薩摩の子 作:キチガイの人
ようやく原作主要キャラの最期の一人が名前だけですが出てきましたね。今何話だと思ってるんだ?
感想お待ちしております。
あんまり俺自身に関係ないから放置していた感は否めないが、鹿児島で漫画が原作の舞台が行われることになる。アルバイトでも金の流れを眺めるだけなので、俺個人としては関わることがないのだ。そのため、その舞台化される作品の中身も、出演者も、何なら公演日とかも含めて、俺は何一つ認知していない。
知っているのは原作の作者の名前のみ。
島津
俺がそれにあまり興味を持っていないのは、今回の舞台における資金の流れは次期当主の個人的なものであり、島津家そのものはほとんど関与していない点にある。俺も舞台化における話の流れは全く分らんが、カミキヒカルとの交渉すらも次期当主が行っていたので、島津家が気にすることは舞台化における地域活性ぐらいなものだろう。
というか、本当に舞台化の話含め、現当主殿に話が行っていないのには驚いた。なので、現在進行形で島津宗家では親子間の大乱闘スマッシュブラザーズが行われている。
プチお家騒動である。今日も島津は平和です。(白目)
舞台関連に俺が興味を持ってないこともあり、カミキヒカルの動向を監視する以外に動こうとは思わず、このまま舞台化されるのを、内容も知らず終わるのだろう。
このときは、そう思っていた。
「………」
俺の仕事をアクアが覗いてくるまでは。
俺のPCには鹿児島に滞在するであろう出演者の一覧が映し出されていた。神木プロダクション鹿児島支部とかいう特級呪物がまだ開業していないので、ホテルを手配することになったのだが、それを俺が担うだけである。
本当はずいぶん前に別のホテルを予約してたんだが、そこが潰れた関係で急遽俺が手配する羽目に。とりあえず天文館周辺の良さそうなところに予約しておくかと、男女比率を計算していたところ、宝石兄がアイス食いながら覗いて来たのだ。
もちろん俺が買い溜めたアイスである。
「どしたん。なんか気になる出演者おるん?」
「……いや、錚々たる面子だな」
「そうなんだ」
「そうなんだ、って……。さすがに不知火 フリルとかの有名どころとかは知ってるだろ?」
「全然。それって
「一般常識レベルの有名人なんだが」
遠回しに俺が常識ないと貶してない?
うーん、正解。
「テレビとか地元のニュースしか見ないからな。『
「そうか……?」
芸能界に近しい人間であったアクアにとって、芸能情報を全くと言っていいほど把握していない俺は、埒外の存在なのだろう。兼定は俺と同じ知識量だと思われ、未来はネット界隈なら知っているかな程度。恐らく、アクアの話に相槌を打てるのは咸ぐらいだろう。
一度だけ黒川さんから有名人関連の話を振られ、薩摩組が宇宙猫して以降、まったくと言っていいほど話題を振られなくなったぐらいだからな。
だって知ってたって薩摩民には関係ないもん。
どうせ鹿児島に来ねぇし。
「………」(少し前を振り返る)
最近よく来るようになったな。
やっぱり知っとくべきか?
顔面偏差値ぶっ壊れの芸能人メンバーと夏休みを過ごしたことを回想していると、いつも澄ましたツラしているアクアの表情が動く。
とある名前を見ての発言だった。
「有馬、かな」
「ん? ──この人か。知り合い?」
「あぁ、子役していた時に共演したことがあるし、陽東高校の芸能科に在籍してた。少し話をしたことはあるけど、それっきりだったな」
「ふーん」
有馬……有馬、ねぇ。
どっかでか聞いたことのある苗字を吟味しながらも、おそらくは無関係であろうと俺は思考を捨てた。島津よりはありふれた名前だし、まさかまさかね。
なんて、名前だけで警戒しようとしている自分を嘲笑っていると、一般通過ルビーが俺のPCを覗き込み、アクアと同じように反応を示した、アクアより分かりやすく「あっ!」と声を出していたので、俺みたいな鈍感でも気づいた。
「もしかしてロリ先輩も鹿児島来るの!?」
「ろ、ロリ先輩?」
なんだその咸が四足歩行で進撃しそうな名前の先輩は。
「小さい時にお兄ちゃん先生と共演したことのある先輩だよ。陽東高校で再会したんだけど、ちょくちょくお兄ちゃん先生にちょっかいかけてたなぁ。最後らへんは仕事が忙しかったらしくて、あんまり顔すらも見なかったけど」
「子役時代ねぇ。なんのドラマ?に出てたのか気になるなぁ」
「あ、それとママのことを『へったくそな演技してたんじゃないの?』とか『媚びを売るのだけは上手』って言いやがった気がする」
「……ほう」
ルビーが言っているのは、前世のアイの話だと思われる。もしかして演技はそこまで得意ではなかった……とか? いや、アクアが子役時代ってことは齢16以降のはずだし、普通に考えてアイが19~20歳の話のはず。でも、マルチタレントとして活躍してたって聞くし、そんな酷評されるような演技力じゃないはずなんだよなぁ。どうなんだろう?
え、そのロリパイセンに何か思うことはって?
幼少期の失言をとやかく言うわけないだろ。
「そこまで言うからには、さぞかし有名だったんだろうなぁ」
「あぁ、本人もそんなこと言ってたね。えーっと、『重曹を舐める天才子役』だっけ?」
「『
アクアが「10秒で泣ける天才子役、な?」って言ったらしいが、俺の耳までは届かなかった。幼少期から銃創舐める
えぇ、そんで神木プロダクション所属なんだろ? 立花のオッサンが手元に置いているってことは……え、もしかしてマジで
「あと! すっごく口が悪く……て……ね?」
「なぜに疑問形?」
「……いや、物凄い毒舌な先輩だったなーって思ったけど、こっちにも口悪い不良とマイペースがいたなって思うと、ロリ先輩の方がましだったって思って」
サッと目を逸らしたルビーの発言に、俺は
それに比べたら、ロリ先輩の毒舌は幾分かマシと彼女の中で結論に至ったのだろう。
アクアも少し考えるそぶりを見せ、「芸能人として生きづらそうな毒舌家だが、お前らの暴言に比べたらマシ」とお墨付きをもらった。嬉しくはないが、言い返せるほどの材料はなかった。
「まぁ、鹿児島に来ることは確定してるし、どうせ知り合いなら会いに行ってみたら? 要望なら上に話付けとくが」
「仕事で忙しいだろうし、俺たちに構ってる余裕はないと思うぞ」
「そう? アクアがそう言うんなら別にいいけど……」
まさか、そのロリパイセンから突撃してくるとは思わないアクア少年だった。
「で、この有馬 かなさんが、
「確か有馬氏は転封で越前越後辺りに流されてましたよね? 銃創を舐める発言も踏まえると、可能性はゼロじゃないかと思われます。鹿児島に来るのも、何か思惑があって……?」
「そうなると厄介ごとだな。警戒はしとくか?」
「か、かなちゃんは、そういうんじゃないと思うけど……」
「じゃあ違うか」(手のひらドリル)
黒川様がそう仰っているのであれば大丈夫だろう。
【肥前有馬家】
鎌倉時代から続く名家。戦国時代では龍造寺家が南下してくる際に、島津家と共同戦線で撃退した歴史(