薩摩の子 作:キチガイの人
が、原作キャラの絡みがほどんどないです。
感想、評価頂けると幸いです。
カミキ「今日の私は、阿修羅をも凌駕する存在だ!」(ラーメン作りながら)
カミキさん、帰ってもろて。お願い。
体育大会とは自称進学校である××高校で開催される、身体を動かす数少ない行事の一つである。運動神経に極振りした人間が活躍できる数少ない場所だ。そんな運動馬鹿が、なんで普通科の自称進学校に来たのかって? あんまり人をイジメるもんじゃないよ。
体育大会はクラスの代表者のみが参加するので、運動苦手だと3年間ずっと一日休憩時間と化す。参加できるとしても玉入れか、3年生のみ参加のフォークダンスくらいじゃないだろうか。
蛮族な薩摩兵組も無双乱舞するのでは?と思われるかもしれないが、俺たちは上記の後者──つまり運動できない組に分類される。理由は説明しなくてもいいだろう。我、島津ぞ?
「おー、おー、速い速い。予想以上に速い」
「ああ見えて運動神経は女の子の中じゃ良い方だよねー」
わが校は紅組が1.2組、白組が3.4組、青組が5.6組に分かれて覇を競うのだが、組対抗リレーで紅組の選抜メンバーに選ばれたアイが、その役割を全うせんと駆ける。
運動は得意じゃないと口にはしたが、ぶっちゃけ同年代の女子と比較すると普通に良い方だ。外面はかなり明るくポジティブではあるが、内面の彼女は自己評価がそこまで高くはない。完璧主義者と言うのも理由の一つだろう。
存在自体が矛盾の塊な俺の彼女。そこも好き。
彼女の走るフォームも美しく、あくまでも組対抗のレースであるにも関わらず、応援する人々全ての視線をかっさらっていった。
他の選抜の女子生徒が可哀そうである。
「カメラ激写している人発見」
「実際幾らぐらいで取引されるん?」
「モノによっては万とか」
「学生の裏取引でしていい金額じゃねぇだろ」
運動部系や応援団所属の生徒は勝敗に拘るのだろうが、それ以外の人間にとってはそれほど重要ではない。なので今のように、未来が俺たち紅組のテントにお邪魔するような状況が当たり前であり、紅組も他組にお邪魔している面々が見受けられる。
つか皆が一番問題視しないといけないのは、
先生も生徒も誰一人として疑問に思わないのおかしいよ。
「じゃあアレか。
「どれどれ……アイちゃんのミニスカメイドコスにガーターベルトとか、ご神体になるんじゃない?」
「語源の意味での
スマホの画像を未来に見せながらも、俺の視線はアイの勇姿を追う。余談ではあるが、たまたま俺と未来の後ろを通りかかった男子生徒が、いきなり鼻血を噴き出して倒れたらしい。くっそ幸せそうだったと噂で聞いた。
俺はスマホをしまった。これは公共の場で容易に出していい芸術品ではなかったらしい。
ちなみにアイのスマホには、この服装で捕食している動画と画像が保存されているので、公になると××高校の男子生徒の大半が死滅する。
アイは無事2位で次の生徒にバトンを託す。
託された男子生徒は幸せそうに実力の120%で全力疾走する。
走り終わった元人気アイドルの少女は、俺の姿を探し見つけると、俺に向けて笑いながら両手でハートマークを作った。生前のライブ動画で見たことのあるパフォーマンスだ。慣れてるね。
俺は『見てるよ』の意味を込めて手を振る。
近くのシャッター音がマシンガンのように鳴り響く。
「あの中で2位は凄いじゃん」
「だな。帰りにハーゲンダッツ買ってやろ」
なんて言ってると、LINEの通知が入る。アイからだ。
『2位だったよ!』
『頑張ったな。ハーゲンダッツ何がいい?』
『バニラ。あと帰ったら、頭撫でて抱きしめて頭撫でてキスして頭撫でて』
『お姫様のお望みのままに』
本当に欲張りな彼女だ。
俺は彼女の要求全てに応えるしか選択肢がないけど。
「お、次はあかねちゃんだ。……おっ? 素晴らしい走り」
「演劇の練習ってかなりハードって聞いたからなぁ。それに今は体力もあるしね。っても、体力あるからって速いとは限らんか」
「これにはロリコンもニッコリ」
「ロリコン関係ないやろ」
綺麗なフォームを崩すことなく、1位との差を縮めていく劇団の元エース。なんか陸上選手のフォームに似ている気がする。演劇の時の応用で、
演劇の練習に人生費やしていた少女は、今は完全フリーになってしまった。その時間を埋めるわけではないが、朝の俺の有酸素運動についてくることが多々ある。アイも参加している。
俺は彼女の活躍を動画として記録する。
応援団所属の咸に頼まれた仕事を果たすとしよう。余談だが、兼定は救護委員に駆り出されている。
「彼女も何だかんだ、最近は笑うようになったね。アイちゃん以外の友達もできるといいね」
「……そーだなー。っても、当分は無理だろう。ガワは取り繕ってるが、実際に接してみると分かる。ありゃ咸に依存しまくってるわ」
「アイちゃんと桜華ほどの絡みが多いようには見えないけど?」
「だからヤバいんだって。黒川さんは咸と交流できるその数少ない時間に、命かけてる感あるんだよ」
これで双方とも『これって恋愛感情なのかな?』と自覚が全くないのだから、非常に手に負えない。俺とアイの件は俺が頭島津だったからであり、今回の咸と黒川さんは双方とも頭島津のような状況なのだ。こいつぁヘビーだぜ。
なんて言ってる間に僅差まで縮めた黒川さんは次の生徒にバトンを預ける。
次は……あー。
「あの人格破綻者も選抜か」
「
「姉貴の応援しないのか、弟君は」
「草」
しかし、薩摩兵子じゃなくとも、種子島家の人格破綻者は島津に仕える者らしく、脱兎の如き走りを全生徒に見せつけていく。
そう、見せつけていく。
たわわに実った双丘をたゆんたゆん揺らしながら。
「急に男子生徒がへっぴり腰になったな。何でだろうか」
「近くのシャッター音止まらないんだけど。草超えて森」
……うん、気持ちは分からなくもない。
黙ってりゃ美人、皮を被っているので喋っても美人、そしてグラマラスなボディー。2学年の女王こと種子島撫子の走る姿は、男子生徒をある意味魅了していく。
歯も着せぬ言い方すると、とてもエッチです。
他人事のように1位に躍り出た撫子を眺めていると、再度俺のスマホにLINEの通知が入る。
走り終わって校庭中央で応援側に回ってるアイさんからですね。
『ナデコちゃんのおっぱい見てない?』
『非常に眼福やな』
『明日は振替休日だね』
ダメ押しとばかりに、カミーユ・ビダンの『セックス!』のLINEスタンプが張られる。俺は明日は朝までフルコースにされるかもしれないと覚悟を決めた。
あの人格破綻者が選抜になった時点で予想はついていたが。
「これはアレだわ。夜に強制失神コースかなぁ」
「アイちゃん他にも種目出るんでしょ? それで夜の体育大会もフル出場って? 森超えてジャングル」
しかも体育服姿だと思うぜ、今日の服装は。
晩飯は精のつく食事を作りますかな。
「話変わるけどさ。アイちゃんとあかねちゃんに
「仕事用のスマホに電話帳残してたの見つかった。咸に報告済」
「ほたちん懐かしいなぁ。お世話になったけど、そこまで頻繁に会ったことなかったから、あんまり記憶にないなぁ」
「どちらかっつーと、咸と兼定ん方が交友あったしな」
「桜華は彼女の写真とか持ってる?」
「あいよ」
持ってるとしても、かなり前に撮った写真が一枚残ってるだけだ。彼女と半成人式を迎えられなかったし、俺と未来はそこまで会った記憶はない。
未来は俺の仕事用の方のスマホに残ってた写真を眺める。
「あー、あー! 思い出した。こんな
「忘れてたとか言ったら兼定に殺されるぞ」
「血のつながってない兼定の妹的存在だったもんね。うんうん、こんな感じの外見の──え?」
ちょうど、紅組の1位がゴールしたようだ。
競技用のピストル音が何発か校庭に響き渡る。紅組の勝利は揺るがないだろう。
そのピストル音で、未来の呟きはかき消されるのだった。
「……この
【島津 桜華】
主人公。咸の元許嫁である蛍がアイと似ていると気づいてない。もちろん理由はある。というか、咸って両親、許嫁失ってるんすよ。業が深くないか?
【星野 アイ】
ヒロイン。転生者。振替休日は最高だった。夜の運動会は昼まで続いたとか。