薩摩の子 作:キチガイの人
初手に次章の伏線を残していくスタイル。
ところで感想で「
あと鹿児島大学の人文学部って5~6年前に併合されて跡形もないそうです。この世界線では奇跡的にあることにしてください。
「──でさ、みっちゃんが女の子とLINEしてるんだってさ」
「マジで? お相手は誰なんよ?」
「1つ年上の役者さんだって。なんだっけ? 何とかライ?ってところで、結構有名な女優さんって聞いた」
「特定材料がおぼろげ過ぎるなぁ」
いくら俺が名家のボンボンであろうと、同棲生活を送っている以上、世間一般と同じ生活をしているわけである。通帳と睨めっこしながら、栄養も考慮しての食事のバランスも考え、必要な生活品の補充も忘れない。
確かに仕送りは貰っている。双方の家からなので、かなり多い。
だからこそ月々の支出は抑える必要がある。なぜか俺は15歳のガキの時点から、貯蓄をしないと乗り越えられないイベントが待っているからだ。
そう、俺とアイが付き合う(=墓場直行)と、なんと不思議なことに二児の高校生の義理の父親になってしまうのだ。
どういうことだってばよ。
そんな事情もあり、俺とアイは近くのスーパーへと入店する。
冷蔵庫の中身が心許ないので、食材の買い出しに来たのだ。いつもは一人で来ているが、俺はまだ重い荷物を持つことを許されてない。
持った瞬間に、強制的に口が封じられる。
「後で咸を尋問してみるか」
「カゴ持ってきたよ」
「あざーす。カートに乗せといてくれ」
俺はスマホのメモ帳を見ながら礼を述べる。
そもそも今日の晩飯はどうしようか。
「今日の晩飯何食いたいよ?」
「オーカの作るものなら何でも!」
「食パンにジャム塗って出していい?」
「……考えまーす」
アイが店内を散策し始めたのを確認して、俺は自分の目当てのものを探しに行く。
今の彼女の服装は、おとなしめのコーデ。とりあえず伊達メガネに帽子被っているが、そんなんで彼女の存在感隠せたら苦労しないわな。やっぱり歩いていると二度見はされる。
中には『アイって昔いたアイドルに似てる』と何回か言われたことがあるらしい。本人なんすよ、ソレ。
必需品と値段を照らし合わせながら、時には取捨選択しカゴを埋めていると、元人気アイドルの美少女がニラと卵とニラ玉の素が入った商品を持ってきた。
字面すげぇな。アイがニラ抱えてるよ。
「ほー、面白そうなの持ってんじゃん」
「作ってくれる?」
「よしきた。盛り付けるの面倒だからニラ玉丼にしようか」
ハイテンションな彼女がカゴに物を良い感じに詰めているのを横目に、俺は近く商品棚の一つに目が止まる。
普段より安い値段で置かれており、ご丁寧に普段の値段との対比まで記載されている。俺はそのうちの一つを手に取り、裏の作り方を注意深く観察する。
そしてアイも気付いたらしい。
てくてくと近寄って来る。
「あー、それ懐かしいなぁ。B小町のメンバーとも食べたことあるよ」
「……あぁ、アイドルグループのメンバーか。そんな大昔からあるのかコレ」
「大昔は言い過ぎだよ?」
アイに頰を軽く抓られながらも、商品を手放すことはない。
「久しぶりに食べる? 牛乳あれば出来るよね?」
「そーだなー」
二人だと少し多いか?
まぁ、このタイプのデザートなら食えるか。
そこまで考えて──俺は悪魔的な閃きが脳を駆け巡る。
まさに邪道。しかしながら、それを止める者はアイしか居らず、そして止めることはないだろう。ヤバい、やってみたい。絶対コレ幸せになれるやつだ。
俺の心の中の島津義弘公も頷く。
『フルーチェ分けるは女々ぞ』
俺は即座に行動した。
アイへ挑戦的な笑みを見せる。
「──アイ、これ一人一箱食ってみたくない?」
「………? ──っっっっ!!!??」
何言ってんだコイツみたいな怪訝な顔をしたアイだが、どうやら俺の言っていることが脳に到達したらしい。雷に打たれたように目を見開いて固まった。
そうだよな、そうなるよな。
一人暮らしでやってみようと前々から思ってたけど、甘い物の丸々独占ってやってみたいよな。ケーキホール食いとか。
「い、いの? 一人で食べて、いいの?」
「誰が妨げるんだ?」
「……おかあさん?」
「残念だったなぁ、星野のかーさん。ここにいるのは俺とアイだけだ」
つまり、決行しない手はない。
目を輝かせたアイは、桃味のフルーチェの箱をカゴに入れ、「牛乳取ってくる!」と脱兎の如く駆け出した。途中、今にも召されそうなババアに当たりそうになったが、持ち前のバランス能力で、華麗に回避する。
俺が冷凍食品コーナーで物色しているころには、ホクホク顔で牛乳2本を抱える元人気アイドルの少女が舞い戻る。二本いるか? まぁ、余れば飲めばいいか。
「……これだけあれば十分か。米は5キロ、冷凍食品もOK。肉に野菜も、問題なしと。よし、会計行きましょか」
「はーい」
カートを押してレジの列に並ぶ。
アイと軽く雑談している間に、俺たちの番になる。
俺は商品がパンパンに積まれたカゴを持ち上げようとして、すかさずアイがカゴをかっさらう。しかし、そこまで力仕事に向いているわけではない彼女には重く、ぐぬぬと悪戦苦闘しながらレジにカゴを置くのだった。それは5キロ米でも同じこと。
店員から「お前持てよ……」と絶対零度の視線を受け、何なら列に並ぶ人間からの冷めた視線も、俺にとっては苦痛でしかなかった。
いや、ちゃうんすよ。俺持つと怒るんですよ、この娘。
「──オーカは重いもの持っちゃダメ、だからね? 無理しちゃったら、この前みたいに手術で縫ったばかりの傷口が開いちゃうんだから。重いものは私に任せて」
「お、おう……」
その視線を彼女も理解していたのだろう。
わざわざ後方のお客様にも聞こえるように、自然と嘘八百で視線を緩和させる。俺の負傷した腹部をさする演技付きだ。
俺は目を細めながらも礼を言う。
幾分か対応が柔らかくなった店員との会計も済ませ、カゴの中身をレジ袋に入れる作業を始める。本当ならエコバッグとか持ってく方がいいんだろうけど、レジ袋がゴミ袋に丁度いいので、たとえ有料であろうと買ってしまうのだ。
いや、ね? 普通に袋買った方が安いのは分かってるんだけど、どうも買ってしまうのはなんでだろう? 人間が値段より利便を優先させた結果である。
「ほれ、それ寄越せ。こっちに入れる」
「オーカは持っちゃダメって言ってるじゃん」
「軽いものしか詰めないから安心しろ。そもそもの話、これ全部持つのは辛いだろ」
「うぅ……じゃあ、そのくらいなら……」
俺は冷凍食品や肉類を詰め込んだレジ袋を片手に、アイは牛乳や野菜の入ったレジ袋と、米袋を抱えて外に出る。この光景を『アイ』のファンが知れば失神するんじゃなかろうか? それか俺の傷口に再度ナイフがブッ刺さることだろう。俺らの天使に何させとるんじゃいっ!的な。
しかし、当の本人は嬉しそうである。どうも俺の手伝いをすることに関しては、かなり負担のかかることでも上機嫌でこなそうとする。
前ほど情緒不安定さも無くなったしな。
俺が女子生徒や若い女性と会話すると、俺の腕や手に接触して牽制し始めるし、内外共にベッタベタにくっ付いてくるし。依存度は増している気がしなくもない。
彼女が俺と話をしてもいいと認める同世代の女性は撫子だけである。アレとしか話しちゃいけないんですか?って話だが。俺はどうやら理性と常識を兼ね備えた女性と縁がないらしい。
「……大丈夫か?」
「………………平気だよ」
目を細めてため息をつき、俺は重いものをパンパンに詰め込んだ方のレジ袋の手持ち部分をアイと共有する。1つのレジ袋をそれぞれ片手で持っている格好だな。もう片方の腕は米袋を抱えているのだから、本当は相当無理をしているはず。
これで幾分か緩和されるだろう。
「……嫌か?」
「……ううん、全然、嫌じゃないよ」
耳を真っ赤に染めたアイと共に、遠くない自宅を目指して歩く。
彼女に負担をかけたくないので、バレない程度に重い方のレジ袋を持ち上げていると、アイは独り言のように呟いた。
「オーカは、優しいね」
「そうか?」
「優しいよ。すっごく、優しい。私のオーカは、私の大好きなオーカは、優しいんだよ」
優しい、か。
そんなの──彼女と会うまでは言われたことなかったな。
どうも最近の彼女の言葉は心に残る。
その理由を探りながらも、俺は帰路を少女と共に歩く。
「フルーチェ美味しい! こんなに食べちゃったら太るかな……?」
「太らないだろ? というかデザート食って太るものなのか?」
「オーカ、それ以上は戦争だよ」
【島津 桜華】
主人公。今回の序盤伏線で、『彼の義理の双子(同い年)は転生者であり、息子は娘の想い人で、近親婚が発生する可能性がある』というフラグが立ってしまう。つまりアクルビする。その情報で主人公は爆発四散する。
【星野 アイ】
ヒロイン。転生者。今回の序盤伏線で原作の劇団のエースとアイが同じ高校に通うという、不思議な展開が発生する可能性が浮上してきた。そして山田先生が担任する。どういうことだってばよ。
【
主人公の幼馴染。なんの因果か、劇団のエースとLINE友達になる。ちなみにこの世界線、コイツの復讐劇の妨害工作で双子の復讐計画がだいぶ遅れており、その関係で黒川さん家の生存フラグがコイツに一任されることになる。原作崩壊? 原作に島津も徳川も鹿児島大学人文学科もいないので今更。