薩摩の子 作:キチガイの人
2話以降は見れねぇわ。
この作品には以下の要素が含まれます。
・ラブコメとシリアスの寒暖差
・チェスト成分少なめ
・場合によっては胸糞要素あり
以上が苦手な方はブラウザバック推奨です。
それでも
001.電車に揺られながら
ガタンゴトンと電車は揺れる。
動く街並みの間から差す夕焼色の光はまぶしく、窓を見ていた俺は思わず目を細めた。日中の太陽を見たほどではないにせよ、この光を直視し続けるのは厳しい。
つり革を再度強く握りしめ、車内を見渡す。
人は数えるほどしかいない。
そりゃそうだ、ド田舎の電車だぞ? ましてや時間が時間だ。
「──……オーカ? もう着いた?」
「いいや、まだ寝てていいぞ。着いたら起こすわ」
「そっかぁ」
俺の前に座る少女からの問いに答える。
鮮やかな長い黒髪を揺らし、少女は微笑む。
寝てていいとは言ったが、それ以降少女は寝ることはなく、俺の予備バッグを抱きかかえ顔を埋めた。なぜそのようなことをしているのか、俺は知るつもりはないが苦言を呈す。
「アイ、あんまり顔を埋めんじゃねーぞ。体育で使ったジャージとか入ってんだよ。臭いからやめとけ」
「いい匂いだからやめなーい」
「ったく……」
少女──星野アイは朗らかに笑う。
ため息をついていると、星野の隣に座り足を組みながら本を読んでいた男も笑う。ただ「笑う」の種類は違ったが。
アイは癒しを補充しているように。
男は小バカにするように。
「いいじゃないですか、別に減りもしないんですから」
「確かに減りはしないだろうが、減らないからって何してもいいわけじゃねーだろうが」
「とか言いながら、
予備のバッグには今日の授業で使ったジャージをはじめとして、本やら辞書などが乱雑に入れてある。立ちっぱなしな上に、つり革で片手がふさがっている俺には、わざわざアイの持っている鞄を奪い取る必要性がなかった。
目的の駅に着いたら返してもらえばいい。その程度にしか思ってなかった。
だがこの男──
邪推するのはやめてほしいんだが。
そして馬鹿は便乗するのが好きらしい。
俺の両隣も咸と同じように笑うのだった。
「本心では満更でもなさそうだけどなぁ?」
「上に同じ。つか爆ぜろ」
右隣の男──
ちなみに前者の発言は未来で、後者の発言は兼定が行ったものだ。
俺と同じようにつり革をつかんでいる仲だが、認識には大きな溝があるらしい。マリアナ海溝よりも深そうだぜ。
「つか『爆ぜろ』って何だよ」
「リア充爆発しろ的な意味だが? テメェには理解できなかったようだがなァ」
「……コイツ一回、脳髄ぶちまけて死んでくれねぇかなぁ」
そもそもリア充は死語だろうが。
……あれ? じゃあ今はなんていうんだっけ? まあいいや。
「オイ、星野。テメェの旦那の口が悪ィぞ。どういう教育してンだ?」
「こーら、オーカ。種定君が可哀そうでしょ? 謝りなさい」
「兼定つってンだろ」
自分の名前をいまだに間違えるアイに、兼定はそれ以上ツッコむことはなかった。
彼女は基本的に名前を覚えるのが苦手らしい。俺の名前を呼ぶときも『桜華』じゃなくて『オーカ』だしな。
ちなみに未来と咸は早い段階で矯正を諦めてる。
……それはそれとして、兼定の『旦那』発言に妙に嬉しそうなアイに、おれはツッコんだほうがいいのだろうか? あまり気にしすぎると墓穴を掘りかねないと思った。
よし、スルーしよう。それが賢明だ。
ガタンゴトンと揺れる音が止まった。
どこかの駅に着いたようだ。
「あ、着いた?」
アイは後ろを振り向き、また正面を向いた。
そしてバッグへのヘドバンを再開する。
「まだ広木だね。次が中央だよ」
「うん、今見た」
「どう考えても中央駅と比較したら煩くないから分かるだろうに……」
未来の言葉にアイは簡素に返す。
広木駅は遠くに集合住宅地がある駅なので、喧騒入り混じる中央駅と間違えることは基本的にないはずなんだがなぁ。
「だって早く帰りたいんだもん。体育で汗かいちゃったし」
「気持ちはわかるけどさぁ。あ、それなら俺とお前、風呂はどっちから入る?」
「私先入らせてー」
「りょ」
なるほど、先にアイが風呂入るのか。
それなら先に飯の用意をしたほうがいいな。中央駅のアミュ地下(駅内商店街)で総菜買う予定だし、米の残量は……まだ大丈夫なはず。
俺が風呂入ったら洗濯機も回すか。近所に迷惑かかるから早めに回しとかねぇと。
「……え、これでまだ付き合ってないの? え?」
「……付き合うって工程を無視しているだけでは?」
「……コイツ等見てると頭バグって来るンだよなァ」
のほほんとしているアイ、頭の中で今日のスケジュールを組み立てる俺。
それを他所に男三人はヒソヒソと、車両の端まで移動して話をしている。咸なんかわざわざ席立ってるし、何がしたいんだろうか。つか何の話をしているのか。
そんな何気ない日常。
飾り気も何もない日常。
特筆する点もない日常。
一生懸命生きようと、惰性に生きようと、それでも日常過ぎれば明日は来るのだ。
そして日常と言うのだから、なんの問題も起こらず中央駅に着く。
馬鹿共3人と別れ、俺とアイは中央駅東口の広場へと出る。出て総菜忘れに気づいた俺は、アミュプラザの別ルートへと足を運ぼうとする。田舎では一番大きい駅のため、目的の地下に行くルートは他にもあるのだ。
アミュプラザへ入る自動ドアの前で、俺しかいないことに気づく。
振り返ると東口広場の液晶パネルを眺める黒髪の少女がいた。俺は相方の少女の元へと戻る。
「おい、アイ。どうした?」
「──……っ。あ、ごめん。行こっか」
東口広場のパネルは大きく高所にあり、俺も自然と見上げる。
そこには最新曲を歌う──新人アイドルのPVが映し出されていた。
俺はもう一度彼女へと視線を移す。
彼女はいったいどんな顔をしていたんだろうか。
今は普通なのだ。
ただ俺は
俺は目を細めて、嘆息し、彼女に小さく問う。
「……大丈夫か?」
「……ううん、全然大丈夫だよ」
大丈夫じゃない人間の吐く台詞をよそに、少女の目はそれでもディスプレイから離れることはなかった。それはPVが終わるまで続くのだった。
アイの大丈夫という言葉を俺は小さく復唱する。
この言葉の真意は何だろうか。何に対して発した言葉なんだろう。
どちらが正しいのだろうか。それとも双方正しくないのだろうか。
無い知恵と推論を絞り出した俺は、とりあえず後者でアタックしてみた。
「お前なら、またできると思うけどなぁ。少なくとも俺は応援するぜ」
これは嘘偽りのない本心だ。
さて、この推論。
どうやら双方が正解らしい。
アイは俺に笑顔を向ける。
そこに辛そうな表情は一切なく、満開の桜でさえ背景の一つに過ぎなくなるだろう。
「大丈夫だよ、オーカ。私はもうアイドルはやらないって決めたからさ」
「……そりゃ残念だ。一番星が拝めると思ったんだけど」
「嘘から始まっても本当の愛になるって気づいた。家族への愛も知ることができた」
だから──と、彼女は言葉を紡ぐ。
「だからさ、だから──今度は、恋心を知りたいなって」
本当の愛し愛される関係が欲しい。
そう彼女は締めくくった。俺に向けて。
年齢=恋人いない歴の俺に向かって。
喧嘩売ってるのだろうか。
「あー、うん。頑張れよ」
「え、ちょっと待って。私の話聞いてた? 愛し愛されるって一人じゃ成立しないんだよ!? 私だけ頑張っても意味ないんだけど!?」
「そりゃそうだろ」
「他人事!?」
酷く衝撃を受けているアイに背を向け、俺はアミュプラザへ足を運ぶ。
愛し愛される関係、それを高校生のガキに問うのかよ。
ハードル高すぎやしませんかね?
そんな考えで彼女との会話を終え、総菜購入へと思考をシフトチェンジする。
背中に物理的衝撃を受けながら、俺は日常に戻っていくのだった。柔らかい匂いが鼻孔をくすぐるのだ。アイがタックルして抱き着いてきているに決まっている。
「……やっぱり難しいなぁ」
「でも」
「私は」
「君に愛してほしいな」
自分の気持ちを落ち着かせるために書いたので、続くかわからないです。
なので軽い自己紹介。
【島津 桜華】
今作の主人公。高校生。星野アイと2人で同棲していやがる。
【星野 アイ】
作者を苦しめた元凶。もう情緒ぐっちゃぐちゃだよ。ぶっちゃけると本編死亡後の転生者。2度目の人生は恋をしたいそうです。
【税所 咸】
主人公の幼馴染。ロリコン。
【伊集院 兼定】
主人公の幼馴染。熟女好き。
【種子島 未来】
主人公の幼馴染。ふた〇り好き。特殊性癖多すぎんだろ。