薩摩の子 作:キチガイの人
次で1章最終回です。
あと今回から非ログインユーザーも感想OKになりました。なぜ今頃になって? 設定し忘れてました。今71話やぞ。評価は文字設定ありのままですが。
感想、評価頂けると幸いです。
「──は? 大友ん連中が? 俺たちを?」
照国町にある鹿児島中央公園の広場に
俺たちの目的は、相方の到着を待つことである。
この日の為に普段のクソダサファッションではなく外出する時用の服を着た俺と、普段からキッチリ流行りでキメてきている咸。服に対するスタンスが対比として表れている。
本当はクソ暑いので半袖半ズボンのラフな格好で推参しようとしたが、待ち人の浴衣の着付けをしている母親から『まともな服着てこい馬鹿息子』と、有難いお言葉を頂いたので、こうやって前にデートで着た服を引っ張り出したのだ。
女性の準備にはかなり時間がかかるとの事で、こうやって男二人で雑談をしながら待っているのだが、その雑談の内容は無視できないものだった。
──曰く、大友家が俺とアイを嗅ぎまわっていると。
「正確には『大友』ではなく『立花』が、ですが」
「同じ意味やろがい。ってか何で今さら? 主導は誰?」
「今さらってほどでもないでしょう。例の三家同盟で表向きは協力体制を築いているのですから、調べるのが非常に楽ですよ。私にとってはボーナスタイムみたいなものですので。……まぁ、あちらも同じことを考えているとは思いますが。あ、主導は
「……はぁ!? え、マジで何で!?」
立花宗虎と言えば、あの牡蠣に殺されたことで有名な立花導春の従弟であり、俺は名前だけ聞いたことがあるだけで、実際に会ったことがない。だってオッサンいたし。
導春が大友勢力圏の南側を守護する存在なのに対し、主に北側──毛利や龍造寺を抑える人間が、その宗虎さんなのだ。なので島津な俺は、直接的なかかわりが一切ない。なんなら導春の通夜葬儀にも参列しなかった人だった記憶があるので、本当に知らない。
俺の所有する宗虎の情報は百聞のみ。普段はとても礼儀正しく社交的な御仁だが、彼の異名は『戦争屋』であり、その名に恥じない超絶好戦的なバーサーカーである。武人としても超一流で、しかも頭が非常に回るので、毛利が九州の地を踏んだことは一度もないと聞いたことがある。あの謀略の神と呼ばれた一族が、だ。
適当に説明するなら、戦争大好きなぎっちょんである。
そのぎっちょんが俺とアイを探っているとの事。
なして?
「え、えぇ……そもそもの話、あの人は北九州が生息地だろ? 何で南下してるわけ?」
「私に聞かないでください。しかも、時折鹿児島に来てるそうですよ」
「出てくる話全て親父殿並みの超危険人物じゃん……アイが狙われるような理由ないじゃん……俺も何も悪いことしてないじゃん……宗虎さんの弟子殺ったけど」
「仇討ちなんて考える御仁ではないですもんね……」
俺の貧相な脳みそでは、わざわざ九州の反対側まで来て俺とアイを調べる理由がわからん。嫌がらせか? まさか俺を襲撃からの、瀕死の重傷からの、アイ発狂からの、エメラルド爆☆誕の、考える限り最悪の嫌がらせをする気か?
頭いい人だからそれくらいしそうと勝手に決めつける俺。
あぁ、最近やっと収まりつつある胃痛が。
「ちなみに大友さん家の当主さんが『知らん何それ……怖』と言ってたので、すぐに山口まで戻るでしょう。隣接勢力が停戦状態の平和ボケした島津よりも、自身の欲を満たせる戦地を優先する方ですから」
「何が平和ボケだよ。戦求めて海超えて
今の長宗我部さん家は悲惨だ。
頭バーサーカーな島津と、香川県の『香川県ネット・ゲーム依存症対策条例』と戦っているのだから。つまり四国の勢力図は島津VS長宗我部VS香川の三つ巴である。
余談だが、長宗我部当主がオンラインゲームのボス戦で、戦闘時間が1時間超えて強制終了されたことに発狂し、開戦を決意したとかなんとか。1時間粘ってのソロ討伐強制失敗は辛いもんね。
「考えることが多すぎるわ。あ、話の腰を折るけど、食われたん?」
「唇だけで勘弁してくれました」
「覚えとけよ包囲網初心者。そうやって少しずつ侵食していって、気が付いた時には朝チュンが連中の十八番だ。唇だけってのは、破滅の序曲と心得よ」
軽いキスだけで済んだってアクアも言ってたし、俺は父親として再三注意した。ルビー曰く「挨拶だから! 外国では家族のスキンシップだから!」って言われたとのことで、アクアが「じゃあ桜華にもするのか?」と言って黙らせたと。アクア強い。でも、後で実力行使でキスされたので意味はない。
え、俺がルビーとキス? んなことした日には、アイからディープキスの上書き保存されて、ついでに新規でエメラルドフォルダが作成されるわ。
「──おっまたせー」
そんな馬鹿話で盛り上がっていると、ようやく今回の待ち人が来たらしい。
よっこいせとジジ臭い台詞を吐きながら立ち上がり、俺は彼女の方を見
「「───」」
そこには二柱の女神が居た。
あと後方腕組み親父殿。
「ど、どう? 似合うかな?」
「こ、こんな綺麗な着付けまでしてもらって……ほ、本当にいいのかな……?」
淡いピンク色の浴衣を俺に見せつけるアイと、自身の着る藍色の浴衣を確認しながらも咸の方をチラチラ見る黒川さん。たしか昔にばあちゃんが仕立てたやつだった気がする。相当前のものだが、古臭さは全然なく、着用している人物も一流なので、何もしなくても周囲の目を惹き付けてしまう美しさだった。
言葉が出ない美しさ、と言うべきか。
「……オーカ?」
「古池や 俺が飛び込む 水の音 松尾芭蕉」
「ねぇ、感想は!? 黙って噴水に飛び込もうとしないで!?」
とりあえず頭を冷やそうと中央公園の噴水に向かおうとする俺と、服の裾を掴んで止めようとする一番星の女神。長い髪をポニテにしており、チラッと見えるうなじがグッド。最高。オカン万歳。
「……すみません、見惚れておりました」
「桜華君のお母さんが、これが絶対似合うって貰っちゃったんだけど。えっと、本当にいいのかな? これお高いやつとかじゃないよね?」
「構わん」
咸が素直に称賛し、黒川さんの戸惑いの声に、後方でナンパ目当ての有象無象を視線で黙らせていた親父殿が、短く答えた。母親が譲渡するって言ってんだし、親父殿からもOK言ってんだから大丈夫だろう。鬼島津に何度も頭を下げる黒川さんを眺めながら俺は思う。
その間、咸がスッと耳打ちしてくる。
「……本当によろしいので?」
「あと何十着あるから大丈夫やろ。美人に着てもらった方が、浴衣も本望だろう?」
「ありがとうございます。……え、でも、あれ
普通に買えば軽く六桁するんじゃないんかね。
浴衣とか詳しくないから知らんけど。
「ねーねー、私の浴衣の感想は? 彼氏君の言葉が聞こえないよ?」
「……あー、っと、凄い似合ってる。綺麗だ」
どうあがいても陳腐な言葉しか出て来ず、自分の語彙の少なさを恨めしく思うが、俺の感想に満足したのか、綺麗に着飾った最愛の人は満面の笑みで俺の腕に抱き着く。
初々しい方のカップルは手を握るのみ──と見せかけて、黒川さんが大胆にもアイと同じように咸の腕を抱きしめる。双方とも赤くなり、それでも嫌がる様子は一切なく、そのまま祭を楽しむために歩き始めた。
俺も可能な限り恋人をエスコートしながら、屋台立ち並ぶ祭り会場へと向かうのだった。
後方腕組み鬼島津も、セコムとして同伴するのだった。
かな「アクア、鹿児島に行っちゃうんだ……」
かな「………」
かな「簡単に、会えなくなるじゃん」
かな「……グスン」
カミキ「|д゚)チラッ」
カミキ「かな君と息子を気軽に合わせてやりたいが、鹿児島とは難儀な」
カミキ「さて、私はどう動くべきか……」
カミキ「──というわけで、島津少年とアイ君の動向を監視してほしい」
カミキ「もちろん手は絶対に出すな。これは厳命だ」
カミキ「頼んだぞ、宗虎」