期くらいで世界が悪の手に落ちかねない。ちなみに1期は父親のデッキを探すデッキ回収編、2期は両親の失踪事件を追うデュエリスト失踪編あたりだと睨んでいる。

 3期? 何が起きても不思議じゃない。でも世界の命運を賭けるとは思う。

 そう考えると、マジでユウキ少年のデッキじゃ不安だ。というか、あのデッキに世界の命運なんて賭けないでくれ、頼む。そこらのチンピラに負けるデッキだぞ。

 

「ここです、シドウさん」

 

 ユウキ少年に呼びかけられて、ぼんやり考えていた思考が散った。

 

「へぇ、ここにもショップがあったのか」

「知り合いの店なんです。デュエルスペースは店の裏にあるんですよ」

 

 店舗兼住居の個人店で、看板には『Shop 123』とある。ひふみと読むのだろうか。

 少年が勝手知ったように入店するのに付いて俺も中に入る。内装はカードショップ共通のショーケースやら何やらであまりチェーン店と変わらない。しかし比較的客が少ない辺り、よく言えば穴場的な店だ。

 

「あ、来たきた。ちゃんと取っておいたから、すぐ使えるわよ」

「ありがとう、リッカ」

 

 レジカウンターに居た店員さん──店長の娘さんかな?──がユウキにすぐに気がつき声をかけた。どうやらあの子にデュエルフィールドの予約をしたらしい。

 二言三言彼らが話をして、店員さんがこちらに顔を向けた。

 よく見れば、前にユウキ少年と一緒にいた少女だった。ああなるほど、そういう関係ね。理解理解。

 

「シドウさん、ですよね? この間はありがとうございました。おかげでユウキもカードを取り返せたみたいで」

「いえいえ、大したことはしてないから。彼の実力だよ」

「それで、あの、ユウキがシドウさんに鍛えて貰うとか言ってるんですけど……彼、失礼なことしませんでしたか?」

「あー、すごく強引だったかな」

「やっぱり! ちょっとユウキ!」

 

 リッカ少女が声を荒げると、少年は身を縮こまらせた。力関係が目に見えてわかる。

 

「ホントーに申し訳ありません! この話は全然無かったことにしていただいて結構ですので……」

「あ、そう? じゃあ──」

「だ、ダメですダメです!!」

「……まあ乗り掛かった船ということで」

 

 本当にすみません。いえいえ。

 そんなやりとりをリッカ少女とする。よく出来た娘さんだ。店番を任されるだけある。そんな彼女もユウキ少年のデュエルは気になるのか、レジに離席中の札を置くとデュエルの観戦エリアに入った。

 俺もバッグに入れていた決闘盤(デュエルディスク)を左腕にはめて──さてデッキはどうするか。といっても今日は2個しか持ってきてない。片方はファンデッキで、もう一方は何かあったとき用のガチデッキだ。

 ガチデッキなんて使ったら一瞬でライフが消し飛ぶ。ユウキ少年の強さを見極めるという目的がある以上、ここはファンデッキを使うべきだろう。

 デッキを決闘盤にセットして、所定の位置に立つ。決闘盤を胸の前に構えると、決闘盤に光が灯り準備が完了した。

 

「シドウさん、全力でいきます!」

「お手柔らかに頼むよ」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 シドウ LP4000 vs ユウキ LP4000

 

 手札は──よかったぁぁ、事故ってない。ここで事故ってたら今までの話がなんだったんだってなっちまう。デッキよ、マジ感謝だぜ。

 

「先攻は俺だね。俺は手札から魔法カード【おジャマジック】を墓地に送り、魔法カード【おジャマッチング】を発動」

 

 そこでひと呼吸おいて誘発を待つ。しかしユウキ少年は特に何も動きを見せず、むしろなぜ処理を始めないか疑問顔だ。

 

「……デッキから【おジャマ・レッド】と【アームド・ドラゴンLv3】を手札に加え、さらにおジャマッチングの効果で【アームド・ドラゴンLv3】を守備表示で召喚する」

 

 キュルルンと可愛らしい鳴き声と共に、手甲を身につけた幼竜がフィールドに現れた。やる気満々といった風に出てきたが、自分が守備表示で出されたのに気づき、慌ててガード体勢を取る。

 

 アームド・ドラゴンLv3 攻1200 守900

 

「さらに墓地に送ったおジャマジックの効果発動。デッキから【おジャマ・グリーン】【おジャマ・イエロー】【おジャマ・ブラック】を1枚ずつ手札に加える。カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 手札事故が起きなかったことに安堵しつつ、まずはこのくらいで様子を見る。まだまだ全然回せるけど、このデュエルは勝つのが目的じゃないからな。

 

「僕のターン、ドロー。よし、僕は手札から【マハー・ヴァイロ】を攻撃表示で召喚! さらに装備魔法【ワンショット・ワンド】を発動、マハー・ヴァイロに装備!」

 

 早々に現れたユウキ少年のフェイバリットモンスターが、三日月の杖を握る。攻撃力は効果と装備カードを合わせて2850。下級モンスターなのに、上級モンスターですら上から殴れる数値だ。

 

「バトル! マハー・ヴァイロでアームド・ドラゴンLv3に攻撃!」

 

 当然、攻撃力が上回ったなら攻撃するのがセオリーだ。マハー・ヴァイロが杖をアームド・ドラゴンに向け、杖先に光が集まる。

 うーん、伏せカードを警戒する素振りすらなく攻撃宣言か。伏せカードを破壊できない、あえて破壊しないまで考えたなら警戒の色くらい見せるよなぁ。

 

「永続罠カードオープン、【おジャマパーティ】!」

「えっ!?」

「自分フィールドの『アームド・ドラゴン』が戦闘・効果で破壊される代わりに、手札・フィールド・墓地のおジャマカードを1枚除外できる。墓地のおジャマジックを除外する!」

 

 マハー・ヴァイロの放った光線がアームド・ドラゴンに当たる直前、パジャマ姿のおジャマ3兄弟が現れ、身を挺してそれを防いだ。もちろん彼らは方々に吹き飛ばされている。

 

「防がれた!?」

「伏せカードがあって、何も起きないなんてことは無いよ」

 

 まあブラフ伏せってのもあるけど、プロのデュエルでもほとんど見たことがない。

 

「ターンエンド」

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズ、アームド・ドラゴンLv3を墓地に送って効果発動。デッキより現れろ、【アームド・ドラゴンLv5】!」

 

 幼竜が光に包まれ、見る見るうちに大きくなる。光が弾けて姿を現したのは、手甲の棘もだいぶ凶悪になった太々しいドラゴンだった。

 

 アームド・ドラゴンLv5 攻2400 守1700

 

「メインフェイズ、手札から永続魔法【武装竜の震霆(アームド・ドラゴン・ライトニング)】を発動。フィールドのアームド・ドラゴンLv5を対象とし、攻撃力をレベル×100アップする」

 

 天より落ちた稲妻がアームド・ドラゴンに直撃するが、それは竜を傷つけず。稲妻を身に纏ったアームド・ドラゴンはバチバチと音を立てる両の拳を好戦的にガシガシと突き合わせる。

 

「これで攻撃力2900、ユウキ君のマハー・ヴァイロを上回ったね。バトル。アームド・ドラゴンLv5でマハー・ヴァイロを攻撃。アームド・バスター!」

 

 アームド・ドラゴンが地響きを立てながらマハー・ヴァイロとの距離を詰め、剛腕が振るわれた。マハー・ヴァイロはそれを杖で受け止める。僅かな間両者の力が均衡していたが、マハー・ヴァイロの杖が耐えきれずに砕け、剛腕がマハー・ヴァイロを打ち抜いた。

 

「くっ……」

「ユウキ!?」

「大丈夫、かすり傷だよ」

 

 心配そうなリッカ少女に笑みを返し、ユウキがこちらに向き直る。実際、ユウキのLPは3950。マジでかすり傷だ。

 

「メインフェイズ2、特になし。エンドフェイズ、戦闘でモンスターを破壊したアームド・ドラゴンLv5を墓地に送って効果発動。デッキよりいでよ、【アームド・ドラゴンLv7】!」

 

 先ほどのヘビー級ファイターから一変、しっかり絞った筋骨隆々な姿のアームド・ドラゴンが現れた。慢心ではなく余裕を持った眼でユウキを見下ろす。

 うぉ、かっこいい。こいつをソリッドビジョンで拝めて大満足だ。

 

「うっ……け、けど攻撃力は2800。さっきより下がってる」

「ユウキ君のターンまではね」

 

 武装竜の震霆は永続魔法。次の俺のターンには3500になる。

 

「さてユウキ君。君はとにかく相手より攻撃力を上回って相手を倒すのをセオリーにしているみたいだけど。それだけじゃこのアームド・ドラゴンは倒せないよ」

 

 どうやって突破したらいいか、よく考えてくれ。戦闘破壊耐性と1回効果破壊耐性が付いてるだけだから。

 何も難しいことじゃない。いやホントに。

 

「…………っ、そうか! 僕のターン、ドロー!」

 

 ユウキはこちらの場を見て、自分の手札を見て、もう一度こちらの場を見てハッとした。そして確信を持ってドローする。

 

「よし、速攻魔法【ツイン・ツイスター】を発動! 手札を1枚墓地に送って、おジャマパーティと武装竜の震霆を破壊だ!」

「ナイスよユウキ! これで後はあのモンスターより強いモンスターを出すだけ──ユウキ、出せるの?」

「大丈夫。攻撃力だけが強さじゃないって、教えてくれたから。僕は【ディメンション・コンジュラー】を召喚! 効果で【ディメンション・マジック】を手札に加えて、発動! ディメンション・コンジュラーを墓地に送り、力を貸して【光天のマハー・ヴァイロ】!」

 

 光天のマハー・ヴァイロ 星8 攻1550 守1400

 

 彼のエースモンスターが登場し、俺のアームド・ドラゴンがディメンション・マジックの効果で破壊された。

 だがエースが場に出ただけ。もちろんそれで終わりじゃないだろう?

 

「ディメンション・コンジュラーの効果で1枚ドローし、1枚デッキの1番上に戻す。そして装備魔法【バウンド・ワンド】を光天のマハー・ヴァイロに装備して攻撃力をレベル×100アップ! さらに光天のマハー・ヴァイロの効果で1000アップ!」

 

 赤い宝石の付いた杖を握ったマハー・ヴァイロから凄まじい魔力が溢れ出す。攻撃力は3350。これがブルーアイズを凌ぐ迫力か。

 

「バトル! 光天のマハー・ヴァイロでシドウさんに直接攻撃(ダイレクトアタック)! ヘブンリー・ホーリー・ライトニング!!」

 

 え、杖がすげえバチバチ鳴ってるんだけど。ちょっとそれ人に向けていい攻撃エフェクトじゃ──

 

「ぐわあああああああっ!!」

 

 シドウ LP650

 

「どうですか、シドウさん!」

「はぁ、はぁ……あ、ああ、予想以上だよ」

 

 おジャマパーティを破壊できれば上々と思っていたが、武装竜の震霆も破壊してくるとは。おかげでディメンション・マジックの効果破壊が通ってしまい、直接攻撃をくらってしまった。

 だが予想以上だけど最上ではない。あれだけ手札を消費したならここで決め切って欲しかった。いや、決め切れるようにならなきゃいけないし、そうなるように鍛えないといけないんだろうな。

 

「ターンエンドです!」

「俺のターン、ドロー」

 

 引いたカードは──アームド・ドラゴン・サンダーLv10!?

 これは、あれか。出せって言ってるのか? 前なら引きが悪いっていうところだけど。

 確かに光天のマハー・ヴァイロに相応しい相手だよ? 同じパックのよしみだし。でもお前、カードパワーありすぎだって。あえて普通のアームド・ドラゴン出してたのに。これはあくまでユウキの実力をはかるデュエルなんだから、ほどよいハードルじゃなきゃダメなんだよ。

 でも、こういうの無視すると後が怖いんだよなぁ。体験したことは無いけど、カードに嫌われるってことがあるっぽいし。

 ああ、もうっ!

 

「俺は【アームド・ドラゴン・サンダーLv3】を召喚。手札からおジャマ・グリーンを墓地に送って効果発動。Lv3を墓地に送りデッキから【アームド・ドラゴン・サンダーLv5】を特殊召喚!」

「さっきと同じ──いや違うッ!?」

 

 一応、同名モンスターとして扱うけどね。

 

「手札からおジャマ・イエローを墓地に送ってアームド・ドラゴン・サンダーLv5の効果発動。Lv5を墓地に送りデッキから【アームド・ドラゴン・サンダーLv7】を特殊召喚!」

 

 先ほどやられたLv7がバチバチになって帰ってくる。マハー・ヴァイロへのリベンジマッチに燃えているようだが、すまん。

 

「手札からおジャマ・ブラックを墓地に送って効果発動。Lv7を墓地に送り、万雷を身に纏い力を示せ、【アームド・ドラゴン・サンダーLv10】!!」

 

 手札からカードを決闘盤に叩きつければ、激しい落雷がフィールドに落ち思わず顔を腕で覆う。数秒経って音が鳴り止んだのを機に腕を退ければ、アームド・ドラゴン・サンダーLv10がまさにイラストのポーズで降臨していた。

 ちくしょう、カッコいいじゃねえか。

 

アームド・ドラゴン・サンダーLv10 星10 攻3000 守2000

 

「す、すごい。あっという間に最上級モンスターを……」

「でも攻撃力はユウキのマハー・ヴァイロの方が上よ」

「手札から2枚目の武装竜の震霆を発動。攻撃力がレベル×100上がり、Lv10の攻撃力は4000だ」

 

 これで光天のマハー・ヴァイロを上回った。

 

「バトル! アームド・ドラゴン・サンダーLv10で光天のマハー・ヴァイロを攻撃!」

「っ、迎え撃ってマハー・ヴァイロ!」

 

 アームド・ドラゴンが拳を振り抜いて繰り出した雷がマハー・ヴァイロへと迫る。マハー・ヴァイロも光線を放ち、両者はフィールドの真ん中でぶつかり合い、一瞬の均衡の後、雷は光線を撃ち破りマハー・ヴァイロは光に飲み込まれた。

 しかしユウキへ直撃するコースを走っていた雷はマハー・ヴァイロによって逸らされ、余波がユウキのライフを僅かに焼くに留まる。

 

「っ、バウンド・ワンドの効果発動! 装備モンスターが相手によって破壊された時、そのモンスターを墓地より復活させる。舞い戻れ、光天のマハー・ヴァイロ!」

「メインフェイズ2、特になし。ターンエンド」

 

 またもや最上級モンスターがユウキの前に立ちはだかる。前のターンは場こそ何もなかったものの、手札が潤沢にあった。今回は場は守備表示の光天のマハー・ヴァイロのみで手札は0枚。しかも次のドローはディメンション・コンジュラーでバウンド・ワンドと比較して不要と判断されたカードだ。

 

「僕のターン、ドロー! っく、ターン──」

「おっと、エンドフェイズに入る前に手札のおジャマ・レッドを墓地に送り、光天のマハー・ヴァイロを対象としてLv10の効果発動。マハー・ヴァイロを破壊し攻撃力を1000アップする」

「マハー・ヴァイロっ!?」

 

 サンダーLv10の放った落雷に撃たれ、マハー・ヴァイロが散った。これでフィールドがガラ空きになった上、サンダーLv10の攻撃力がユウキのLPを上回った。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 流石にファンデッキといえど、これだけカードパワーに差があるとこの辺が限界か。でもデュエルの意味はあった。必要な時に必要なカードを呼び込む力は、確かに有していた。

 なら装備ビートデッキなのか魔法使いデッキなのか、コンセプトが迷子になっているデッキを調整すれば、まずはそこそこ強くなれるだろう。

 ユウキがデッキをいじることに同意すればの話だが。

 

「バトル。サンダーLv10で直接攻げ──」

「この瞬間、墓地の【光の護封霊剣】を除外して効果発動!」

 

 うっそ、まだ防げるの!? というかいつ護封霊剣なんて……ツイン・ツイスターの時か!

 

「このターン、シドウさんのモンスターの直接攻撃を封じます!」

「……メインフェイズ2、武装竜の震霆の効果発動。墓地のアームド・ドラゴン・サンダーLv3を手札に戻して、ターンエンド」

 

 正直、このターンで終わると思ってた。いやだって決闘盤でのデュエルって相手の墓地確認できないから言ってくれなきゃ何落としたかわからないし、コストで護封霊剣落とすとか普通思わないじゃん。

 しかしどうあれ、ユウキは耐えた。彼がそうだというなら──

 

「僕のターン、ドロー!!」

 

 間違いなくデッキは応えるはずだ。

 

「僕は魔法カード【闇の誘惑】を発動! 2枚ドローし、闇属性モンスターを除外! さらに永続魔法【闇の護封剣】を発動! 相手モンスターを全て裏側守備表示にする!」

 

 フィールドからアームド・ドラゴン・サンダーLv10の姿が消え、裏側守備のセットカードとなった。発動時の効果処理として裏側にされたため、Lv10の効果をチェーンすることもできない。

 

「そして手札から【ラピッド・ウォリアー】を召喚!」

 

 ラピッド・ウォリアー 星4 攻1200 守200

 

 ……?

 ジャンク・ウォリアーとかのウォリアー系なのはわかる。けど、すまん。使ってる人見たことなくて記憶にない。効果も知らない。

 

「ラピッド・ウォリアーの効果発動! このターン、ラピッド・ウォリアーしか攻撃出来ない代わりに、直接攻撃ができる!」

 

 うそん。んなピンポイント……でもないか。装備ビートとしてはアリか。LP4000だから実質攻撃力2400だし。

 

「バトル! ラピッド・ウォリアーでシドウさんに直接攻撃! ウィップラッシュ・ワロップ・ビーン!!」

 

 裏守備となったサンダーLv10を飛び越えたラピッド・ウォリアー。振りかぶった拳から俺を守るものは何もなく、俺の鳩尾に突き刺さった。その衝撃に思わず身体をくの字に折り曲げる。

 

「ぐふっ!? ──お、お見事」

 

 シドウ LP0

 

 

 

 

 決闘盤がライフが0になったことを告げ、フィニッシャーのウォリアーが光となって消えていった。

 

「ユウキ!」

「へへっ、ブイ!」

 

 歓声を上げるリッカにユウキは満面の笑みでVサインを返した。

 あれ、もしかしてガッチャ的なやつかな。

 

「シドウさん、勝ちましたよ! これで弟子にしてくれるんですよね!?」

「……え?」

「え? ……あ、そうでした。もう弟子でした」

「え?」

 

 ちょっと待て、このデュエルはユウキの実力を見るためのデュエルでしょ。それに指導は1ヶ月だけって話だったじゃん。

 食い違ってる、食い違ってるよ。

 師弟関係になったら、絶対ひと月で終わらないって。ちゃんと訂正──

 

「これからよろしくお願いします、シドウ師匠!」

 

 ……いかん、不覚にも師匠呼びにくらっと来てしまった。

 

 




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