薩摩の子   作:キチガイの人

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 良き評価や面白い感想をいただけると、嬉しい気持ちになって執筆も捗るものです。読者の皆様方、本当にありがとうございます。
 さて、次の回執筆も頑張──


『決 戦 ! 星 の 古 戦 場 !』


 ──頑張ります(目を背けながら)。


013.将来への布石

 学校生活において部活動の選択は、今後の3年間を大きく左右すると言っても過言ではないだろう。友人関係然り、評定然り、そして今後の人生設計然り、だ。

 ××高校においても、部活動の加入は積極的に行うよう教師陣からの通達があり、強制ではないが、わざわざ彼らの心象を悪くする必要もないだろう。実際のところ、俺もどの部活動に参加するか、事前に配られた冊子を現在進行形で眺めている。

 

 別に実家からも何か指示が来ているわけでもない。なので、この選択は俺の自由にさせてもらおう。

 しかし、自由とは責任が伴う。

 

 

「──そんで? アイはどこの部活動入るんだ? あ、金銭面的には気にしなくていいって、星野の母さんは言ってたぞ」

 

「オーカが入るところであれば、どこでもいいかな」

 

 

 昼休み休憩。

 俺の所属する教室で、俺とアイはいつものように食事を摂っていた。若干離れたところには、俺らが部活動の話をしていると聞いては否や、密かに聞き耳を立てる者達が数名。

 そして、彼女の答えは8割方予測通りのものであった。

 

 

「お前んところに部活動の勧誘来てなかったか? 主に男子スポーツのマネージャーのお誘いだけど。そこら辺は考慮しなくて大丈夫なん?」

 

「君の入る部活ならマネージャーするよ。もちろん、オーカのことしか世話しないけど」

 

「初手専属つけられましても……」

 

 

 実質、誘いを蹴っていた。

 あれなんだよなぁ、そうなると男子勢の俺へのヘイトがとんでもないことになるんだよなぁ。ただでさえ、彼女ではなく俺に、彼女が男子スポーツのマネージャーになるよう説得依頼が来ている。んなの俺の一存で決められるかよ。

 加えて、だ。この前発覚した問題への解決も並行して行わないといけない。

 

 それは言わずもがな。

 俺の童貞消失までのカウントダウンだ。

 

 悲しいことに俺は生粋の魔法使いになる道は閉ざされた。いや、まぁ、率先してなるものではないが、俺の意思の有無関係なく、あと数ヶ月で消える運命が待っている。気分的には、夏休みの終わるロクサスみたいな心情だ。俺の童貞とロクサスの存在を比較対象にするのも烏滸がましいが。

 少し前まではアイのことを恋愛面で任せられる益荒男を必死になって探していたが、兼定の推測により、俺は中央駅での事件から既に詰んでいたことが発覚した。俺はもう彼女とのゴールインを決定づけられていたのだ。

 

 別に彼女に不満があるわけではない。

 むしろ内外ともに非の打ちどころのない可憐な少女である。俺が釣り合ってないのでは?って週に7回ぐらいは本気で考える。

 巨乳好きという性癖から見れば若干外れるが、実際のところ俺にだって現実と空想の区別ぐらいはつく。というか性癖に従おうものなら、咸と兼定は捕まるし、未来は人体改造が前提の話になる。

 

 じゃあ、何が問題なのか。

 純粋に俺の心情の話だ。

 

 俺には恋愛感情というものが分からない。親愛の情というものは、家系柄上遺伝子に叩き込まれているが、どうも恋愛感情というものは、家族愛・身内愛とは異なるものらしい。多方面の情報から推測するに『特定の異性を心の底から求める』というものだとか。

 ……どういうことなんだ、それは。別に親愛で良くないかソレ。アイは俺にとって身内だ。何があろうと俺が守る覚悟はある。だが、聞く話によると、それは恋愛感情とは似て非なるものらしいな。

 

 そもそもの話、俺にとってアイは妹分のような感覚がある。

 精神年齢的には彼女が一回り上だが、桜華は彼女を妹のように接してない?と未来の阿呆に指摘されたことがある。それって身内愛だよね?って話だ。

 ……妹分とセッ〇スする約束しているってどうなの?ってツッコミは一切受け付けない。

 

 つまり今後の課題は、彼女を『手のかかる妹分』から『世界で一番愛してる女性』へと、認識を変更することにある。

 ……もう徳川家諸共クソ旦那ブッ殺して、双子の元に彼女を送り届ける方が楽な気がするんだが。いいじゃん、徳川と元旦那は死ねてハッピーだし、双子は母親と再会できてハッピーだし、アイも最愛の子と暮らせてハッピーだし、誰も不幸にならないじゃん。ダメですか? そうですか……。

 

 

「……ホント、愛って何だろうなぁ」

 

「元大人気美女アイドル兼将来のオーカのお嫁さん」

 

「お前じゃねぇ座ってろ」

 

 

 ドヤ顔でピースするアイに、俺は天を仰ぎ見る。教室の天井しか見えないが、俺には暗雲が立ち込めているようにも見えた。

 

 さて、話を戻すか。

 

 

「スポーツ系は……別にいっかなぁ。ただでさえ身内の上下関係に四苦八苦してんのに、部活でも好き好んで上からこき使われる献身さは微塵も持ち合わせておらん」

 

「体育のときのオーカはカッコいいけどね」

 

 

 ……今ちょっと心にグッと来たじゃん。やらないからね。

 実家の示現流講習に比べたら、学校の体育なんぞ子供騙しに過ぎん。運動センスあるじゃんとか俺に言う奴は、とりあえず親父殿に脳天ぶち抜かれてから出直してきてほしい。

 

 

「そうなると、文化系の部活を選ぶことになるんだが、吹奏楽部は文化部の皮をかぶった運動部だし、楽器ってカスタネットとトライアングルしか出来ん」

 

「逆にそれができない人を見たことないなぁ」

 

 

 放送部も書道部も……なんかピンと来ないんだよなぁ。

 紹介冊子をペラペラ捲っていると、とあるページが目に入る。それは部活と呼べるものではなく、活動時期は昼休みと放課後のみ。少々の雑用で放課後駆り出されることもあるが、束縛時間は部活よりも少ない。何といっても、これも一応『部活』として教師陣が認識するので、悪くはない。

 

 俺はアイだけに見えるように指さす。

 彼女は俺の意図を理解して……ニコっと頷くのだった。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

堀之北(ほりのきた)先生、メンバー少ないんですね」

 

「そうねぇ。みんな正式な部活動の方に行っちゃったからねぇ」

 

 

 場は図書室。

 人のほとんどいない本の宝物庫には、司書の先生である堀之北先生の他に、俺とアイ、他数名のみが物静かに時を過ごしていた。

 俺の指摘に彼女は困ったように笑った。

 

 図書委員。それが二人の選択した()()だ。

 活動内容はカウンターで書籍の貸し出しの手続きを行うことであり、新刊の防水加工や展示棚の装飾等も仕事である。ゆったりとした時間を過ごしたい人、黙々と雑用をこなしたい人には、ぴったりな選択だと思われる。

 おばちゃん先生曰く、今期の図書委員希望者は少なく、同学年でも数名の女子生徒しか加入しなかったらしい。どうも、どっかの誰かさんの影響で、『部活動でバリバリ自分の良いところを見せつけたろ』や『あわよくば例の誰かさんとお近づきに』という男子生徒が大量に居たのだとか。ちなみに部活動の変更は基本認められず、辞めると帰宅部(在野)になる。

 

 アイさん(その元凶)は、今年60を超える堀之北先生に、部活動のことであれこれ質問をしていた。生前はドラマなどで生徒役などをこなしたことはあれど、本格的に部活動というものをしたことがないと言っていた。

 これを機に、彼女には学校生活を楽しんでほしいものだ。部活動のチョイスは俺に付き合わせて申し訳ないが。

 

 

「カウンター当番って2人1組で行うんですよね?」

 

「仕事の内容的には、1人でできるんだけど、基本的には2人1組で行うわよ。組み分けに関しては……仲のいい人と固定で組むことが多いわ。私もいちいち当番を考えるのが面倒だからねぇ」

 

「……その、当番を私とオーカ──島津君と一緒にって、できますか?」

 

 

 堀之北先生は顔を赤らめるアイと、全然話を聞いてなかった俺を交互に見て、何かを察したのか意味深な笑みを浮かべるのだった。

 あらあら、とわざとらしく口元を隠しながら。

 

 

「えぇ、いいわよ。島津君も星野さんと当番固定でいいかしら?」

 

「……え? あ、はい。大丈夫です」

 

 

 それじゃあ決定ね、と当番表を埋めていく堀之北先生。毎週金曜日が俺とアイの当番となった。もちろん当番以外にも図書室でやる仕事など数多くある上に、今期は男手が圧倒的に少ないので、書籍の移動のために図書室に顔を出してね?と言われた。

 去り際に、アイに向かって「頑張るんだよ?」とウインクしながら檄を飛ばしていた。

 

 今日の仕事はなかったが、俺は図書室を十数分歩き回り、カウンターに居る先輩のところに赴くのだった。メガネをかけた女子生徒は、俺の差し出した数冊の本と、俺の顔を交互に見て、意外と言いたげに貸し出し手続きを行うのだった。

 

 

「返却期限は2週間後ね」

 

「ありがとうございます」

 

「……そういう本、好きなの?」

 

「──そういうわけじゃないんですけど」

 

 

 俺は貸出が終わるのを椅子に座って待つアイを尻目に、苦笑いを浮かべながら答えるのだった。

 

 

 

 

 

「──少し、勉強を」

 

 

 

 

 

 俺は『風立ちぬ』『ロミオとジュリエット』『舞姫』を手に、彼女の元に戻るのだった。

 

 

 

 




【島津 桜華】
 今作の主人公。図書委員になるついでに、恋愛関連の純文学を読み漁る試みをみせる。果たして役に立つのだろうか?

【星野 アイ】
 今作のヒロイン。転生者。初めての部活動に興味津々。部活動と呼べないのでは?という質問は受け付けない。クラスが違うんだから、主人公のいる課外活動だったら何でもいいんだよ。
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