薩摩の子   作:キチガイの人

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 ネタ回です。
 感想お待ちしております。






 pixivにも投稿始めました。
 とりあえずバックアップ目的なので、こっちのが最新話投稿が早いです。


110.社会的死RTA

 新学期。

 基本的に1〜2学年の生徒は絶望的な表情で、受験生のため休みらしい休みなど存在しなかった3学年が、何かを悟ったような表情で登校する日。

 俺も内心は「かったるいなぁ」と思いながらも校門を越えるのだが、俺が所属する1-2は前学期と違うどころがあった。いや、明らかに課題終わってないんだろうなぁってツラをしている生徒を見かけるのは確かだが。

 

 それは1-3のアイが居ないことである。

 居ないのが普通である。(悟り)

 

 それもそのはず。彼女の子供たちであるアクアとルビーが編入して来る日でもあるので、今日から自身が本来所属する1-3で彼女は授業を受けるのである。

 おかしいな。当たり前のことを言っているはずなのに、どうして今までそうじゃなかったんだろう。不思議なこともあるものだ。

 

 

『今日は星野さんが来ないなぁ』

 

『登校しているのは見かけたから、学校に居るのは確かなんだけど……』

 

『おい、島津。嫁の方はどうした?』

 

 

 なのでウチのクラスが落ち着かないのも、本来はおかしなことなのである。いや、居ねぇのが当たり前なんだって。クラス違うやろがい、脳みそ使って考えてくれ。

 そしてポンコツ担任もアイの所在を俺に聞くな。気になるのなら、まずは山田教諭に聞くべきだろうが。

 

 アイはもう来ないんだよ。

 双子と黒川様と1-3で楽しく過ごすんだよ。

 

 

『双子編入してくるってことは、もうアイは1-2(ウチのクラス)には来なくてもいいよな? だってアクルビいるんなら、もう俺んところに来る必要ないじゃん』

 

『……??』

 

 

 そして、心底不思議そうに首を傾げないでくれ。

 俺は平穏な学生生活を送りたいんだよ……!

 

 朝食のときに聞いて、こてんと可愛らしく、そして何も考えてないようなツラで首を傾げるアイを眺めながら、俺は大きくため息をついたのは覚えている。

 欲張りと身勝手は違うんだぞ。

 ルビーが変なこと覚えたらどうすんだよ。なお、アクアはそんな変なことを絶対にしないという、謎の安心感がある。このダウナー系イケメンの安定感ヤバいな。兼定から「カミキjr.」と言われてガチギレする人間味も持ち合わせているのもグッド。

 

 俺は頬杖をつきなが窓の外を眺める。

 真夏真っ只中どころか、下手すりゃ11月くらいまで夏服で生きていけるような環境の鹿児島なので、いまだに蝉が泣き散らしている。セミファイナルももう少し先になりそうだ。

 心なしか静かに思えるウチのクラスを横目に、担任が出席を取ろうとする。別に今生の別れってわけでもないだろうに、というか昼休みには飯食いに凸してくるのは明白だし、そんな寂しそうにするなと思いつつ、新学期がスタ

 

 

 ──バタンッ。

 

 

「──東先生っ! 遅れてごめんなさいっ!」

 

「東雲な。おー、嫁島津、今学期も戻ってきたのか」

 

「うんっ。あ、あとアクアとルビーとあかっちも連れてきましたっ」

 

「そうかそうか、かなり大所帯になったなぁ。山田先生にはちゃんと事前申告しているか? というか山田先生って生きてるか?」

 

「呼吸はしてました!」

 

「あー……なら俺から学年主任に伝えとくわ。──おーい、そこん男子共、机をさっさと移動させてやれー」

 

 

 クラスの男子たちによって、最後尾に座っていた俺の横に机が四つくっつけられる。随分と慣れたどころか、親の顔より見た光景レベルの鮮やかかつ迅速な移動であり、俺の周囲にいたクラスメイトはいつものようにスペースを開けて、元人気アイドルと愉快な仲間たちを温かく迎え入れるのだ。

 アイは皆の衆を引き連れて、さも当然のようにクラスメイトの間をすり抜けるように歩み、さも当然のように俺の横に座る。そして黒川様と双子も当然のように1-2へ駐屯した。

 

 圧倒的カリスマと惹き付ける眼によって全てを魅了する傾校の美女、恋によって磨きのかかった美貌を携えた我が校1学年二大美女の片翼。それに加わったのは、美しさと可愛さを兼ね備え天真爛漫で笑顔の絶えない元人気アイドルの遺児、白馬の王子様を彷彿とさせる整った顔立ちと静かな雰囲気のイケメン。

 もう1-2は大歓喜である。

 ただでさえ、誰もが目を奪われていく美少女2名に、別ベクトルの美少女と、薩摩隼人も裸足で逃げ出す美男子が追加されたのだ。もうお祭り騒ぎよ。

 

 

「……アクア、何か弁明は?」

 

「……俺にアイは止められん」

 

 

 このアイの奴隷(ファン)がよぉ。

 まぁ、アクアに拒否権がなかったんだろうなってのは、想像に難くない。

 

 

「普通科って地味なイメージだったけど、けっこうクラス間の(垣根)って薄いんだね。芸能科よりも自由じゃん」

 

「ここまで来るとクラス崩壊って言われても過言じゃねぇんだよ」

 

 

 全国の普通科に壮大な風評被害を与えてしまうと、ルビーの独り言に思わず反応してしまった。反応して──心の内で今世紀最大の反省会を行う。

 瞬間、俺の背筋がゾクッと危険信号を発する。今まで幾度となく発せられた『死への予兆』とも呼べるソレであり、今まで俺の命を救ってきた本能的な畏れである。それに相当する状況が、今まさに動こうとしているのだ。

 

 そして──俺は、それを止めることができない、。

 ルビーが口をゆっくり開き、その死神の鎌を俺に向けて振り下ろし──

 

 

 

 

 

「あ、パパ。教科書貸して」

 

 

 

 

 

 俺は社会的に死んだ。

 

 

 

    ♦♦♦

 

 

 

「ねぇねぇ、なんか校内で学年問わず『この夏休み期間中に桜華がアイちゃん妊娠させて、アイちゃんが出産して、それが双子で、桜華の謎島津パワーで高校生まで成長させて編入させた』って噂が流れてるんだけど」

 

「田舎のネットワーク怖ぇな。そして根も葉もない噂が、昼休みの間に学年超えてるとか、もはやホラーだろコレ」

 

「僕もいろんな人に聞かれてさ。とりあえず『概ねあってる』って答えといた」

 

「ナイスジョーク。気に入った、殺すのは最初にしてやる」

 

 

 桜華は激怒した。必ず、かの無知蒙昧の馬鹿を除かなければならぬと決意した。桜華には経緯がわからぬ。桜華は、島津の蛮族である。首を狩り、アイとイチャイチャして暮して来た。けれども馬鹿に対しては、人一倍にチェストであった。

 そんなわけで未来ヌンティウスの殺害を画策していると、他の馬鹿共も追随する。

 

 

「私もけっこう聞かれましたね。とりあえず『広義的にはあってる』と伝えました。我がクラスの数名が呼吸困難で救急搬送されました」

 

 

 広義的に解釈しても無理があるだろうが。

 

 

「ハッ。噂程度に踊らされるたァ、××高校の程度が知れるってもんンだぜ。オレはそんじょそこらの馬鹿とは違う。ちゃんと訂正してやったぜ?」

 

「兼定……」

 

「『妊娠したのは桜華だ。そこ間違えンな』って訂正してやったぜ」

 

「今、寿さんに『兼定のスマホのホーム画面が、自分と寿さんとのツーショット』ってゲロっといたわ」

 

 

 争いは同レベルでしか行われない。

 本来殺しに使われる高度なテクニックを、しょうもない喧嘩で浪費していく薩摩の馬鹿共。ここで長きにわたり島津を支えてきてくれた伊集院家、種子島家、そして税所家は断絶かぁ。

 悲しいぜ。

 

 というか伊集院家バイバイして黒川家を追加しようぜ。

 見た目も中身も、絶対に後者がいいって。

 

 

「その……桜華君も、あまりルビーちゃんを責めないであげてね? 軽率にアイちゃん最大の秘密に近いものを暴露しちゃったって、結構落ち込んでるから……」

 

「別に怒ってはいないよ。邪推されるのは面白くないなって思っただけで」

 

 

 アイとアクルビが親戚同士であり、幼いころから三者は交流があり、『ママ』と呼ぶくらいにはルビーはアイに懐いている。アイが『ママ』なので、その彼氏である俺を『パパ』と呼んでいるだけ。

 事実にそれっぽい話をミルフィーユして、それっぽい話を用意したが、校内では『双子がアイの子供説』が横行しているそうだ。真実であるがゆえに、嘘が大の苦手な俺が真っ向から否定できないのが、噂に拍車をかけているとのこと。

 

 こうして、波乱の新学期は俺の社会的な死と共に始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕さ、山田先生からも『ほほほほほほ、本当に星野が妊娠したのか……?』って聞かれたんだけど。腹部抑えて青い顔で」

 

「………」

 

 

 このままだと山田先生も死んでまう。

 

 

 

 




桜華「どう考えてもガワが俺に似てねぇだろうが」

アイ「もしかしたら似てるかもしれない(´-ω-`)」

桜華「髪の色がそもそも違うのにさぁ」

アイ「劣性遺伝ってやつ?」

桜華「こういうときだけ教養レベル上昇するのヤメテ。金髪はカミキ遺伝だろ」

アイ「カミ……キ……?」(目ハイライト)

桜華「おっと地雷踏んだわ」
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