薩摩の子   作:キチガイの人

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 シリアス回です。彼らにとっては。
 ハーメルン知識で『推しの子』の二次書いてるって人がいて、背筋が凍りました。別に悪いって話ではなく、これだけは言っておかなければと焦りました。原作のカミキヒカルはおとめ座でも我慢弱いわけでもなく、何なら四足歩行で幼女を追いかける変態ではありません。ご注意ください。これでいいか。
 話は変わりますが、グラハム・エーカーって孤児だったんですね。知らなかったです。
 感想、評価頂けると幸いです。高評価、本当にありがとうございます。





 あと、(´。✪ω✪。`)←これ可愛いなって思いました。



アイ「(´。✪ω✪。`)」

ルビー「(´。●ω✪。`)」

アクア「(´。✪ω●。`)」

カミキ「(✪Д✪)」


追記・次回更新は7/20の0時です。ワイに休みを。


076.第二次アイちゃんショック

 午前中は夏季講習、午後は夏課題の処理。アホみたいな課題が出ている我が校だが、それでも勉強ばかりでは、高校生活を満喫しているとは言い難い。運動部系はコレに加えて部活動もあるのだから、多いと悲鳴は上げているが、できない量じゃない。

 俺の目の前で突っ伏しているアイは除くが。

 ついでに母親の横で突っ伏しているルビーも除こう。母親からの勉強ヘルプに参加して、問題を見た瞬間に脳みそがショートしてしまったようだ。

 

 大丈夫か、この母娘。

 えっと、陽東高校の芸能科だっけか? 学力を放棄して別方面で頑張った結果受かったと聞いたような気がする。あれだな、母親と同様、どうして普通科受けるんですか?その2だわ。

 

 

「日本史の穴埋めで倒れるとか、今後が心配過ぎるわ」

 

「今のお前が言っても、説得力ないぞ」

 

 

 俺の隣でコーヒー飲みながら漫画を読んでいたアクアが、ジト目で俺の方を睨んでくる。

 夏課題程度で倒れたりしないぞと反論すると、宝石兄は大きくため息をつきながら、ノートPCを2台同時に起動してカタカタしている俺を指す。

 

 

「せめて目の隈と、エナジードリンクの空き缶を隠してから言え。アイはいつものようにルビーと戯れてはいたけど、お前のいないところで心配していたぞ。あんまり彼女を不安にさせないでくれ」

 

「そうしたいのは山々なんだけどね……」

 

 

 なんて母親想いの子なんだろう。

 前世の推しで、今世の母親という立場は、相当気まずいとは思うけど。

 未だにアクアはアイのことを『母親』じゃなくて、『アイ』呼びだしな。やっぱりルビーと違って、成熟した年齢で死んだから、抵抗とかがあるのだろうか?

 

 アイに心配をかけることは俺の本意ではない。

 しかし、もうこればっかりは仕方ないのだ。

 

 

「悪いが、あと5日間はこんな感じだ。後で10分仮眠取るかなぁ」

 

少し前(復讐時代)の俺の生活より酷いぞ。何がどうしてそうなった?」

 

「……4割くらいは星野家のせいなんだけどね」

 

 

 今の俺の状況付近の生活って何なんだ。

 アクアは映画監督の下で弟子入りして仕事してたって聞いたけど、もしかして相当ブラックな職場なんだろうか。芸能界の闇深すぎだろ。

 

 

「俺の父親の兄貴──今のアイの伯父さんになるんかな? その人ってさ、アイドル時代のアイの大ファンだったわけよ。ちなみにアイの転生云々の事情を知っている人でもある」

 

「こんなところにも、アイのファンがいてくれたんだな」

 

「アイが死んだとき一ヶ月くらい寝込んで、島津が文字通り終わるところだったんだけど」

 

「その人本当に大丈夫か?」

 

 

 当然の疑問である。

 アイさえ関わらなければ、真面目で清廉な人ではあるんだけどね。

 

 

「で、だ。今回の二人の鹿児島移住に合わせて、色々と親父殿経由で報告したわけよ。アイに隠し子がいたってこと、双子が転生者であること、ルビーがアクアの嫁になること」

 

「最後を確定事項にするのは止めてくれるか?」

 

「それを伝えたわけよ。……()()()()()()()()

 

 

 いやー、本当に地獄としか表現せざるを得ないと、現場に居合わせた親父殿が語っていた。ちょうど、他の重鎮たち(元アイの大ファン)も同席したタイミングで、生前隠し通したアイの最大級の秘密と、墓場まで持っていくはずだった双子の秘密。双方を暴露したのだ。

 終わりの始まりである。

 

 

「とりあえず当主殿……アイの伯父さんが心肺停止になったよね。比喩表現無しで」

 

「とりあえずで済ましていい話じゃないんだが」

 

「そして島津グループの重鎮たちが病院送りになったよね。精神の方。もう今の島津勢力は上から下まで、しっちゃかめっちゃかよ。その中に俺のバイトの上司もいたもんだから、こうやって仕事が馬鹿みたいに流れ込んできてるわけ」

 

 

 口で説明しながらも、俺は無心で手を動かす。手元の電卓もカタカタ動かして、バイトの領域を大幅に超えているラインの仕事を、心で泣きながら行っているのだ。

 今頃は他の馬鹿共、そして軍師(笑)も駆り出されているところだろう。

 未来が「なんで鬼島津さんは、当主だけじゃなく元ファンの前で暴露しちゃったかなぁ!?」とキレ散らかしていた。アイドルに子供がいた事実の、親父殿と当主殿の価値観の差だろう。「へぇ、いたんだ」と「ヌッ(絶命)」の差とも言うべきか。

 

 

「重鎮は復帰時期不明。おそらく死亡したときよりはだいぶマシだから、2週間そこらで完全復活するとは思うから、それまでの辛抱かな。当主殿も意識は朦朧としているけど、無事だとは聞いたから」

 

「心肺停止って聞いたが」

 

「倒れてる当主殿の死体に、スマホ越しで『アイが人工呼吸と心臓マッサージをしに行かせますね』って聞かせた」

 

「は?」

 

 

 怖い怖い怖い怖い、アクアの目が黒く輝いてんだけど。

 彼としては、推しの唇を他の男に許すクソ野郎に見えたのだろう。もちろん本当にさせるつもりはないというか、この言葉自体が、以前の当主殿からの依頼でもあった。

 

 

「冗談、冗談だから! 当主殿も『彼氏持ちの推しの唇を、(他の男)の唇に触れさせはしない!』って、自力で心臓マッサージして蘇ったから!」

 

「前々から思ってたけど、島津って人外ばかりか?」

 

 

 嘘でもいいので、私がもし心肺停止になったら、例の言葉を私に言ってほしい。胸筋動かして自力で心臓マッサージして、無理にでも蘇生するからと。当主殿はそう仰っていた。言っていることは分からんかったが、こうして生き返ったのだから良しとしよう。

 お前ら人間じゃねぇって? そんな荒業できるのは当主殿ぐらいだよ。文字通り、かつての推しに命かけてんだよ。

 

 かつての第一アイちゃんショックよりはマシだが、俺は5日間を不眠不休でお仕事しなきゃいけない。四国に遊びに行っているバーサーカー共も自域に呼び戻しており、それが戻ってくるのが5日後なのだ。それまでは、人員が不足した島津で頑張ろうって話である。

 午前中は夏季講習に行き、帰ってからは翌日の夏期講習まで延々と仕事の日々。

 高校生が言うことではないが、今どきのエナジードリンクは素晴らしいな。気力がモリモリ湧いてくる。後々の疲労感も半端ないが。

 

 

「そんなわけだから、アイにめっちゃ心配かけると思う。双子で支えてくれ。頼む」

 

「言われなくても。……今回の件は俺たちのせいでもある、課題を貸せ。できる範囲は俺がしておく」

 

「黒川さんだけに負担かけるのは心苦しかったから、マジで助かる。そこに放り出しているカバンの中に入っているんでヨロシク」

 

 

 大惨事な島津と、連日寝てない咸の姿に、黒川さんもヤバいと思ったのだろう。咸の宿題を代理で行い、不正させたくない咸も折れて頼んでいた。

 しかも、である。あろうことか、黒川さんは俺たちが模写する用の、所々間違えた回答を散見させた分も人数分用意してくれたのだ。俺たちは黒川さんに足を向けて寝られなくなった。礼として、俺も咸の外堀内堀埋めるの手伝うからな。

 

 アイも宿題以外でも俺たちを支えてくれるとの事で、病院でダウンしている重鎮の見舞いに、ルビーを連れて一緒に行くとか言ってた。それはそれで別の問題も発生しそうだが、母上もサポートしてくれると言ってるので大丈夫と信じたい。信じさせて。

 

 俺は大きなあくびをしながら仕事に戻る。

 超過労働分のバイト代を請求してやると、心に誓いながら。

 

 

 

 

 

 

 見舞いの件だが、後日聞いたところによると、ルビーは重鎮たち(元アイのファン)の『推し』に追加されたらしい。まだアイドルを始めていないのに、既にファンがいるのは凄いなぁって思った。

 

 

 

 




かな「そこそこ仕事あるのに」

かな「収入もけっこう安定しているはずなのに」

かな「なんなら福利厚生もしっかりしてるのに」

かな「この環境に、なんか全然納得できないんだけど……!」(ラーメン食いながら)

謎の少女「わかる」(ラーメン食いながら)

カラス「カァ」















カミキ「ふむ、これは……撫子嬢に転生がバレている、と考えた方が良さそうだ」

カミキ「………」

カミキ「()()()?」

カミキ「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

カミキ「整理してみよう」

カミキ「アイ君が転生者であることは間違いない。だが、それだけでは私の転生を信じる理由にはならないはず。他にも例がなければ『転生者が複数いるはず』という結論にはならない。他にも転生者がいるのか? だとしたら候補は? 私とアイ君の共通点──そうなると、身近な人物を候補にあげよう。アイ君の交友関係はそんなに多くはない? だとすれば……」

カミキ「幼少期からの整合性の取れない言動。成長が早く賢い……という生前のアイ君の証言。アイ君と出会った後の、息子と娘の鹿児島移住。二人の距離感の変化。宗虎から聞いた、兄弟とは思えないスキンシップ。隠し子問題暴露だけじゃ考えにくい、アイ君のファンだった島津当主の危篤。そこから察するに」

カミキ「………」

カミキ「もしや、()()()()()()()?」
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