薩摩の子   作:キチガイの人

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 これだけは言います。寒暖差にだけはお気を付けください。
 これにて1章終幕です。次回から男共を墓場に送り込む夏休みが始まります。
 感想、評価頂けると幸いです。


072.来年も君と一緒に

 六月灯とは、鹿児島県の祭りである。

 正確には旧薩摩藩領で旧暦の6月(現在の7月)に行われ、和紙に絵や文字の書いた灯篭を飾り、歌や踊りが奉納される祭りだ。この祭りは鹿児島県の神社や寺で行われるが、今の天文館にある照国神社では、学校や企業などの各団体から寄せられた灯篭を飾り、それを見るのがメインになっている。

 え、由来? 江戸時代に島津19代当主が寺再建した時に沿道に灯篭をつけさせ、それ以降檀家が真似して灯篭を寄付したのが始まりだとか。

 

 ぶっちゃけると神社近辺や天文館通りに設置された、小中高生や企業の灯篭を眺めながら、縁日を楽しむ祭りなのだ。何なら、各校の美術部だったり、県内唯一の美術科を有する高校からの作品もあり、完成度はそれなりに高い。

 俺は絵はクッソ苦手なので、総じて上手く見える。

 

 

「今年も豊作だなぁ」

 

「なんかアニメ作品多いね」

 

「そりゃ美術部なんて蓋開けりゃオタクの巣窟よ」

 

 

 灯篭にはそこまでテーマなどはないので、芸術作品からアニメ画の模写、ゲルニカのオマージュが淡く輝く。あ、ポプテピピック(クソアニメ)の灯篭もある。season4の7話のBパートのピピ美が印象的だった。その声優さんは元々役者さんだったらしい。

 近くの屋台でカキ氷を購入した俺とアイは、歩きながら灯篭の感想を語りあったり、他愛もない会話で花を咲かせる。

 

 

「つかカキ氷だけで良かったのか? 欲しいもんあれば買うぞ」

 

「……その、ね?」

 

「どうした?」

 

「なんか、どうしてもお値段見て躊躇しちゃうよ」

 

 

 なんか母親の部分のアイが出てきてしまったらしい。

 双子に会うことを意識し出したときから、時々だが二児の母親の顔を見せるようになった元アイドルの彼女。俺とアイの同棲生活において、財布を握っているのはアイであり、俺の稼ぎは大半をアイに渡している。そう考えると、経理担当(アイ)的には財布の中身を意識してしまうのだろう。

 確かに縁日の屋台は高いよな。慈善事業じゃないんだから仕方ないけどさ。

 

 でも、こういうときってパーッと楽しむもんじゃないだろうか?

 節制するのは大切だとは思うが、俺の稼ぎと仕送りの金額、日々の出費を比較すると、そこそこ貯金はあるはずだ。彼女は何を想定しているんだろう。

 

 

「貯金があれば安心できるでしょ? ほら、アクアとルビーが小さい頃は、貯金があればーって、毎日思ってたからね。ここまで余裕のある生活って、前世込みで初めてだから、この余裕を崩したくないんだ。それに……」

 

「それに?」

 

「目指せ、3000万、でしょ?」

 

 

 ……彼女は何を想定しているんだろう。(半泣き)

 貯金するのが怖くなってきたんだが。

 

 

「来年はアクアとルビーも連れて……あ、それなら全員浴衣着て、お祭りに行くってのはどう? ん? 来年じゃなくても、8月後半のお祭りなら、家族4人で参加できるんじゃない!? 楽しみだね!」

 

「……来年、か」

 

「どうしたの?」

 

 

 来年、という言葉を小さく反芻させたところ、アイが不思議そうに首を傾げた。

 聞かれてしまったかと項垂れつつ、彼女への嘘は苦手なので、心の中で思ったことを正直に述べてみた。

 

 

「アイと会うまではさ、馬鹿共と色んな祭りに参加してたんよ」

 

「小さい頃のオーカと一緒とか羨ましいなぁ」

 

「やっぱりガキにとって、祭りの感動が眩しくてさ、毎回思うわけよ。──俺は、この光景をあと何回見れるんかなって。これが最後の祭りなのかなって」

 

「………」

 

 

 生と死が同居した価値観で生まれたせいか、半成人を超えたあたりから、自分の最期というものを想定して生きてきた。よく言えば毎日毎日を大切に生き、悪く言えば戦国時代から何も変わっていない死生観。なにをどうしても、常に死神の鎌を意識してしまうのだ。

 特に、最近は毎日が物凄く楽しく、満ち足りている。

 だからこそ、常に一歩引いた自分が、後いつまで続くのか?と卑屈に笑うのだ。

 

 来年なんて来るとは限らない。

 小さい頃からの癖で、そう思ってしまうのだ。

 楽しい時間にそのようなことを考えるなんざ、俺は本当に空気が読めないなと馬鹿にしたくなる。着飾った彼女の前で言うことじゃねぇぞ頭島津か、と。

 

 

「……オーカ、こっち見て」

 

「え? あ、あぁ……」

 

 

 ビンタの一つくらい飛んでくるのかな?と身構えた俺だったが、抱き着いていた腕を離して俺を真正面から見つめる愛しの彼女は、流れるようにスッと距離を詰めて──

 

 

「──んっ……」

 

 

 彼女の柔らかい唇を、俺の唇に当てたのだった。

 キス前に自分の唇を舐めたのだろう。俺の唇が若干湿る。

 

 彼女の行動の意図が分からず目を白黒させていると、彼女は俺を魅了する笑みを浮かべて、ピースサインをする。しゃらりと、赤黒の髪飾りが揺れる。

 

 

「──これで君がこれから暗いことを考えても、次からは超絶美少女の私のキスを一緒に思い浮かべるんだからね? はい、つまりは私のこと考えるってわけ」

 

「そう、だな……」

 

「何かの本で言ってたよ。確か……『綺麗なあの娘のことだけを考えろ。生きてあの娘の笑顔を見たいと願え。そうすりゃ嫉み深い神さまには嫌われても、気のいい悪魔が守ってくれる』って。これでオーカは超絶美少女の元アイドルの加護と、悪魔の守りをゲットだね!」

 

「………」

 

「……来年も、みんなで見れるよ。来年だけじゃない、十年後も二十年後も、ずっと、ずーっと、一緒だから。しわくちゃのおじいちゃんおばあちゃんになっても、一緒に見れるから」

 

「………」

 

 

 ははっ、やっぱり、やっぱりだ。俺は彼女には勝てない。

 そりゃそうだわな。相手は一番星の生まれ変わりの、生まれ変わりだぞ? 彼女が言っているのだから、俺は来年も再来年も、床に臥すまで、俺は笑いながら彼女に振り回されるのだろう。

 

 彼女は俺に手を差し伸べる。

 まだまだ、祭りは終わってないよ?と。

 

 

「……だな。んじゃ、行こっか」

 

 

 俺は彼女の手を取った。

 来年はここにアクアとルビーが加わるのか。俺とアイの子供は、何回目の六月灯で一緒に参加できるのだろうか。大所帯で参加するのもありだな、何回目で計画しようか。

 本当に、楽しいなぁ。先のことを考えるってのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──アイちゃーん、4人で写真撮ろう?」

 

「いいね! えっと、自撮り機能は……っと。みっちゃん、合図よろしく!」

 

「いいですよ。──はい、チーズ」

 

 

 ピピッ、カシャッ。

 

 

「はいチーズって、咸君はおじさんみたいだね」

 

「「「………」」」

 

(あ、アイさん。今どきの若者は『はい、チーズ』って言わないんですか!?)

 

(わかんないよぉ! 私も撮るとき言うもん!)

 

(逆にシャッター切るとき何言えばいいんだよ!? 種類か? 種類の問題なのか!? 『はい、モッツアレラ』とか言えばいいんか!?)

 

 

 都会の若者の何気ない一言に、大混乱する薩摩の民だった。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

 

『──えぇ、宗虎さんから事情は伺いました』

 

『……確かに、私とあなたの利害は一致している』

 

『私も同感ですわ。悠長なことを言っていられないのはお互い様でしょう? このまま時間が解決してくれるものではないでしょうし』

 

『これでもアイさんとは、そこそこの付き合いですからね』

 

『……はい、分かりましたわ』

 

『それは承知しています、が。もしアイさんに危害を加えようものなら、理解してまして? ……それは安心しましたわ』

 

『はい、それではまた』

 

『夜道にはお気を付けて下さいね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()さん?』

 

 

 

 




カミキ「かな君、ドラマの仕事を持ってきたぞ!」

かな「……そうね、いつまでも落ち込んでちゃいけないわね」

かな「アクアに思い知らせてやらなくちゃ。共演した子役が、どれほど偉大な役者だったかを! 大成して、アイツの前で自慢してやるんだから!」

カミキ「その意気だ、かな君!」

かな「で、何のドラマなの?」

カミキ「漫画が原作のドラマだ!」


   『銀 魂』



かな「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

メルト「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

大輝「………(白目)」

朔夜「嘘だろオイ……」

フリル「あら、面白そうな作品ね」(台本ペラペラ)

みなみ(良かった……その時期に牡蠣養殖部門の仕事あって、本当に良かったわぁ……!)

ゆき(……あかねが居たら、これに出てたのかなぁ)


謎の少女「だずげで……だずげで……」(子役強制参加確定)

カラス「カァ」


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