薩摩の子   作:キチガイの人

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 カミキヒカル視点です。
 彼に関しては、『推しの子』作品で唯一、何してもいいんだろうなぁって思っている人物です。ファンの皆様、本当にごめんなさい。
 感想お待ちしております。




 なんか皆様が危惧しているんですが、基本的にオリキャラ勢が闇堕する展開ってのはありません。というか、できないんですよ。互いが互いに踏み外さないように見てるんで。
 余談ですが、これが各々一人だけの状況であれば、瞬時に闇堕します。仲間がいるって素晴らしいね。


091.カミキヒカルの優雅(笑)な一日

 私は大友家家臣団が一人、立花導春。

 部下で戦友の立花精鋭の猛者たちと熊本県境で防衛戦をし、島津直系の少年の単騎特攻とかいう怪しげな奇行を目撃した。有能な部下を失いながらも島津の少年に致命傷を負わせた私は、自身に迫りくる夏場に牡蠣(死神)の刃に気づかなかった。

 私はいつものように牡蠣30個ほど食し、なぜかあたり、次に目が覚めたら──血だらけのアンニュイなイケメンに生まれ変わっていた。

 立花導春が徳川勢力のど真ん中に転生しているとバレたら、いつものように命を狙われ、主に私に危害が及ぶ。己の機転で正体を隠すことにした私は、助けに来た救急隊に名前を聞かれ、とっさに──

 

 

『カミキヒカル』

 

 

 と、保険証に載ってた名前を名乗り、大友家に戻るために、自身が代表取締役をやっている事務所に転がり込んだ。

 姿変われど志は同じ、見た目はイケメン、中身は変態、その名は──CEO(代表取締役)カミキヒカル。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

 代表取締役たる私の朝は早い。

 立花家の武人たる私は、ゆっくりと起き上がりスマホの画面を見た。

 

 

 

 10:28

 

 

 

 寝坊したようだ。

 とりあえず、なんか全てがどうでもよくなった。この後、11時から重要な会議があったような気がするが、それよりも寝過ごした事実がどうにもやる気を失わせていく。

 原因が分からないな。

 昨日の打ち上げで3次会まで行き、帰ったのが3時ぐらいだったからだろうか? その後に1時間ほど飲み直したからだろうか? アニメ鑑賞とかもしたので、就寝したのが5時過ぎだったからだろうか?

 

 全くもって分からない。

 やはり身体のスペックが私の頭脳に追い付いていないのか。もどかしいぞ、カミキヒカルよ。

 

 

「さて──二度寝をするか」

 

「アホなことを言ってないで、さっさと起きなさい変態」

 

「カァ」

 

 

 私の崇高なる眠りを妨げたのは、幼い少女であった。

 初めて出会った時は、もう少し幼かった気がするが、今の彼女は中学生程の背丈、顔立ちに成長している。どのような手品を使ったのか尋ねたところ、身体を成長させたらしい。不思議なこともあるものだ。私ほどではないにせよ、それなりに顔立ちも良いので、界隈でもそこそこ人気がある。

 その有能な少女は、黒を基調とした私服に、ピンクのエプロンを身に着け、フライパンとお玉をガンガン鳴らしながら、私の部屋に入ってくる。肩にはカタギリ技術顧問が乗っている。

 

 

「おはよう、良い朝だな。琥珀(こはく)君」

 

「はいはい、いいからご飯食べて仕事行って。11時から第4会議室でしょ?」

 

「カァ」

 

 

 この少女は私を転生させた恩人である。本人は否定しているが、私は一度会った恩人を見間違えるほど愚かではない。そして、元々は九州宮崎を中心に活動していたらしいが、どうやら島津にちょっかいを出して逃げてきたと語った。中々にチャレンジャーな少女だった。

 なので私が寝床や仕事を斡旋しているのだが、こうやって私の食事も作ってくれる女神だった。

 余談だが、彼女は頑なに名を名乗らない。ので、私は彼女に『立花 琥珀』と名をつけた。立花導春には全く関係ないが、どうやら非童貞で甲斐性なしのカミキヒカル青年には、宝石の名を冠する息子と娘がいるらしい。それを真似てみた。

 

 我ながら良いネーミングセンスだと思う。

 私は軽やかに飛び起き、一瞬で着替え、大股で社長室を出ようとする。

 

 

「朝食は何かね?」

 

「バターを塗って焼いた食パン、バターと塩コショウで炒めたスクランブルエッグ、あと焼いたウィンナー。デザートに夏の旬のカットメロン」

 

「……生牡蠣は、ないのか」

 

「あんた前世の死因から何も学ばないの?」

 

「カァ」

 

 

 学んで次に生かせるほど、私の牡蠣愛はやわではないぞ?

 感謝の意を込めて琥珀君の頭を優しく撫で、会議でどう暇をつぶすか考えながら、共同キッチンへと向かうのだった。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「──すまない、少々遅れた。琥珀君(の作った朝食)を食べていたので」

 

 

 ネットで炎上した。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「ねぇ、アンタ。そんな大荷物抱えてどこ行くの?」

 

「どうした、かな君。今日はドラマ撮影があると記憶していたが」

 

 

 キャリーケースを転がしながら、事務所の外に向かう道を歩んでいると、道中にマルチタレントとして活躍している有馬かな君と出会う。

 彼女はどこに向かうのかと詰問してきたが、特に隠すことでもないので素直に答える。

 

 

「野暮用で九州に向かうことになった」

 

「……ふーん。今日の撮影は延期。予定してた撮影場所が、昨日の大雨で地盤が大変なことになったって。撮影場所変更があったから、今日は暇してるの」

 

「なるほど、かな君の身に何かあっては大変だからな」

 

 

 芸能人であり女性であるのだから、身の安全を第一に考えてほしいものだ。

 しかし、私の言葉を聞いたかな君だったが、その顔色はすぐれなかった。すぐれない……というよりは、私の行先に思う所があるらしい。

 

 

「九州ってことは、鹿児島にも行く?」

 

「とりあえず最終目的地はそこだな。まずは大分市(府内館)に向かった後に、鹿児島に足を運ぶつもりだ。その間の雑務は、カタギリと琥珀君に任せている。何か分からないことがあれば、遠慮なくカタギリに任せるといい」

 

 

 てっきり、私がいない間のプロダクション運営を懸念していると思い、ちゃんと有能な者……者?に任せていると伝えたが、それでもかな君の表情は晴れなかった。

 どうしたのだろう?

 

 

「……アクア」

 

 

 ぼそりと呟かれた人名を私は聞き逃さなかった。

 

 星野アクアマリン。

 

 遺伝子上は私の息子であり、今は鹿児島に在住している少年。正直に言って、少年にそこまで興味はないが、かな君は私の息子に、並みならぬ感情を抱いているように見受けられる。

 カミキヒカルの記憶を探ってみるが、今のアクア少年に関しての情報が少なく、これと言って彼女にかける言葉が見当たらない。しかし、かな君から見て、その感情を抱くに値する人物なのだろう。

 私としては、部下である彼女の恋を応援したい。

 

 

「かな君、安心するといい」

 

「き、急にどうしたのよ」

 

「そのためにも──私は鹿児島に行くのだ。何、土産は期待しても構わないぞ?」

 

 

 私はそれだけ告げると、大股で事務所を出る。

 少々の長旅になるだろう。

 そして──久方ぶりの帰郷となる。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

 立花導春とカミキヒカル。

 その本質は、違うようで似ている。

 

 カミキヒカル青年は、言い表すなら『自らが価値を見出した存在が滅びゆく様に悦びを感じるサイコキラー』であり、故に星野兄妹の母親である星野アイ君の殺害に関与している。星野アイ君の経歴は知っているが、素晴らしい才能を持った人物であるのは明白であり、彼女の死はカミキヒカル青年の欲を大いに満たしただろう。

 

 では、立花導春は彼を非難できるような人間なのか?

 答えは否だ。私とて、彼と本質が似ている。

 その価値ある人間が『武人として』であり、滅びゆく様が『討ち果たす様』であり、直接的に討つ違いはあれども、客観的に見て、やっていることは一緒である。それを理解し、改めるつもりが一切ない辺り、やはりカミキヒカル青年への転生は、宿命であったと認めざるを得ない。

 

 

「星野アイ君、か……」

 

 

 カミキヒカル青年と一度は関係を持った少女。

 今は生まれ変わり、薩摩の地にいると。

 

 内なるカミキヒカル青年は、彼女の滅びを望んでいる。

 彼女に価値があると認めているからこそ、彼は再びアイ君の滅びを求めており、この私に殺めよと語りかけてくるのだろう。彼女だけではない──彼女と私の娘である星野ルビー君も、光るものがある。

 

 

「……ふん、興が乗らん」

 

 

 しかし、立花導春から見れば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ただ単にカミキヒカル青年の関係者としか興味がなく、この身体の持ち主としての最低限の義理は果たすが、それ以上の感情が浮かばない。所詮は()()()()である。せいぜい、今回の件で使える……としか思わない。

 

 あえて言わせてもらう。

 殺す価値すらない。

 

 

「しかし。しかし、だ」

 

 

 そう、それだけの存在であるが。

 アイ君の想い人は、島津 桜華である。

 

 島津少年──単騎特攻という頭のおかしい奇行をし、そして生還した若き島津の武者。私が生まれ変わったとき、島津少年との再戦が叶わないことを、一番に嘆いたぐらいだ。

 あの()()()()()()()()()少年は、素晴らしい武士だった。あれほど()()()()()()()()()()()()()()も珍しい。あれは殺す価値がある。

 

 否、私が殺さねばならない。

 

 

「今回は顔合わせだが……あぁ、楽しみだ」

 

 

 宗虎が協力してくれた。

 島津の法正も、今回限りは味方である。

 

 彼との再会は近いだろう。

 そのために、星野一家を十全に利用させて頂こう。

 

 

「──さぁ、存分に殺し合い()を始めよう」

 

 

 

 




【IF】

当主殿「──的な感じで、『シマーヅ・ポッターとサツマハンの重鎮』ってタイトルで、映画作成を依頼したい」

五反田「あー、でもアイに依頼された『15年の嘘(仮)』映画が」

当主殿「あ、そっち優先で」

当主殿「いや、何なら混ぜてしまっては?」

当主殿「『15年の嘘~サツマハンの重鎮~』とか」

五反田「何だそのカオス。それアイ主役じゃなくて、ただの鹿児島在住の厄介ファンの物語じゃねーか」
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