薩摩の子   作:キチガイの人

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 シリアス回?です。
 ようやく登場しました。構想的には50話くらいでキャラ決まってたんですけどね。
 感想お待ちしております。


116.水と油

 休日を利用して、星野一家+αは島津宗家の本拠地へ足を運んだ。ここに来るのはアイは何回か、そして双子は今回が2回目ではあるが、その明治・大正時代の疑似西洋式の物件を物珍しそうに眺めていた。最初はウチの実家のような武家屋敷を想像していたらしいが、島津の名とあまりにも()()()()()建物に混乱したとかしなかったとか。

 俺としては馴染みのある家づくりなんだけどね。

 この島津宗家の自宅も西洋大好きおじさんこと島津 斉彬(島津家28代当主)の影響を受けている。

 

 自宅前で税所夫妻と合流した。

 これだけでも、今回島津宗家を訪れた理由は察せられるだろう。ちなみに当主殿は不在であることは明言しておこう。

 余談だが、今回正式に呼ばれているのはアクアと黒川さんの2名のみ。呼ばれてない俺以外は付き添いとして承諾を得ている。

 俺も行くでって言っといた。無視されたけど。

 

 いつものように客室に案内された俺たちは、呼んだ張本人を迎え撃つために事前の打ち合わせをしておく。とは言っても、呼ばれた目的は知らされてないが、アイが変態から聞いた事前情報と照らし合わせると、大方の予想はつく。

 あとは原作者を待つだけだ。

 

 客室のアンティークな椅子に座り、出された飲み物で喉を潤していると、扉が開き、役者経験を呼び寄せた人物が姿を現す。

 凛とした綺麗な顔立ち、本来なら腰まであるだろう長く美しい黒髪を雑に後方でまとめて結い、覚めた瞳を室内の全員に向けている。身長は同世代の女性平均ほど、カジュアルな服装をしているが身体は細身……というか、俺は()()()()()()()()()()の説明をしているのだが、どう頑張っても少女の外見説明っぽくなってしまうのは気のせいだろうか?

 その少女のような外見の少年は、左腕を後ろ腰に回し、右手の甲を俺たち側に向けるような形で掲げる。そして、外見相応のソプラノを響かせながら──

 

 

 

 

 

「──降臨、満を持して」

 

「「「「………」」」」

 

 

 

 

 

 初対面組の思考力を奪っていく。

 俺も説明していて性別が分からなくなってくるが、この少女のような少年は島津 忠影(ただかげ)。天上天下唯我独尊を地で行く、合理主義の権化。そして──島津家全員奇人変人の代表格とも呼べる人物である。

 そして俺のことをめっちゃ嫌っている。嫌っている。室内に入ったときに、全員を見渡していたが、俺に関しては目を合わせようともしなかった。

 

 

「……とてもユニークな御仁だな」

 

「堂々と『島津家ってこんなんばっかか?』って言ってくれてもええんやで」

 

 

 かろうじで意識を取り戻しかけたアクアは、空気を呼んで遠回しに『コイツ頭おかしいな』をオブラートに包みまくって発したが、この人が変人なのは島津家どころか九州全土でも有名な話なので、気を使う必要はないと思った。

 それでもアクアは言葉を選ぶ当たり、やっぱり生前の人生経験の差と言うものを実感する。

 他面子も遅れながらに忠影に挨拶をするが、どうしても登場時のインパクトが頭から抜けないのだろう。それはもうしゃーない。咸も苦笑いをしているし。

 

 対岸の席に着いた忠影は、持ってきた鞄から二枚の書類を取り出し、アクアと黒川さんの前に置く。持ってきた鞄を床に置いて、あのポーズと共に迷言を発したのだから、彼がいかに変人であるのかを物語っているだろう。

 アイ含め県外組に最近紹介する薩摩の民が奇人変人ばかりで、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。新納先輩と忠影が島津家変人筆頭みたいなものだから、これ以上のものは出て来ないからね? あとは細々とした奇人変人変態だけだから安心してほしい。

 

 

「………」

 

 

 本当にそうだっけ?と記憶を漁る。

 若干の現実逃避を行っていると、忠影から今日の説明を受ける。

 

 

「時間がないから手短に話させてもらう。私が原作に携わる『機械少女(デウス・エクス・マキナ)は今も笑わない』の舞台化が、ここ鹿児島の地で公演される。その劇の出演オファーの件だ」

 

 

 忠影はアクアを見据える。

 

 

「星野 愛久愛海(アクアマリン)殿、その紙に契約内容が記載されている。目を通してほしい。本来なら事務所経由で依頼するものだが、愛久愛海殿がフリーの為、このような形をとらせてもらった。細かな劇の詳細に関してはカミキヒカル氏に一任している。無論、断るのならそれでもいい」

 

 

 そして、視線を黒川さんに移した。

 

 

「──お供その7259、さっさとサインしろ。私を待たせるな」

 

 

 アクアとの扱いの差が雲泥だった。

 その様子にアイがムッと眉間に皺を寄せたが、忠影はそれに気づいてアイを横目に鼻を鳴らす。

 

 

「不服か、お供その7022」

 

「その呼び方をやめてほしいんだけど」

 

「私の臣下をどう呼ぼうと、私の勝手であろう? 愛久愛海殿……そして、妹の瑠美衣(ルビー)殿の扱いと、お供その7259(黒川 あかね)の扱いが違うのは当然だ。前者は()()であり、後者は島津の者なのだから」

 

 

 これにはアクアも目を細め、ルビーも表情に影を落とす。一見特別扱いにも見えるが、遠回しに「お前らは余所者だから」と言われているのと同義である。忠影は双子を島津の一員として認識しておらず、庇護する存在じゃないと言っているようなものだった。

 俺はようやく口を開く。

 ここまで言われちゃ看過できん。

 

 

「そこまでにしたらどうだ、忠影。そもそも臣下云々の前に、お前まだ当主じゃねぇだろうが。あと、先の発言は俺の家族に対する侮辱か?」

 

 

 忠影は今日初めて()()()()

 読み取れる感情は嫌悪感。憎悪とも呼べるソレは、遠慮なく俺を射抜いた。

 

 

「──あぁ、そうだな()()。まだ臣下じゃないな。貴様のせいで、次期当主の座は決まったものだが。それに、先の発言は取り消すつもりはない。事実しか述べていないだろう? そちらの家族ごっこに、私が付き合う必要性が感じられん」

 

「俺ん子供たちを余所者扱いたぁ、良い度胸だな?」

 

お供その7022(星野 アイ)と、そこの2名の血の繋がりを証明できるのであれば、適切な書類を私の前にもってこい。貴様らの前世の関係なんていう妄言に、私を巻き込むな。まぁ、百歩譲って貴様と鬼島津が()()()身内扱いしているとして、頭が少々よく回るだけの兄と、特筆するべき点のない妹に、有用性を私は感じられんな」

 

「家族に有用性を求めている時点でお笑い草だ。お前にとっては関係ないかもしれんが、俺にとっては家族同然だ。信じる信じないは結構だが、それを無視できるほど俺は非情じゃないんでね。そもそもの話、言葉には気をつけろと昔から何度も言っている」

 

「貴様に私の言葉遣いに関する説教される筋合いはない。迷惑だ。昔の話を持ち出すのなら、貴様とて島津としての責務すらロクに果たせぬ半端者だろう。他がどう思おうとも、私は貴様を『島津』として認めん。だいたい、女にかまけて──」

 

 

 それから数回ほど言葉の鍔迫り合い行ってみたが、両者平行線のまま時間を迎えることになった。まぁ、俺が感情論で話をする一方、忠影は自身の立場を淡々と語っているだけに過ぎないので、決着がつくとは微塵も思っていなかったが。

 客観的に見れば忠影の言っていることは正しいからな。しかし、こちらとしても譲れぬものはある。

 

 忠影は自身のスマホで時間を確認し、話を遮る。

 

 

「時間だ。……チッ、貴様のせいで無駄にした。愛久愛海殿、瑠美衣殿、大したもてなしもできなかったが、これにて失礼する。お供その7259(黒川 あかね)、それに署名捺印したのち、そこのお供その29(税所 咸)に預けておけ」

 

 

 鞄を手に退出しようとした忠影は、去り際に振り返って俺を睨んだ。

 

 

「隣の客室にお供その18……貴様の上司が居る。相手しておくように」

 

「お前それ先に言えよ」

 

 

 締まった扉を睨みながら、俺はため息をついた。

 俺からは特に用事はなかったが、確認しておきたい用事は何点かあったのだ。せっかく対面で話せるのだから、この機会に会っておこう。

 星野一家、税所夫妻に一言断りを入れて、俺は自分の居る客室を出る。

 出ながら──もう忠影との関係修復って不可能じゃね?と思わなくもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みっちゃん、あれ何?』

 

『アイさん落ち着いて下さい。目が全然笑ってませんよ?』

 

『もしかしてなんだけど……彼と桜華君って、相当仲悪い? 咸君はなんか知ってる?』

 

『……何と言いましょうか。話すと長くなってしまうんですが、結論から言ってしまえば──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──忠影殿は桜華の元ファンの反転アンチです』

 

 

 

 




【島津 忠影】
 島津家次期当主候補。変人。身内には高飛車で高圧的だが、合理主義の権化。主人公に対しては感情的になる。自身の部下を『お供その○○』と呼ぶが、全員顔が一致しているので、その数字を間違えることはない。数字は出会った順。数字が変動することはなく、もちろん番号は故人も含まれてる。
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