薩摩の子 作:キチガイの人
少女出すために神話のお勉強とか何なの。
感想、評価頂けると幸いです。
かな「アクアが妹と鹿児島に行ってるらしい。……いつ帰ってくるのかな?」
カミキ「……私の息子も向かったか」
かな「今さらっととんでもないこと言わなかった!?」
カミキ「失礼、私の下半身の話をしていた」
かな「このタイミングで!?」
俺は実家近くの公園で、一人でブランコを漕いでいた。
なんか人生に疲れたサラリーマンみたいなことやってるな。特に人生に疲れてるわけではな──いや、考えることが多くて頭と胃が痛いけど。
星野家は親父殿と母上と話をしているだろう。
俺も話し合いに参加するべきじゃないかと思うが、それを止めたのが何を隠そうアイだった。
『説明とかは私がしておくから、オーカはゆっくり休んでいいよ。散歩でもして来たら?』
『……あー、いない方がいい感じ?』
『そんなことないよ!? でも……』
『でも?』
『お義父さんとお義母さんに、ちゃんと説明できる? 途中で気絶したりしない? 今回の事はあんまり君に負担かけたくないから、大切なところは私が代わりに言うけど』
『……んじゃ、お任せしようかな』
俺が聞いたらまずいことでも話しするのかな?と思ったが、単純に俺のメンタルを考慮しての案だった。世の中にはナイフで刺す以外にも、臓器に穴をあけることが可能であることを知ったアイの配慮。できれば
あと双子と会った時の親父殿の顔を見たときに、俺が白目をむいたのも理由だろう。
俺あんな鬼島津知らない。完全に孫を可愛がるおじいちゃんだったわ。
俺は実の親と軽く言葉を交わして家を出たが、その短期間だけでも、俺の両親が二人を歓迎していたことは火を見るより明らかだった。
普段名前で呼ぶが、俺の両親の前ではアイのことを『母さん』呼びするアクアに、まるで自分の子のように接する母上。複雑そうな顔をしていたことから察するに、アクアって基本的に親族に対して一歩引いたような振る舞いをしている気がする。前世で何かあったか?
そして親父殿はルビーをめっちゃ可愛がってた。溺愛してた。前にどっかでか聞いた噂で『鬼島津は娘が欲しかったらしい』なんてのがあったが、多分あれ本当かもしれない。
そんな二人も今頃は腰を抜かしているだろう。
双子も転生者で、何なら先生と患者の関係で、妹の方が近親婚希望とか。ちゃんと脳の情報処理に成功してればいいけど。
俺が滞在している公園は広くない。
というか狭い。遊具も前後左右に乗れるアレや、小さな滑り台とブランコのみ。軽いキャッチボールはできそうだが、大勢での球技に向いているわけではないし、ジジババのゲートボールにも適さない。
なので人もいない。ある意味貸し切り状態だ。
普段と違う所と言えば……そうだな。
「──お兄さん」
そんなときに、
顔立ちは幼く、黒を基調とした服を着た、いかにも浮世離れした少女。ブランコで黄昏ながら、カラスに目を向けていた瞬間に、ふと前を見ればそこに忽然と存在するのだから、浮世離れしてると思っても仕方ないだろう。
傍から見ると可愛らしいお嬢さんだな。
少し前の咸のストライクゾーンの範囲内だ。今は理性と現実を以て自重しまくってるけど。
「どうした、お嬢さん。迷子か」
「あの2人、お母さんに会えてよかったね」
笑いかけながら対応する俺に、クスクスと少女は笑う。
……まぁ、彼女がそうなんだろうなぁ。
「本来なら交わることのなかった再会。優しい神様の気まぐれ。海は復讐の呪縛から解放されて、星は母と共に過ごす道を選ぶんだろうね」
「どの道を選ぶのかは個人の自由だ。俺が、ましてや君が、その道に指図する権利はないだろう。これから忙しくなるのは確かだが、最終的に幸せになればそれでいいんだよ」
「──でも、それが本当に2人の幸せなのかな?」
そのとき兼定の言葉の意味を理解した。
あの薩摩の暴力装置は、かつて宮崎で会った少女のことを、『上位者気取りのいけ好かないガキ』と称したが、まさに傲慢ともいえる口調ではあった。
「あのお姉ちゃんの夢はアイドルになることだよね? でも、今の彼女はチャンスから遠ざかろうとしている。こんな辺境の地で、お姉ちゃんの夢は叶うのかな?」
「できないことは、ないんじゃないかな? 彼女の夢と望みが両立できるよう、俺たちも動いているわけだし。時間はかかるだろうが、それが彼女の選択だ。あれは欲張りな女の子の娘だぜ? 目標達成への創意工夫は日本人の十八番だろ」
俺の返しに、少女は笑顔を崩すことはなかった。
しかし、その変化は見逃さない。彼女が若干イラついていることを。
だからこそ、次の言葉が出たんだろう。
「……星野アイは、本来生まれ変わることはないはずだった」
「らしいな」
「それを無理やりに捻じ曲げ、この薩摩の地に産み落とされた。……ねぇ、分かってる? 捻じ曲げた反動がどうなるのか、あなたは理解してる?」
本来起こるはずのない事象による、その反動。事象の収束だったか? どのように歴史を辿ろうとも、最後に行きつく場所は一緒、みたいな?
話があまりにも高次元すぎて、俺もうまくは説明できない。
要するに、本来彼女が生まれ変わることは、この少女には想定外の事態であり、そのしわ寄せが来ることを知ってる?と聞きたいのだろう。
俺は首を横に振った。
その回答に満足したのか、少女の笑みは深くなる。
「あーあ、今の2人は星野アイに依存している。彼女の転生した事実が、今の心の支えになってる。……その支えを失ったら、大切なものを再び失ったら、どうなっちゃうのかな?」
「まるでアイが近いうちに死ぬような言い方じゃないか」
「だって──星野アイは長く生きられないから」
俺はスッと目を細める。
彼女は笑う。
「あと10年かな? それとも5年? もしかしたら──明日かも」
「………」
「星野アイの寿命は、あとどれだけ残ってるのかな? ねぇねぇ、島津のお兄さん。あなたは星野アイが死ぬことに耐えられる?」
彼女は、嗤う。
アイが死ぬ、か。そりゃ生きてたら死ぬわな。本来転生自体が稀有な現象であることには同意するし、その反動もあると言われたらあるのかもしれない。
俺はブランコから立ち上がり、彼女の前に立って、彼女と同じ視線になるまで腰をかがめる。
目を細めながら、少女に問う。
「それは、神様の描いた筋道から外れたことへの罰なのかな? 彼女の寿命が残りわずかであることは、その神が定めた運命なのかな?」
「さぁ? どうなんだろうね」
「──君は知ってるのか。その神様気取りの首級の居場所を」
「え?」
急に俺の声色が変わったことに少女は驚いたのだろう。
それに気づかないフリをしつつ、俺は言葉をつづけた。
「教えてほしい。アイを再び奪おうと画策するクソ野郎の場所を。あぁ、大丈夫。殺すから。絶対に。彼女の笑顔を、彼女の願いを、彼女の安寧を。それを悪戯に奪おうとする奴を、まさかまさか、この俺が放っておく理由はないだろう? さぁ、教えてくれ。──首は、どこだ?」
「あの」
「
瞳孔を開きながら、いつの間にか彼女の肩を掴んで、屠るべき敵を問い詰める島津桜華。少女に詰め寄る姿は、傍から見ると完全に犯罪者である。
少女もこの展開は想定してなかったんだろう。顔が真っ青であり、俺が瞬きをしたその瞬間に、現れた時と同じように、忽然と姿を消した。同時に、公園にいたカラスが鳴き声を上げながら、空に消えて行く。
カラスが青い空に消えて行く様を見て、俺はようやくため息をつきながら立ち上がる。
そろそろ帰ろう、アイの事情説明も終わっていることだろう。
「それにしても……」
俺は少女を思い浮かべた。
「──全部、嘘だったな。何しに来たんだアイツ」
【島津 桜華】
主人公。うっすらと彼女が神様に関係のある人物なのでは?と疑っている。ので、隙間時間で神話等の勉強中。兼定の前に現れた経緯や話の内容から、某芸能神だと仮定している。でも、本当にアイツ何なんだろうな?とも思ってる。
【星野 アイ】
ヒロイン。転生者。今作では米寿くらいまでは生きる予定。
【少女】
双子が鹿児島に行かれると困るので、主人公の前に現れる。もうやだ帰る。