薩摩の子 作:キチガイの人
双子帰ります。
感想、評価頂けると幸いです。
ルビー「ま゛ま゛も゛がえ゛る゛のおおお゛お゛お゛!」
アイ「ああああああぁぁぁぁぁぁ……」
アクア「こら、アイのチケットはないから乗れねぇって、クソっ。全然剥がせねぇ……! 搭乗口まで引きずるな……!」
親父殿「………」(困った顔)
「──本当に良かったね。うまくいって」
「途中どうなることかとは思いましたが、和解ができたようで何よりです」
晩飯後にキッチンで皿洗いをしている俺に、リビングで食事を召しあがった黒川さんが咸と談笑する。
今日が日曜であり、明日は平日の月曜日だ。まだ時期的に夏休み期間に突入してないので、普通に学校もある。なので双子は飛行機で東京に帰らなければならない。
なので軽自動車を出した親父殿と星野一家は鹿児島空港(溝辺空港とか言ったりもする)に向かった。最初は俺も軽自動車に押し込まれそうになったが、双子の荷物もあるとの事で、アイは泣く泣く断念。悪いな、のび太。親父殿の軽は4人乗りだ。
まぁ、見送りは双子の母親だけでもいいんじゃないかと俺は判断した。
ルビーは最後まで「もう学校とかどうでもいいからママと一緒にいる!」とゴネて、「引っ越しの準備をしないといけないだろ」とアクアに引きずられていた。
「アクア君もルビーちゃんも、鹿児島に来るんだね」
「次の夏休みを利用して引っ越してくるらしいな。予定としては8月初旬には引っ越し完了、ウチの高校の編入試験受けて、9月から××高校に通う……みたいな? そんなプラン」
「なんか既視感ある……」
あまりにも突貫工事感あるけど、既視感を感じる彼女がその鹿児島移住RTAを行った人間なので、難しいのでは?という話は出なかった。何なら事務所や劇団、炎上騒動の真っ只中というしがらみがない分、双子の移住の方が楽な可能性がある。
そこらへんの小難しい手続きは両親と咸に任せるとする。途中からは島津宗家も手を貸してくれるだろうから、手続きそのものは滞りなく進むだろう。
双子転生と近親婚希望の話を聞いて、宗家がまともに稼働していればの話だが。
当主殿と重鎮複数が撃沈しそうなんだよなぁ。
アイもアイで爆弾を色々と抱え過ぎなんだよ。
でも……と黒川さんは言葉をつづけた。
「アイちゃんの双子も、色々と複雑かもね。里親とかアイドルのこととか」
「そこはもう仕方ないって諦めるしかないんだけどな。アイが鹿児島から離れられない以上、傍に暮らすってことを考えると、このクソミドリ溢れるド田舎に引っ越すしかないんだよ」
「自分の生まれ故郷に対して辛辣。でも田んぼとかあまり見たことないよ?」
「そりゃ鹿児島市内でも中心地だからなぁ、ココ。市外行けば田舎特有の景色が見られるはずだぜ」
特に鹿児島の端っことかに行けば、それはもう皆の思い描く田舎が広がっているはずだ。一面クソミドリというか干草色の田んぼが広がり、バスの本数も絶望的で、娯楽がパチンコしかなく、夜に山鳩の『ホーホーホッホー』って鳴き声が聞こえるはず。
ルビーちゃんが3日後に干物になるくらい何もない。
「アイドル活動に関しては、確かに東京の方が圧倒的にアドバンテージが高いが、鹿児島でだって何もできないわけじゃない。むしろ鹿児島だからこその利点ってのもある」
その言葉にあかねは首を傾げる。
……そうだよね。東京に勝る点って、重箱の隅を楊枝でほじくるぐらいしないと見当たらないよね。
「あかね、ここは鹿児島なんですよ」
「ん? そうだけど……」
「この地に1,000年間居座り続ける名家があるんですよ」
「あー……」
咸の言葉に、黒川さんはジト目で俺を見る。
鎌倉時代から存在する俺ん家が、地元の放送局と何も接点がないはずもなく、そりゃもうズブズブの関係であるのは、黒川さん程の頭脳の持ち主なら、少し考えれば理解してもらえるだろう。下手すると鹿児島限定なら芸能界の大御所よりもつながりが深いかもしれん。地元の大御所と島津はズッ友だけどね。
というか島津もプロダクション的なものを運営してるし。
アイドル活動ってのに手を伸ばしたことがないだけで、それ以外の部門はいくつか立ち上げてはいる。何ならネット活動は未来が頭として一部担っている。
ただ、先ほど言った通りアイドル活動に関してのノウハウというものが、島津には存在しない。ファンとしてなら上層部が知ってるぐらいの知識しかない。
現状で言えばルビーの願いが叶わないわけだ。
「ここ最近に在野武将として登用した斉藤壱護さんがキーパーソンになります。弱小事務所から東京ドームでライブできるアイドルを輩出する手腕、これを捨ておく理由はありませんからね」
「それに、元人気アイドルのアイちゃんもいるからね。……あれ、環境的には恵まれてる?」
「ウチの傘下の事務所で壱護さんには頑張ってもらおうと思う。ぶっちゃけて言えば、ルビーがアイドルになれれば何でもいいし、苺プロダクション鹿児島支部としてスタートするって言っても、俺は反対しないぞ」
そこら辺は彼らに任せるとしよう。
俺たちは環境とコネと資金を援助するだけの存在だし。実質株主。
「んで、里親に関してだが……」
「えーっと……確か、斉藤ミヤコさんだっけ? アイちゃんが死んだあと、双子の面倒をずっと見てきた人だよね? いきなり十数年一緒にいた家族同然の存在が、遠くに引っ越すって考えると……悲しいよね」
「悲しむ暇がありゃいいんだけど」
「何その不穏な言葉」
黒川さんが慄くが、それに言葉を返したのが彼女の彼氏だった。
「島津で雇用した斉藤元社長の最初のお仕事は、東京の苺プロダクションに戻って、業務提携の諸々を
「それって」
「星野さんの仇討の為に奥さんに何も言わず失踪した男が、ド辺境でアイドル育てるから!と、恥ずかしながら戻るってことですね。奥さんの元に。そちらの問題も
「………」
「最初は嫌がったんで、大金持たせて簀巻きにして輸送してます。現在進行形で」
復讐で周囲に迷惑かけないよう失踪したとはいえ、奥さんに何も言わず行方をくらまし、プロダクション運営を丸投げした男である。なんか聞いた話によると、奥さんに会ってもないし連絡もとってないって言ってたので、それはアカンと着払いで東京に発送したのだ。
双子の移住も衝撃的だろうけど、それに構っている余裕が社長夫人にあるのだろうか。壱護さんには軍資金も持たせたことだし、ルビーがアイドルするためにも頑張って頂こう。
……3か月で、奥さんの怒りが収まればいいな。
とりあえずプロダクション内の実況を、東京に滞在している間はアクア経由で俺たちは聞けるので、吉報を待つことにしよう。
いやー、良いことするって清々しいな!
「……アイも東京行ければよかったんだけどねぇ」
「立場的に難しいって聞いたけど」
「ちなみに、鹿児島から容易に出られなくなった理由の7割はアイ本人のせいだからな?」
「えっ」
彼女的には予想外だったのか、俺と咸は揃って目を逸らした。
いや、島津に関係あるからって、たかだか分家の養子程度は、
「……あの……その……ね? アイさ、事あるごとに自己紹介で『妻』って言うんよ」
「それがどうし──あ」
「……うん、大友にも、龍造寺にもね。あんだけ対外的に嫁発言してたらさ、もう『島津家の人間』としか見られないんですよ。分家の養子って言い訳を、アイツ自身が潰して回ったんすよ」
だから恋人って訂正してたんだけどなぁ。
遠い目をする俺に、黒川さんはかける言葉が見当たらなかった。
「質問なんですが、遠くに引っ越す際に、友達には引っ越しをする
「んぁ? まぁ、そうかもしれんな」
「……フフッ」
「気持ち悪い笑いすんなし」
「いえいえ、ただ楽しみなだけですよ。色々と」
カミキ「かな君、声優の仕事をとって来たぞ!」
かな「私役者なんだけど。で、何?」
カミキ「私との共演だな!」
『ポプテピピック season4 7話 Bパート』
かな「………」
かな「……私の代表作、『ピーマン体操』と『ラーメン体操』に加えて、コレになるの……?」