薩摩の子 作:キチガイの人
アイが薩摩を引っ掻き回したし、じゃあアイ以上のポテンシャルを持つルビーは何をやらかすのか。
感想お待ちしております。
考えが甘かった。
迂闊だった。
私はロリ先輩の行動力を舐めていた。……そうだよね、みなみもそうだったし、恋する乙女の行動力の底知れなさは、自分がよく知っているはずなのに。
滞在期間が長くなるロリ先輩に、お兄ちゃん先生とパパママが同行している。ロリ先輩は鹿児島へ来たのは初めてって言ってたので、ホテル周辺にある雑貨店やコンビニとかを、地元民のパパママ主導で案内するんだとか。
その間に、みんなは税所家別荘(私たちの自宅の隣の隣)に集まって緊急作戦会議を行うことになった。ママのように時間をかけてゆっくり外堀を埋める作戦は少しずつやってたけど、ライバル登場ともなればうかうかしてられない。
あかねちゃんと咸君は言わずもがな、不良とマイペース、マイペースのお姉ちゃんでもある撫子先輩も参加してくれることになった。そして──
「……どうして、コイツがここ居ンの?」
「『コイツ』とは随分な物言いだな、
──自宅前で合流した
先のレストランから帰宅し、途中で現次期当主候補も合わさり、計7人の大所帯がココに集まった。私の計画に賛同してくれた人たちが。
「ここに僕たちを呼んだ理由……ってのは、正直言わなくても分かるよ? あれはダークホースだねぇ。しかも、幼少期からの知り合いときた。アクアも隅に置けないんじゃない?」
「常識的に考えて、どれだけ前世今世含めて付き合いの長さを提示したところで、分が悪いのはルビーさんですからね。彼もルビーさんのアタックを諦めさせるために、遠目からのやりとりで満更でもなさそうな様子を踏まえると……有馬氏を選ぶ可能性も捨てきれません」
お兄ちゃん先生がスケコマシ三太夫なのは周知の事実だし、ロリ先輩が何となくアクアを狙ってるなぁ程度には思ってたけど、物理的に距離が遠くなったので、そこまで慌てる必要はなかった。アクアに告白するような薩摩の女共もいたが、外見は芸能科の面々で目が肥えているだろうし、性格もこんな短時間の交流で分かるはずもなく、そんじょそこらのメスに靡くようなお兄ちゃん先生じゃないのは知っている。
せめてアクアと同じ産道通るか、アイ並みの顔面用意してから出直してほしい。
……なんて楽観視してたら、ママには遠く及ばないけど、別ベクトルの
「どれだけ顔面偏差値の暴力があろうと、前世の縁があろうと、結局は妹でしかないことには変わりない。それを覆すだけのアドバンテージがあるかって言われたら……正直厳しいわね」
「現状、
撫子先輩と忠影君の言葉に、想像以上劣勢な私の状況を再認識する。
私はお兄ちゃん先生に言えることなんだけど、島津のみなさんは私たちに価値を見出していない。ママの状況が特殊だっただけであり、あくまでも『星野 アイの子供』としか見られてない。
と、なると。
私のインモラルな夢を叶えるためにも、彼らの協力が必要な私に残された道は一つ。
「うん。だから──
私はあかねちゃんのように、持続的に彼らに貢献できるような能力は持ってない。そうなると、私ができる範囲で大きな恩を売り飛ばし、私の結婚に協力してもらえる環境を作るしかない。
忠影君は自分が次期当主に相応しくないと思っているし、パパも忠影君と仲直りしたいと思っているし、島津の人たちもパパが相応しいと思っている人が多い。そんな話を忠影君とパパ、そして咸君から聞いたとき、私がこう思った。「これパパが次期当主になればすべて解決するじゃん」と。
それを提案したら、賛同してくれる仲間がこんなに集まった。
これなら割と簡単にパパが当主になれるんじゃないかって期待したけど、現実はそんなに甘くなかったけどね。
「問題点が二つ。一つは、既に桜華が候補から降りている点です。既に継承権を破棄した者が、再び名乗りを上げる前例を作れば、家督争い激化の要因になってしまいますよ。二つ目は……言わずもがな、桜華にやる気がさっぱり微塵もないってことですね」
「……どうして桜華君は当主になりたくないのかな? 咸君は何か知ってる?」
「素質があるのと、やりたいのとは別問題かと。あかねだって、もし対魔忍の素質があるからと言って、対魔忍にはなりたくないでしょう?」
「その二つは同列に扱っていいの?」
たいまにん? 二人が何言ってるのか分からない。
後でお兄ちゃん先生に意味を聞いてみたところ、普段のクールなアクアとは別人なくらいに怒りながら「ちょっと五代を殺してくる」って追いかけ回していた。
「あとは桜華を説得するか、桜華と現当主が覆せないレベルの支持を集めること。前者は簡単そうに見えて、あの洒落にならないくらいの頑固者の意見を変えるのは、アイさんくらいじゃないと厳しいでしょう。そして、彼が本気でやりたくないことを、彼女がさせるはずがありません。となると、自然と後者になりますね。税所家は懐柔済です」
「桜華包囲網を形成して、『はい』か『YES』しか言えないような状況を作れってことね。とりあえず種子島家は賛同したよ。させたよ。拒否権は与えなかったよ。姉貴が」
「こっちも渋ってたが、まァ、支持するって話だったわ。……マジで『みなみの親友からの頼み』ってダメ押しで、手のひら返すウチのババァ何なンだよ」
他にも新納先輩の実家の人たちも応援してくれるって話だし、咸君の話だと薩摩を拠点とする人たちの懐柔は良好、大隅はぼちぼちって話だって。
そして問題は……私が死んで、私とアクアが生まれた県。
「
「少し前までは大友方だったもんね」
むぅ、そんな上手くいかないっか。
すぐに終わるとは思ってなかったし、時間をかけてやるべきことだけど、私としてはどうしても早く実績を作りたい。お兄ちゃん先生と思う存分イチャイチャしたい。
「──む? 何を悩んでいる、お供共。既に日向は懐柔済だぞ?」
と、忠影君はつまらなそうに口にした。
私としては「ナイス!」と手を叩いて喜ぶ心境だったけど、あかねちゃん以外の薩摩組は唖然とした表情で彼を見ていた。
「……え、マジ? 冗談でも笑えないよ?」
「ふん、その程度の雑務を私がこなせないとでも? 甘く見られたものだな、
「どうしよう、やっぱコレが次期当主やった方がいい気がしてきたんだけど」
マイペースの発言に対し、忠影君は「私は裏方向きだと再三言っただろうが」と愚痴をこぼす。まぁ、仕事のできる忠影君が、パパを支えていくって構図はいいよね。ママと一緒に活動していた『B小町』的な。
……あ、ごめん。なんか『ママがセンターに立って、後ろでママと同じアイドル衣装で踊る薩摩組』を想像して吐きそうになった。ママの魅力でも相殺できなかった。地獄だった。
特にフリッフリの衣装を着た不良はダメだった。
「こうなると……あと私たちができることって何だろう?」
「貴女は引き続き税所家のドM共が余計なことをしないよう見張っておくのと、支持率上げじゃないかしら? ……これ軍師の仕事じゃないわよね? やってること議員選挙と変わりないんだけど」
「似たようなもンじゃねェか」
撫子先輩は「それでも桜華を押し上げられるか微妙なところだけど」と呟く。
うーん、島津家って三州が範囲って聞いたから、そこを抑えれば何とかなると思ってたけど、それでも足りないかもしれないのかぁ。えー、他に何すればいいんだろう?
私は少し悩んで、ちょびっと悩んで、すっごく悩んで。
この時、アクアならどうするだろうって考えて、
「あ」
「
「「「「「……は?」」」」」
ルビー「みなみって……島津の人たちからはどういう印象なの?」
未来「暴力装置の操作ボタン」
咸「難攻不落の城塞を堕とした、城攻めの名手」
撫子「聖母」
あかね「何がとは言わないけど。正直、羨ましい」
兼定「遺憾」