薩摩の子 作:キチガイの人
余談ですが、今作に戦闘描写はそんな多くありませんし、今後も出てくるか分からないです。そもそも島津設定も、アイを物理的に守るための手段が始まりですし。
タイトルからイカレポンチのチェストを期待している方もいらっしゃるかと思いますが、今作は『喜劇』をテーマにアイが学生生活を謳歌する物語です。血生臭い展開を見たい方は、とりあえず本作を閉じて『ドリフターズ』を読みましょう。面白いですよ。最近5年ぶりに新刊出たそうですよ。
というわけで感想お待ちしております。
追記・明日初盆なので休みますm(_ _)m
カミキヒカルだと思ったら立花 導春だった。
これほど意味不明かつ残酷な字面は存在しないだろう。
おそらく事前に正体を知っていたのは、立花の戦争屋と、島津の人格破綻者。なぜ撫子が俺たちに隠していたのかという憤りを感じると同時に、あいつが「実際に見てみないと信じないでしょ?」と嘲笑うように言ってくるのは容易に想像できる。
そして、それに対する反論が浮かばない。百聞は一見に如かず──ということわざがあるが、まったくもってその通りの状況になるだろう。言われただけじゃ信じられないし、信じたくない。かといって、会うと「あぁ、こんなやつは他に居ない」と納得するわけだ。
はた迷惑にも程がある。
「代表、どうしてこんな場所に?」
「そ、それはだな……」
まさか一回り年下のガキと死闘を繰り広げていました……なんて言えず、この面子で何をしていたのか?と聞かれれば、それらしい言い訳が思い浮かばないのも事実。
ちなみに、今ここに姿を見せているのは俺とカミキ、少し離れたところにアイと双子の計5名。ご隠居と親父殿は鷲見さんの気配がした段階で、早々に姿を隠していた。カミキの関係者とはいえ一般人なので、アイが持っていた包丁を所有者でさえ気づかない速度で奪い、親父殿も地面に落ちている銃器を回収して去っている。
もちろん、俺たちの見えないところで孫sを見守っているのだろう。
吉田沙〇里さん程ではないが、十二分に安心できるセコムである。
「……あれ? どうしたのアイちゃん? そんな怖い顔して」
軽い現実逃避を行っていると、鷲見さんの視線がアイに移る。
俺も見た瞬間にカミキをチェストしようとしただけで、それより前にアイとカミキの間で何かしらの問答があったことは想像できるが、その内容までは把握してない。
しかし、アイが得物片手にカミキを斬り殺そうと憤慨する何かがあったのは確かだ。薩摩式送別会で大怪我した俺を見た時以上に荒れており、あそこまで怒っている彼女を見たことがない。
アイも何も言わずカミキを睨みつけるのみ。
どうしようかと俺が口を開こうとしたとき、先に声を発したのはアクアだった。え、これを収拾する嘘があるのか?
「あー……っと、鷲見さん。これには色々と事情があって」
「え、凄い気になる」
「俺たちと……そこのカミキは遠い親戚なんだ。だから、俺とカミキってそこそこ似てるだろ? そんな感じで昔に少し交流があったんだ」
「……確かに似てるかも」
似ている──の件で、苦虫を嚙み潰したような表情をするアクア。話を合わせることに必要な文面だったけれども、本人としては心底不本意だと言わんばかりの顔をしていた。
ルビーも同じ顔してた。
「それで、ちょっと今からの話は他言無用でお願いしたいんだが」
「うんうん」
ここだけの話という言葉に弱いのだろうか。
ウキウキしながらアクアの言葉を待つ鷲見さん。
「──カミキって、ホモなんだ」
「えっ?」
アクアの暴露欲求は母親譲りなのだろうか。
暴露も何も噓っぱちだけ──あれ? もしかしてカミキってホモなのか? え? マジ? 俺もしかして違う意味でやべぇのに目をつけられたのか?
「だ、代表ってホモなの!? 変態でロリコンでショタコンでホモなの!?」
「そうだ」(即答)
「うっわぁ……」
仕事の上司から汚物へジョブチェンジしたカミキは、それ相応の視線を鷲見さんから向けられる。少なくとも
マイナスのデバフを盛られ過ぎだろう。
さすが、島津の救世主たる黒川あかねから『演じられないわけじゃないけど、できれば演じたくない。私にも羞恥心がある』と言わしめた男だ。立花のオッサンの資料を分析した結果がコレである。
「ここまで言えば分かると思うけど、つまりアイと桜華とカミキは歪な三角関係なんだ。俺と……ルビーとしては、アイと桜華の仲を応援しているが、そこにカミキが割り込んできたって感じかな」
「ご、ごめん。ちょっと処理が追いつかない」
初手情報の絨毯爆撃で、相手の思考能力を奪って、無理矢理意見を押し通すのは星野家の十八番なんだろうか? 「どうして工事現場にいるのか?」って疑問が、鷲見さんの脳から吹っ飛んでんじゃん。まぁ、星野家自体が相手の思考を奪えるくらいの情報を生み出せる環境下ってのも、理由の一つなんだろうなぁってのは思う。
自分の恋人にする評価じゃないのは重々承知しているが、客観的に見て星野アイという女の子は、モラルと倫理観が島津並みに終わってるもんね。前世から。
「だからアイとカミキで意見の衝突があって」
「さ、三角関係だもんね。……えぇ、こんな三角関係、ドラマとかでも聞いたことないよぉ」
「カミキが『でもアイ君より自分の方が
「うっわ」
既にマントルぐらいまで落ちているカミキの評価が、貫通して南アメリカ近海まで行きそうなくらい、ダダ下がりしていた。
現役女子高生と胸のサイズを胸板で勝負する三十路過ぎの男──人としてどうかと思う前に、存在しちゃいけないモンスターのような何かだろコレ。大友家の守護神が、大友の枷を外すと社会不適合者になっちまうのか。
あとアイは大きいから。寿さんや撫子ほどじゃないと思うけど、大きいから。ここ重要。
まぁ、どう考えてもアクアの噓八百だろう。
それはアイもルビーも、そして当事者のカミキもよく分かっているはず。
「……本当ですか、代表」
「……あぁ、概ねあってるぞ。うん」
それでもカミキはアクアの話に乗る。
この言い訳が難しい状況下で、アクア以上の良さそうな言い訳が思い浮かばなかったのが大きいのだろう。加えて、立花 導春が忠義を捧げるのは、自身の立花家であり、宗家の大友家のみだ。アクアの案に乗ったところで、下がるのはカミキヒカルの名声だけであり、自身が最も大切にしている二家の看板に傷をつくことはない。そう考えているのかもしれん。
他に考えられることがあれば……心のどこかで、星野家に対する負い目を無意識に感じているのかもしれない。他人からの評価を気にする人間じゃないのは確かだが、こんだけ言われれば反論の一つぐらいはあるはず。カミキヒカルの所業に、立花のオッサンも思うことがあったのだろうか?
どちらにせよ、カミキは全ての悪評を被ることとなった。
否定された際の言い訳を考えていたであろうアクアは、驚いたように実の父親を凝視する。
「まぁ、代表ですからね。あ、ご友人の方が車で迎えに来られてますよ? 重要な話があるとかないとか……」
「宗虎か。分かった、すぐに向かおう。アイ君、ルビー君。そしてアクア君と
律儀にも一礼し、俺に視線を一瞬だけ合わせ、鷲見さんを伴って工事現場を後にした。
完全に視界から消え失せ、遠くからエンジン音と共に遠ざかっていくのを聴覚で確認し、俺はここ一番の大きな大きなため息をつくことになった。
マジか。カミキは導春か。
どうしてこうなったんだろう?
なんて本日何度目かの現実逃避をしていると、行き場のなくした怒りを抱えたアイが、俺の胸に真正面から飛び込んできた。俺の腰に腕を回し、力の限り俺を抱きしめて離す様子が一切ない。
防弾チョッキ着込んでいるので、ちょっとゴツゴツしているかもしれないが、よくわかんないけど彼女を抱きしめ返した。
「……私の方が、オーカのこと愛してるもん。嘘じゃないもん。仮に嘘だったとしても──絶対に、本当にするんだもんっ。あいつよりも、私の方がオーカのこと好きだもんっ!」
彼女の想いは嬉しいけど、とりあえず『カミキが俺を愛してる』って認識だけは止めようか?
「ねぇ、あれ何なの? あいつ何なの!?」
「………」
………。
「……あれ、何だろうな?」
俺にもよく分からなかったので、彼女の答えに曖昧にしか返せなかった。
【島津 桜華】
主人公。今回の件でカミキへの警戒度を下げ、個人的な警戒度をMAXまで引き上げる。内心では「見知っている導春がカミキの手綱を握っているから、幾分かマシか……」と、アイたちへの危険度が下がったので安心している。
【星野 アイ】
ヒロイン。転生者。主人公来るまでに「君は本当の彼を知らない」「嘘を抜いた、その薄っぺらい本心で彼に何を囁く?」「
【星野 愛久愛海】
原作主人公。転生者。双子の兄。今回の噓八百は個人的な復讐が含まれている。正直、彼への憎悪より、アイの怒りに意識が向いてそれどころじゃない。
【星野 瑠美衣】
↑の双子の妹。転生者。自身にセンセを殺した男の遺伝子が含まれていることへの絶望、最愛の母親への煽り、変態。以上の要因からカミキが嫌いになる。好きになる要素がないけど。