薩摩の子 作:キチガイの人
カミキ「まそっぷ」
うあああああああああああああああああああ!
的な心境で、急遽ルビー視点を書きました。
感想、評価とか今回正直どうでもいいので、とりあえず彼女がワガママプーなわけではなく、彼女なりの心境で主人公に冷たいとご理解していただければ幸いです。
次回こそ島津を仕留めます。
私こと『星野 瑠美衣』……星野ルビーは転生者で、生前は『天童寺さりな』として、狭い病室で一生を終えた。そして私は、生前の推しだったアイドル──星野アイの産んだ双子の妹として転生する。
そして……私の
ママの最後の夢であり、生前の私の夢であったアイドルになるため、私は必死に努力した。ママが果たせなかった東京ドームでのライブを行うために。
でも、現実は非情だった。
オーディションを何回やっても落選するし、街頭でスカウトされたプロダクションは急な不祥事やスキャンダルで潰れる。それでも頑張って、頑張って、頑張って、陽東高校の芸能科で私だけが何も残せてなくて。
私は、アイドルになれなかった。
そんなときに、私が生前に大好きだったセンセ──雨宮 吾郎先生が、白骨化した遺体で発見された。他殺かもしれないって言ってた。センセは私がアイドルになったら推しになってくれるって言った。転生後にセンセが勤めてた病院に連絡して、行方不明と聞いたときは、いつか私がアイドルとして活躍すれば会えると思ってたのに。
センセは、もう、どこにもいなかった。
そのニュースを見た時、私は何を思って足を動かしたのか分からない。気づけば、転生後に何度か足を運んだ『天童寺家』の門前に立っていた。ママもいない、センセもいない、そんな私を愛してくれるのは──もう、
そして、今まで怖くて押せなかったインターホンを鳴らすより先に、それは開かれた。
私の前では見せなかった笑顔で、娘息子と思わしき人物と談笑しながら家から出る、天童寺さりなの母親が。私は──そこで理解した。理解してしまった。
生前の私は、愛されてなかった。
私の心はぐちゃぐちゃだった。
もう、死んだ方が楽なんじゃないかって思った。
──あの、黒い服の少女が現れるまでは。
〔手短に説明するね。お姉ちゃんの大好きだったお医者さんを殺した犯人と、お姉ちゃんのお母さんを殺した人は同じで、それを指示した人がいる。お姉ちゃんのお兄ちゃんが追っかけてる人だね。あと島津とかいう蛮族に気をつけ──ひぃっ、変態なおとめ座の気配っ〕
遠くから「私を生まれ変わらせてくれた
私の大好きなママと、大好きなセンセを殺した男が、まだ生きていると。
それが本当か分からないけど──それが本当なら、私がそれが絶対に許せない。
殺してやる。絶対に、ぜったいに、見つけ出して、この手で、殺してやる。
そう、思ってた。
♦♦♦
「お兄ちゃん、あんなのがママの恋人って、本気で認めるの!?」
ベランダに出てスライド式の扉を閉めた私は、兄であるアクアに詰め寄った。お兄ちゃんはいつものように無表情ながらも、どこか諦観と後悔、困惑しているようにも見えた。
私は生まれ変わったママと再会した。
それは本当に嬉しいし、それを陰で支えてくれたママの友達には感謝している。
でも、その後に紹介された『今のママの恋人』……それが、島津桜華とかいう男だった。学校で会うような超カッコイイ男ってわけでもなく、聞いたところ学力もお兄ちゃんより下だし、ちょっとお金は持ってそうな人だってのは分かったけど、あまりにもママに釣り合うとは思えない男だった。
恋人関係になった経緯を聞いたら「俺が最初に中央駅でデートしたとき一目惚れした」だし、ママの好きなところは?って聞けば「……全部?」とか曖昧だし、まさかエッチなことしたんじゃないの?って問い詰めると「………」って目を逸らすし。
ママにふさわしいとは全然思えなかった。
何なら『島津』ってだけでも危険なのに。あの女の子も危ないって言ってたし。
「認めてもないし、納得もしてない。でも、アイが好きって言ってるんだから、それを応援するのが『ファン』だろう?」
「で、でも!」
「……もちろん、俺はアイの判断を盲目的に信じているわけじゃない」
お兄ちゃんはベランダの手すり側に体重を預ける。
コンクリート製なので危なくはないはず。
「初めて見た。あんな、アイの笑顔」
「ママはいつも笑顔じゃん」
「そうじゃない。アイが、アイツに向ける笑顔。年相応の女の子っていうか、アイドルだったときも、それこそ俺たちにも見せたことのないような、心の底から愛おしいと思ってそうな笑顔」
私は思い出してみる。
短時間ではあったけど、ママがあの男に見せた表情。
……そうだ、あんなママの顔。私は知らない。
「それを見て思った。俺は、俺たちは──アイの本当の顔を、知らなかったんじゃないかって。どうしても、アイドルだった『アイ』に引っ張られて、本当の彼女を俺たちは見てなかったのかもしれないって思った」
「だから、仕方ないって?」
「妥協点みたいなもんだ。確かに釣り合いはしないかもしれないけど……じゃあ許せるとしたら?って言われたとき、俺が今まで会ってきた人間の中だったとしたら。アイの素の表情を引き出せる、アイツが妥当じゃないかって」
最終的な判断はアイがするはずだ、とお兄ちゃんは私から視線を逸らして夜空を見る。住宅街だけど光は少ない関係で、それなりに星空が見える。
「……じゃあ、ママの言う通り、お兄ちゃんもここに引っ越すの?」
「あぁ、それもいいかもなって思えてきた」
お兄ちゃんは語る。
ママが死んでから、ずっと復讐することだけを考えて生きてきた。けど、その復讐の根本的な理由も失い、被害者が加害者の名前を明かさないことから、ママが復讐を望んでいないことは分かったと。それなら、自分は復讐を行う理由がないと呟いた。
その表情はどこか、ママが死ぬ前のお兄ちゃんの雰囲気に似ていた。
でも、それでも。
私は納得できない。
「……いやだ」
「ルビー?」
「私は、認めたくないっ」
ママは私とアクアのママだから。
他の人には絶対に渡したくない。
だって、だって。
それに、あの男が私を邪魔だと思ったら、ママは私とあの男のどちらを選ぶのか。
そんなことはないって、ママはそんなひどいことをする人じゃないって、頭の中では分ってる。でも、実際に病気になったとき、お母さんは私を愛してくれなくなった。私はいらない子になった。
それが──私は怖いよ。嫌だよ。
いい子にするから、みんなに好かれるような『星野ルビー』を演じるから。
私から、ママをとらないでよ。
「──アクアー? ルビー? オーカが胃痛から若干復帰したから、そろそろ家族会議再開するから戻ってきてー」
「……ママ」
「ん? ルビー泣いてるの?」
ベランダの窓を開けたママは、私の様子を見て真正面から抱きしめてくれた。……生まれ変わっているはずなのに、小さい時に私を抱きしめてくれたあの時と変わらず、思わず私も抱きしめ返す。
アクアはその隙に室内に戻ってた。
「ルビーは甘えんぼさんだね。ほら、オーカも心配してたから、早く中に戻ろ?」
「……私、酷いこと言った」
「全然気にしてないと思うけどなぁ。彼って、身内にはすっごく優しいからさ。でも、酷いこと言ったって思うのなら、ちゃんと謝ろうね? 大丈夫、私もいっしょに謝るから」
「身内って……」
「オーカにとって、私の子供は身内同然だよ。たとえ、今は血が繋がってなくても」
それに、と私の耳元でママは囁く。
今の私の悩みを、理解しているように。
「──オーカの愛情は裏切らないから。アクアもルビーも、オーカはちゃんと、たっくさん、愛してくれるから、ね?」
あ、でも私が一番だよ!と、ママは笑った。
それは私が見たことなかった、他人を魅せるような笑顔ではなく、
【裏話】
桜華「そもそもルビーさんのアイドル活動妨害はしなくても良かったのでは?」
咸 「スカウトを妨害しただけです。これを見ても同じことが?」(紙ペラッ)
桜華「……芸能界って怖いなぁ」
咸 「星野さんの娘さんを馬鹿の食い物にするわけがないでしょう?」
桜華「んで、アクア君への妨害は?」
咸 「何のことでしょう? 私にはさっぱり」