薩摩の子 作:キチガイの人
感想、評価頂けると幸いです。
あと今回のハンドルネーム等は別に覚えなくてもいいです。
最近『アイドル』を聞いてると、
アイ『歌い踊り舞う私は薩摩♪』
の幻聴が聞こえますし、曲流れる時の奥の男性の合の手が当主様がサイリウム振ってるようにしか聞こえなくなりました。耳鼻科行ってきます。
その相談が持ち掛けられたのは夜の事だった。
「──そのゲーム実況配信に、俺とアイを?」
『クソ姉貴曰く、出させろとさ。この底辺実況者に何やらせるんだが……』
最初は未来からの電話にベランダへ出て対応したが、そう物騒な話ではなかったので室内に戻る。仕事用の携帯から電話来たからビックリしたわ。
そしてこの会話に至る。
種子島未来という男はVTuber(2Dもしくは3Dのキャラクターの姿を使った動画実況者)で、主にゲーム実況を細々と行っている。ライブ配信はあまりせず、時折ゲーム実況しては編集し、YouTubeなどに投稿しては適当に楽しんでいる。もちろん何かしらに所属しているわけではない。
そんな趣味で動画配信している男に
俺だけでなくアイも指名している時点で、何がしたいのかの想像はつく。
「でも俺もそうだが、アイもVTuberじゃねぇぞ。コラボとか難しくないか?」
『底辺実況者がコラボとかにクオリティーを求めてるわけないでしょ。どうせ僕のアカウントから投稿するから、ガワは僕だけで、桜華とアイちゃんは肉声のみだよ。ちなみにあかねちゃんも出せって言われて、なんか知らないけど咸からOK貰ってる』
「アイツは黒川さんの事務所か何かか?」
『まぁ、あかねちゃん本人に案件持ってくより、咸に話し通した方が確実と言えばそうなんじゃない?』
咸の言うことなら二つ返事で了承しそうだもんな。
しっかし、動画実況ねぇ。アイが果たして何て言うかね。アイドルやらないと言ってた少女が、声だけとはいえネットの波に再度潜ることを良しとするのだろうか?
俺は通話状態のまま、珍しく宿題を処理しているアイに声をかける。
「アイー、未来が顔出しなしの肉声ゲーム実況動画出ないかってさー」
「うーん……ミク君には悪いけど、あんまり私は興味ないかなぁ」
「俺は出るよ」(切札投入)
「出る」(即答)
俺は再度電話に戻る。
「OK出たで」
『知ってる』
その後、予定などを色々と調整し、今度の休日に撮影をすることが決まった。
動画撮影の機材などは未来が全部用意しているので、あとは俺たちが参加するだけである。
「つっても、動画配信とか久しぶりだなー」
『だねー』
「前やったのって、『馬鹿4人でマリオカート暴言生配信』以来じゃないっけ? あの時のハンドルネーム使っても大丈夫?」
『いいよー。あの配信、何か知らないけど100万再生いったんだよね』
「マジかよ」
♦♦♦
配信当日。
俺はリビングでパソコンと睨めっこしていた。アイは自室で俺と同じようなことをしているだろう。肉声が互いに入らないように配慮しているのだ。
「どうだ? テスト実況は大丈夫か?」
『オッケー。全然大丈夫だよー』
未来からの言葉に、マイクから一息つくような音声が聞こえる。
今回行うゲームは『マインクラフト』という、ブロックで構成されたオープンワールドでブロックを壊したり組み合わせたりしながら建物を建築したり、モンスターを倒して冒険を楽しむゲームだ。オンラインでも可能であり、ゲーム実況界でもポピュラーなゲームなので選ばれることになった。
俺は馬鹿4人と一緒にしたことあるが、芸能界で生きてきた他2人には初めてのゲームだと聞いた。そもそもゲームをしたことがないと聞いた時には、俺も未来もめっちゃ驚いたのは記憶に新しい。
ちなみにハンドルネームは以下の通りだ。
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色々突っ込みたいことはあるが、今回の実況の人妻参加率高いなぁと思われないだろうか。
ハンドルネームに関しては俺と未来は既存のものを使用し、人妻組に関してはアイが人の名前を覚えない関係上、上記の名前に落ち着く形となった。
「ところでアイ」
『んー?』
「テスト配信でもナチュラルに俺の本名言うのやめような?」
『えー、覚えられないー』
真面目な黒川さんは慣れないゲームをしながら一生懸命ハンドルネームで呼び合っているのに、この元アイドルは俺と未来の名前を普段通りに呼ぶのだ。未来はいいとしても、俺はバリバリ下の名前で呼んでくるんだが。
何なら実況時は完璧で究極なアイを演じている始末。そこで嘘ついて、俺の本名は公開するのは分かっててやってんのだろうか?
『……あー、うん。アイちゃんはそれでいいよ。僕が編集するときは字幕入れるし、名前のところはピー音入れるから、もう普通にやっちゃって』
「ミク君ありがとう!」
マイクの奥から乾いた笑い声が聞こえる。
仕事を増やされた俺と同じ笑い声だった。
そして軽い打ち合わせの後、実況の撮影が始まる。未来は配信者とは言っても普段と変わらないスタイルだし、俺も嘘で身を守るほどのメンタルじゃないし、アイはアイドル感覚だし、黒川さんは逆に演じるとバレる可能性があるから普段通りでいいよーって話だし。
そもそもが再生数など求めてないし、初心者が2人いる関係で今回の目標も簡単なものに設定したので、俺も未来も面白い動画になるとは正直思ってない。これをネットの海に流すこと、そして2人がこれを機にゲームを好きになってくれればいいと思
『オーカっ! 何でか分からないけどマグマに溺れたぁ!』
「お前に鉱石預けてたよな!? え、まさか全部ロストしたんか!?」
『弓で攻撃されてるんだけど……これ大丈夫?』
『あかっち今どこにいるの!? え、防具つけてないよね!?』
「おい助けに行くぞ! 一回でも死んだら
『……あ、死んじゃった』
「『死んだああああああああ!?』」
『あかっち、ここ初めの場所だよね。オーカたち、どこに行ったか覚えてる?』
「あああああああ! これ生配信じゃねぇよなぁ!? なんか知らんけどアイツからのLINE通知が止まらねぇんだけど!?」
「こ、こいつ本当に初心者か? さっそく村を強奪するための資源としか見てない動きのソレだぞ?」
『え、違うの?』
『AIちゃんの声色からして、自分の行動を全く疑ってないよね……?』
『あかっち、ここの家も解体しよう』
『え……でも村人さんの家だよね?』
『大丈夫、そこの住人はもういないから』
「始末済かよ……」
こうしてヤラセかと思われても不思議じゃないゲーム実況の撮影が終了し、編集量の多さに未来が姉と同じようにエナジードリンクを大量摂取しながら作った動画は、予想をはるかに超えてバズってしまった。俺は頭を抱えた。
特に、サイコパス気味で何から何まで良い反応を示すアイと、真面目で堅実であり実況唯一の癒し枠な黒川さんの人気は高く、次の参戦も待ってますと多くのコメントがついていたぐらいだ。
俺? 多くの『今日は暴言吐かないんですね』のコメントが多かった。罵詈雑言をぶつけるのはマリオカートで馬鹿共に対してのみである。
俺はベッドに寝転がりながら動画のコメント欄を見ていると、ふと一つのコメントが目に留まる。
特に他人からのコメントがついているわけでもなく、高評価すらもついていない、いたって平凡なコメントだった。
『AIさんの声、アイドルの『アイ』に似てますね』
俺はそのコメントに拍手を送りたくなった。
そうだ、それでいい。
この一つずつの積み重ねが、いつか双子に届くことを夢見ながら、俺は彼女と双子の再会を果たすべく、思考を巡らせるのだった。
俺の仕事の用のスマホが鳴る。
電話は親父殿からだった。非常に珍しい。
「はい、桜華です。はい……はい……は、え? はぁ!?」
「立花のオッサンが死んだぁ!?」
【島津 桜華】
主人公。マリオカートで身内に暴言吐きながら実況する回しか出てないにもかかわらず、ネットでは『マリカー暴言の人』と呼ばれるようになる。空中移動中を的確に狙って赤甲羅ぶつけるクソ。クソオブクソ。
【星野 アイ】
ヒロイン。転生者。今回のゲーム実況を機に、ゲームというものに興味を持ち始める。パズルや謎解き系以外の、主人公が持ってたゲームで最近は勝手に遊んでいる様子。
謎の少女「これで
謎の少女「……え、ちょっと?」
謎の少女「『そんな道理……私の無理でこじ開ける!』って……待って待って待って」
謎の少女「あなた死んでるのよ!? 嫌っ、おとめ座関係ないからっ!」
謎の少女「待って! 本当に待って! 話だけでも聞いて! 話通じない……」
謎の少女「………」
謎の少女「………」
謎の少女「……もうなんなの? 星野アイの時の島津といい、今回といい」
謎の少女「もうヤダ、九州とかいう修羅の国」