薩摩の子   作:キチガイの人

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 日刊ランキングに載りました。
 星野アイのファンの皆様、本当にありがとうございます。
 以降も彼女の幸せを目標に精進してまいりますので、応援・感想をよろしくお願いします。



 2023/5/27追記です。世界観の設定です。

 世界観は現代日本。名家の大名家らしきものが自分の勢力圏を主張はしているが、あくまでもヤクザのシマ的な話なので、ちゃんと廃藩置県は達成している。自分たちの活動圏内を主張するための目安。なので名家の当主といっても、絶対的な権力を持っているわけではなく、あくまでも勢力圏のリーダー的立位置。忠誠心は各勢力によって異なる。
 ただ地方それぞれで影響力というものは持っており、殺人を揉み消す(または隠蔽)のようなことを行っている。しかし、そう簡単にはできないので、そうホイホイ人は殺せない。殺人は基本犯罪です。この世界の警察無能なので、自警団的なこともやってる。もちろん非合法である。


005.暗躍する者たち

 さて、俺とアイの同棲生活が半強制的に始まって数ヶ月が経過した。初めは恋人の居ない俺に対するタチの悪い冗談かと思ったが、エスカレーター式に決まっていく物事を見て、そして率先的に動くアイを見て、これが現実なのだと痛感させられた。

 俺もアイも持ち物は少ないが、1LDKに押し込まれた男女1組である。

 壮絶な話し合いの末、彼女に一部屋を押し付け、俺はキッチンを目の前にした空間での生活をすることになった。ちなみに話し合いの内容は『女の子なんだから一部屋使いなよVSもう一緒の部屋でいいじゃん』である。いいわけあるか。

 

 一見すれば全紳士諸君の憧れである美少女との同棲生活である。俺だってラノベぐらいでしか聞いたことがない。

 だが実際のところは、未婚の未成年女性(生前はカウントしないものとする)との同棲だ。世間体やら彼女の今後の風評も考えると、今の男女の同棲ですら何言われるかわかったものではないのに、これ以上後ろ指差されるような真似はしたくない。彼女の未来の旦那さんにも悪いだろうしな。

 

 そのような事情もあり、俺とアイとの生活は、俺のできる限りの配慮を心がけているのだ。

 心がけているのだ……いるのだが。

 

 

 

『オーカ、次入っていいよー』

 

『おう、ありがとさん。──ちょっと待った』

 

『んー?』

 

『文明的な服の着用方法をご存知でない?』

 

『パンツもブラもシャツも着てるじゃん。あ、もしかして中身が見たいとか? しょうがないなぁ』

 

『誰もんなこと言っとらんわ。つかそのシャツ俺のじゃんかよ!? 明日俺が着るものなんだから勝手に着られると困るんだよ!』

 

 

 

 あっちが配慮してくれなきゃ意味ないんだよなぁ。

 彼シャツだぁ、おっきくてぶかぶかだぁ、とあられもない姿で闊歩する元アイドルの少女を横目に、俺は両手で顔を覆って嘆いた。

 素材が超一級品なだけに、似合っているのが余計にタチが悪いと思う。

 

 それだけならまだいい。

 いや、全然よくないけど。

 

 

 

『ここ、俺のベッド、分かった?』

 

『分かった』

 

『全然わかってねぇじゃねぇか。俺の寝るところなんだよ、枕取るんじゃねぇよ、掛け布団も引っ張るんじゃねぇよ、そして抱き着いてくるんじゃない!』

 

『オーカの胸ってマタタビかな? ものすごく落ち着くぅ。んにゅ~』

 

『こんのっ、クソ猫がっ……!』

 

 

 

 そして、なし崩し一緒に寝ることなんて日常茶飯事だ。淑女として一ミクロも正しくない行いなのは誰から見ても明らかだし、マジで本当に止めないと取り返しがつかなくなるのは想像に難くない。

 ……でも強く出れないんだよ、ホント。

 生前の彼女を知っているだけに、そして今の幸せそうな表情を見ていると、それは俺の感情云々で邪魔していいのか躊躇してしまうのだ。だから決まってベッド攻防戦では決まって俺はため息をつき、彼女と朝を迎えるのだった。もちろん俺は童貞のままである。

 

 彼女との同棲生活は問題が山積みだ。

 解決方法も容易ではない。

 そもそもの話だが、

 

 

 

 アイが解決する気がないのは気のせいか?

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「──こんな感じで困ってんだよ。どうすりゃいいと思う」

 

『とりあえず死ねばいいと思う(直球)』

 

 

 家のリビングでパソコンや周辺機器を広げ、オンライン会議をする中、目下の悩みを相談したところ、会議参加者の未来に一蹴された。それぞれ顔が見えるようにしているが、3馬鹿全員がチベットスナギツネみたいな顔をしているのは解せない。

 咸や兼定も声は出さないが、前者はグッドサインを逆さに見せ、後者は両手で中指を立てている。

 俺へのヘイトが強くないか?

 

 

『惚気か? 惚気だよなァ? 惚気に決まってるよなァ? オレはハチミツシュガー入り砂糖を頼ンだ覚えはねェンだけどなァ?』

 

『私は今コーヒーがぶ飲みしてます。なんで甘いんですかね?』

 

 

 そんなことを言われましても。

 俺はパソコンの前で頬杖をつく。

 

 

「まぁいいや。アイの奇行はこの際置いておこう。今は重要じゃない」

 

『そりゃそうだろうね。結末が分かり切っている物事なんて重要じゃないよね』

 

 

 含みがある言い方だな未来の野郎。

 

 

「んで、咸。調べた結果どうだった?」

 

『えぇ、調べましたよ。調べましたとも。正直、これを頼まれたときは桜華の正気を疑いましたが、ちゃんと調べましたよ。それを報告するのは結構ですが、その前に一つ答えて下さい』

 

 

 今までの和気あいあいとした空気は消え、咸は眼鏡の位置を右手中指で調整し、俺に鋭いまなざしを向ける。それは殺気にも近い鋭さであり、小心者であれば失神するレベルのものだった。

 ただ俺を含めた3人は特別な訓練を受けた小心者なので、適当に流す。

 

 

 

 

『【星野アイ、ストーカー殺人事件】【苺プロダクション】【星野アイの隠し子】──()()()()()()()()()()()()()()()?』

 

「……何だ、ようやく見つかったのか」

 

『前2つは前々から、それこそネットの海に潜れば浅瀬でも見つかるようなものです。それにしても、()()()()()()()()()()()()()()()。彼女のほうが隠し子と言われても納得いきますよ』

 

 

 

 俺は手元のスマホに表示される『元人気アイドル、星野アイ』の顔写真を見る。

 あぁ、本当にそっくりだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()星野アイ(元人気アイドル)星野アイ(薩摩の民)は同一人物であり、外見も一緒のはずなのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これも転生故の弊害なのだろうか。この感覚が、非常に気持ち悪い。

 

 そして以前から彼女の口にする『苺プロダクション』という事務所が存在していたのは知っていた。アイの記憶通りの人物が在籍していることも確認済だ。……なんか事前に聞いてた名前と違ったけど。

 コイツ社長の名前すら覚えられないのかよ。

 

 

『そして最近やっと調べがつきました。彼女の遺児と呼べるような2名の人物を。陽東高校一般科在籍の星野 愛久愛海(ほしの あくあまりん)氏と、陽東高校芸能科在籍の星野 瑠美衣(ほしの るびい)氏です』

 

『『「………」』』

 

 

 ごめん、アイ。擁護しきれねぇわ。

 双子の名前ヤバ過ぎるだろう。

 

 

「分かった、とりあえず居ると分かっただけでいいや。サンキューな」

 

『私の質問に答えて下さい。貴方は何を知っているんですか?』

 

「別に俺が知りたいって理由じゃダメか? 事前に報酬も支払っているだろう? お前がそんな食いついてくるなんて珍しいじゃん」

 

 

 咸の今までの言動からわかる通り、コイツの情報収集能力は凄まじいの一言に尽きる。正直どんな独自のネットワークを手で転がしているのか、俺でも予想がつかないくらいだ。コイツは調べることはしても、そこまで深く聞いてくることはしないのだ。それがコイツの信条というものなのだろう。

 この税所家の麒麟児が割り込んでくるのだ。あぁ、嫌な予感しかしない。

 

 

『貴方だって、馬鹿じゃない。ストーカー殺人を調べたのなら、この不可解さに気づいているはずでしょう? 星野アイ氏はストーカー殺人が起こる前に、新居に引っ越していたんですよ』

 

「……殺人犯たる大学生程度が、どうやって新居を突き止めた、って話か?」

 

『えぇ、花丸回答です。そして私も星野アイ氏を詳しく調べてみたんですが、彼女の交友関係って想像以上に狭いんですよ。つまり、殺人犯は──新居を探し出す方法がないに等しいんです。()()()()()。』

 

 

 そこまで言われて。

 その言葉を聞いて。

 

 俺はスマホを落としてしまった。

 

 は?

 ふざけんなよ?

 咸、お前何言ってんのかわかってんのか?

 

 

 

 

 

『彼女の新居を調べられる人間』

 

『双子の父親なら』

 

『調べられるでしょうねぇ』

 

『あぁ、ご心配なく。それらしき人物は既に調べがついています故』

 

『さて、桜華、もう一度問います』

 

『数年前に非業の死を遂げた元人気アイドル──星野アイ。我々の友人にして薩摩の子である××高校普通科在籍の少女──星野アイは、同一人物ですね?』

 

 

 

 

 

 税所家の麒麟児は、答えを求めていなかった。

 ただ自分の正答を確認するかのように聞いてきた。

 

 そこでガタンと大きく音が響く。

 音の主は兼定だった。

 

 

 

『オイ、クソ咸。オマエ、自分が何言ってンのかわかってンのか? 冗談でも笑えねェぞ』

 

『冗談にしては不愉快極まりないですね。落第点以下のゴミです』

 

『じゃあ何か? あァ? この際転生でも生まれ変わりでも関係ねェ。星野の奴を間接的にブッ殺したのが、星野の子供の父親だって言いてェのか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!? あ゛ァ!? オイ、答えろォッ!?』

 

 

 

 俺は別に彼女が転生者であるとは言ってない。

 普通に考えて誰も信じないからだ。

 

 だが、そんなことは関係なかった。紳士的な振る舞いを心掛ける咸が眉間に皺を寄せ、我らが同胞を殺した人間がのうのうと人生を貪っていることを許せない兼定が怒り狂い、いつもヘラヘラ笑っている傾奇者たる未来が破片の感情も見せず思案するのだ。

 彼女に危害を加える者は、何人たりとも許しはしない、と。

 

 

 

「兼定、そんぐらいにしとけ」

 

『オマエも何か』

 

「アイの元旦那が元凶だろうが、今の俺らには関係ないだろ? 元人気アイドルは死んだ。それは薩摩にとっては関係ないことだ」

 

『テメッ──』

 

「だが」

 

 

 

 俺は笑う。

 俺は、嗤う。

 

 

 

 

 

 

「島津の者、薩摩の子である星野アイに手ぇ出そうもんなら、そん時は分かってんだろうな? あぁ、最初に言っておくぞ。奴は腹を召す器に非ず。首はいらねぇぞ」

 

『アイちゃんの元旦那さんだからね、盛大に歓迎しようよ』

 

 

 

 

 

 アイの元旦那に俺たちから何もしないだろう。

 そもそも奴が彼女を認識できるのか?

 

 まぁ、いい。

 もしまた手を出すのなら、もしアイを泣かせるつもりなら、薩摩の地に足をつけたのなら。

 その時は

 

 

 

 




原作キャラは今のところ一番星のみです。
黒幕もなぜか鹿児島出禁になってますしね。

アイちゃんのセコムの話は終わったので、次回以降からは、ほのぼのストーリー予定です。
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