薩摩の子 作:キチガイの人
途中で寝落ちながら執筆しました。おかしい、『おとわっか』聴きながらカタカタしてたのに。
感想ドシドシお待ちしてます。
黒川あかね。
劇団『ララライ』に所属していた元若きエースで、プロファイリングを参考とした徹底的な考察と洞察にて、完璧に演じ切る没入型の役者。その才は天性と称され、そのまま芸能界に残れば数々の功績を遺したであろう女性だ。
何度でも言おう。実に惜しい。それこそ、アイが死去したレベルの損失ではなかろうかと、個人的には思うくらい、事務所の采配ミスだと指摘せざるを得ない。
そんな彼女が、島津でどのように思われているのか。
良く言えば身内での繋がりが強く、悪く言えば排他的な完全ド田舎思考の島津。現代になるにつれて意識の変化はあれど、根本的な部分においては古臭い考えが根付くのが俺たちだ。
もちろん、最初は賛否両論はあった。大いにあった。何なら否の割合が強かったぐらいだ。排斥を考える馬鹿もいたと聞いた。後で
じゃあ、今はどうなのか。
明確に彼女の評価が変わったのは、例の親父殿をインストールしてしまった時だろうか。税所家のドM集団が『余所者』呼びから『姉御』呼びに変わった瞬間である。咸の目下の悩みは『部下が私の命より、あかねの指示を優先するんですが』である。
『
『天性の才、こちら側なのであれば、腐らせるのは実に惜しい』
『可愛い』
『鬼島津の武勇がなくとも、それを演じられるのは神業に等しい。つか、可愛いから、実質的に鬼島津よりもアド』
と、島津の釣り野伏ばりに評価という盤面をひっくり返してしまった。
最後の評価がおかしいって? 正論だろうが。ほら、親父殿も「確かに」と頷いていたんだぞ。当代の鬼島津は健気に頑張る女の子の味方なんだぞ。アイ然り、ルビー然り、そして黒川さん然り。
決定打は先代島津のご隠居の『あかね嬢ちゃん』呼びである。これを初見で聞いたとき、俺の顎関節が外れるくらい驚いたし、親父殿が目を丸くして絶句したのは記憶に新しい。
ご隠居は基本的に人を名前で呼ばない。アイのように覚えられないのではなく、覚える必要がないというのが正しい。親父殿と当主殿を『ハナタレ小僧』と口にし、俺のことを『島津モドキ』と、他人を小馬鹿にしたような言い方をする。こんなん言えるのは、この人ぐらいだ。そういえば、アイのことも『アイの嬢ちゃん』って呼んでるなぁ。
『彼女のことを名前で呼ばれるんですね』
『あぁ? ったりめぇよ。おれ以上の才覚を持つ人間に、敬意を払うのは当たり前だろうが』
『……そこまで?』
『だからテメェはモドキなんだよ。ちったぁ考えろ。あんな完成形に近い憑依型の演技なんざ、おれは見たことねぇぞ。文字通り神業だ。ハナタレ小僧を育てたのはおれだぞ? それを、たかだか数日の考察で丸裸にされるなんざ、末恐ろしい限りだぜ』
……もしかして、俺たちが知らないだけで、芸能界って黒川さんレベルの役者が普通なのだろうか。そうだとしたら、薩摩より人外魔境過ぎじゃないか?
怖っ。近寄らんとこ。
そんな島津に一目置かれる黒川さんだが、またもや功績を残してしまった。
結果、俺は隣の彼女宅まで足を運び、こうして土下座を行っているのだ。
「──この度は、
「桜華君、そんなにかしこまらなくていいよ?」
黒川さんは非常に困惑しているが、それだけの手助けをしたのが、目の前の彼女である。課題の手伝いだけじゃない。時には仕事に圧殺されそうな咸の代わりに、税所家配下の陣頭に立って的確に人員再配置を行ったと聞いた。
少ない情報を分析して、咸の仕事ぶりを間近で見聞きしてきた彼女。麒麟児に勝るとも劣らない神采配と、後に島津家当主は語った。
『──と、──を呼び戻して。……ここで咸君なら、えっと……、あ。──も幾人か引き抜いて、ここのサポートに回して。あとは……うん、ここが少ないかな? ──と──を、こっちに送って』
『黒川の姉御、しかし──を引き抜けば……』
『今は非常事態だから、立て直すのが最優先だよ? ここはまだ数日引き抜いても、後から挽回はできると思う。咸君なら、そう判断すると思う』
『……姉御がそう仰るのなら』
これ以上、咸に負担はかけられないと、最後まで島津の防衛機能として不動を貫いたご隠居にも、アドバイスを求めたとか。行動力の化身か?
少なくとも、島津は彼女に借りができたと言っても過言じゃない。
なので俺が頭を下げるのだ。
いやホントマジで助かった。
「後日、正式に謝状が来ると思う。俺が責任を持って、上から謝礼金も引き出してくるわ。うん、そんくらい助かった。ありがとう」
「私はできることをしただけ。そんなことより、桜華君は早くアイちゃんのところに帰った方がいいよ。ほら、もうフラフラだよ?」
フラフラというか、仕事から解放された瞬間に家を出て向かったため、今の俺はエナジードリンクと根性だけで動いてる状況だ。脳も正常に働いているのか分からない。
同じ状況であったであろう咸も、今は黒川さん家のベッドで熟睡しているらしい。
「……分かった、帰るわ。あ、あと今のコイツは無防備だから、一緒に添い寝しちゃっても全然OK。俺が許す。何か言われたら俺のせいにして」
「え!? で、でも……咸君、嫌じゃないかなぁ……?」
「んなわけ。嫌と言われたら止めりゃいいし。俺は大丈夫な方に、花京院の魂と伊集院の魂も賭ける」
「自分のは賭けないんだ……」
オッズ低いし、俺に被害がないから大丈夫。
俺は黒川さんの邪魔をしてはいけないと、簡単に挨拶をして自宅に戻る。途中、立ち眩みで倒れそうになったが、体内のエナジードリンクを振り絞って、何とか戻ることができた。
時間は深夜。
アクアとルビーは東京に戻ったので、自宅に居るのはアイだけだ。どうせ双子は3.4日後には鹿児島に戻ってくるけどね。こんなド辺境を往復するのは大変だろうに、宝石兄妹は苦言を呈することなく、ちょくちょく足を運んできてくれる。
余談だが、アクアに壱護社長の安否確認も依頼している。なんか知らんけど、数日前からLINEの既読がつかないのだ。
なんでだろうね。
「おかえりなさーい。そして、おやすみなさーい」
「ちょ、アイ、待っ」
戻るなり玄関で待機していたアイに手を引かれ、そのまま俺のベッドに誘われる。ていっ、と可愛らしい掛け声とともに、俺は押し倒された。
抵抗する気力はなく、アイは俺の頭を胸に抱き寄せた。
甘くも爽やかな香りが鼻孔をくすぐり、両目の瞼が限界だと言いたげに閉じようとする。やり残したことが少々あったので、それを片付けようと思っていたが、こうなると俺の身体は言うことを聞かなかった。何日ぶりのちゃんとした睡眠になるのだろうか?
「……まず……寝……」
「迷惑かけちゃって、ごめんね? もう休んでいいって聞いたよ。ちゃーんと、このアイちゃんの胸の中で、疲れをとってね」
「あ、い……ありが……と……」
もう限界だ。
ゆったりとした響きの、何の歌か分からない子守唄を聴きながら、俺の意識は静かに沈んでいった。
カミキ「………」
カミキ「お館様から着拒、LINEブロックされた、だと……」
カミキ「(´・ω・`)」
カミキ「(´;ω;`)」
島津「カミキヒカルってやべぇ奴いるんよ」
大友「マジか」
大友「なんか連絡来たわ」
大友「怖いから着拒&ブロックしとこ」