薩摩の子   作:キチガイの人

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 シリアス回です。
 次回は……うん、はい。
 感想、評価頂けると幸いです。


062.落としどころ

 さて、島津プレゼンツの感動の再会を果たした星野一家。

 マジもんの奇跡によって、再び巡り合えた3人の親子。声にならない歓喜でガッツポーズ決める俺たち。感動的に涙を流す周囲の薩摩のエキストラの皆様(含・黒川さん)。カメラの向こうで満足そうに頷いてたらしい親父殿。

 これはもうハッピーエンドと言っても過言ではないだろう。というか、これ以上のハッピーエンドみたことある? もういいじゃん、これ大団円だと思う。これに何か足そうとすること自体が『蛇足』の語源になりそうなレベルでいらないじゃん。

 

 アイは立派に成長した双子と再会し。

 ルビーさんは会いたかったママと再会し。

 アクア君はアイに抱き着きながら号泣してたし。

 

 ……そうだね、そろそろ現実見なきゃね。

 そう、ここからが──

 

 

 

 

 

「「「「………」」」」

 

 

 

 

 

 ──本当の修羅場の始まりだ。

 

 今回の『星野家+α緊急家族会議』の参加者は計4名。

 まずソファーに座る、マジで星野家と関係がなさそうな俺こと島津桜華。俺の左隣に座るのは会議の根幹というか元凶というか、双子のお母さんである星野アイ。机挟んで俺の真正面に座るのは、クール系イケメンな星野家の長男である星野アクア。んで、兄貴の左に座るのは、さっきから俺を睨んでいるアイ似の超絶美少女の星野ルビー。

 錚々たる顔ぶれですね。ここ俺ん家だけど、俺帰っていいっすか。この空間の顔面偏差値下げたくないんですよ。

 

 ちなみに、この通夜よりも重々しい空気の家族会議はビデオで撮影中であり、隣りの黒川さん家でピザパーティーしている薩摩組にバッチリ見られている。

 ぶっちゃけ俺もそっちに行きたかったが、ルビーさんとアクア君のオカンがそれを許さなかった。いや、まぁ、双子釣り野伏計画でこうなることは薄々覚悟してたけどさ、一般薩摩兵子には辛い環境なんですが。が?

 

 ……これでもだいぶ落ち着いた方なんだけどね。

 最初の頃は『生まれ変わった母親に恋人がいる』と知ったとき、俺はルビーさんに胸倉掴まれて頭シェイクされたし、アクア君にクッソ睨まれて大変だった。

 なんとか不器用ながらもアイが説得して今に至るのだ。

 

 

 

 

 

「何でママは私たちに会いに来てくれなかったの!?」

 

「転生後の家庭環境が最悪かつ、メンタルが情緒不安定で、君たちに会える状況じゃなかったんだよ。んで、今は彼女の立場的に君たちに会いに行くことができなかった。だから今回のように誘導させてもらった」

 

 

 

「……転生後の環境は理解した。アイの実の両親はどうした?」

 

「今は楽しく暮らしてんじゃねぇの? そう、()()()()

 

 

 

「ママの立場って、何?」

 

「島津の分家の養子であり、今は俺の恋人という立場。詳しくは──」

 

 

 

「……それ、島津って普通に反社会的勢力なのでは?」

 

「大丈夫。世間的には合法。合法にしてるから」

 

 

 

「アンタって人殺しじゃん!」

 

「……君たち、実の父親に何しようとしてるのか分かってて言ってる? 何ならアクア君の幼少期にノートに書き殴った復讐計画のコピーあるけど見る?」

 

 

 

「まだ未遂だ。実行してない」

 

「良かったじゃん。道踏み外す前にアイに止めてもらって」

 

 

 

「ママはこんなのでいいの!?」

 

「えへへ、頼りになるでしょ?」

 

「「………」」

 

 

 

「アイ、俺たちの実の父親は誰?」

 

「うーん、まだアクアには教えられないかなぁ」

 

 

 

 

 

 ……気持ち的には理解できるのだ。彼らにとって俺という存在は本当に邪魔でしかない。ぶっちゃけアイを誑かしているようにも見えなくもないし、今まで親からの愛情に餓えてきた双子の前で、母親がようわからん人殺しの蛮族とイチャラブしてて、面白いはずがないのだから。

 加えて、彼らにとって『父親』というものはタブー以外の何物でもない。実の父親によって、最愛の母親が殺されたのだ。生まれ変わったから良かったも──いや、全然良くないけど、それでも忌避感を持ってしまうのは、当然ともいえるだろう。

 

 俺もずっと悩んできた。

 そして──今回ので考えが吹っ切れた。父親として認めてもらうことを諦めようと。

 

 よくよく考えたら、双子が俺を父親として認める必要性はない。戸籍上はアイと双子って無関係だし、双子がアイを母親として慕うのは自由だし、裏を返せば俺を父親として接する必要もない。

 だから割り切ることにした。俺も親父面しないといけないと思うと気が重くなるし。

 贅沢言えば俺の両親を、おじいちゃんとおばあちゃんとして認めてほしい気持ちはあるが。彼らの成長に対して資金援助すると明言してたし。

 

 俺の考えを伝えたことにより、ここまで来て、初めてアクア君の俺を警戒する表情が緩和された気がする。対して、ルビーさんからの好感度はマイナス突き抜けていることに変わりないが。

 

 

「……分かった。俺からはもう何も言わない」

 

「……お兄ちゃんはコレを父親って認めるの!?」

 

()()()()()()()()()()。でも、アイが好きな人だって言うんだから、俺たちがこれ以上何かを言うのは野暮だろ? 本音で言えば、全然納得いってないけど。全然釣り合ってると思わないけど。……だけど、生まれ変わったアイが、俺たちの好き嫌いで相手を決める必要もないと思う。俺は、アイの選択を信じる」

 

 

 だから失望させてくれるなよ?とアクア君は俺を見据え、善処はすると俺は肩をすくめる。アクア君の着地点としては、『親父とは認めるつもりはないが、アイが選んだ相手だから、恋人としては認める』と言ったところか。かなり妥協したと思われる結論だが、悪くはない。

 追々と信頼を得ることにしよう。すぐに信頼関係が築けるとは最初から思っていない。

 

 

「でも私は、認めてないから」

 

「それでいいと思うよ。感情的に納得できてないのは十分理解できるから」

 

 

 ルビーさんの回答に俺も頷く。

 それでいい。無理に自分を納得させたところで、それでメンタル崩すのが一番良くない。本音言って貰えるだけでも御の字だろう。

 

 一方の頬を膨らませるアイ。

 お母さん的には、新しいお父さんを認めてほしかったようだ。

 

 

「えー、アクアとルビーにはオーカを父親として認めて欲しいんだけど」

 

「無理強いはダメだからな?」

 

「そうじゃないと家族4人で仲良くお風呂に入れないじゃん」

 

「「「待って」」」

 

 

 何て恐ろしいことを考えてるんだ、俺の彼女は。

 奇しくも双子と俺の気持ちは一つになった。双子に対して、おっきくなったねって言ってたじゃん。つまり一緒に風呂入るような年齢じゃねぇんだよ。何を想像したのか、双子の顔真っ赤じゃん。

 

 

「それで、お二方は他に質問ある?」

 

「ママはいつ東京に戻ってくるの?」

 

「私は戻らないよ? というか戻れないよ? ここでオーカと暮らすって決めてるし」

 

「……っ!? どうして!? やっと会えたのに、どうして戻ってきてくれないの!? やだ! 戻ってきて! また3人で一緒に暮らそうよ!」

 

「え? アクアとルビーが鹿児島に移住すれば良くない?」

 

 

 そして始まる論争。

 なんせ欲張りな女の子(アイ)欲張りな女の子の娘(ルビーさん)のドリームマッチだ。お互いが主張を譲らず、母と娘の壮絶な言い争いが生まれるのだった。

 アクア君が視線で『どうにかしろ』と言ってくるので、とりあえず『無理でしょ』と返して、同時にため息をつく。この奇跡のような意見のぶつかり合いを喜ばしいと現実逃避するのか、埒があかないと止めるべきなのか非常に悩む。

 

 アクア君が項垂れているのをよそに、俺のスマホに通知が入る。この惨状を別の部屋で見ている兼定からのLINEだった。

 俺は彼らに見えないようにLINEを開き──絶句した。

 ……マジで言ってるのだろうか。神様は俺のことが嫌いなんじゃなかろうか。え、待って。本当にお願いだから冗談であってほしいんだけど。

 

 

「……ねぇ、アクア君、ルビーさん。一つ聞きたいことがあるんだけどさ」

 

「何!? 邪魔しな──」

 

「二人って、()()()()()()()()?」

 

「「──っ!?」」

 

 

 俺、胃が死にそうなんだけど。

 

 

 

 




【星野 愛久愛海】
 原作主人公。転生者。双子の兄。今作主人公とは親子関係というよりも『悪友』っぽいポジションに落ち着くとは思う。次回で桜華と同じように墓場へ行く。なんの墓場かは察して。

【星野 瑠美衣】
 ↑の双子の妹。転生者。首狩り島津小僧を父親としては見れんわな。次回で手のひら返すけど。



次回、『島津死す』デュエルスタンバイ!
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