薩摩の子 作:キチガイの人
今回あとがきのせいで投稿遅れました。めんご。
あと『ドリフターズ』の7巻が2023/8/10に発売だそうです。『推しの子』二次で何を宣伝してるんでしょうか。
感想、評価頂けると幸いです。
俺の名前は島津桜華。
××高校普通科に通う、普通の1年生だ。
そして──
「~♪」
──帰宅した瞬間に俺を速攻で押し倒し、両腕を後ろに回して手錠をはめ、俺をベッドに座らせて、歌いながら机の上にスッポンドリンクを十数本と避妊薬を用意しているのが、俺の最愛の彼女である星野アイ。進学意欲ZEROなのに、なぜか××高校普通科に通う1年生だ。
瞳が黒く輝いていることから、怒りマックスなのが理解できるが、そうなった原因は不明だぜ。
意味わかんないぜ。
え? 薩摩兵子なら手錠なんて自力でなんとかできるだろうって?
確かに俺の手首を拘束するコレは、無理やり引きちぎることも可能だし、何なら関節外せば簡単に自由を得られるだろう。
ただ俺を拘束した理由が分からない以上、これを容易に外すとアイの行動パターンがランダムになるから、うかつに解くことができないんだぜ?
俺は彼女が自室に引きこもった隙を見計らい、器用に拘束されながら携帯で助けを呼ぶ。
とりあえず咸だな。隣の号室に半強制的に住んでるから、助けを求めやすい。何なら、黒川さんを調停者として、アイの暴走を止められるかもしれない。
『──もしもし』
「咸か? アイが現在進行形で暴走している。助けてくれ」
怒りの原因が分からない以上、そうとしか説明できないのが歯痒い。
俺の端的かつ情報不足なヘルプに対し、税所家の現当主はクククっと不気味に笑った。
『奇遇ですね』
「アイが怒ってる理由を知ってるのか? 正直、何で怒ってるのか全然分かんねぇんだよ。ちょっとした情報でもいいから教えてく」
『──私も助けてくださ『あ、桜華君。今代わったよ。ちょっとオイタしちゃった咸君にオシオキをしてるところだからさ。もしかして急用?』
「あ、大丈夫っす」
てめぇもかよ。
電話越しに伝わる黒川さんの口調と底知れぬ威圧感に気圧された俺は、即座に会話を切り上げて電話を切る。援軍のない籠城戦を行っているのは俺だけじゃないという仲間意識と、コイツ肝心な時に使えねぇなと盛大なブーメランを思い浮かべる。
仮に俺が万全の状態だったとしても、今の黒川さん相手じゃ完全に分が悪いが。
となると、あとは遺児である星野兄妹ぐらいか? 兼定のクソ野郎と未来のゴミムシは、この状況を知ろうものなら笑い転げて碌なアドバイスを寄越さないからな。他親族は論外。相談しようものなら『アイを怒らせた桜華が悪い』の満場一致になる。
今までの経験上、アイと比較した際の俺の人権は存在しない。
まだアイが自室に引きこもっているのを確認して、とりあえず一番話が通じそうなアクアに電話をかけてみる。ルビーの場合だと、状況によってはあちら側につきかねん。
『──桜華』
「すまん、アクア。アイが暴走し」
『助けてく『あ、パパ。私ルビーだよ。ごめん、今お兄ちゃん先生のスケコマシが、転校するからって他の女がお兄ちゃん先生に告白してさ、ちょっと浮かれ気味なんだぁ。再教育してるから取り込み中。あ、もしかしてママ関連で何かあった?』
「あ、大丈夫っす。あんまり騒ぎ過ぎるとアイが心配するから程々になー」
『はーい』
てめぇもかよ。
遠い東京の地で同じようなことになってることが判明して、遠い地でも俺は陰から応援してるからな!と謎のエールを送りつつ、やってること母娘で変わんねぇなと遺伝の強力さを学ぶ。
孤軍奮闘するしかないことが確定した瞬間である。
というかアクアは告白されたんか。そりゃあ、あのビジュアルでモテない方がおかしいわな。告白した側の女の子も、遠距離恋愛になること覚悟の上で、勇気振り絞って告白したはずだ。その点に関しては称賛に値する。
妹に童貞をガチで狙われている点と、そのための外堀を母娘で埋め立て工事中であることを除けばの話だが。業が深すぎる。まともなのは俺だけか。
……ん? 告白?
もしかしてアイが怒ってるのは、
アイが暴走状態である理由に思い当たった瞬間、アイの部屋の扉が開かれる。
彼女が身にまとっていたのは、以前にアクアとルビーを中央駅で迎えた時に着ていた服だった。お気に入りの服だと言ってたことを思い出し、同時に未来から『死に装束』とクッソ不謹慎なことを言われてたのも思い出す。そういうとこやぞ、未来。んで、アイがそれ聞いて爆笑してた。
「どう? これお気に入りなんだぁ」
「めっちゃ似合う。最高。よっ、薩摩
「ありがとう! じゃあ、始めようね」
「待て待て待て待て待て待て待て。とりあえず経緯を説明してくれ」
流れるようにアイからベッドに押し倒されたので、手錠をガチャガチャ鳴らしながら、必死の交渉を試みる。この交渉に失敗すると、数か月後に××高校1学年から休学者を1人出すことになる。
それだけは絶対に阻止しなきゃならん。俺は黒く染まった星を真正面から受け止める。
「……オーカ、今日告白されたよね?」
「──あぁ? ……あー、確かにされたわなぁ」
アイがいない時を見計らって手紙を渡してきた女子生徒を思い出し、学校の屋上に呼び出されて告白されたことを思い出す。夏休みが始まるまであと少しなので、それを見計らって一世一代のプロポーズをしてきたのだろう。
もちろん断った。
むしろ女子生徒は何でイケると思ったのかが理解できなかった。
アイはスマホの動画を再生する。
『──きです! 付き合って下さい!』
『……あー、えーと……うん、すまない。俺、もう恋人がいるからさ』
「……何で断るのに時間がかかったのかなぁ?」
どうやら告白を一刀両断しなかったのが気に入らなかったらしい。アイが告白されるのを毎日見かけるが、脊髄反射で袈裟切りしているのは××高校の名物でもある。
俺に同じような対応を期待していたらしい。
「どおして時間かかったのかな? もしかして『この娘の方がいいかも』とか一瞬でも思っちゃった? えー、でも私の方が絶対に可愛いよ? うーん、やっぱり胸? そこそこ大きいもんね。ナデコちゃん程じゃないけど。けどさぁ、大きければいいってもんじゃないと、私は思うんだけどなぁ。そこのところ、オーカはどう思う?」
「え? あ、いや──」
「私もそこそこはあると思うんだけど。あ、確か誰かが『好きな人におっぱいを揉んで貰うと大きくなる』って言ってたじゃん。それやろうよ! どう? 名案でしょ? オーカは大好きな彼女のおっぱい揉めるし、私はオーカにいっぱい触ってもらえる。しかも大きくなる可能性もある! いいことづくめだと思うんだけど!」
「アイ、ちょっと話を聞いて」
「──それとも、あの女の方がいいの?」
ドロドロとした黒い星を輝かせて、俺を押し倒す力を強める彼女。恋人関係になったことで情緒不安定度合いが改善されたかと思っていたが、今回の告白の件で再発させてしまったようだ。
俺は右手首関節を外しながら解こうとする。
そして、告白してくれた女の子にはマジで失礼だと思われる最悪の言葉を口にする。
「あのとき言葉に詰まったのは、あの女の子を傷つけないように断る言葉を選んでただけなんだ。告白を受け入れるなんて考えちゃいない」
「で、でも!」
「俺はあの女の子の名前を知らない。名乗ってた気がするけど覚えてない。つか、胸大きかったん? 正直そこまで見てなかったから分からんかった」
「……嘘」
「俺は策は得意だが、嘘は苦手だ。それはアイが一番よく知ってるだろう?」
一呼吸置き、俺は彼女に言い放つ。
「俺の恋人は星野アイだ。それは揺るがねぇぞ」
「………」
少しの時間が過ぎ、ようやく瞳に通常の光を取り戻したアイは、俺の胸に顔を埋めた。ベストタイミングで手錠の拘束から解放された俺は、右の手首関節を戻して彼女を抱きしめた。
「あーあ、本当にごめんね? オーカがそんなことする人じゃないのは、私が一番よく知ってるはずなのにさ。なんか女の子に告白されてる姿見て、君の気を引かなきゃって焦ってさ」
「そっかそっか」
「嘘つきで馬鹿で嫉妬深いってさ、ホントに最悪な女だよね、私。こんな面倒な女でごめん。本当に、ごめんなさい。……嫌いにならないで、欲しいなぁ」
「そんなところが可愛いぜ」
次回から告白されたら速攻で土下座して即断ろう。
彼女を力いっぱい抱きしめながら、俺はそう心に刻むのだった。
「お詫びってわけじゃないけど、今日はオーカは動かなくていいよ。私が、君を気持ちよくさせるから」
「ヒエッ……」
かな「……あ、ウチの事務所所属の娘が炎上した」
メルト「でもウチの事務所の代表がさらに炎上した」
かな「存在そのものがバーターって何なの……?」
【神木プロダクション】
杏子の葉みたいなロゴを掲げる芸能事務所。元々は一流の俳優・女優を抱える事務所だったが、最近は多種多様の分野に手を出しては、なぜか知らんけど大きく成果を上げている芸能界有数の事務所となった。役者部門のみだったが、最近は声優部門、タレント部門、モデル部門、ラーメン・スープ部門、ラーメン・麺部門、ラーメン・経営部門、ラーメン・宣伝部門など多種多様かつ、各部門の垣根は薄い(例・有馬かな)。
恋愛OK。もし炎上しても、代表取締役のカミキがさらに炎上するし、何なら何もしなくても勝手に炎上するので、所属の人間から絶対的な信頼を得ている。
なんか知らんけど各方面でプロダクションが不祥事で消えまくったことで、ここに転属する人が増えたとかなんとか。有名どころだと『鷲見 ゆき』や『寿 みなみ』『不知火 フリル』なんかも転属してる。さらに増える予定。魔境か?
余談だが、ネット活動関連は、苺プロダクション所属が安定。他がバッタバッタ倒れてるのに、ここは不祥事が出てこないからね。やましいことなんてないんや。