薩摩の子   作:キチガイの人

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 ほのぼの回です。
 考えとしては第1章が夏休み入るまでなので、そろそろ終わりそうかなぁとは思います。次の章で他二人を墓場送りにしたいんですが、兼定は決まってんだけど、未来の相手候補が思い浮かばないんだよなぁ。候補がもう五反田さんかぴえヨンしか思い浮かばないんだけど。
 感想、評価頂けると幸いです。


069.静かな誕生日会

 今日はアイの誕生日である。

 もちろん今世の誕生日であり、日付が変わった瞬間に多方面から祝福のメールやLINEの通知が、アイが所有する携帯を震わせる。さながら生誕を祝福する歌のようだった。

 その内容を見てアイが嬉しそうに微笑む姿は、現世の年相応の少女の様だった。

 俺も日付変わるタイミングで搾り取られてなきゃ、素直に祝福の言葉を送れたんだがな。アイの各方面への返信が遅れた理由の一つである。

 

 アイが元気にツヤツヤで。

 俺は連勤のサラリーマンのように。

 平日の真っ只中なので学校へ向かった。

 

 

『──で、今日のクラス会なんだけどさ!』

 

『18時に○○で食事会でしょ? 行く行く!』

 

『参加費って何円だっけ?』

 

 

 本来ならば一生徒の誕生日であるはずだが、その生徒が学年でも有名な美少女の誕生日なので、クラスで祝おうという話が画策された。既に店も予約済であり、クラスメイトの話題もそれで持ちきりだった。

 ちなみに2.3組合同でのクラス会である。

 おかしい、アイは3組のはずなのに。

 

 2組で準備企画等の話題で盛り上がっている光景をよそに、昼飯を食い終えた俺は、クラスメイトに囲まれるアイを遠めに見ていた。

 昼休みなので2組にお邪魔してきた兼定は、その様子を鼻で笑う。

 

 

「星野の旦那はクラス会参加すンの?」

 

「うんにゃ。俺は行かない」

 

「そン心は?」

 

「色々あんだよ、こっちも」

 

 

 ほぉ、とニヤニヤ笑いながら俺を見る伊集院家の暴力装置。何を想像したのかは知らんが、とりあえず一発殴らせてほしいと思った。

 

 

「まず仕事が忙しい」

 

「こんな時ぐらい恋人優先してやれよ」

 

「今日は出来ないからって、明日にやる当主殿主催のパーティー。それのセッティングの打ち合わせだよ。これ全部当主殿のポケットマネーでやるんだぜ? できれば相方としての意見を聞きたいって言われてるから、出ないわけにはいかん」

 

「もうちょい早めにやって、当日祝えるよう調整しなかったのかよ。あァ?」

 

「双子釣り野伏計画をやってなきゃ、もうちょい余裕をもってスケジュール組めたんだがな」

 

 

 双方納得のいくよう計画組んでいたが、ルビーのメンタル悪化で、急遽前倒しになったものが多く、それの関係でアイの誕生日パーティーの計画がギリギリどころか若干遅れた節がある。

 計画は余裕をもって遂行しようね。

 

 

「あとクラス会で他生徒がアイと絡めない」

 

「星野はテメェと一緒に居たいンじゃねェのか。傍に居てやれよ、旦那ァ」

 

「お前それで体育大会のクラス打ち上げで、他連中がアイが俺にべったりで話しかける余地すらなかったんだからな。男冥利に尽きるが、それだと友達ができないだろ」

 

「100人の友達より1人の親友だぜ?」

 

「クラス会の意味を考えろ」

 

 

 というか誕生日のクラス会に、俺抜きでアイを参加させるの、めっっっっっちゃ苦労したんだからな。第一声が「オーカが参加しないなら私も行かない」だ。お前の誕生日会だって言ってんだろうが。

 切り札の「行って来たら俺からのプレゼント渡すから!」で何とか渋々了承を貰った。本人曰く、二次会行かず速攻で帰るって言ってたけど。クラスのみんなは俺を崇め奉ってほしい。

 

 山田先生も参加するし黒川さんが一緒にいるから、よほどのことでもない限りは変なことは起きないだろう。変なことを起こそうものなら、黒川さんが鬼島津インストールするって言ってた。前にストーカーに遭ったときにそれやって、威圧でストーカーが泡吹いて失神した、黒川あかね(鬼島津のすがた)だ。

 ご隠居が思わず身構えるんだから、そりゃもう立派な武器よ。銃刀法違反にならなきゃいいけど。

 

 

「……まァ、クラス会から帰って来た星野を労わってやれよ」

 

「そりゃ無論。つか今週ってアイがパーティー三昧なんじゃ?」

 

「明日が当主主催で、明後日がテメェと星野両親の家族パーティー、明々後日がオレ達の食事会。で、土日にまた帰ってくる双子との誕生日会。うっわ」

 

 

 思わず兼定が唸るくらいのハードスケジュール。

 アイドル時代の誕生日がどのように祝われたのか知らんが、今世の誕生日もそれなりに忙しいんじゃなかろうか。いろんな人にお世話になると、その分しがらみも増える。それがいいことなのか、それとも面倒と思うのか。

 それは本人次第だろう。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「づがれ゛だ……」

 

「お疲れさん」

 

「全然、料理食べられなかったよぉ。お腹すいたよぉ。おーか、何か作ってー」

 

「今の時間はガッツリ食べるのはダメだって、前に自分が言っただろうが。ったく、インスタントのスープパスタでいいか?」

 

「はーい」

 

 

 プラスチック容器を二人分取り出し、スーパーで特売だったスープパスタをブチ込み、お湯を入れてハイ完成。リビングでソファーに寝そべるアイの前に出す。詳しく聞いたところ、休む暇もなく会話を続けた結果、アイの胃袋が満たされなかったとか。

 彼女が軽い夜食を口にしている間に、俺は冷蔵庫から事前に作ってあった例のブツを取り出した。

 

 

「ほれ、これ食うか?」

 

「おぉ! シフォンケーキ! オーカの手作り!?」

 

「前の誕生日にも作ったっけ? そそ」

 

 

 ふわっふわのケーキに、生クリームとブルーベリージャムを少量乗せただけの簡素なケーキ。前の誕生日にも贈ったことはあるが、そのころはまだアイとの関係が良好ではなく、噓の仮面でありがとうと笑いながら食べてたような気がする。

 今のように、モグモグ心底嬉しそうに食べてはなかったはずだ。あれから、よくもまぁ恋人同士になったもんだ。人生は何があるのか分からないぜ。

 

 なんなら俺の席に置いてあったケーキすらも食した欲張りな女の子をジト目で見ながら、彼女との約束通り、俺は彼女の対面の席に座りながら、紙製の箱を彼女に差し出す。縦横がタブレットサイズの箱であり、奥行きはそこまでない。

 

 

「これってもしかして……」

 

「約束してた誕生日プレゼントだ。そういうのには疎くてな、撫子にも協力してもらって、作ってもらった。気に入るかどうかわからんが、まぁ、俺からの気持ちってことで」

 

「作る?」

 

 

 買ったわけではなく、作ってもらった。

 彼女は首を傾げながら、箱を丁寧に開いた。

 

 宝箱のようにパカッと開くタイプの箱で、中には髪留めが4つ同じものが入っていた。彼女はその一つを手に取って、ぼそりと呟いた。

 

 

「……綺麗」

 

「手先が器用なのは知ってたが、ここまでの完成度は凄まじいよなぁ。アイってアイドル時代に兎の髪留めをつけてたじゃん? 今はそういうの持ってなさそうだったから、今回用意させてもらった」

 

 

 本当は生前と同じ兎の髪飾りを探し、なかったんで撫子に発注したのだが、製作者から首を横に振られたのだ。恋人関係になって初めての誕生日なのだから、あなたらしいモノを渡しなさい、と。

 

 

『……小刀とか?』

 

『首切り落とされたいの? はぁ、この頭島津が。……ほら、さっさとあなたの好きな色を言いなさい。早く。今すぐ』

 

『黒と赤』

 

『赤ってどんな感じ。こんな明るめ? それとも暗め? 今LINEに送ったから、そこから選びなさい』

 

『あー……このワインレッドってやつ』

 

『そう。あ、あとあなたの家の家紋使うわよ』

 

『ネックレスも同じようなデザイン送ったんだけど、被るのっていいのか?』

 

『うっさいわね。あなた色に染め上げるの。分かった?』

 

 

 以上のようなやり取りの末、アイの手元にあるものが誕生したのだ。ブラックとワインレッドを基調としたシュシュみたいなデザインに、黒いリボンが結ばれている髪留め。そしてリボンには銀色の丸に十字のアクセサリー。

 アイドル時代につけてた髪留めの薩摩バージョンとも言うべきか。本当に手作りか?と疑いたくなるような、細部のバランスまで考慮され作られた作品だった。

 

 予備も含めて作ってくれたのは、本当に感謝しかない。

 アイは早速髪留めをつける。サイドテールって髪型だろうか。

 

 

「どう? 似合う?」

 

「最高。パーフェクト。俺好みの色しか考えてなかったから、正直、アイに合うのか分からんかった」

 

「……へぇ、オーカの色なんだぁ」

 

 

 彼女は狭い空間でくるっと回り、俺に見せつける。

 先ほどの疲れた表情とは一変して、送られたプレゼントを喜ぶ一人の女の子が、俺の瞳には写っていた。

 

 

 

 




【島津 桜華】
 主人公。誕生日は秋。事実上アイが年上になるが、家庭のアレコレは基本的にこいつが行っている。本作裏設定に『母親に恵まれなかった人間(先立たれた人間)は、家事ができないタイプになりやすい』があるので、アイもルビーも咸も未来も撫子も新カミキも家事は下手設定。アイは他と比べるとマシ。


【星野 アイ】
 ヒロイン。転生者。髪留めをめっちゃ気に入って、以降これを髪に結んで過ごすことが多くなる。






かな「……で、今度はバラエティーね。というか、このハッピって何?」

カミキ「かな君! メルト君! あれを見てみろ!」

かな・メルト「「ええええええええ!?」」


 そこで有馬と鳴嶋が目にしたものとは!?


カミキ「そうさ二人とも! 世界で一番盛り上がる祭りはスペイン・トマト祭だ!」
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