薩摩の子   作:キチガイの人

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 ほのぼの回です。
 明日は投稿できるか分からないです。仕事中が忙しいかもです。
 感想お待ちしております。


087.今度は俺が埋める側

 俺個人の感想から言えば、寿みなみさんという娘を気に入っている。

 ……いや、別に胸部装甲の話は一切関係ない。本当。島津、嘘ツカナイ。

 

 スタイルもいいし美人さんであることは否定しようがない事実ではあるが、それよりも彼女の人となりを好ましいと俺は思う。彼女の言葉から逆算するに、約6年と言ったところか。その間、彼女はずっと兼定とかいう一度会っただけの男のことを想い続け、僅かな記憶を頼りにこの辺境の地まで足を運んだのだ。

 計画性のない……とかいう感想は捨てておく。そこまでして、彼女は伊集院家の暴力装置との再会を望んだのだから。普通に考えて、そこまでモチベーションを保つこと自体が異常である。

 これが恋する乙女の行動力だとでも言うのか。

 

 そして、少し話をして彼女の性格も把握した。

 結論としては悪くないと思うし、ルビーの友達だし、俺は彼女の恋を応援することには賛成したいとは思っていた。

 

 ある点を除けば。

 

 

「──所属事務所が、よりにもよって『神木プロダクション』かよ」

 

 

 双子の父親が代表取締役やってる事務所に所属している。これだけがどうしても気がかりでならない。寿さんそのものに不満は一切ないが、双子の父親の息のかかった人物を置いておくのは、アイを守る者として許容できないのだ。

 その事実に頭を抱えていると、タイミングを計ったように俺のスマホにLINEが入った。アイと寿さんに断りを入れて店外に出た俺は、LINEを入れてきた人物に着信を入れる。

 

 

「おい、あれはどういう意味だ」

 

『文章通りの意味よ。寿みなみ、という少女はシロよ。さっさと外堀を埋めなさい』

 

「何でお前がそのことを知っているのかって話だ。……お前まさか、彼女がこっちに来ることを知ってたのか? 俺はそんなこと聞いてないぞ」

 

 

 電話相手は撫子。

 LINEの内容は、彼女の行動に双子の父親の意志は関与していないとの事。俺の心配事は杞憂であり、さっさと兼定を引きずりおろせと言ってきたのだ。

 撫子の言いたいことは理解できたが、なぜそれを彼女が知ってるのか疑問が残る。

 

 

『個人的なツテで調べただけよ。何か問題でも?』

 

「些かタイミングが良すぎはしないか?」

 

『友達に危険が及ばないように動いただけで、たまたま調べた時期が良かっただけの話。それに、私が隠れてコソコソするのは、いつものことでしょう』

 

 

 そこまで言われると反論ができない。この人格破綻者はやることなすこと全てが怪しいのは周知の事実だが、今回の件は怪しいだけで証拠の類が一切ない。何か隠していることは、長年の付き合いである程度わかるが、何を隠しているかまでは全然分からない。

 別の方向から考察してみよう。彼女に兼定を沼に落とすメリットは何だろうか。寿さんを引き込むことが、薩摩にとってのメリットにつながるのか?

 

 ……くそっ、分からん。

 情報が圧倒的に少なすぎる。

 

 

『もういいかしら? こっちもこっちで、やることがあるのよ』

 

「……彼女を鹿児島に留めておくことによるアイの危険性は、皆無なんだな? 双子にも危険な目に遭うこともないんだな?」

 

『えぇ、断言するわ。彼女は自分の意志で鹿児島に来た。彼女が鹿児島に滞在することで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その言葉を最後に電話を切られた。最後の言葉に違和感を覚えるが、彼女曰く星野一家に被害は出ないらしい。まぁ、嘘は言ってないだろう。

 

 心の中にモヤモヤを抱えながら、俺は多方面に連絡を入れる。税所家の麒麟児から教わった『効率的に外堀と内堀を埋める方法』である。

 この話を聞いた後、俺はこうやってアイと付き合うことになったんだなぁと逆に感動したものだ。元人気アイドルの少女が頑張っただけでなく、詰将棋方式で緻密に練られた包囲網であったことが分かった。体験してみればわかる。あれ本当に逃げ場がないから。

 

 

「伊集院のおやっさん、お久しぶりです。桜華です」

 

『おぉ、桜華か! いつもウチのガキが世話になってるなぁ! 今日はどうした!?』

 

「兼定のお嫁さん候補が、わざわざ東京から来てまして……」

 

『っ!? それは本当か!?』

 

「えぇ、現役グラビアアイドルの女の子なんですけど」

 

『どうしてそうなった!?』

 

 

 とりあえず兼定の親父さんに報告し、

 

 

「いつもお世話になっております、智子さん。島津桜華です」

 

『どうしたんだい、急に』

 

「兼定目当てで東京から現役グラビアアイドルの女の子が押しかけて来た……って言ったら信じます?」

 

『寝言は寝て言いな』

 

「………」

 

『……マジかい?』

 

 

 兼定のオカンにも伝えておく。

 

 

「当主殿、お伝えさせて頂きたいことが」

 

『……アイ君関連で何かあったのかい?』

 

「今回に関してはアイは関係は……あー……娘さんのルビーが若干関係あるのかなぁ、って感じです。彼女関連の地雷はもうない……と信じたいです」

 

『心の底からそう思うよ。私に伝えたいこと、というのは?』

 

「兼定の嫁さん探しの件です。余所者ではありますが、候補者が現れたので、当主殿に事前に報告をと思い連絡させて頂きました」

 

『……あー、確かにそうだね。伊集院家当主からも泣きつかれた記憶はある。一般人(カタギ)の人間とは、咸君のお嫁さん候補と言い、また荒れる可能性があるなぁ。ところで名前は?』

 

「寿みなみさんって知ってます? 現役グラビアアイドルの可愛い女の子なんですけど」

 

『ちょっと待ってね……え、可愛い。というか、君たち芸能人と付き合い過ぎじゃない?』

 

「俺の彼女はただの逸般人(薩摩人)です」

 

 

 島津家当主にもお伺いを立てておく。

 結果としては3者からの同意は得られた。

 

 余談ではあるが、兼定の両親にはLINE経由で彼女の写真を送っておいた。

 父親方から「物凄い美人の写真が送られてきたが何かの間違いか?」と返され、それが東京からわざわざ兼定目当てで来た女の子ですと伝えると、「おっぱいめっちゃデカいんだけど。つか本当にウチの倅でいいの?」と困惑していた。

 兼定のかーちゃんには「結婚詐欺?」と疑われ、詐欺の対象に兼定を選ぶ価値があるのか問うたところ、「それはそうだけど、本当に兼定(アレ)でいいのか再度確認してほしい」と言われた。

 結果的には好印象だった。

 余所者に懐疑的な一族だと記憶していたが、それ以上に『自分の息子が数年も想われていた』のが、親として嬉しかったのだろう。当主殿の薩摩の意識改革の成果が徐々に表れている結果ともいえよう。

 

 そのことに俺は嬉しく思いつつ、最後にアイの娘に電話をかけた。

 

 

「うーっす、今大丈夫?」

 

『今はお兄ちゃん先生に膝枕してもらってるけど……』

 

「兄妹仲が良好で何より。寿みなみさんって知ってる?」

 

『……どうしてパパがみなみのこと知ってんの?』

 

「なんか鹿児島に来てて、今はアイと話してるんだけど、夏休み期間は鹿児島に滞在するんだってさ。泊まる場所の提供をしてくれないか?」

 

 

 交渉の末、寿さんは鹿児島に居る間は双子宅に泊まることになり、その間はアクアが俺ん家に避難する話となった。ルビーが若干不満げだったが、グラビアアイドルな友達と、愛しの兄貴が同じ家で寝ることに危機感を感じたのだろう。最後は了承してくれた。

 アクアは安心したようにため息をついていた。

 

 やることを終えた俺はスタバの店内に戻り、寿さんの荷物をまずは置きに行こうという話になり、双子宅に向かうことになった。

 本当は兼定の家近くのホテルを予約しとこうか考えたが、まだ彼女と馬鹿との関係は良好とは言えない。一方で、双子宅近くなら、彼女の恋愛相談に乗れる人材が近場に多いと言う利点がある。ウチのマンションに住む人間全員が仲間と言っても過言ではない。

 

 そう説明しながら、俺は自宅方面に向かうバスに乗るのだった。

 ……ウチのマンションが想像以上のカオスになっているとも知らずに。

 

 

 

 




カミキ「……ゆら殿のアプローチが激しい。本当にどうすればいい?」

かな「もう諦めて付き合ったら?」

カミキ「色恋沙汰を応援することは多かったが、いざ当事者となると、こうも悩ましいことなのだな……」

かな「……ん? え? アンタ、恋人とか今までいなかったの?」

カミキ「私()童貞だぞ?」
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