薩摩の子 作:キチガイの人
頑張って執筆しました。こいつも大概壊れてます。吐きそう。
感想よろしくお願いします。
ちなみに前話最後のセリフですが、兼定は完全に忘れてます。
彼も当時9歳です。9歳の12月です。
それを念頭に入れて、どうぞっ。
星野アイという女を初めて目にしたとき。
オレはいったい、どんな顔をしていたのか。
『──へぇ、タネサダ君って言うんだ。よろしくねっ』
やめろ。
『タネサダ君に聞きたいことがあるんだけどさー』
その顔で。その瞳で。
『私、すっごく楽しいよっ』
イライラする。星野の嬉しそうな顔を見ていると、楽しそうな顔を見ていると、桜華のことを愛おしそうに想う顔を見ていると。
伊集院家は島津随一の武闘派集団だ。
故に、オレの兄弟姉妹は8人いた。……今はもう5人だが。
人の死は日常茶飯事、兄弟の葬式も見慣れてきた。
それがオレたちの普通であり、死を悼み、生を堪能し、笑いながら敵を殺す。オレは畳の上で死ねるほど善行は積んでないし、地獄に落ちるその時まで現世を謳歌する。いつかは兄弟姉妹と笑いながら酒を飲みかわし、オレらを置いていった兄弟の悪口を言い合うのだろう。
それはオレたちが
だが──
『タネサダ君、聞いてる?』『かねちゃん、聞いてる?』
鍋島蛍は、咸の許嫁であり、オレの友人だった。
兄弟姉妹が多い伊集院家によく遊びに来ては、なぜか知らんが姦しい姉妹を差し置いて、オレの後をついてくるような女だった。その輝く一番星のような瞳を、オレに向けていた。
『オーカがねっ、私の作ったカレー食べてくれたんだ!』『咸君がプリン買ってきてくれたんだ!』
所詮は家同士の婚姻関係。
それでも、蛍は咸に懐いていたし、他家の令嬢なのでオレも必要最低限の付き合いをしていた。
『タネサダ君はいつも不機嫌だねー』『もっとかねちゃんは笑った方がいいよ』
……そうだ、オレは蛍のことを妹のように思ってた。
無駄に明るくて、所々おっちょこちょいで、自分の病弱さを嘘で隠す奴だった。オレも咸も、そのことを知ってたが、深く追求することはなかった。
当時のオレはガキだったし、深く考える脳がなかったんだろう。
『──ねぇ、タネサダ君』『──ねぇ、かねちゃん』
今でも夢に見る。
蛍が生きていたのなら──今の星野と、同じ歳だったんだろうと。
『『──私の
あぁ、オレは嘘が嫌いだ。
死ぬほど嫌いだ。
嘘をつかれた側の気持ちを考えたことはあるか?
どれだけ良い嘘だろうと、どれだけ悪い嘘だろうと、それが大切な人間からつかれた嘘なら、心のどこかで後ろめたさが残る。
本当のこと言ってくれたら、どれだけ楽だったか。
『かね……ちゃん。私ね、咸君とけ……っこんして、ずっと、いっしょに……遊ぶんだぁ。み、な君はさ、好きって気持ち、が。分からないから……私が、たっく……さん、教えてあげる、の。早く元気になって、ぎゅーって……して』
『……あははっ、私、お……とおさんを……泣かせちゃったみたい。なんか……もう、治らない……ん……だってね。困っちゃうな……? これじゃあ……けっこんするとき……の……白い、ドレスが、着れないや……』
『……さいきん、ね……腕がね……あんまり、動かない、の。もう、私、ダメなのか……なぁ……? みらいくん、と、おぉかくん……とね、かねちゃんと……みなくん。みんな、で……もっと、もっと……遊びたかった……よ……?』
嘘が嫌いだ。
大嫌いだ。
『馬鹿言うんじゃねェ。お前が頑張ってンだから、治らないわけがねェだろうが。さっさと体治さねェと、来月の遠足に間に合わねぇ。咸だって待ってンだぞ』
『そ、っかぁ……じゃあ、がん……ばらないと……ね……』
──20××年12月18日 午後3時26分46秒──
──鍋島 蛍 逝去 享年9歳──
蛍が死んで数か月、オレはどこか現実味のない日常を送っていた。
いつものように人が死んで、いつものように人を悼んで。そう、蛍の時も、それは同じだったはずなのに。どうしてか、なんでか、何をしても満たされなかった。
『兼定、忘れるなっていうわけじゃねぇけど、そろそろ気持ちを切り替えろ。そんなんじゃ、蛍の後を追うだけだぞ』
『……分かってらァ。まさか島津の欠陥品から、ンなこと言われるなンてな。そういうお前は大丈夫なのかよ』
『大丈夫じゃない。せっかくの鍋島家の婚姻関係、あそこまで険悪になると、今後の外交に支障が出るかもしれねぇぞ。当主殿が上手くやってくれるといいが……』
そういや、この頃の桜華も十分狂っていたな。
いや、島津的には正常だったのか。あくまでも蛍に対して『名家の令嬢』としての対応であり、死んだときも顔色一つ変えなかった。
だがオレは違った。
当時の桜華のように、そう簡単に割り切れるもんじゃなかった。
オレはあの時確かに、自分のために嘘をついてしまった。
あの時どうして、
生きてほしいと願ったばかりに、蛍の苦痛を長引かせてしまったんだ。最期は見れなかったが、あいつに笑顔を強要してしまった。1年の闘病生活、辛くて苦しくて寂しかったはずなのに、オレの根も葉もない希望で、あいつを頑張らせてしまった。
『やったっ、やったっ、オーカと同じ高校に受かったよ!』
だからオレは星野が嫌いだ。
あの時、蛍が死んでなかったら──と、ありもしない『もしも』を連想させてしまうから。
オレが望んで望んで止まなかった『蛍がもし生きていて、オレたちと同じように生活できていたら』を、突きつけられているように覚えるから。オレの噓が、彼女に生きる希望を与えていたと錯覚してしまいかねないから。
『私たち、付き合うことになりましたっ』
同時に、オレは星野を支え続ける。
今度こそ星の輝きを持つ少女を、不幸にさせないために。
蛍と同等かそれ以上に傷ついていたかもしれない
これはオレの自己満足である。
これはオレの贖罪である。
許してくれなんて言うつもりはない。これで蛍が笑ってくれるわけじゃないのは分かってる。
それでも──オレは
星野と、ついでに桜華が幸福であればいい。
それ以外の感情なんざ必要ない。本当は今すぐにでも死にたいが、このまま自殺するには勿体ない。この人生、他人の幸せの為に使い潰せる上に、あっちで蛍に会える可能性だってあるのだ。これ以上ない上がりってやつじゃねぇか?
もう、オレは、自分が幸せになろうなんざ思わない。
かな「あの気持ち悪い男の肩に居座っている鴉は何?」
大輝「知らないのか? 技術顧問兼秘書兼アイドル部門担当のカタギリさんだぞ」
かな「さん付け? 鴉相手に?」
大輝「役者と事務所の取り分、7:3にしたのはカタギリさんだぞ」
かな「舐めた口きいてすみませんでした」