薩摩の子 作:キチガイの人
上司に「新人さん教育しといて」って言われて、業務終わりに新人が今日付けで退職された件について。私は悲しい。
小説の感想お待ちしております。
追記・ちと忙しいので8/2は休みです。
我が家の近くのバス停に下車した3人。薩摩兵子と元人気アイドルの転生者と現役グラビアアイドルのパーティー構成だ。日本どころか世界規模で探しても、なかなかに見つからないであろう面子。
住宅街なので緑は少なく、今日は風も吹いておらず、何なら強い日差しが俺たちの肌を刺激する。
「「「あっつぅ……」」」
いくら鹿児島県民であろうと、体感35℃越えの猛暑はきつすぎる。俺は薩摩兵子で長男だから耐えられるかもしれないが、他二名にとっては地獄以外の何物でもないだろう。
コンクリートで舗装された道路からもやもやとしたゆらめきが見えるので、地表は絶対に40℃は超えてるだろう。ここ最近は本当に暑くなったよなぁ。俺が小さい頃って、そこまで暑くなかった気がするんだが、今は夏の周期が異常である。
汗だくで夏のセーラー服と涼し気な私服が肌に張り付いており、とても煽情的なお姿になってしまった女子組は目の保養にはいいが、なにも彼女らのライフを削ってまで見続けたいとは思わない。
俺はすぐさま進路を決める。
「自宅に向かう途中にスーパーあるんだけど、涼むついでにアイス買いに行かね? 今死ぬほどアイスが食いたいんだが。財源は俺のポケットマネーから出す」
「アイス!? 行こう! 何ならアクアとルビーの分も買おう!」
「なんか頭がぼーっとしてきたわぁ。涼めるのならええよぉ」
買ったまま開封してなかった麦茶のペットボトルを寿さんに押し付け、早急に水分補給をするよう指示する。そして彼女の旅行鞄を抱えながら、俺はスーパーへと向かった。後続にアイと寿さんもついてくる。
アイは自分の勉強道具と必要最低限の細々としたものしか入ってないリュックを背負っているが、鹿児島に来た寿さんは数日分の着替えを詰め込んだ鞄を持っている。さすがに疲弊している女の子に重いものは持たせられない。
地元のスーパーに入店した俺たちは、その極楽浄土に大きく深呼吸をした。少し肌寒いくらいの店内は、先ほどの猛暑が嘘のようだと錯覚するくらいだ。
俺たちは野菜コーナーや鮮魚エリアを値段を吟味している風に回りながら時間をつぶし、ある程度涼んでからアイスコーナーへと向かう。そこそこの大きさの、俺たち御用達のスーパーなので、アイスの種類も豊富なのである。
「えっと、これと、これ……あれも補充しとこう。あ、これ美味しそう」
「お、桜華くん? そない買って大丈夫なん?」
「オーカってアイスを馬鹿みたいに買い込むからね。ことほぎちゃんも自分の選んで買った方がいいよ」
俺の彼女に馬鹿にされた気がするが、何一つ間違ってないので甘んじて受ける。俺は買い物カゴに箱アイスを5~6個ブチ込みながら、どのアイスを買おうか迷っている2人を見て微笑む。
そして、もうひと箱追加する。
「それ冷凍庫に入る?」
「双子宅と税所家愛の巣宅の冷凍庫があるじゃん?」
「本当に仲良しさんなんやね……」
アクアが怒るよ?とアイが諫言してくるが、自分の家の冷凍庫をアイスで埋めても、尋常じゃない速度で減っていくんだよ。双子の妹の方が遠慮なく食っていくからさ。
というか俺の家って2階の住民のフリースペース化してるから、いろんな人がウチに来ては、勝手にアイスを食っていくのだ。税所夫婦は金払っていくけど、双子に遠慮と言う単語はない。特にルビーが自宅に屯していると、何個か確実に消えてる。
前に自分家の冷凍庫をチョコミントで埋め尽くしたら、ルビーに泣かれたことがある。アクアもめっちゃ複雑そうな顔をしていた。
俺がチョコミント大丈夫なのかって? 食えはする。そんな好きってわけじゃないけど。ただ双子がどんな反応するかなって買っただけなので、後日チョコミン党の撫子に無償で寄贈した。
「あ、これも買っていい!?」
「カゴ入れて」
溶けにくい氷を袋で買う俺の恋人。
会計すると、その氷をアイスとは別の袋に入れて、抱きしめながらスーパーを出た。自宅までの道のりを、それで乗り切るつもりなのだろう。賢いね。
クソ暑い道を数分歩いて、自宅へと到着する。
いつものように駐車場にいるご隠居に一礼し、片手に旅行鞄、片手にアイスの袋、肩掛けの補助バッグを背負って二階へと上がる。
こんな猛暑に駐車場のベンチでセコムしている先代島津当主だが、もちろん汗一つかかず、そこに座って俺たちの安全を確保している。どう見ても人間じゃない偉業を成しているが、俺は親父殿やご隠居を人間だとは思ったことはないので問題ない。
まぁ、そのご隠居も寿さんを見て冷や汗をかいていたが。
そして拝んでいた。そうなるよね。
「ちなみにウチの冷房はつけっぱなしだから、帰った瞬間天国が待ってるぜ」
「冷房って部屋の気温を下げるときに電気を大きく使うさかい、つけっぱなしの方が電気代が抑えられるんよね」
「そうなんだ。オーカが電気代無視し始めたのかと思ってた」
涼しい我が家に夢を馳せて2階に到着すると、現在位置と俺たちの家の間──ちょうど、黒川さんの家の前に2人の人影があった。
彼女から人が来ることは聞いてないし、そうだとしたら映画館デートなんて行ってないだろう。そろそろ映画も終わっただろうけど、デートだから次のプランに移行している時間じゃなかろうか。
黒川さん家の前に居座っているのは、同年代くらいの女の子。2人とも俺は見たことがないし、恐らく鹿児島県民ではないと直感的に感じだ。
その2名は、とても美人な少女だった。黒髪の少女と、金髪の少女か。
なんか知らんけど、アイとの出会い以降、俺が会う女の子の顔面偏差値が黒川さんのリアル偏差値並みにぶっ壊れているんだが。元人気アイドル然り、劇団の元エース然り、アイドル志望の双子の妹然り、現役グラビアアイドル然り。
アカン、目が肥えてしまう。
俺は瞬時にセミの裏側みたいな馬鹿共の顔面を思い出して、平常心を保つ。
「「あっつぅ……」」
そして女の子たちは瀕死だった。
いくら日陰に入っているとはいえ、彼女たちはご隠居程の暑さへの耐性はないのだから、へばって当然である。このままだと危ないけれども、正直に言って、彼女たちを助ける口実が思い浮かばない。優しさ出してポリスメン案件になっても困るし。
「どぉしよ……あかねのLINEが既読つかない……」
「このままだと溶けちゃうよ……一旦、ホテルに戻る……?」
これ黒川さんの友達だよね?
やっぱり助けるべき? でも、客観的に見て、俺が彼女らを部屋に招き入れるほうがヤバいのでは?と思うんだけど、どうしようか。
え、寿さんはどうなのかって? 俺的にはもう実質的に兼定の彼女だぞ。
アイスが溶けそうなので、とりあえず家に帰ってから考えるかと、彼女たちの前を通過しようとすると、ふと寿さんが黒髪の少女に向けて声をかけた。
「……ゆきちゃん?」
「あ、みなみだ。こんなところで会うなんて奇遇だね」
知り合いか聞いてみると、彼女の名前は
俺の警戒レベルが若干上がった。
少し話を聞いてみたところ、お二方は黒川さんの友人であると。何なら、黒川さんが芸能界を去るきっかけとなった、炎上騒動の関係者であると語った。関係者というか、『恋愛リアリティショー』の出演者だったらしい。俺はその番組見てないので知らん。
炎上騒動も弱火となり、黒川さんのメンタルも安定し始めたとの事で、様子を見に遥々鹿児島まで来たんだとか。共演者の他男子2名も来る予定だったが、無人島開拓ロケで泣く泣く断念したらしい。……芸能人だよな? なぜに無人島?
金髪の少女の方は、YouTuberの
俺は目を細めた。
「──で、来てみたはいいけど、黒川さんからの応答がなく、ここで待ちぼうけを食らっていたと」
「「………」」
俺は天を仰いだ。
このまま放っておく……というのはナシだろうなぁ。
俺は短い葛藤の末、芸能人計3人を家に招くのであった。
鹿児島に芸能人集まりすぎでしょ。
【ガチ恋男子組】
ノブユキ「俺も鹿児島行きたかった」
ケンゴ「黙ってないで母屋修復を手伝え」
ノブユキ「こんな重労働、よくそんなモチベーション保てるな……」
ケンゴ「確かに面倒だけど──」
ノブユキ「?」
ケンゴ「城〇さんに褒められると、すっげぇ嬉しい」
ノブユキ「わかる。〇島さん褒め上手だよなぁ」