ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第134話:破滅を呼ぶ星

 ──航空機を蹂躙し、空港を糸で破壊しながら進軍するオーラギアス。

 怪物の足元からは大量の糸が広がり、周囲を腐食性の毒素で腐らせていく。

 誰もかれもがポケモンを投げ付け、交戦を試みたが──毒の糸にポケモン達は絡め取られ、次々に腐食させられていくのだった。

 

『直ちに命を守る行動を!! このポケモンに近付いてはいけません!!』

 

 市街地へあっさりと侵入したオーラギアスは、逃げ惑う人々の事など知ったことではないと言わんばかりに周囲に糸を広げていく。

 辺り一面は、毒の糸に覆われ、ビルは腐食して朽ち果てていく。

 

「進軍進軍!! 撃てーッ!!」

 

 すぐさま重機部隊が進軍し、オーラギアスに向かって攻撃を放つ。

 だが、自身のエネルギー源でもあるオシアス磁気を動力とする重機は、オーラギアスにとっては格好の補給源でしかない。

 大量の糸が伸び、それらの動力炉を貫くと──間もなくそれらは動かなくなるのだった。

 

「なっ、オシアス磁気が枯渇ゥ!?」

「どうなっとるんだ一体ィ!!」

「ひっ、敵の攻撃来ます!! 退避!! 退避ィ!!」

 

 そうなれば重機は只の棺桶でしかない。

 結局の所、皆逃げ惑うしか無いのだった。

 邪魔なものを一通り排除し、街の中央に鎮座した巨大蜘蛛は、地面に自らの足を突き立てた。

 自らの生まれ故郷である空を見上げると、巨大な結晶が生えた頭を天高く突き上げる。

 

 

 

「ヲヲヲヲヲヲ……!!」

 

 

 

 アスファルトに沈みこんだ脚は、地中のオシアス磁気を次々に吸い上げていく。

 オーラギアスの巨大な腹部は不気味に光り輝き、頭部へと光は移り渡っていく。

 そして、何も無い天に向かって高く──オーラギアスは、極大の波動を撃ち込むのだった。

 それは禍々しい光の柱となって、天を貫き続ける。

 

 

 

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲ……!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 プライシティの中央からは巨大な光の柱が天高く突き上がっている。

 超高濃度のオシアス磁気の塊であり、近付くだけでポケモン暴走のリスクが高まる代物とのことだった。

 これがオーラギアスのものであることは確実だ。

 しかし、敵の目的が全くと言っていい程掴めないのである。

 

「何で? 何なのアレ? 攻撃ってわけでもないし、威嚇?」

「……分からないわね」

「ッ!!」

 

 ミコが顔を顰めた。頭の中に流れ込んでくるのは、

 

 

 

 ──コイ、コイ、コイ、コォイ……!!

 

 

 

 

「あやつ……何かを呼んでるのか……!?」

 

 しかし、あまりにも言語系統が此方と違うからか、確信には至れない。

 全員がオーラギアスの行動の意図を図りかねていたその時だった。

 

 

 

「漸く、あのエイリアンの生態が掴めてきたよ」

 

 

 

 重い身体を引きずるようにして、イデアが部屋から出てくる。

 手にはノートPCを抱えており、どうやら光の柱の事も把握しているのか「とんでもないオマケを引っ張ってきたみたいだ」と続けた。

 

「オーラギアスは宇宙からやってきたポケモン……隕石のような身体は宇宙空間を移動するための形態で、蜘蛛の姿は地上で活動するための本来の姿だ。じゃあ蜘蛛の姿の役割は?」

「役割? 地上で餌を……いやでも、休眠状態でも捕食はしてましたよね」

「そうね。今のオーラギアスは餌を取ってない。今まで溜めたオシアス磁気だけで活動できるようになってる」

「ポケモンの進化形ってのは、基本的に圧倒的力で生息範囲を広げたり、繁殖しやすくなるために大きく、強くなる。それに特化するため、食事すら取らなくなるポケモンも居る」

 

 モスノウなんかがその一例だね、とイデアは続けた。

 

「じゃあ、オーラギアスは繁殖するんですか!?」

「僕も最初はそう考えてた。だけど、さっきアローラ地方のホクラニ天文台からこんな報告が入ってね」

 

 イデアは、写真をイクサ達に見せる。

 それは、この星に何かが接近していることを示している観測データだった。

 

「……これって」

「隕石だ」

「隕石ィ!?」

「勿論、この段階ではこの星に衝突する事は無い。そも、宇宙に隕石なんてどれだけあると思ってるのってね」

 

 この星に落ちるにしたって大抵は大気圏で燃え尽きるし、と彼は続ける。

 

「じゃあ隕石とオーラギアス、何の関係があるの?」

「どうやらこの数分の間に不自然に隕石の軌道が変わっているようだ。まるで何かに引き寄せられるようにしてね」

「……まさか、この隕石って?」

「オーラギアスが宇宙に向かって放ってる波動。そして、隕石の軌道が……じんわりだけど、変わり始めてる」

「これは僕の仮説なんだけどね?」

 

 と前置きしたイデアは──真剣な面持ちで彼らに告げた。

 

 

 

「あの姿は……()()()()()()()()()()()()姿()って事だ」

「──ッ!!」

 

 

 

 恐れが確信に至ったようにミコは目を見開いた。

 

「じゃ、じゃあ、降ってくるの!? あいつが更に何匹も!?」

「あいつは、数千年ただ食っちゃ寝してたわけじゃない。他の仲間が近付くのを待ってたんだ。そして、この星に近付いていることを察知したから、あの姿になったんだ……!!」

 

 ──このオーラギアスという生物は、宇宙を漂いながら星と星の間を移動する生物だ、とイデアは推測する。

 そして、自らの生育に適した星に落ちた場合、そこで食事と休眠を繰り返しながら、同じく宇宙を漂う他の仲間を待つ。

 たとえそれが何千、何万年だったとしても。ずっと、待ち続ける。

 オーラギアスがエネルギーを溜め込み続けるのは来たるべき時のため。

 大クモの姿を晒すのは、仲間が近付いた時のみ。

 その溜め込んだオシアス磁気を以て、近付いた他のオーラギアス達を確実に誘引する。

 まるで、磁石と磁石のように、それらは引き合い──また星に落ちるのである。

 

「待ってそれ、すっごく気が遠くならない!? 何千年も他の仲間を待ってたって事!?」

「宇宙生物だから、時間の概念も桁違いってことね……随分長い待ちぼうけじゃない」

「じゃあ、このまま放ってたら……」

「第二第三のオーラギアスが地上に落ちてくる。そうでなくとも、隕石衝突でオシアスはまとめて吹き飛ぶ!!」

「え”」

 

 ミコが叫んだ。

 それを聞いたデジーは、肩の力が抜けてしまい、遠い目で座席にもたれかかる。

 今暴れ回っている怪物を止めるのに、タイムリミットが出来てしまったからである。

 

「オーラギアスを止めないと、どっちみちオシアスは滅びるってこと……!?」

「オシアスだけじゃないわ。アレが何匹もやってきたら、どの道世界はオシマイ」

「繭状態から目覚める為に、辺り一面に捕食波動を放つから……デスよね!? こんなの詰みデース!!」

「させるかよ」

 

 イクサはイデア博士に向かって言った。

 

「僕らがオーラギアスを止めれば、隕石の軌道は……!!」

「ああ、目指すものが無くなり、この星を逸れるだろう。そもそも、正確に自分の居る場所に仲間を呼ぶのが難しいから、あんな光の柱を使ってるんだろうね」

「止めます」

「行くのかい」

「勿論です。それに、僕一人じゃないですから」

 

 モンスターボールを握り締めれば温もりが伝わってくる。

 そして、振り返れば、今まで出会って来た仲間達が居る。

 ミコが誇らしげに言った。

 

「イデアよ。今更止めても無駄だろう。あやつらは、どう言っても行く」

「……何となく、こうなる気がしたんだよ」

 

 それだけで、イクサは──どんな相手にも勝てる気がした。

 

「そうでしょ? 皆!!」

「……ええ、勿論。イクサ君には地獄の底まで付いて来てもらうから」

「えっ……」

「でしょ? 私の可愛いナイト様」

「ボクもついてくかんねーっ!」

「……最後まで騒がしいな」

「デモ、その方が私達らしいデショ!」

 

 飛行船は、もうじきに地上に降り立とうとしていた。

 もう引き返すことなど出来ない。

 イクサの真剣な眼差しを見つめたイデアは、何かを悟ったように微笑んだ。

 

 

 

「行ってこい、少年少女!! ちゃちゃっと、世界を救ってきな!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──ヲヲヲヲヲヲヲ!!」

 

 

 

 無尽蔵のオシアス磁気を、空に居る仲間を呼び寄せる為に解き放ち続けるオーラギアス。

 周囲にはもう、人やポケモンの影は無かった。

 ただただ、人々はそれを恐れ、見つめることしか出来ない。

 オシアス地方は今、呪いによって滅びようとしている。

 だが、そんな中──オーラギアスの頭部を目掛けて、閃光が飛んだ。

 

 

 

 

「圧縮”10まんボルト”弾」

 

 

 

 

 オーラギアスは、いきなり飛んできた電気の塊に面食らう。

 そして、周囲に広げた糸で外敵の接近を察知した。

 糸はオーラギアスにとって感覚器も同然。張り巡らせれば、地上に居る敵の位置を正確に把握する事が出来る。

 

「ヲヲヲ……ッ!! ヲ!?」

 

 ──だが、地底に潜んでいる敵の存在までは、正確に把握することが出来ない。

 オーラギアスの足元はいきなり陥没し、ずしんと巨体が沈み込む。

 そして一仕事終えたカクレオンは、ぴょんぴょんと穴を掘って瓦礫の山から飛び出していく。

 

「オーガギガァァァァァ!!」

 

 地中を掘り進むことが出来ても、陥没した身体を起こすのは、この体重では至難の業だった。

 故に体中から糸を吐き出し、無理矢理態勢を整える。

 だが、そこに叩きこまれるようにして紫電が舞う。

 

「待たせたわねオーラギアス。あんたの相手は私達よ」

「ぎゅらるるるるるるる!!」

 

 オーラギアスの首を尻尾が巻き取り、そこから大量の電流が流し込まれた。

 

 

 

【ハタタカガチの 10まんボルト!!】

 

 

 

 一瞬で感電したオーラギアスは煙を全身から噴き出しながらも、それを耐え切ってみせる。

 そして、眼前に立った少女の姿を見やり、それらを排除すべき脅威であると認定するのだった。

 

「あんたの仲間は呼ばせない。そして──」

「──悪いけど、此処でおねんねしてもらうかんねーッ!!」

 

 空からオーラギアスの脳天を貫く勢いでそれは落ちた。

 ギガオーライズしたミミロップが、強烈な踵落としを見舞ったのである。

 流石に頭部へのダメージは堪えたのか、オーラギアスは大量の糸を吐き出し、跳び回るミミロップを狙うが、それらは全てハタタカガチが高圧電流で焼き切ってしまう。

 それも通じないと判断したオーラギアスは、今度は辺り一面に幾何学模様の糸を張り巡らせた。

 

「ッ……来たわね」

「ぎゅらるるるるるるる!!」

 

 今度の糸は先程のそれよりも強靭だった。

 そして、長く、広く、遠くに張り巡らされていく。

 ビルの影に隠れていたデジーも、バジルも、ゼラも、そして──レモンも。その糸から逃れることは出来ない。

 

「これ、切れないデース!?」

「やっばぁ!? なんかヤな予感がするんですけどぉ!?」

「……毒が来るッ!!」

 

 

 

 

「オーガギガッ!!」

 

【オーラギアスの──】

 

「確かにあんたは強いわ、オーラギアス。獲物を弱らせ、確実に死に至らしめる。その為だけに進化した技、そして体。突き詰めれば何処までも厄介よ。だけど──」

 

 レモンは笑みを浮かべた。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()……それが、あんたの致命的な隙になるッ!!」

 

 

 

 レモンの隣に後れて並び立つ影。

 そして、そこからビルの間を飛び回った小さな影が──オーラギアスの眼前に現れる。

 

「タギングル、”ちょうはつ”!!」

「きゃいきゃいきゃいッ!!」

 

 タギングルは、自身の尻を叩き、オーラギアスの気を引く。

 糸からは毒が放たれることはなかった。オーラギアスの持つ変化技は全て、封じられたのである。

 間一髪でレモン達は毒を浴びる事を避けたのだった。

 そして下手人のタギングルを従えるのは当然、遅れてやってきたイクサだ。

 

「……レモンさん、準備完了です!!」

「信じてたわよ!! さあ、カマしなさい!!」

「はいッ!! タギングル、ギガオーライズだ!!」

「きゃいっ!!」

 

 イクサはオージュエルにタギングルのカードを翳す。

 大量のオシアス磁気がその身体に突き刺さり、全身をペンキで塗ったくったような姿になったタギングルは、指から大量の毒液を溢れ出させながら迫る。

 

 

 

【タギングル<ギガオーライズ> タイプ:毒/ノーマル】

 

 

 

 オーラギアスはさながら巨大なキャンバス。

 飛ぶ糸を避けながら、タギングルは彩る。

 大量の毒液を放つ指を絵筆のように振るい、オーラギアスに叩きこむ。

 色とりどりの毒液は毒蜘蛛をカラフルに染め上げ、その視界をも塗り潰す。

 しかし、感覚器代わりに張り巡らせた糸のおかげで、毒蜘蛛にはタギングルの居場所が正確に把握できていた。

 

 

 

 ──だが、空中に浮かぶ巨大な毒液の塊は、気付いていても避けられるはずがない。

 

 

 

「浴びせろ彩のオオワザ……”カリギュラフィ”!!」

 

【タギングルの カリギュラフィ!!】

 

 

 毒蜘蛛はあまりにも鈍重過ぎた。

 すぐさま質量の暴力で毒液の塊がバウンドして叩き込まれる。

 だが、オーラギアスは腐っても毒タイプ。毒技は効果が薄い上に、そもそも毒状態にはならない。

 

 

 

「ヲ……!?」

 

 

 

 しかし。

 オーラギアスは、生まれて初めての感覚を味わう。

 自身を確実に蝕む猛毒というものを。

 確実に迫りくる死、そして苦しみ。

 オーラギアスは悶え、絶叫する。

 

「確かに君の毒は凄いよ。どんな生物でも毒にしてしまう、とんでもない毒だ。だから……君の特性をタギングルにコピーさせた」

「きゃいきゃいきゃいっ!!」

 

 ”うつしえ”。

 それは、相手のポケモンの特性をタギングルにコピーする専用技だ。

 故に、現在のタギングルの特性は──

 

 

 

【タギングル 特性:かるわざ→むしばみのゆうせい】

 

【相手の特性、タイプを無視して毒、猛毒状態にする】

 

 

 

 ──オーラギアスのそれと同じものへと変わっている。

 そして、大量の毒液を浴びせるオオワザにより、オーラギアスは生まれてこの方、決して受けるはずが無かった猛毒を初めて浴びる事になったのだった。

 加えて既に”じこさいせい”で体力も回復できなくなっており、イクサ達を”どくどく”で攻撃することも出来ない。

 更に、ミミロップも追撃を加えるべく地面を蹴り、肉薄した。

 

「行くよミミロップ、オオワザだっ!!」

「みーみみっ!!」

 

 体中に浮かび上がった月輪の紋様が輝く。

 そして、オシアス磁気が健脚に全て注がれていき、とびっきりの岩をも貫く蹴撃へと昇華されていく。

 天よりオーラギアスの脳天を穿つ勢いで、それは放たれた。

 

 

 

「貫けッ!! ”ノクターンインパルス”!!」

 

【ミミロップの ノクターンインパルス!!】

 

 

 

 一度宙返りして勢いをつけたミミロップは、そのまま空中に張り巡らされた硬質の糸をも突き破り流星の如き蹴りを叩き込む。

 その余波でオーラギアスの足元は更に沈みこみ、巨体はぐらり、と揺れて──バランスを崩した。

 その勢いで宙返りし、ミミロップはタギングルの下に降り立つ。

 

「みーみっ!」

「きゃいっ!」

 

 ライバル同士の両者は、視線を交わすと、再び目の前の強敵に相対する。

 

「よっし、決まったぁ!!」

「レモンさんっ!!」

「ええ──これで終いよ。”10まんボルト”!!」

 

 レモンの号令と共に、紫電の束がオーラギアス目掛けて飛んだ。

 更に合わせるようにしてゼラがレールガンを撃ち放ち、クワガノンも合わせて電撃弾を放つ。

 文字通りの集中砲火。

 電撃が爆ぜ、焦げ臭い匂いが伝わってくる。

 しかし──

 

 

 

「ヲ、ヲヲヲヲヲ……ッ!!」

「……冗談でしょ」

 

 

 

 ──オーラギアスは未だ健在。

 仮にもオオワザを二発受け、猛毒状態になっている上に、電気技の集中攻撃を受けたにも関わらず。

 毒蜘蛛はコキコキ、と首を回し、何ともないように唸り声を上げるのだった。

 再度、攻撃を仕掛けるべく突貫するタギングルとミミロップ。

 だが抵抗をあざ笑うように、毒蜘蛛は全身から生えた大量の結晶から光を放つ。

 オーライズも、ギガオーライズも、全てのオシアス磁気に纏わる力の根源はオーラギアスにある。

 

 

 

【オーラギアスの ギガオーラジャミング!!】

 

 

 

 ──始祖であるが故に、ギフトを剥奪するなど容易いのだ。




【DETA】
オーラギアス ゆうせいポケモン タイプ:毒/虫
H185 A130 B140 C60 D140 S35

特性:むしばみのゆうせい
鋼タイプや毒タイプも毒・猛毒状態にすることができる。他のポケモンが持つ特性を無視してわざを出せる。
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