薩摩の子 作:キチガイの人
一瞬だけ赤評価になりましたが、すぐに橙に戻りました。須臾の夢でした。とりあえず低評価を入れていただいた皆様に抽選で全員に薩摩兵を1ダース派遣します。半分冗談です。
そんなわけで感想、評価頂けると幸いです。
カミキ「やはり人材登用しなければ人手が足りないな」
カミキ「内なるカミキヒカルよ、なんか命の価値的に重みを感じそうな人材はいないか?」
カミキ「……ふむ?」
カミキ「失礼する!」
有馬 かな「ちょ、いきなり!?」
カミキ「『失礼する』と言ったはずだ!」(スカウト)
内なるカミキ君をスカウター代わりにしないでもろて。
大きな学校行事が終わった後にするべきことは何か。
中学から高校に移ろうが、変わりはない。
「──ってなわけで、かんぱーい」
「「「かんぱーいっ!」」」
「「「うぇーいっ!」」」
打ち上げである。
ファミリーなレストランの焼肉食べ放題コースを前にして、馬鹿共や軍師(笑)、そして新メンバーな元人気アイドルと劇団の元エースも加わり、中個室を貸し切りにして祝杯をあげる。
もちろん酒は飲んでない。飲んでも言い訳できそうなのはアイだけじゃないかな。通じるかは別として。
それぞれのグラスを鳴らし、喉を潤す。
え、保護者同伴? ここの店長は咸の直属の部下だから大丈夫。実質保護者である。
「時間制限ありの食べ放題だから、とりあえず食って食って食って食いまくってくれ」
「「「「「はーい」」」」」
「ちなみに高校2年生の奢りな」
「「「「「はーい」」」」」
「……ん?」
2学年の女王が可愛らしく首をかしげるが、俺はガン無視して皆と同じように注文票に群がる。企画立案者としてメニュー表の頼んだら自腹エリアを説明し、残したら親父殿と1on1な?と注意喚起し、一回目の注文を始める。
とりあえず焼肉メインだから肉いっぱい食いたいよな。
……アイス頼むか。
「とりまカルビ7人前いっとく?」
「クソゴミカス未来は俺の説明聞いてた?」
「でも7人前なら普通に食えるでしょ?」
「……それもそうだな」
馬鹿共と食べ放題行くときも同じような量頼むので、未来の注文に納得してしまう。
「それプラスして豚ロース2人前、牛ホルモン2人前でいきましょう」
「ネギ塩ホルモンあるじゃねェか。これ2人前」
注文を必死に脳内でメモしていると、トング片手に全員の注文票をメモする
そう思いながらも女性陣に話を振る。
「そっちは注文いい?」
「既に結構な量でしょ? まだまだ時間はあるのだから、アナタたちの好きなようにしなさい」
「ゴチになりまーす」
「……え、これ本当に私が払う流れなの?」
注文が凄いことになっている、という部分に黒川さんは頷き、アイは「あ、それとポテトフライ欲しい」と手を挙げる。これも食べ放題の範囲内だ。
店員さんを呼んで、馬鹿みたいな注文をし、あとはブツが来るのを待つだけである。
「あ、サラダバー取ってくるよ。あと1.2名はついてきて欲しいかなぁ」
「オレ取ってくるわ。自分で食うモンは自分で選ぶ」
「注文の受け取りは頼んだわよ」
全員が群がるのは他の客に迷惑だろうと、未来と兼定、そして女性陣の取り皿を回収した撫子が席を立つ。本当は人格破綻者の代わりに俺が行こうとしたのだが、撫子の「アイさんの面倒を見ておきなさい」という言葉と、アイの腕ホールドに阻まれる。
……彼女の厚意に甘えておこう。
つまり待機組はカップルと準カップル組である。
準カップル組を観察してみましょう。
「………」
「………」
「あの、フィボナッチ数列って、綺麗だよね!」
「えぇ、私もあかねさんと同意見です」
話題の選び方ド下手クソかな?
緊張しすぎて目をグルグル回しながらフィボナッチ数列を語る彼女に、その必死そうに会話をつなげる彼女に微笑む咸。フォローしてやりたいのは山々だが、その話題に割り込める数学的知識を持ち合わせていないので、彼らの行く末を案じるのみ。
ちなみにアイは俺と同じ行動をとろうとしたが、数字が出てきた瞬間に思考を放棄している。
しかも、そこそこ盛り上がってる。
黒川さん的には、貴重な咸との会話がそれでいいのだろうか?
「最初に言っておくが、アイは前に2人で行った焼肉屋の質をココに求めるなよ?」
「そのくらい私も分かってるよ。肉の味を楽しむんじゃなくて、みんなとワイワイ食べながら楽しむ場所でしょ?」
言い得て妙である。
後から聞いたら撫子からの受け売りだった。
「でも沢山食べ過ぎないように注意しなくちゃ」
「食べ放題なんだから遠慮すんなって」
「……食べると太っちゃうもん」
アイは恥ずかしそうに呟き、数列の話題を終えた黒川さんも目を逸らす。
女性にとってはデリケートな問題なんだろう。
「……そうは言っても、食ったところで筋肉になるから、贅肉になる余地ってないのでは?」
「「………」」
俺は多分言葉の選択肢を間違えたのだろう。独り言で言ったつもりだったが、周囲に聞こえてしまったようだ。嘘がド下手な俺に挽回の余地はない。
共感できるであろう咸に助けを求めるが、税所の諜報員は微笑みを絶やさず在るのみ。沈黙が正解であることを理解している様子。
女子二人の威圧を受けて、俺は遅れながらも沈黙を貫くのだった。
「そうだよね。食べたら運動しなきゃね」
「……そうっすね」
「たくさん愛し合おうね。限界まで」
「タスケテ……タスケテ……」
俺は死なないように食べ放題でエネルギーを最大値まで確保すると誓った。でもアイもエネルギー摂取するんだよなぁ。労うために食べ放題コース選んだのに、どうして最後の晩餐になろうとしているのだろうか。
誰かのせいにしたいが自分の顔しか思い浮かばない。
「……咸君、運動になるんだって」
「あれはドスケベ性欲モンスター限定です。あかねさん、早まらないでください」
「私とするのは嫌かな?」
「決してそういう意味ではなくてですね。その場のノリと勢いで行うこと自体が──」
俺はもう慣れているので諦めの境地に至っているが、まだまだキスすらしたことのない恋人未満の関係に甘んじる咸も、とうとう年貢の納め時感出てきたな。
いや、アイに毒されたわけじゃないけど、もうやっちゃえばいいと思う。
自分の感情が恋愛感情なのかイマイチよく分かっていない黒川さんと、根本的に愛情というものを必要としない咸じゃ、自覚するのに俺の数十倍の年月が必要だろうか? 黒川さんはまだいいとして、咸が致命的なのだ。
たぶん自分が持つ黒川さんへの好意を「これは何だろう?」程度にしか思ってない気がする。嘘をついているわけではなく、そもそも分かってない。これがアイとの違いだ。親からの愛情をもらったことがないから、愛情と言うものが理解できないし、
となるとね。もう既成事実作って、そっから愛情を理解した方がいいんじゃないかって桜華は思うワケ。悲しいことに他馬鹿と軍師の考えも概ね同じだ。
そういう愛の形もあるって聞いたことがある。
前にアイが、愛情への関心度が元旦那と同じで、もしかして彼と同じになってしまうのではと危惧したことがある。
んなわけねぇだろ。もしそうなったら、その前に俺が咸を殺してる。殺してでも止めてやる。
そんなわけで咸にはさっさと食われてしまってもらおう。
大丈夫、ゴムの貯蔵は十分だ。
「ご注文の品でーす」
なんて場に合わないことを考えてたら、馬鹿みたいに注文していたもの全部が届いた。
カルビなんて大皿2つにまとめられてるし、俺はトング係が取りやすい位置に並べる。アイは一足先にポテトをポリポリ食している。
配膳完了した時点でサラダバー遠征組も戻ってくる。
兼定は爆笑しながら俺の取り皿を渡してくるのだった。
「兼定、俺の取り皿がコーンまみれなんだが?」
「テメェこれが好きだろ」
「好きだけど中にスイートコーンしか入ってないんだが?」
「嫁島津、テメェのはこれだ」
「おー、ありがとう!」
「サラダにデザートとバランスの良い取り方やな。ところで俺の取り皿にコーンの缶詰5個分のコーンしか入ってないんだけど?」
俺の訴えもむなしく、こうして体育大会打ち上げが始まるのだった。
次回に続きます。