薩摩の子   作:キチガイの人

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 ほのぼの回です。
 前話投稿して即低評価つけられたので「やっぱり気持ち悪かったか……」とコメント見たら、普通に低評価でした。良くなかったけど良かったです。
 感想、評価頂けると幸いです。





 あれですね、関東から薩摩に『星野アイ』という一番星が生まれ変わって頂いたので、こちらも『おとめ座の男』が関東に生まれ変わって頂いた感じですね。等価交換です。
 とりあえずアクア君は泣いていいですよ。
 あと今回以降からあとがきがうるさくなります。仕方ないね。


048.始まりは地獄

 7月に入った。

 クソ暑い鹿児島がさらに暑くなり、黒川さんが毎日我が家の扇風機の前から動かなくなる今日この頃、皆さんはいかがお過ごしだろうか。

 もはや俺の家に入り浸る時間が増えたことで、黒川さんの家が『第一倉庫』とアイから呼ばれ始めている。何とか咸を拉致して監禁すれば、二人の愛の巣になるんだが、まだまだ外堀の埋め立て工事が難航しているとの事。

 アイの「ヤっちゃえばいいと思う」というアドバイスとも呼べないような助言に、最近割とガチで考え始めた黒川さんを横目に、咸がさっさと観念して同棲することを願っている。

 

 7月と言えばイベントが目白押しだ。

 俺としても鹿児島で行われるイベントをアイと楽しみたい。自称進学校特有の夏期講習とかいうクソは除くとして、六月灯をはじめとした夏祭りに参加したいし、前とは違うデートスポットを回ってみたい気持ちもある。

 それにアイの誕生日もうっわやっべプレゼント何も考えてないアイの欲しいものなんだろう予想はつくけど完全にアウトだよね何か別のもの考えなくちゃどないしよ。

 

 そんな人生初の高校生としての夏。

 まぁ、まず最初のイベントとして。

 

 

 

 

 

「おぉかぁ……たすけて……、てすとはんい……ひろい……」

 

 

 

 

 

 学期末考査というものを乗り越えないといけない。

 いくら自称進学校(笑)だからと言って、学区併合される前はれっきとした地方の進学校だった。つまり生徒の質が下がろうとも、生徒を指導するためのノウハウだけは万全に備わっているともいえる。

 

 こんな矛盾を抱えた学校に定員割れで合格した一番星。

 学期の締めくくりとして立ちふさがるテストの範囲を見て、俺に抱き着いて泣いているというわけだ。泣いたところでテスト範囲が狭まるわけではないので、俺と黒川さんのように諦めて勉強するべきだと思う。

 泣いてないでペンを動かすんだよ。

 

 元劇団のエースも、演劇という一番時間を割いていた部分がフリーとなった今、せめて咸に恥じないような結果を出そうと努力している。扇風機を自分側に寄せ、気が付けば教科書や資料集を片手に勉学に勤しんでいるのだ。

 ウチの学年のトップは、近いだけで高校を選んだ地方の秀才天才VS咸の為に生きる秀才との激戦区となるだろう。

 

 

「……(カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ」

 

 

 まぁ、彼女の勉強への執念はそれどころではないが。

 俺が彼女に気を使って、勉強しながら食えるものを飯として提供するくらいである。そこそこの国立大学へ行く受験前の高校3年生だって、ここまで勉強していないわ。

 

 ちなみに元凶は俺である。

 この前、咸と電話をしたときに、

 

 

『なんか黒川さんテスト頑張るらしいよ。()()()()()

 

『……そうですね』

 

『健気だよなぁ。()()()()()

 

『……何か言いたいことでも?』

 

『こんだけ頑張るんだから、相応の成果には相応の褒美が必要だよな? ()()()()()()()()()()()()()()

 

『……分かりました。では具体的には──』

 

 

 せっかくだし彼女の為に頑張れる褒美を約束させようと、ゴネにゴネて交渉を重ねた結果、俺は咸から『もし学年1位達成したら、今度の六月灯で浴衣デート』の言質を取ることに成功した。ボイスレコーダーにも録音済である。

 これを彼女に聞かせたところ、

 

 

「……(カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ」

 

 

 勉学の鬼が生まれた。

 定期考査でここまで必死になる人間を初めてみた。もしかしたら学年上位勢にはこれが普通なのかもしれない。俺にはマネできない芸当だ。

 この勉強の様子を密かに撮影して咸に送ったところ、「……次の六月灯は、学年順位に関わらずあかねさんの元へ馳せ参じますよ」と言ってた。良かったね。彼女の為にも咸の発言は秘密にしてるけど。

 

 一方の俺はアイの勉強を眺めている。

 よほど赤点をとらない限り親から何か言われることはないし、定期考査なんざ授業を真面目に聞いてれば、ある程度点数は獲れる。ましてや今回は上位が超絶激戦区なので、その中に首を突っ込むようなマネができるはずがない。

 なので自分のテスト結果よりも、赤点が発生し夏期講習に加えて補習も発生しそうなアイの援護に回ることになった。

 

 彼女も徐々に成績は上がってるんよ。

 ただ成績が上がるにつれて苦手な教科が目立つようになり、そこを重点的に潰しているような状況だ。本当は劇団のエースにも手伝って貰いたかったが、それができないのは明白だ。今回は諦めるしかない。

 

 

「ここは、これで……そうそう」

 

「ど、どうしてこうなるのかなぁ? 全然分かんないよぉ」

 

「あー、これね。コレにはちょいと応用が必要でな……」

 

「そうすればよかったんだ! うん? つまりこれは……こうして……こうなる感じ?」

 

「お、それは正解じゃない? ──正解だわ。なんだ、やるじゃん」

 

「えへへっ、オーカのお陰だよ!」

 

 

 方や鬼気と、片や和気藹々と、勉強は進むのであった。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

 良くも悪くもテストは終わり、先生方が採点で地獄を味わい、今度は俺たちがテスト返却の地獄を迎えるわけだ。誰も幸せにならないのは気のせいだろうか。

 自称進学校らしくテストの間違った部分を問題文含め再度解き直す『訂正ノート』なるものが存在し、悲惨な点数を取るとテスト完全模写ノートと化すのだ。馬鹿みたいな点数獲ったアホは反省しろと、先生方の遠回しなメッセージである。

 

 そして今回もテストが返ってくる時間だ。

 1-2に入ってきた山田先生が、一瞬だけ俺たちの方を見てお腹を押さえ、壇上へと向かう。

 

 

「日本史のテスト返却するぞー」

 

 

 次々に名前が呼ばれ、テストを返却しては悲鳴を産んでいく。

 

 

「オーカっ、やったっ、やったよ!」

 

「何点だった?」

 

「66点! 最高得点っ!」

 

 

 自分の点数を他のクラスメイトにも聞こえるくらいバラし、他生徒から拍手を受けながら席に戻る1-3在籍の一番星。1-2のテスト返却の時間なんだよなぁ。

 それは置いといて、確かに点数腹滑りなアイにしては高得点である。

 さすが山田先生の授業と言っておこう。もちろんアイも頑張ったけどね。

 

 

「黒川、惜しかったな」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

 

 対照的に、どんよりとした表情で受け取る黒川さん。

 テストの解答用紙を両手で形が崩れないように握りしめ、トボトボとアイの横に戻ってくる。ちらりと解答用紙が見えたが、98点と記載されていた。多分、1問どこか間違ったのだろう。

 

 

「……まだ、まだ大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫。どこが間違ったんだろう。あとで復習しなくちゃ。今で5教科。合計点数は■■■点。まだ、まだ1位は狙えるはず。他の教科もチェックして、間違いはほとんどなかったはず。満点どこかで取らなきゃ。取らなきゃ。取らなきゃ。取らなきゃ。取らなきゃ」

 

「66点ではしゃいでゴメン」

 

「……いや、これはアイは悪くないよ。うん」

 

 

 確かに1問間違いは悔しいと思うけれど、ここまで絶望的な表情をしていると、さすがに自己ベスト更新したアイも大人しくなる。

 上位勢は2点が命取りになるらしい。

 俺には分からない世界だ。

 

 俺の可もなく不可もない点数のテストも帰ってきて、訂正ノート提出期限が発表され、この授業も終わる。このままアホみたいな間違えさせなければ、とりあえず学年の上の下ぐらいは維持することが可能だろう。

 あの馬鹿共に煽られるのは勘弁願いたいので、そこそこの勉強を裏側で行った成果も点数に出ている。

 

 

「アイさんや、残りの教科の自信は如何ほど?」

 

「……オーカも補習、一緒に出てくれる?」

 

「先生が許可してくれたらな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果として、アイは無事赤点を回避した。

 

 黒川さんは総合成績表を片手に、アイを抱きしめ泣き笑いながらクルクル回ってたとだけ記しておこう。

 

 

 

 




【島津 桜華】
 主人公。成績は上の下。六月灯(次の祭り)にはアイと行くことがほぼ確定している。それはそれとしてアイの誕生日に何あげるか決まってない。早く決めないとエメラルドしちゃう。

【星野 アイ】
 ヒロイン。転生者。あかっちの浴衣どうしよっかと島津家当主に相談したところ、主人公母が手配してくれることになった。お義母さんは真面目で健気で頑張る女の子の味方。






「……記憶はある。知識も流れてくる。これは……彼の願いか?」

「……ふむ、私の記憶も彼に流れ込んだか。薩摩にいる星野アイ君を殺害し、価値ある命の滅びを愉しみたいと?」

「………」

「ナンセンスだな!」(ガン無視)



【カミキヒカル】
 神木プロダクションの代表取締役にして、原作ではアクアが星野兄妹の父親にして生前のアイの殺害を教唆した黒幕と目している人物。価値を認めたものが滅びる様に愉悦を覚える人格破綻者。
 今作ではおとめ座の男に身体と意識を乗っ取られる。まだかろうじで生きてはいるが、主導権はなぜかあっちが握っている。死ねないから転生の可能性もないし、彼から主導権を奪うには自身が瀕死にならないと難しい。つまり詰んでる。
 彼の記憶から『星野アイ』が生まれ変わっていることを知り、再度殺害を目論むが、本当に目論むだけで終わる。だって彼が「女子供の命を奪うなど性に合わん!」って言ってるし。身体動かねぇし。
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