薩摩の子 作:キチガイの人
アイ視点です。
最初に言っておきます。何がとは言いませんが、よいこの学生諸君は真似しないようにお願いします。どこかは、見ればわかります。
感想、評価頂けると幸いです。高評価、本当にありがとうございます。
あと後書きホント難しい。
関西弁って何ですか。
勉強はそこまで好きじゃない。
好きじゃないというよりは、内容によっては全く理解できないものもある。どうしてそうなるのか、なんでそうなるのか、馬鹿な私じゃ分からないことがある。
そして、学校の勉強は私が理解してくれるのを待ってくれない。私の大好きな彼氏が手伝ってくれたとしても、どうしても他の人との明確な差ができてしまう。
「根本的にアイって興味がないことには徹底的に無関心じゃん。いや、興味がないから無関心なのは当たり前なんだろうけど、自分に必要だと思わないものって、全然さっぱり記憶に残らないタイプだろう?」
「それが普通なんじゃないの……?」
「アイは特に顕著って言いたいんだ。……有史以来、『天才』というのは何らかの分野に特化している一方、何らかの欠陥を抱えていることが多い。天才的なアイドル様だったアイも、その例に漏れなかったってことだな」
最愛の彼のために、それなりの学力を身につけないと、迷惑をかけてしまうと頭では理解している。でも、勉強をしても『それが何の役に立つのか』が分からないし、どう役立てればいいのか分からないから、記憶に全然残らない。
結果を出さないといけないという焦りはあるけど、やっても分からないという諦観がせめぎ合う。もしかしたら、生前の『B小町』のメンバーも、同じような気持ちを心の底で抱いていたのかもしれない。あの頃の私は、自分のことで精一杯だったから、他人を気にする余裕がなかった。
どうして勉強のできない私は、勉強をすることが当たり前の普通科に来たのかな。彼がいたからという理由しかないので、何かきっかけがあれば辞めるかもしれないと、最初は思っていた。
最近は違うけどね。
今の私は、一人じゃないから。あの頃と同じように、私を支えてくれる人がいるから。
そして──今の学校生活を、それなりに楽しんでいる自分がいるから。
「──はい、夜分遅く集まって頂き感謝します。それじゃあ、『第一回 夏課題対策会議』を始めたいと思いまーす。皆の衆、よろしいか?」
「「「「「はーい」」」」」
そんな私の学校生活を支えてくれる仲間すら手こずってしまう夏休みの宿題を何とかするために、19時を目途に私とオーカの家に集まった。
ナデコちゃんは用事があって来なかったけど、いつものメンバーは欠けることなく揃った。
ソファーを端に移動させて、
進行役は私のオーカ。
「とある
オーカはあかっちとみっちゃんの方を見る。
頭いいもんね、二人は。私の彼氏も良い方だとは思うけど、流石に二人には敵わないと言ってた。
「まずは
……彼の機嫌が悪い。
吐き捨てるように、宿題の数がまとめられたプリントを叩く。
「って言ってもさ。日本史と世界史、地理とかの社会科目は、現実的な量に留めているよね」
「十中八九、山田教諭の影響だろうなぁって思う。それでも多いが、夏季講習中の日本史は、自習と言う名の課題処理時間になってる。学区併合で課題提出率がどうなるのか、探りながら減らした感はある」
「姉貴も言ってたもん。1年の社会科目の課題は前年より少ないって」
ミク君は何を言ってるのかな?
私にとってはこれでも多いんだけど。
「……問題があるとすりゃあ、この英語科目と数学科目だな。ンだよ、この分厚い問題集は。オレらを殺す気かよ」
「確かに頭おかしいよな、この分厚さ。コレを腹部に紐で巻いておけば、俺は立花のオッサンに腹刺されなかったんじゃね?って思うくらいには、量あるよなぁ」
ちょっとした資料集より重いもん。
渡されたとき、思わず対外用の嘘が剥がれるところだったもん。
「え、でも、私の行ってた中学校も、これぐらいの宿題出てたよ?」
「「「「………」」」」
勉強してると週に七回思うけど、あかっちって私と同じ人間なのかな。
中学校時代は思い出したくない記憶はあるけど、それでも、これだけの宿題を出された記憶はない……はず。宿題あんまりやってなかったから、単に知らないだけかもしれないけど。
絶句する私やオーカ、タネサダ君とミク君。
空気を換えるように、オーカは咳をした。
「……自称進学校(失笑)から出された課題は、何としてもやり遂げないといけません。提出しないなどもっての外。けれども、馬鹿正直にやるとなるとウチの彼女が潰れかねん。あまり使いたくはなかったが、禁断の宿題写しも考慮します」
「……ねぇ、パパ。私のママのこと馬鹿にしてる? ねぇ?」
「星野アイの娘さんは品行方正で、非常に優秀なお嬢さんなようだ。……編入試験後、たぶん同じ量の課題出されると思うけど、ルビーは同じこと言える?」
「ママぁ……パパがいぢめるぅ……」
「ごめんね、ルビー。私も反論できないよ」
引越しの下見の名目で鹿児島に来ているルビーは、座る私を背中から抱きしめながら、今の会議を聞いていた。ルビーとしてはあまり
本当にごめんね? でも、この量は無理。
「まァ、写すのもそんな楽じゃねェけどなァ」
「模写するだけじゃないの?」
「よく考えな、星野妹。丸写ししてる星野母だけじゃねェ、そこの写させた桜華も叱られンだぞ。分からない風を装って穴埋めを空白にする、計算式を途中までしか写さない、小論はそれっぽく自己流アレンジに改編する、選択問題は所々間違える……、自力でやるほどじゃねェが、考えることは多いンだぜ?」
タネサダ君はルビーに先生にバレないような模写の工夫を教える。私の学力は学校に伝わっているから、逆に正答が多いと怪しまれる可能性が高いと。
その工夫も、ミク君の「それでも薄々、写してるんだろうなって先生方にバレてはいるけどね。指摘しないだけだよ?」と付け足す。
「っても、俺も正直コレはきつい。実家の仕事もあるしな。仕方ねぇ、社会科目、理系科目は担当決めて模写し合うか。世界史、地理は俺がやる。理系科目は苦手だから頼んだ」
「じゃあ、僕が生物と地学かな? ……いや、僕もそんな理系科目が得意ってわけじゃないけど」
「オレが物理化学か。計算式丸パクリすンじゃねェぞ?」
「残ったのは、日本史? 比較的得意だからいいけど」
当分は日本史の教科書と睨めっこかな?
他の人も模写するのなら、あんまり間違えないようにしないと。
4人で不正計画を立てていると、蚊帳の外気味のあかっちが、恐る恐る聞いて来た。
「私も手伝おうか? 他科目はやるけど……」
「いやいや、黒川さんに不正疑惑を匂わせるようなことはさせないよ。ってか、できない。やったら、そこの彼氏君に消される。英国数は自力でやるが……あー……アイのサポートだけは頼む」
「よくご存じで」
あかっちの彼氏のみっちゃんが微笑む。
全然目が笑ってないけど。
「さて、序盤の作戦は決まったところで、行動に移りましょうか。えっと、何時までやる?」
「23時までじゃないの?」
「おっけ、おっけ。あ、夜飯は21時な。提供者は星野アクアマリン君だ。みんな、食事を用意してくれた彼を崇め奉りながら食べるように」
「「「「「はーい」」」」」
「……あんまり過度な期待はしないでくれ」
キッチンから困ったように声が聞こえる。
アクアの手料理かぁ。息子の料理、楽しみだなぁ。
私はルビーを背中に、教科書と日本史のプリントを机に広げるのだった。
【双子、陽東高校最終登校日の会話】
みなみ「──ルビーは鹿児島に引っ越すの? 寂しゅうなるなぁ」
ルビー「私も、みなみと別れるのは寂しいけど、それでも──決めたことだから」
みなみ「あっちでもアイドルになるために頑張るんやろ? 応援してるで?」
ルビー「定期的にLINEとか送るから、芸能界の愚痴とかあれば聞くからね?」
みなみ「うん、ありがとぉ。ルビーも頑張ってな?」
ルビー「みなみもね!」
みなみ「鹿児島、かぁ」
みなみ「………」
みなみ「……兼ちゃん、元気にしとるかなぁ」
みなみ「会いたい、なぁ……」