ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第138話:迫る時間

(──レモンがブリジュラスを出したか)

 

 

 

 ビルの屋上から戦況を確認し、ゼラは口角を上げる。

 レモンは理解している。視力の良いゼラならば、何も指示せずともこの戦況から最適解を導き出すことが出来る、と。

 そしてゼラもまた、それに応えてみせる。

 

「……インテレオン、あまごい」

「うおれおん♪」

 

 

 

【インテレオンの あまごい!!】

 

 

 

 インテレオンが右手を高く上げ、指を鳴らす。

 プライシティは一瞬で暗雲が集い、土砂降りの雨が降り注いだ。

 

 

 

「……行くぞインテレオン。もう一仕事だ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲーッッッ!!」

 

 

 

 目の前の脅威が二つに増えた。

 オーラギアスは、吸収したオーデータポケモンのオシアス磁気を展開し、障壁を作り出す。

 そればかりか、装甲は鉛色に染まっていき、辺りには電磁パルスが迸っている。

 そしてイクサ達が身構える前に、突如虚空から大量の岩の剣を降り注がせるのだった。

 

 

 

【オーラギアスの パワフルエッジ!!】

 

 

 

「イクサ君、ブリジュラスの影に隠れなさいッ!!」

「は、はいっ!!」

 

 岩の剣は、ブリジュラスが身体を張って全て受け止める。

 鋼の盾であるブリジュラスの特性は”じきゅうりょく”。衝撃を受け、傷が刻まれると共に装甲は硬化し、より堅牢になっていく。

 

「もしかして、イワツノヅチの力……!?」

「子供の力は親の力だって言いたげね!!」

「じゃあ、親離れさせてやらなきゃですね──ッ!!」

「ええ。もしオーライズと同じなら、タイプも変わってるはずよ」

 

 ざぁ、と雨が降って来たのを見て、レモンは唇を舐めた。

 

「……イクサ君。合わせなさい」

「……ッ!! そっか、そういうことですね!!」

 

 イクサはパーモットを引っ込めてマリルリを繰り出す。

 

「分かりますよ、レモンさんの考えてる事ですから!!」

「流石私のナイトだわ。褒めて遣わしてあげる」

 

 雨が轟々と降り注ぐ中、マリルリは勢いよく突貫していく。

 途中、無数の糸がマリルリを阻むようにして襲い掛かるが──

 

「へっ、雨か。成程それならこっちにも考えがある!! ボーマンダッ!! テメェの出番だぜッ!! ”ハイドロポンプ”!!」

 

 それを吹き飛ばす勢いで水流が横から飛ぶ。

 空の王者、ドラゴンポケモンに飛び乗ったラズの援護射撃だ。

 

【ボーマンダ ドラゴンポケモン タイプ:ドラゴン/飛行】

 

 オーラギアスの糸は硬化し、ボーマンダの身体に突き刺さる。

 だが──

 

「舐めんじゃねえよ。下がった攻撃力で貫けるほど、竜のウロコはヤワじゃねえぞ!!」

 

 ──糸は竜の鱗を貫くには至らない。

 ボーマンダの特性は”いかく”。

 竜帝の威厳は、オーラギアスでさえも怯ませ、その攻め手を緩ませてしまった。

 そしてボーマンダは更に勢いの増した水のブレスを浴びせるのだった。

 そこに、前からは雨で勢いづいたマリルリによる渾身の殴打が決まる。

 

 

 

「”アクアブレイク”ッ!!」

 

 

 

【効果はバツグンだ!!】

 

 

 

 びきびき、と音が鳴り響き、オーラギアスが纏っていた鋼の装甲が砕け散った。

 更に水を浴び、より電気を通しやすくなった的を目掛け、レモンは悪魔のように微笑み──

 

 

 

「──せいぜい耐えてみなさい。”エレクトロビーム”!!」

 

 

 

 ──ブリジュラスの口から、ノーチャージで高圧縮された電磁砲が放たれる。

 オーラギアスの身体はそれによって貫かれ、がくり、と音を立てて装甲は砕け散るのだった。

 しかし、それでも倒れるつもりはないのか、オーラギアスの周囲に紫電が纏われていく。

 

「今度はハタタカガチ……!!」

「ヲヲヲヲヲヲヲヲ……!!」

 

 

 

【オーラギアスの かみなり!!】

 

 

 

 奇しくも雨を逆利用される形となる。

 雷の束がマリルリ、ボーマンダ、ブリジュラスを狙い撃つ。

 雨が降っている時、雷は必ず命中するのだ。

 致命的なダメージを負ったマリルリはその場に黒焦げになって倒れ伏せる。

 そして、雷が降ることをドラゴン特有の超自然的な第六感で察知したボーマンダは、無理矢理主人を振り落とし──自らが傘となって守るのだった。

 

「しまッ……ボーマンダ!! って、うおおおおおおお!?」

 

 赤い翼が激しい稲光に撃たれ、そして黒く焦げて墜落していくのが見えた。

 しかし、ラズも高所から落下したのでただでは済まない。

 瓦礫の山から這いずり出る頃には、体中の違和感に気付いていた。

 

(あぶねぇ……もう少しで死ぬところだったぜ……すまねえボーマンダ……!!)

 

「く、くそ……オーラギアスの野郎、許さねえマジで……!!」

 

 そして、幾ら物理耐久が高くとも、特殊耐久は然程ではないブリジュラス。

 不意の雷を受け、口から煙を吐き出し、倒れ込んでしまうのだった。”まひ状態”だ。

 

「いまひとつでこのダメージ!? あいつ、ハタタカガチの力で、私のポケモンによくも……!!」

「戻ってマリルリ!! ……今度は地面技をぶつけるよ、ハルクジラ!!」

「あの電撃を引き寄せるなら……ガラガラ!! 次は貴方の出番だわ!!」

 

 

 

【ガラガラ(アローラのすがた) ほねずきポケモン タイプ:炎/ゴースト】

 

 

 

 レモンが次に繰り出したのは、頭蓋骨を被り、そして鬼火を纏った骨を振り回すポケモン・ガラガラ。

 そしてイクサは地面技で打点を持つハルクジラを繰り出す。

 すかさず、二匹目掛けて雷を立て続けに落としていくオーラギアスだったが、それは全てガラガラの握る骨棍棒に吸われていく。

 ガラガラの特性は”ひらいしん”。効果は、電気技を自らに引き付けて吸収するというものだ。

 だが流石のオーラギアスも電撃が効かないことを察したのか、攻撃手段をあの毒の糸に切り替えようとする。

 

「ふふっ──させないよ。キュウコン、”アンコール”」

 

 毒の糸は放たれなかった。

 そればかりか、オーラギアスは再び全く相手に通用しない”かみなり”を落とし続ける。 

 ”アンコール”により、オーラギアスは同じ技しか出せなくなってしまったのである。

 

「これが私の本気さ。そして雪を降らせて場は整えた! 転校生、突き進みたまえ!」

 

 ビルの前でキュウコンと並び立つシャインは誇らしげだった。

 尚──彼が本気を出す以上、思いっきり全裸であったことは言うまでもない。

 しかし、生憎彼の全裸を気にしている暇などイクサ達には無かった。

 雪が降りしきる中、ハルクジラは加速を繰り返し、オーラギアスに接近していく。

 

「畳みかけるわッ!! ”ホネこんぼう”!!」

「”10まんばりき”だ、ハルクジラ!!」

 

 ハルクジラの加速した蹴りがオーラギアスに叩きこまれる。

 遅れて、ガラガラのホネによる強打も撃ち込まれた。

 電気を纏った障壁は砕かれ、オーラギアスは悲鳴を上げるのだった。

 

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲーッッッ!?」

 

 第二の障壁も砕かれたオーラギアスは、今度は凍てつく風を身に纏い、氷の障壁を展開する。

 辺りには怪しい風が立ち込め、瘴気がイクサ達に吹きつけた。

 

「今度はイテツムクロか!!」

「イテツムクロ……!? ヤバいわ、退避!! また退避よ!!」

「えっ、何でですか!?」

「シャインのイテツムクロの得意技は──”ぜったいれいど”よ!!」

「え”ッ」

 

 言い終わらん間に、凍てつく風がハルクジラとガラガラに襲い掛かる。

 そして、巨大な氷の華が幾つも咲き誇る。

 ハルクジラは氷に飲み込まれてしまい、そこから抜け出せなくなってしまい、ガラガラは全身氷漬けになってしまうのだった。

 唯一の救いは射程が短いことであった。

 イクサ達は辛うじて大吹雪を浴びるにとどまるのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ハハハハハ!! 流石イテツムクロの力だ!! 素晴らしい氷の華が咲いたね!!」

「コォン……」

「良いだろう!! 此処は私も一肌脱ぐとしよう!! 尤も、もう脱ぐ服など在りはしないがねッ!!」

「コォン……」

 

 高笑いする主人を前に、首を横に振って視線を逸らすキュウコン。そんな中──

 

 

 

【オーラギアスの ぜったいれいど!!】

 

 

 

 すかさず二撃目が今度はシャインとキュウコンを襲った。

 キュウコンは咄嗟に飛び退いて難を逃れたが、シャインは只の生身の人間である。

 

 

 

 

【いちげきひっさつ!!】

 

 

 

 この通り、一瞬で氷の像と化してしまうのだった。

 しかし、顔は満ち足りており、何処か幸福すら感じているようであった。

 何なら凍るまでの間にポーズを取る余裕すらあった。

 割と──平気そうであった。

 

 ──嗚呼、氷像の私もまた、美しい──そうだろう? キュウコン?

 

「コォン……」

 

(特別意訳:もうやだコイツ……)

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「そもそも!! 雪なんか降らせた所為で、あいつの防御力跳ね上がってるじゃない!! 絶対シャインの仕業よね!? あいつ何してんのよ!!」

「あいつ今明後日の方向に”ぜったいれいど”撃ったな……こっちに向かってこなくて助かった」

 

 変態が現在進行形で氷漬けになっていることなど、イクサ達は知る由もない。

 しかし、雪は一瞬で書き換わり、再び雨が降り注ぐようになる。

 

「ッ! ゼラのインテレオンね! 流石の判断力だわ! こっちは──エクスレッグで行く!!」

「ギギギッ!!」

「エクスレッグまで!? 凄いレパートリーだ、レモンさん……!!」

 

 イクサは驚愕する。

 現れたのは脚を折りたたんだ人型のバッタポケモンだった。

 

「じゃあ──サーナイト!! 君の出番だ!!」

 

【エクスレッグ バッタポケモン タイプ:虫/悪】

 

 雪は雨へと変わり、オーラギアスの防御力は低下した。

 だがそれでも、”ぜったいれいど”の脅威は依然として変わらない。

 当たれば一撃必殺の技には違いないのだ。それがポケモンであれ、人間であれ。

 オーラギアスは更に冷気を急速にしたためていき、放とうとする。

 オーラギアスは更に冷気を急速に高めていき、放とうとする。

 しかし──

 

 

 

「もうその技は使わせないデスよ!! カクレオン、”かなしばり”デース!!」

 

 

 

 ──カクレオンがオーラギアスの眼前に突如現れ、目を光らせる。

 更に、カクレオンの影が伸びていき、その巨体の影に次々に突き刺さっていく。

 

「今デス、レモン!! イクサ!! 畳みかける、デースッ!!」

「サーナイト!! ”シャドーボール”だ!!」

 

 折りたたまれた後ろ脚を解放し、エクスレッグは大きく跳ぶ。

 すぐさま糸の嵐が襲い掛かるが、それすらも身体を捻じって避け、じぐざぐに回避。

 そして、障壁を一点突破で貫く勢いで蹴りつける。

 極限まで空気抵抗を減らしたその一撃は、障壁に罅を入れ砕くことに成功した。

 そこにテレポートして眼前に現れたサーナイトが、大量の”シャドーボール”の弾幕を放つ。

 爆発が起き──オーラギアスの第三の障壁は完全に消失するのだった。

 

「ってことは、流れ的に次は……!!」

 

 イクサとレモンは、ボールにポケモンを戻す。

 オーラギアスは案の定、最後の障壁を展開した。

 だが、残っているのは──炎と飛行タイプを併せ持つアマツツバサのオーラ。

 タイプが分かっているならば、どのポケモンで対処すれば良いかは簡単だ。

 

「パモ様ッ!! 最後は君の出番だ!!」

「ブリジュラス!! もうひと頑張りお願い!!」

 

 炎の衣に身を包むオーラギアス。

 しかし、雨が降る中では放つ溶岩の弾も勢いを失っている。

 そんな中、イクサのスマホロトムが飛び出した。

 

『イクサ君!! 聞こえてるかい!?』

「ッ……博士!? どうしたんですか!」

『ホクラニ天文台からの通達だ! 隕石が、このままでは修正出来ないラインにまで近付く! オーラギアスを止めても、隕石が星の重力に捕まってしまうからだ!!』

「タイムリミットは!?」

『持って後10分ってところだ』

「……10分、ならば十二分だ!! これで決めてやる──!!」

 

 だがそれでもオーラギアスはしぶとい。

 故に。イクサはこれで確実に仕留めると決めた。

 まだギガオージュエルは赤熱化しており、触れれば火傷するほどだ。

 しかし次の一撃で確実に決めるならば、リスクを承知で最大火力を放つしかない。

 

「パモ様!! これで最後だ!! ギガオーライズ!!」

「ぱもーっ!!」

 

 激しい電光を纏い、そして王者の如く電気のマントをひらめかせたパーモットが地面を蹴った。

 これで終わらせなければ──隕石の衝突は確定的なものになってしまう。

 今この瞬間も、オーラギアスは宇宙に向かって大量のオシアス磁気を噴き出し続けているのだから。

 

「総攻撃よ!! 皆!!」

「オーケー!! カクレオン、”がんせきふうじ”!!」

「インテレオン、”ハイドロカノン”」

「ブリジュラス、”エレクトロビーム”発射スタンバイ!!」

 

 全員の息はぴったり。

 攻撃のタイミングは同時だった。

 

 

 

「──”でんこうそうげき”!!」

 

 

 

 パーモットの両拳に電撃が集中する。

 そして電光の如き勢いでオーラギアスに突っ込み、拳を捻じ込んだ。

 上空からは岩石が降り注ぎ、水の塊が撃ち抜き、そして電光が──同時に炸裂する。

 がらがらと音を立てて、ピラミッド型の装甲は崩れ落ちていく。

 

「ッ……やった!! 今度こそ──」

 

 

 

 

【オーラギアスの ジャミングオブボンド!!】

 

 

 

 

 装甲が崩れ落ちる中。

 一瞬だけ見えた毒蜘蛛の目は、殺意に満ち溢れていた。

 波動が、オーラギアスの身体から放たれる。

 辛うじて、ギガオーライズしていたパーモットは、自らの身体を電光化することで上空に逃げおおせることに成功する。

 しかし、他のポケモンも、そして人間も、瘴気を帯びた波動を不意に受けることになった。

 

「ッ……イクサ君!!」

「は、はいっ!!」

 

 咄嗟にレモンはイクサをブリジュラスの陰に引っ張る。

 合金の装甲は徐々に朽ちていくのが目に見える。

 

「ふ、吹き飛ばされ──!?」

「ゼラ先パイ──!?」

 

 そしてカクレオンも、インテレオンも極大の波動の前では塵のように吹き飛ばされてしまう。

 後に残るのは、汗だくで波動を回避し切ったパーモット。

 そして、イクサ達の盾になったまま、真っ白に力尽きたブリジュラス。

 波動を受け、倒れ伏せたインテレオンに、カクレオンだった。

 

「ブ、ブリジュラス……ごめん……!! 後は休んで──!!」

 

 レモンはボールを取り出し、ブリジュラスを戻そうとする。

 しかし──カチカチ、とボタンを押してもリターンビームが出て来ない。

 さっ、と血の気が引いたレモンは思わずブリジュラスを揺するが、辛うじて息は聞こえてきて安堵するのだった。

 だがそうなると別の嫌な可能性が浮上してくるわけで。

 

「ッ……まさか。ボールが使えなくなってる……!?」

「レモンさん……僕のモンスターボールも、ボタンを押しても反応しません……!!」

「ぱもぉ!?」

「……厄介な事になったわね」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ゼラ先パイ……!! カクレオンがボールに戻らないデス……!!」

「こっちもだ。他のボールも使い物にならん……!!」

「って事はまさか私達、戦力外デス!?」

「……」

 

 ゼラが見渡す限り。

 戦力になるのは、イクサとパーモットだけだ。

 ビルの瓦礫に挟まれ、動けないラズは戦えない。

 変態は氷漬けになっている。

 従って、消去法で戦えるのが──イクサ、そしてギガオーライズしていたことで今のオオワザを潜り抜けたパーモットのみとなる。

 

「……後10分だったか」

 

 先のイデア博士からの連絡は全員に向けたものだった。ゼラも、残り時間の短さは把握している。

 

「落とせるのか……!? オーラギアスを……!!」

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