薩摩の子 作:キチガイの人
独自解釈結構入ってます。
感想、評価頂けると幸いです。
アカン。考えてる通り話進めると再会前に1回ルビーが闇落ちするわ。
私の恋人は優しい人だ。
昔からの幼馴染たちにはフランクになるし、他人への嘘が苦手だから顔にも出ちゃうし、嫌なことは嫌とはっきり言えるタイプの少年だ。それでも、何だかんだ他人を助けちゃうし、私のお願いも聞いてくれる、自慢の彼氏。
実は彼が本当に怒っているところを見たことがない。前世の記憶を彼に教えた時ぐらいかな? それぐらいには、私の前で怒りと言うものを見せないのが島津桜華という少年。
それを、私は彼の美点だと思ってる。
そう──思ってた。
「………」
「………」
リビングのソファーで、私と彼は並んで、DVDを鑑賞していた。
パソコンで動画を鑑賞している。
何を見ているのか。
生前の私のライブ動画だ。
始まりは彼がふと「そういや、お前のアイドル時代のライブ見たことないなぁ。動画サイト漁れば出てくる?」と口にした言葉。私という存在を彼にもっと知ってほしいと思ったし、少し恥ずかしい気持ちはあるけれど、いつだって誰に見られても恥じない活動はしてきた。それを彼がどう評価してくれるのは気になった。
でも生前ならまだしも、今の私にアイドル時代のものは何一つ残っていない。
私のライブを彼に見せたい。
そう
『──持ってきたよ』
アタッシュケース4つ抱えて本人が来た。
ドラマで見たような現金の取引現場のように、ケース全てを並べて開きながら解説してくれた。
『これが最初期の地下ライブのDVDだね。あ、これは布教用だけどプレミアムついてるから、できるだけ丁重に扱ってね。──で、これが活動休止前のツアーライブで──復帰初めのはこっちかな。アイちゃん初心者な桜華君ならこれがオススメかも。それと19歳の──で、最後のがこれで──』
来週取りに来るね、という言葉と共に当主様は帰っていった。
本当にDVD持ってきて解説するためだけに、公務放置して駆けつけてくれたって、後で愛しの彼から聞いた。とてもフットワークが軽い。
私の彼氏は唖然としていた。
そして二人でライブ鑑賞を行う。
もちろん初めのころから順番に、だ。
『あー、これ懐かしいなー』
『初々しいって言葉が似合うわ』
ノートパソコンで流しているから、私たちは肩を寄せながら、生前の私を観る。
今の自分より幼い自分が、今世でやっていないことを、動画の奥で披露している。とても不思議な感覚だった。
最初の頃のライブ動画を見るときは、彼も笑っていた。
最初は笑って見てくれていた。
『事務所もアイドル部門始めて間もなかったから、このころは本当に苦労したなぁ』
『ははっ、そういう裏事情もあるんか。でも、アイ本当に目立ってるな』
『──ここからね、色々と立ち位置とか考えながらアイドルやってた』
『確かに洗練された動きではある。ほー、やっぱりファンとか増えた感じ?』
『最初はあんまりって感じ。知名度なかったからね』
『ちょっと色気づいた感じあるね。元旦那と会った後?』
『……まぁ、そう、かな? あ、今は何もないよ。ないからね?』
『何で焦ってんの? 俺は気にしないぞ』
『嫉妬ぐらいしてほしいなー。なー?』
『復活ライブ懐かしいなぁ。ブランク結構あったんだよ?』
『……そう、だな』
『ここでアクアとルビーがね! 超絶オタ芸してくれたんだー! あー! ちゃんと映ってる!』
『……だな』
『子供たちが2歳の時かな? さすがに今の私でも、これは再現できないかも』
『………』
『……オーカ?』
『オーカ、何かしゃべってよ。……オーカ?』
『………』
『………』
『………』
『………』
彼の目は常に動画へと向いていた。
時折早送りを使いながらも、無言で目を通す。
そして時間が経つにつれて──彼が目に見えて怒りを押し殺しているのが、私でも理解できてしまった。口元を手で隠してはいるが、歯からガリッて音が時々するし、眉をひそめて不快さを隠そうとしない。
一つのライブを見終わるたびに、大きくため息をつきながら次を再生する。
終わりに近づくにつれて、最後のライブになるにつれて。
私と言う存在は徐々に完璧に近づくにつれて、彼の憤りと失望の混じった、私の心臓をキュッと締め付けるような表情を見せる。
何が悪いのか分からない。
何が彼を不快にしたのかが分からない。
彼は何も言わない、
彼はただ動画を見続けるのみ。
「………」
「………」
そして最後のライブが終わる。
次が東京ドームでのライブだったし、その前に私は死んじゃったから。
動画が終わったのを確認した彼は、同じように大きくため息をついて、ソファーに背もたれる。どこからどう見ても「良かった」なんて感想が出てくるような雰囲気じゃなかった。
私のアイドルとしての姿は、彼をここまで失望させてしまうものだったのか。
何か言ってほしい。ダメなところは言ってほしい。
私はそう彼に懇願した。
「ごめんなさい。何が悪いのか分からないけど、その、オーカが怒ってるのは分かるから。謝ることしかできないけど、ちゃんと悪いところ治すから、何でもするから、嫌いに、ならないで……」
「……それなら、こっち来て」
私は立ってオーカの前まで移動すると、彼は力いっぱい手を引いて、私を真正面から抱きしめる。私が正面からしなだれかかるように倒れ、彼に包まれる。私から彼の顔が見えない。
私は混乱した。
怒ってないの?
「お、オーカ?」
「──ほんっとに、最悪の気分だ。見るんじゃなかった」
いつもより声のトーンが下がった彼の心からの感想に、わたしはちょっと泣きそうになった。
彼を、不愉快にさせてしまった。
「ご、ごめ──」
「んだよ、何なんだよ。クソが。あんだけ人がいて、あんだけのファンがいて、アイドル仲間がいて、仕事する仲間がいて。何で──誰も気づかないんだよ」
彼の抱きしめる力が強くなる。
「見りゃ分かるだろ。一目瞭然だろうが。何が完璧だ。何が無敵だ。アイがこんなにも、こんなにも限界振り絞って、すり減らしながら頑張ってるのに。誰一人として、
彼の心臓の音が聞こえる。
そのくらい、彼は私を強く、強く、優しく抱きしめる。
「何で──どうして気づかねぇんだよ! どんだけ取り繕っても、どんだけ完璧演じても、彼女が愛してほしいのは
あぁ、彼は。
彼は怒っているのだ。
「今の俺って子供の癇癪みてぇだな、おい! でもな、でもなぁ……! たいして人生経験のないクソガキすら見てわかるのにさぁ! 全部を! 全部をさぁ! アイ一人に背負わせてさぁ! 何なんだよ!
私の初心──『愛し、愛されたい』。
彼はそのことを言っているのかな。愛したかった。愛してほしかった。それを本物にするためにアイドルになったのに、アイドルを維持するのに『本当の自分が愛されること』を放棄するのはおかしいだろう。彼はそう叫んだ。
彼は私の肩を掴んで、若干遠ざける。
私の目が見えるように。彼の黒くて美しくて、真実のみを映すその目で。
「アイ、これだけははっきりと言うぞ。弱いことがダメだと思うな。唯一無二じゃなくていい。取り繕うのはお前の自由だが、俺は見てるからな? 不完全でもいい。誰よりも強くなくていい。俺は星野アイの全てを愛している。これだけは忘れるな」
彼はそう言って、笑った。
「あと、ライブはすっげぇ良かった。最高だった。よく、頑張ったなぁ……!」
彼は再度私を抱きしめた。頭を撫でてくれた。
私は──彼の胸の中で、声を出しながら泣いた。
【島津 桜華】
主人公。『嘘を見破る目』のせいで、ライブ中のアイが完璧を演じなければならないというプレッシャーで神経すり減らしているように見え、回数を重ねるごとに酷くなっているようにしか見えなかった様子。『アイドル』のPVで後半ハートが修繕だらけになっているイメージ参照。無理してたんだなって。
【星野 アイ】
ヒロイン。転生者。生前で『本当の自分を愛してくれる』存在がいなかったように見える。元旦那ぐらいじゃない? 本当の彼女を見てたのって。愛はなかったけど。んで今の元旦那がアレなんだけど。
「くっ、今すぐにでも
「価値ある命に重点を置き過ぎて、それ以外の人材育成がおざなりではないか!」
「お館様……申し訳ありませぬ!」
「この私、カミキヒカルが、
【
大友勢力の要、立花家元当主。享年34歳。とにかく我慢弱く、人の話は聞かない、おとめ座の男。武力は親父殿と互角ぐらいであり、人材育成というものに一生を捧げた、大友の忠義の将。
死後、虫の息だったカミキヒカルに無理矢理転生し、なんか知らないけど身体の主導権を奪取し好き勝手やる。本心としては今すぐ大友に帰還したいが、価値ある命厨のカミキの、自身の事務所所属の役者や従業員への待遇がおざなりになっていることに憤りを感じ、せめて彼ら彼女らが一人前として芸能界に羽ばたけるよう体制改革を行う。
転生後は武力はかなり落ちたが主人公程度なら相手にできるし、星の目を宿す最悪キメラが爆誕する。そして代表取締役としてのコネも得る。
アイのことは正直どうでもいいが、ホモな導春の好みドストライクな島津少年の恋人という立場に嫉妬している。後のアイのライバルである。アイとカミキが主人公取り合うとか、どういうことだってばよ。そして片寄 ゆらは新カミキを狙ってる。どういうことだってばよ。
双子に対しては『とりあえず血のつながった子供』という感覚であり、二人の復讐も納得はしているので、殺しに来るのならご自由にというスタンス。カタギなので殺しはしないが、抵抗はするから頑張ってね程度。