薩摩の子 作:キチガイの人
想いのすれ違いも『推しの子』の特徴の一つですよね。
感想、評価頂けると幸いです。
桜華「読者の方から『カミキって元旦那じゃないのでは?』とご指摘を頂いた」
アイ「籍入れてないからね。つまり初めてはオーカってこと」
桜華「でも……元旦那って言っても通じるんだよなぁ」
アイ「旦那さんはオーカだけだよ。カミキ君は全然違うから」
桜華「そもそもさぁ」
アイ「うん」
桜華「お前んところの家庭事情複雑すぎるんよ」
アイ「事実陳列罪は良くないと思う」
「何があったんやろうなぁ」
「お義父さんが私も呼んだってことは……何か関係があるのかな? ちょっと緊張しちゃう」
「おそらく関係あるとは思うよ。最近の親父殿なら関係なくても呼びそうだけど」
俺とアイは俺ん実家に足を踏み入れる。
理由は言わずもがな、双方揃って親父殿から招集がかかったからだ。
そもそもの話だが、親父殿からの呼び出し自体が珍しい。俺単体ならチェスト案件が大半を占めるが、これにアイが追加されるのであれば、マジで何の呼び出しなのか想像もつかない。荒事関係ではないのは確定だが……。
母上にもそれとなく聞いては見たが、なんかはぐらかされてる気がするんだよな。
来たら教えるとしか言われんし。
「……もしかして、アイ、やっちまったか?」
「残念ながら。君ってアレ関連は隙がないんだよね。……さすがに寝てるときにコッソリはお互いによくはないだろうし」
「お前の理性に感謝しかないよ」
あっぶねぇ。
翠玉くんちゃん爆誕が原因じゃなさそうだ。
俺もアイの誘惑を何度も退けてはいるが、別に彼女との子を儲けるのが嫌だってわけじゃない。欲しいか欲しくないかって話なら、まぁ、そりゃ欲しいに決まってる。
しかし。しかし、だ。彼女はまだ15歳、もう少しで16歳になるが、どっちにしても若い。若すぎる。若年での出産の危険性というものは理解しているつもりだ。母体が死亡するリスクもあると聞いたことがある。
そんな危険を冒してまで欲しいとは思ってないのだ。正直言って18歳でも大丈夫なのか?という不安もあるくらいなのだから。
死に急いだってなにもいいことはない。(ブーメラン)
もっと命を大切にしてほしい。(特大ブーメラン)
「まぁ、行ってみりゃ分かるか」
「お義母さんが
「晩飯ごちそうになる流れだなコレ」
俺はいつものように、アイは慣れてないのか若干緊張した面持ちで、武家屋敷の中を進んでいく。最近知ったのだが、俺的には普通の家なんだが、一般家庭だと武家屋敷には住まないらしい。
アイからガチトーンで「オーカは普通にボンボンだよ?」と言われて、若干ショックを受けたのは覚えてる。自分から言うにはあれだけど、他人に言われると辛いアレである。
いつもの茶の間に行くと、親父殿が待機していた。
机の上に3つの箱と1つの封筒が置かれている。俺は見覚えはない。
親父殿の瞳を見て──見てしまって、俺は心の中で天を仰いだ。
あぁ、絶対に良くないことなんだろうなと。
「遅くなり申し訳ございません。只今戻りました」
「うむ」
「え、お、遅れちゃってた!? ご、ごめんなさい、お義父さん」
「全然遅くはない」(即答)
社交辞令を真に受けて謝ったアイに対し、鬼島津は電光石火の如き勢いで社交辞令を切り捨てる。
あー、うん。そうだよね。親父殿の表情筋あんまり動かないから、ガチで言ってるのか社交辞令なのか分からないよね。仕方ないよね。
空気が少し和らいだところで、親父殿が話を切り出す。
どんな爆弾が飛び出てくるのやら。
「暑中見舞いがここに届いた。お前とアイ宛にだ」
「……俺とアイ宛なら、直接俺ん家に発送しますよね? 俺単体ならともかく、アイ含めるとなると、俺ん家の住所を知っている人物しか送ってこないですし。誰からです?」
「見ろ。3つとも送り主は同じだ」
俺は腰を浮かして、箱に記載されている名前を見る。
『島津桜華様、星野アイ様。
暑中お見舞い申し上げます。暑い日が続いておりますが お変わりなくお過ごしでしょうか。
このたびは お心のこもったお言葉に添えて 結構なお中元の品を頂戴しまして 誠にありがとうございます。ご過分なお心づかいをいただき 恐縮に存じます。酷暑の折から くれぐれもご自愛のほどお祈り申し上げます。
神木プロダクション代表取締役 カミキヒカル』
「──なぁっ!?」
俺は思わず立ち上がった。
アイも驚きのあまり、口に手を当てて言葉が出ないくらいだ。
俺の頭の中は大混乱の嵐だった。
確かに暑中見舞いを仕掛けたのは俺たちからだが、アレにはアイの名前しか記載してないし、写真にも俺の名前を書いてなかったはず。つまりアイの元旦那は、俺の存在を知っていることになる。
それだけじゃない。なぜ親父殿の名前どころか住所を知っている? 宛先にも『島津隆正様宅』と書いてある。これが当主殿宛なら住所が公表されているから、100歩譲って届くのも不思議じゃない。でも俺の実家は個人宅だ。そう簡単に調べられるものではない。
「親父殿、ウチの
親父殿は黙って首を振る。つまり、俺たち周辺を探る人間は確認されていないことになる。いくら巧妙な手口を利用する犯罪者であろうと、彼の手の者がこの薩摩の地に足を踏み入れたのなら、島津の情報網から逃れられるとは思わない。
別のルートから情報を仕入れたのか、アイの元旦那の
……徳川? 徳川絡んでる? やっぱ滅ぼす?
どのように俺たちの情報を掴んだのかも分からないが、俺は暑中見舞いで送られて来た箱全てを開ける。躊躇なく開いたが、アイが存在する部屋で、彼女に害をなすものを親父殿が置いておくはずがない。つまりトラップの心配はないわけだ。
逆に不気味ではあるのだが。
『東京バナナ』
『とらやのどら焼き』
『カミキ豚骨ラーメン(持ち帰り用)』
そしてラインナップも意味が分からない。
東京バナナはマジで意味が分からないが一番マシだと思えるのがおかしい。だってどら焼きは俺の好物の一つだし、自社のラーメンを送ってくる根性が本当に謎でしかない。
これマジで俺の顔割れてんじゃん。
俺はアイの元旦那を過小評価してたのかもしれない。
この化物から──俺はアイを守り切れるのだろうか。
「狼狽えるな」
「親父殿……」
静かに一喝した親父殿は、視線をアイに向ける。
正座しながら拳を握りしめ、そして微かに震えている彼女を見て、ハッとした俺は彼女を抱き寄せる。そうだ、一番不安なのは、この一番星のはずだ。
安心させるように頭を撫でていると、いつもより声色が低くなった親父殿が言葉を紡ぐ。
「──孫のことは続けるがいい」
おそらく双子釣り野伏計画の事だろう。
というか、あれも原因の一つじゃないかと思うんだが。
「しかし、このまま続ければ……」
「案ずるな。
そして親父殿は笑った。
嗤った。
「それでも
だから安心して双子を迎え入れるといい。
お前たちは安心して、いつものように暮らすといい。
すべて、この鬼島津が引き受けよう。
そう、彼は静かに呟いた。
自分の愛娘の為、ここに鬼島津が静かに立ち上がったのだ。
もし勢力のしがらみがなければ、すぐさま関東に赴くだろうことが彷彿とされるくらい本気だった。それができないので、親父殿は守りを固めるつもりなんだろう。守りに入るのは
しかし、それでも俺には不安が残る。
俺は彼女を安心させながら、最後の封筒を手に取った。
『養育費』
彼は何を考えているのだろう。
得体の知れなさで言えば、兼定が会った少女以上に不気味であると、俺は封筒を睨みつけるのだった。
カミキ「東京と言えば『東京バナナ』、島津少年好物の『どら焼き』、そして最近作った『ラーメン』」
カミキ「見事な造形だ。これには少年もアイ君も喜ぶだろう」
カミキ「……そういえば、カミキ青年は養育費を入れてなかったな。仕方ない、私が代わりに送っておくか」
カミキ「彼らの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ!」(善意)
大友&龍造寺「島津が臨戦態勢なんだが、どうした?」