薩摩の子 作:キチガイの人
戦闘描写欲しいって言われたので書きました。戦闘は苦手です。
感想お待ちしております。
俺はタクシーを降りて目的地に駆ける。
料金は支払い済であり、ちゃんと過不足なく支払った。前に「釣りはいらねぇ!」をしたことがあるが、財務の元で仕事をしているうちに、あれをされると支出計算が狂うことを覚えた。
お金は計算を違えると面倒なのである。
閑話休題。
俺は駆けつつ、羽織っている服の胸元の内側に隠している拳銃、ベルトに挟んである折り畳み式のハンティングナイフ、防弾チョッキの背中側に仕舞ってあるサバイバルナイフの所持を確認する。完璧に職質されたらアウトの格好であり、完全に相手方を殺すための装備であることは、言い訳のしようがなかった。
相手が相手なので、状況次第では息の根を止めてやろうとは画策しているが。
ポン刀は流石に持ってこれなかった。
本当は持ってきたかったけど。
「アイいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃっっ!!」
場所は工事作業が進んでいない現場。
立ち入り禁止をガン無視し、つんのめりながらも人の気配がする方向へ全力疾走する。
そこには──
壮年期のアクアみたいな外見の男──カミキヒカルが、にこやかに笑いながら、相手方に隠すように背後で刃渡りが長めの果物ナイフを握りしめ。
今まで見たことないような、嫌悪と憎悪を込めたどす黒い星の輝きを目に宿し、カミキ相手に鋭利な包丁片手に迫ろうとするアイと。
それを必死になって背後から羽交い締めしながら止めようとするアクア。
汚物を眺めるような視線をカミキに向けるルビーに。
ルビーの背後で瞳を鋭くさせながら待機する
──とんでもねぇ混沌が待ち構えていた。
足を止めることはなかったが、内心「え、これ俺いる?」と思ってしまったぐらいである。ご隠居と親父殿いるんなら、俺の存在なんて『蛇足』の語源になりそうなくらい必要ないよなコレ。
しかし、動かないところを見るに『星野家』に危害が加えられる場合のみ動く──つもりなのだろう。彼女の攻勢に加担していれば、今頃カミキは存在ごとなくなっているはず。
というか、これどういう状況?
アイなんで殺気立ってるの?
考えても状況が理解できないので、
「──死ね」
ひとまずアイが手を下す前に、カミキをこの世からさよならバイバイすることにした。
必要最低限の動きでカミキに急接近した俺は、背中から大きめのサバイバルナイフを抜いて、首を薙ぐようにナイフを走らせる。
書類仕事で多少のブランクはあれど、個人的には会心の一撃とも言える100点満点の動きだった。これ以上の動きは、ちと鍛え直さんと厳しいかもしれない。
「ふっ……!」
「はぁっ!?」
まさかスマートに回避された挙句、標的がいなくなりがら空きになった俺のボディーに、鋭い蹴りまで食らわされるとは思わなかったが。最悪なことに、一般人の蹴りだが効果的な場所に、ピンポイントに当たったものだから、受身で転がりながら再起を図る。
さすがに人体の弱点を突かれたらどうしようもない。
カタギからの反撃に驚いてしまったのも大きかっただろう。
その間、音もなくアイとアクアを安全圏に引っ張るご隠居。
親父殿もルビーの肩に手を置き、俺とカミキの攻防戦を見守る。
「ハハハハハッッ!!」
「くっそ、
薙いで斬って刺す等の、相手を確実に仕留める気概を一撃ごとに込めるが、どう解釈してもカタギの人間ができるような回避の範疇を超えている。
ましてや再度足蹴りをされ、俺もそれを避けてはみたが、狙いは俺にダメージを与えることではないと気づいたのは、その蹴りで胸元に隠し持ってた
お返しにナイフを持っていない左拳で頬を遠慮なく殴り、彼の鳩尾に回し蹴りをお見舞いする。
酸素と共に口から液体を吐き出したカミキは、それでも笑みを崩さずにその
こんなバトルジャンキーだって聞いてないんだけど。
「フフフっ、あぁ、最高の気分だ」
「……ちっ、
「こうして再び、よもや君に会えようとは」
「あぁ?」
再びどころか初対面なんだけど。
俺は怪訝な表情をカミキに向け──
「『乙女座の私には、センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない』」
「……は?」
一瞬だけ。
そう、一瞬だけ。
俺はカミキヒカルの顔が、別の誰かに重なった。
「やはり、私と君は運命の赤い糸で結ばれていたようだ。君の圧倒的な戦闘センスに、私は心奪われた。この気持ち──まさしく愛だっ!」
「はぁ!?」
「は?」
遠くから「あ、アイ! 本当に待ってくれ! って、力強っ!? 誰かヘルプを……!」と、悲痛なアクアの声が聞こえるが、俺の思考はそれどころじゃなかった。
カミキから視線を外せなかった。
俺はこの男を知っている。
いや、知っていたとしても、ありえない。
そう頭では理解することを否定するが、それと同時に『こんなクソ気持ち悪い男が、二人存在するか?』と、冷静だけど思考的に狂っている自分が問いかける。
こんなこと言うキチガイなんざ……。
「会いたかった……会いたかったぞ、島津少年っ!」
「テメェ導春かよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!??」
してたまるか。
最悪の事象が目の前で起こっていた。
神様はご乱心されているようだ。
それと同時に色々と腑に落ちたところもあった。
戦闘能力とか、おかしな言動とか。
「そうだとも! そして──その愛を越え、憎しみも超越し、もはや我々の関係は宿命となった!」
「だからって生まれ変わってまで、俺とアイに粘着してくるんじゃねぇよ!」
「ぶっちゃけアイ君は正直どうでもいい。私の内なるカミキヒカル青年は違うかもしれんが、私の興味以上の対象は少年だけだ!」
その口ぶりからして、コイツん中にはカミキヒカルがまだ眠っているのだろう。そして、本当にアイに対して何の感情も抱いていないことを感覚的に察知し、カミキヒカルもコイツの犠牲になったのか……と心の内で合掌する。
同情はしないけど。
しかし、俺の認識は変化した。
目の前にいる敵は、『女子供を間接的に殺そうとする一般サイコキラー』ではなく、『大友家重鎮筆頭、立花家元当主の変態』なのだ。
いくら生前の強靭な肉体を失ったとしても、武人としての立花 導春の神髄は、化け物じみた小手先の技術の集大成による、精密機械のように卓越した戦闘技能である。前世で親父殿と討ち合える存在なのだから、そりゃ内務官な俺が簡単に処理できる存在じゃない。
今、俺がカミキのナイフの刃を、俺のサバイバルナイフのギザギザ部分に噛ませ、思いっきりへし折って危険物のゴミに変えたが、獲物を失って徒手空挙になろうとも、その拳だけで戦えるのが立花のオッサンである。
マジで頭おかしい。
もう一度死んでほしい。
ナイフによる致命的な攻撃は避け、俺の拳ないし手刀は受け避けしながら、隙を見ては俺の身体にダメージを蓄積させる。
お互いが肩で息をするくらいの攻防戦を続ける。その一般人な体力を上手にやり繰りしながら、薩摩武士と殺り合えるなんざ、本当にこの人はバケモンだな。それとも俺が弱いのだろうか。後者の説が濃厚になってきた。
「今度こそ死にやがれっ! 立花の亡霊がぁっ!」
「やってみるがいい、首狩り島津ぅっ!」
俺のナイフと、カミキの拳が、それぞれの身体を──
「──代表っ! ここに居たんですね! ……お邪魔でしたか?」
「「話の続きをどうぞ」」(瞬時に納刀)(証拠隠滅完了)(コーナーで差をつけろ)
事務所の上司を探しに来た、
【カオスになった経緯】
カミキ「アイ君が先代島津連れてきたんだが!?」
ルビー「ママー」
親父殿「
カミキ「アイ君や双子は正直どうでもいい。島津少年と殺し合いしたい」
アイ「は?」(闇堕ち)(護身用の包丁で成敗)
遅れてきたアクア「待って待って待って!」
桜華「なんだこれ」