薩摩の子 作:キチガイの人
原作チートがチートしてました回です。
感想、評価頂けると幸いです。
Q.こんなのカミキヒカルじゃない!
A.原作カミキがコレだったら泣くわ。
『何とか首の皮一枚繋がりました』
「……チッ。良かったな」
『舌打ち聞こえてますからね?』
グッドモーニング。小鳥が囀り飛び立つさまをベランダから眺めながら、俺は友人の生還を心より祝福していた。アクアも起床しており、室内でボーっとテレビを見ながら朝食をとっている。母娘の部屋のつっかえ棒と言う名の封印は解いているが、夜遅くまで話をしていたのか未だに起きてこない。
今日やることは全然決まってないが、とりあえず俺の実家に足を運ぼうとは思う。彼女らの今後のことを考えると、どう頑張っても俺とアイだけじゃ解決できない問題が多すぎる。
あんまり頼りすぎるのもどうかと思うが、アイ関連は逆に頼らないと怒られるからな。俺が。どうして。
母娘が起きるまで暇なので、隣の部屋にいる咸と電話しているわけだ。
ゆうべはお楽しみでしたね……と言いたいところだが、まだ魔法使いへの切符は手元に残っているようだ。黒川さん仕留めそこなったか?
『若輩の身ではありますが、私はこれでも税所家の現当主ですよ。あかねとの講和会議にて、私の巧みなる話術で自由を勝ち取ったわけです』
「条約の内容は?」
『私とあかねは
「無条件降伏って知ってるか?」
彼の巧みな話術とは白旗を掲げることらしい。
なんか数か月前の自分を見ているようだ。
『これでも頑張った方ですよ? 昨日のあかねは本当に凄かったんですからね。彼女が元々薩摩出身って言ったら、私は信じる自信があります』
「アイが色々と吹き込んでるのもあるからなぁ。今度は娘に何か入れ知恵しそうだけど」
『……アイさんから取り入れたものが、本当にそれだけだと思いで?』
俺の言葉に、咸が不穏な言葉を発する。
『彼女のプロファイリングから成り立つ洞察力と考察、それを演技に組み込む『憑依型』の演劇の才覚。正直、私は彼女の才というものを過小評価していました』
「確かに彼女は凄いとは思うが、お前の評価が過少に見えたことはないぞ。つか自慢しまくってたじゃねぇか」
『
「……ホント、芸能界はとんでもねぇ逸材を手放したもんだ」
せめて周囲が彼女を守るだけの力があれば、また違う結末を迎えたのかもしれない。こんな才能の塊、そう出会えるもんじゃないのになぁ。
島津的には蜀から趙雲引き抜いたレベルである。
『そんな彼女は『演じる』ことで身を守ることを学びました。では誰を参考にするか。あかねはアイドル活動をしていた時の星野さんを参考とします』
「完璧で無敵を演じていた時代のアイね。……え、あれ演じられるの? 俺にはよく分かんねぇけど、アイの『周囲を魅せる瞳』って、そう簡単に真似できるものなのか?」
『それを可能にするのが黒川あかねという少女ですよ』
太陽みたいな笑顔、完璧なパフォーマンス、まるで無敵に思える言動、吸い寄せられる天性の瞳、それを黒川さんは完全再現してしまったらしい。俺が知っているのは今のアイだから、正直ピンと来ないだろうけど、他の馬鹿共は彼女の演技を見た時は絶句したとか。
アイ本人が「ヤバい。完コピじゃん」と認めたらしい。本人お墨付きとは恐れ入った。
やっぱり、こんなド辺境にいていい人物じゃないよ、黒川さんは。
「……演じることは、自分の
『それだけなら、良かったんですけどねぇ』
「まだ何かあるの?」
彼女は考えた。咸の隣に立つ駒になるには、アイを再現しただけでは足りないのではないかと。俺としては十分どころか、おつりがくるレベルでの偉業を成し遂げてる気がしなくもないが、幸か不幸か、彼女は真面目で頑張り屋で、気になる彼の為に手を抜くような女の子じゃなかった。
彼女は自分の鎧を強化しようと考えた。
「なるほど、憑依型の演技、ねぇ。黒川さんは『アイドル時代のアイ+α』のキャラを自分で想像し、それを演じようと考えたってわけか」
『そうです。過小評価と言ったのも頷けるでしょう?』
「確かに」
与えられた役を異常なまでの考察によって、本人かのように演じる天才。それが、自分で自分に役を与えて演じるという芸当に手を伸ばしてしまったようだ。
自分のメンタルを守るために、さらなる強い自分を演じる。なるほど、確かに可能であるのなら合理的だ。
『なので、あかねは次に
「待って。え、待って?」
聞き間違いじゃなければ、黒川さんが自身を守るために核武装を始めたと仰ったような気がするんだが。確かに、攻撃は最大の防御と言うけれども。
彼女は次に親父殿をプロファイリングし、徹底的に洞察と考察を行い、島津家のリーサルウェポンを自分の役に組み込んだと語る。好戦的な笑顔、鉄壁な佇まい、もはや無敵に思える存在感、周囲を畏怖させる天性の瞳……それを再現してしまわれたようだ。
『ついでに、理想のお母さん像として、桜華の母君も参考にしたようです』
「なぜ──あぁ、そっか。周囲に参考にできる親が少ないのか。いやいや、自分の両親参考にしろよ、何でピンポイントに俺の身内狙うのかな?」
『その結果、元人気アイドルのアイのような周囲を魅了する瞳と、まるで鬼島津を彷彿とさせるような圧倒的存在感を兼ね備えた、母性溢れる女性を演じるあかねが誕生しました』
「とんでもねぇハイブリッドキメラが爆誕したんだけど」
その三人混ぜると俺特攻の凶悪兵器になるんだが。
何気に俺の
「けど島津狂信者の多いお前の部下は認めるのか? 逆に凶行に走りそうな人間がいそうなんだけど」
『
「俺は見なくても分かる。絶対それヤバいやつだ」
俺の前では
……本当に自分の身を守るためだよね?
炎上させた連中に己の手でチェストするためじゃないよね?
『話を戻します。そんな薩摩アイちゃんをインストールした彼女が、外堀ガンガン削りながら全力で私の童貞狙ってくるんです。桜華は守れます?』
「即座に自害する」
『諦めが早すぎます。そんな彼女との交渉結果、私としては頑張ったと思いますけどね』
俺は既に食されたからいいとして。
アイと親父殿をインストールした黒川さん、世間体ガン無視で既成事実を作ろうとするルビー。そんなバーサーカーに迫られる二人には、もうご冥福をお祈り申し上げるしかないのでは?と思う今日この頃。
とりあえず強く生きて、あ、それとゴムは常備するように。としかアドバイスできない島津少年だった。
「……なんかさ、こうなってくると安全圏から愉悦してる
『……大丈夫です。既に手は打ってありますから』
「ほーう?」
『みんなで一緒に──
【税所 咸】
主人公の幼馴染。ロリコン。3ヶ月も童貞でいられたらいいね。余談だが、あかねにロリコン癖を知られた際、幼稚園時代の服を取り出そうとした劇団の元エースを必死に止めた過去を持っている。
【黒川 あかね】
劇団『ララライ』の元エース。薩摩らしい強い女性を演じようとした結果、とんでもないモンスターを生み出してしまった。さすがに主人公の父親の武力までは完コピできない模様。