ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第139話:ただひとつ願うなら

 ※※※

 

 

 

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲーッッッ!!」

 

 

 

 糸を吐き出し、パーモットを捕らえようとするオーラギアス。

 既にパーモットは体内の電気を使い切ってしまって電気タイプを失っており、残るは纏っているオシアス磁気から供給されている分だけだ。

 ガス欠の車が、後ろからバッテリー付きのブースターで無理矢理前に進んでいるような状態がずっと続いている。

 故に、次に必要なのは電気の供給であった。

 

「もう一回、頑張れるかなパモ様!!」

「ぱもっ!!」

 

 イクサの身体に掛かっている過重負荷も相当なものだった。

 短い期間の間に何度も繰り返しギガオーライズを使っているためである。

 訓練で使用時間、回数の制限こそ伸びたものの、それでも極度のシンクロは疲労が更に蓄積する要因となる。

 しかし、どの道時間は限られていた。限られていたが故に、イクサ側も出し惜しみする理由など無いのだった。

 たとえ果てようとも、此処で倒れればどの道オシアスは終わりなのだから。

 

「オオワザ──”ガンマバースト・ストーム”ッ!!」

 

 ばちんっ、と音を立ててイクサの右瞳から黒い紫電が迸る。

 同時にパーモットの瞳からも稲光が走った。

 両者の意思は同じ。完全に視界と感覚を共有するシンクロ状態となる。

 糸を避け、避け、避け、そして跳び──拳を思いっきり振り回し、電気をオーラの鎧から供給していく。

 そして、まるで落雷の如きパンチを撃ち落とすのだった。

 

 

 

【パーモットの ガンマバースト・ストーム!!】

 

 

 

 嵐が巻き起こるほどの衝撃がオーラギアスに迫る。

 しかしオーラギアスも既にそれを察知していたのか、大量の糸を組み合わせて網を作り上げ、パーモットのオオワザをあっさりと受け止めてみせるのだった。

 

「ッ……見切られた!? あいつ、戦闘の中で成長してるデース!!」

「……大振りなオオワザは防げる、とでも言いたげだな」

 

 ゼラとバジルが落胆する中、レモンだけが何かに気付いたように眉を上げるのだった。

 

 

 

「いや、違う……あれは……!!」

 

 

 

 

【パーモットのからだに でんきがほとばしる!!】

 

 

 

 

 充電完了。

 再びパーモットの身体に電光が走る。

 衝撃を受け止めたものの、流れてきた電流に、オーラギアスは悲鳴を上げるのだった。

 イクサの下に戻ってきたパーモットはぶんぶん、と腕を振り回し、自身が快調であることを見せつける。

 

「超帯電状態……パモ様のオオワザの真骨頂は此処からだ。この間、パモ様は常に充電状態になる」

 

 当然、失われた電気タイプもこの時点で復活している。

 活力を取り戻したパーモットは両掌からパチパチと電気を鳴らし、再び地面を蹴る。

 今度は己の身体を電光化させ、オーラギアスを撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。

 最早イクサが何も指示するまでもなかった。

 最後のトドメと言わんばかりに両掌をオーラギアスの顔面に押し付け、最大限に放電してみせる。

 

 

 

 

「”でんこうそうげき”ッ!!」

 

 

 

 

 爆音が鳴り響いた。

 焼け焦げるような匂いが辺りに漂う。

 そして、自らの電気全部を使い切るほどの攻撃を放ったパーモットだが、まだその身体は光り輝いていた。

 

「僕らは……まだ撃てるぞ。”でんこうそうげき”が」

「ぱもっ!!」

「ヲヲヲヲヲヲヲ……!!」

 

 

 

【オーラギアスの じこさいせい!!】

 

 

 

 だが、黒焦げになった外部装甲は再び音も無く修復されていく。

 まだ回復技が使えた事に辟易するイクサだったが、超帯電状態のパーモットは連続して”でんこうそうげき”が撃てる。

 もう一撃叩き込んでやるだけだ、と指示しようとしたその時だった。

 オーラギアスの身体から、あの恐ろしい波動が吐き出される。

 そしてパーモットが纏っていたオーラの鎧が消失していく。

 

「しまった、ジャミング……!!」

「ぱもぉっ……!?」

 

 すかさず衝撃には受け身を取るパーモットだったが、地面に叩きつけられた上にギガオーライズは解除されてしまうのだった。

 同時にイクサの身体にも重りを付けたかのような疲労が再び襲い掛かる。

 ギガオージュエルは赤熱化しており、イクサの手首は焼き印でも押したかのように赤黒く腫れていた。

 だがそれでも、彼は──

 

 

 

 

「──ギガオーライズ」

 

 

 

 ──手元に戻ったパーモットのオーカードをギガオージュエルに翳した。

 宝石に罅が入る音が確かに聞こえた。

 パーモットも、きっと──同じだからだ。

 まだ戦える。此処で倒れる訳にはいかない、と。

 だが、それは誰が見ても無茶な行動であることは確実だった。

 ギガオーライズの連続使用は未知の領域だ。

 ジュエル自体に負荷がかかり過ぎて破損する可能性だけではなく、ポケモンと人間の肉体、共に更なる負荷がかかる。

 全力で50メートル走ってグロッキーな人間に、50メートルをもう一度走らせるようなものだ。100メートル続けて走る方がまだ負荷は軽い。

 肉体というものは、何かの動作を始める時が最も負荷がかかるのである。

 ばちん、と音が鳴りイクサの目から黒い紫電が迸った。

 ぷつん、ぷつん、と目の血管が切れて血の涙が流れていく。

 

「ぱもぉっ!?」

「願いか。今僕が願うなら──」

 

 希うように、イクサはパーモットに視線を向ける。

 

「──最期まで、君と戦うことだよ。パモ様」

「……ぱもっ!!!」

「行くよ。どうせなら、全力出し切るんだ!!」

 

 無論、パーモットに掛かる負荷も相当なものだった。しかし、パーモットが断る理由など何処にも無かった。

 ふたりの願いは、全く同じだったからである。

 全身の神経が酷く張り詰めており、特に脳に直結している視神経は酷く緊張が続いている。

 そればかりか血管はあちこち傷が出来て、あちこちに青黒い痣が出来ていた。

 痛々しい程に、イクサの身体は過重負荷で摩耗していた。

 

「流石にそれは無茶よ、イクサ君……!!」

 

 手持ちが戦えないレモンには、イクサを助ける事すら出来ない。

 しかしこのままでは、勝ってもイクサの身体が危ない。

 腕輪からは常に煙が吐かれている。悲鳴を上げる身体を代弁するようにジュエルは罅割れていた。

 オーラギアスに拳を撃つ。

 だが、巨体の前脚による攻撃も、糸も、徐々にパーモットは避けられなくなっていく。

 肝心のイクサが、負荷によってパーモットと意識を合わせられなくなってきたためだ。

 

(見えない……)

 

 視界が欠ける。

 何かが自分の身体から抜けていく感覚すらイクサは覚えていた。

 

(見えない……見えなくなっていく……勝利への、道が……!!)

 

 タイムリミットが迫る焦燥感ばかりが、募っていく。

 そんな中、遂にパーモットがオーラギアスの前脚に撥ね飛ばされ、吹き飛ばされた。

 真っ直ぐに飛んだパーモットは、イクサにぶつかり──彼は悲鳴を上げることなく、地面に転がるのだった。

 

「イクサくッ……」

「畜生……」

「ッ!!」

「……畜生、畜生……ッ!! 勝たなきゃ、いけないんだ……まだ、やりたいことが、沢山あるのに……ッ!! 此処で終わらせたくない、終わりたくない!! 僕はまだ……敗けて、ないんだ……!!」

 

 血反吐を吐きながら、目からは血涙を流しながら、イクサはアスファルトの地面を叩き、起き上がる。

 既にパーモットも、イクサも、オーラギアスの糸による猛毒を受けていた。

 知らず知らずのうちに、毒蜘蛛の糸は彼等の足元に伸びていた。

 それを避ける事すら、彼等は出来なくなっていた。

 

「イクサくん……!!」

「レモンさん、待っててください、今、終わらせますから……!!」

「ぱもぉ……!!」

 

 あんなに頼りなく、可愛らしい背中だったのに。

 

「絶対に、レモンさんが笑って帰れるようにしますから……!!」

 

 今となっては、悲しい程に、彼らの背中が大きく見えた。

 それを追いかける事すら、今のレモンには許されない。

 今の彼女は無力だった。

 だが、今必死で戦っている彼に「もう頑張らなくて良い」と投げかけるのが、どれほど優しく、そして残酷な事か──レモンは理解していた。

 ふらふら、とよろめきながら立ち上がるイクサ。

 そんな彼の足元に、ころころと何かが落ちて転がる。

 だが、イクサはそれを気にも留めずに行ってしまう。

 

「ッ……パモ様!! ”でんこうそうげき”!!」

「ぱもぉっ!!」

 

 パーモットとオーラギアスが撃ち合う中。

 レモンは転がってきたそれを手に取った。

 小さな壺だ。片手で持ち上げられるほどのものだ。

 こんなものイクサは持っていただろうか、と首を傾げたレモンだったが──跳んできた閃光に目を思わず背ける。

 パーモットは、今この瞬間も戦っている。

 

「……壺……まさか」

 

 レモンは息を呑んだ。

 かのポケモンは、イクサの中に居た。

 前触れも無く転がって来たこの壺の正体を考えることもなく、彼女は迷わず栓を引っこ抜く。

 

「何でも良い!! イクサ君を助けられる力を、あたしに頂戴!!」

 

 煙が噴き出した。

 そして、罅割れたアスファルトから漏れ出した光と、それは合わさり──影を作り出していく。

 

 

 

 ──キャキャキャ!! ヤッパリオ前ラ面白イ!! ”勝タセテ”ジャナクテ”助ケラレル力”ヲ、チョウダイダッテ!!

 

 

 

 声が何処からともなく聞こえてくる。

 

 

 

「何でも良いわ、あんたが戦えるなら戦ってくれてもいいのよ──フーパ!!」

 

 

 

 かつて、オシアスに災禍を招いたポケモンの名をレモンは呼ぶ。

 朧げな姿の小さな魔人は、困惑したように返した。

 

 ──アッイヤッ、チョット、ソレハ……後、500年クライカカルッテイウカ──チカラガ、オシアスニチラバリスギテルッテイウカ……。

 

「……つっかえないわね」

 

 ──ヒドイ!! フーパツカエル!! フーパエライ!!

 

「立場を弁えなさい。此処で壺の栓を閉めてやってもいいのよ、あんたの力、この中に眠ってるんでしょう」

 

 ──ヒッ!! 

 

「分かったら何が出来るのか言いなさい! あんたの過去のやらかしを清算出来る数少ないチャンスなのよ!!」

 

 ──ソモソモ、今ノフーパジャア、ネズミ一匹呼ビ出スノガセイイッパイダシ……。

 

「他人事みたいに! そもそもあんたがオーラギアスなんか呼ばなきゃこんな事にはなってな──」

 

 そこまで言いかけたレモンは、何かを思いついたように笑みを浮かべた。

 フーパもまた「気付いたか?」と言わんばかりに微笑む。

 

「……出来るのね?」

 

 ──キャキャ!! フーパ、嘘ツカナイ!!

 

「……」

 

 正直、やって良いのか、出来るのかすら分からない。だが──やるしかない、とレモンは頷く。

 

「私は戦う!! 泥水啜っても……イクサ君の隣で!!」

 

 ──OK!! オデマシ、オデマシーッ!!

 

 

 

 金の輪が光り輝いた──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「くそっ……マズい、もう時間が……!!」

 

 

 

 タイムリミットまで、残り2分。

 だが、先にイクサの身体が力尽きそうな勢いだった。

 意識を失いそうになるのを、無理矢理頬を叩いて起こし、足を踏み鳴らして戦意を保ち続ける。

 

「ぱもぉっ……!!」

 

 だが、パーモットもいよいよ根が尽きてしまったのか、オーラギアスに組み伏せられていた。

 オーラギアスの牙が伸び、その首筋に伸びる。

 体に纏ったオシアス磁気諸共、その体液を啜るつもりなのだ。

 明確な殺意を以てオーラギアスは迫る。

 

 

 

 ──その首が、突如何処からともなく飛んできた稲光に撃たれるまでは。

 

 

 

 

「ヲヲヲヲヲヲヲッ!?」

 

 

 

 オーラギアスの巨体が揺れ動いた。

 パーモットの放った電撃ではないことにイクサは気付いた。

 だが、この場に戦えるポケモンはパーモットしか居ない。

 

「……一体誰が……!!」

「目の前ばっかり見てると、大事なものを見落とすわ」

「!!」

「昔、バジルが教えてくれたの」

 

 そこに立っていたのはレモン。

 そして、その足元に立つのは、黄色い毛皮にピンクのほっぺ、そしてギザギザの尻尾を生やしたポケモン。

 

 

 

「……ま、遅れてやってきた私が言うことでもないけど」

「ぴーかーちゅっ!」

 

【ピカチュウ ねずみポケモン タイプ:電気】

 

 

 

 イクサも、そして行く末を見守っていた全員も、言葉を失う。

 そこには──真相を知る者は死んだと確信していたポケモンが立っていた。

 だが正真正銘の本物だ、と言わんばかりにその頭には王冠が被さっている。

 学園最強決定戦で優勝した時に貰った記念品だ。

 

「……何で、ピカチュウが」

「話は後!! きっとピカチュウだけでもあいつは落としきれない……二匹で詰めるわ!!」

 

 レモンは赤熱化したギガオージュエルに、お守り代わりにずっと持っていたピカチュウのオーカードを翳す──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ピカチュウ……!? 本当に、ピカチュウなの……!?」

「ぴちゅちゅぴ?」

 

 首を傾げるピカチュウ。 

 辺りは荒れ果てており、その中には見知らぬ人間たち。

 ただ目の前にいる主人だけが──知っている顔だ。

 だが、その主人も何処か自分の知っているものとは違っていた。

 

 ──助ッ人、助ッ人~!! 過去カラ、コノコヲオデマシ~!!

 

「……フーパ。ちょっとだけあんたの事見直した。こんな緊急事態じゃなきゃ、逆にブッ飛ばしてたけど」

 

 ──アレェ!?

 

「ぴちゅ? ちゅちゅぴちゅちゅ!?」

 

 ピカチュウの視界には、真っ白になって力尽きたブリジュラスの姿が入る。

 そして、レモンがぶら下げている半透明のボールの1つからは、力尽きて眠るハタタカガチの姿もあった。

 

「かかちゅ!?」

「そうよ、ピカチュウ。ブリジュラスも、ハタタカガチも……(わたくし)の大好きな人も、ポケモンも、皆……傷つけられたの」

 

 拳を握り締めて、レモンは叫ぶ。

 

「お願い……今だけで良い!! (わたくし)に……ううん、(わたし)に力を貸して……!!」

「ぴぃ……」

 

 ピカチュウは尻尾で地面を叩くと、いつもそうしていたように彼女の肩に飛び乗った。

 

 

 

「びっがッ!!」

 

 

 

 見知ったポケモンが傷つけられて。

 大好きなレモンが泣きそうな顔でいる。

 なのに、どうして戦わないでいられるというのだろうか。

 自分は主人に頼まれれば、いの一番に駆けていくというのに。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

【ピカチュウ<ギガオーライズ> タイプ:電気】

 

 

 

 あっさりとピカチュウはギガオーライズの力の奔流を乗りこなした。

 そして、パーモットと並走し、ほぼ初見であるはずのオーラギアスの大量の糸を電気で焼き切りながら突き進む。

 

「イクサ君。最後まで、私は隣にいる!! ……支えるから!!」

「レモンさん……!!」

 

 自然と二人は手を繋いでいた。

 それだけで、何にでも勝てる気がした。

 

「……やっと見えましたよ、レモンさん」

「あら。勝利への道ってやつかしら」

「取らないで下さいよ……」

「まだまだね」

 

 二匹共身体を同時に電光化させ、オーラギアスに次々に打撃を叩き込んでいく。

 パーモットは拳で、ピカチュウは電気を集中させた尻尾で、殴り、叩き、そして痺れさせる。

 単純に出力、火力、威力、全てが二倍。

 オーラギアスは体を再生させようとするが、ダメージにもう追いついていなかった。

 四方八方から電撃が走る、走る、走る。

 

「ピカチュウ。あなたの動き、感じてること、今なら全部分かるっ!!」

「びっがッ!!」

「パモ様!! キツいけど、後もう一発!! もう一発だ!! 通すぞっ!!」

「ぱもぉっ!!」

 

 だが、それでも二匹共獲物には変わりない。

 まとめてギガオーライズというギフトを剥奪するべく、オーラギアスは大量のオシアス磁気を腹にしたためた。

 しかし遅い。あまりにも遅すぎた。

 電光に姿を変えた二匹の前では、あまりにも──

 

 

 

【オーラギアスの ギガオーラジャミ──】

 

「──”ボルテッカー”ッ!!」

「──”でんこうそうげき”ッ!!」

 

 

 

 

【ピカチュウの ボルテッカー!!】

【パーモットの でんこうそうげき!!】

 

 

 

 全身を光に変えたピカチュウの突貫が、そしてパーモットの両腕による刺突が、同時にオーラギアスの身体を貫いた。

 暴れに暴れ続けていたオシアスを蝕む呪いは今、この瞬間静止し、崩れ落ちる。

 だがそれでも尚、有り余る生命力で、頭からはオシアス磁気を放ち、仲間を呼ばんとするが──

 

「今度こそぉっ!! 捕まれぇっ!!」

 

 そこにイクサが最後の力を振り絞ってボールを投げた。

 糸を伸ばし、叩き落とそうとするオーラギアスだったが──

 

 

 

 

【オーラギアスは からだがしびれてうごけない!!】

 

「ヲッ……!?」

 

 

 

 ──糸はそこで止まる。

 そして、鼻先にボールが当たるのだった。

 

 

 

 巨体はあまりにもあっさりと小さなボールに吸い込まれていく。

 何度か揺れたかと思うと──遂に力尽きたのか、止まるのだった。

 

 

 

「や、やった……終わった……!!」

 

 

 

 イクサの目から──紫電が消え失せる。

 そして、勢い余って彼が地面に倒れ込むのを、レモンはすかさず抱きかかえるのだった。

 

「……レモンさん。僕、やりました……オーラギアスを……」

「お疲れ様。私の可愛いナイト様」

「カッコいいって言ってくださいよ、そこは……」

「ぱもぉ……」

 

 へたり込むパーモット。そんな彼にピカチュウが尻尾から電気を供給してやるのが見えた。

 相も変わらず、面倒見が良いと思いながら──レモンは微笑む。

 自分が知っているあのピカチュウそのままだった。悲しいくらいに。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

『隕石、この星の公転軌道から逸れました!!』

「……その言葉がずっと聞きたかったよ。ほんっと長かったぁ……」

 

 イデアは背もたれに寄りかかる。

 危機は回避された。オシアスと、そこに生きる命は救われたのだ。

 星に迫っていた脅威は今、この瞬間に去ったのである。

 

「ねえミコさん、取り合えず彼らを助けに行かなきゃ」

「……」

「ミコさん? どしたのさ?」

「……うう」

 

 ミコは──首を横に振る。

 

「泣けないのが今はもどかしい……漸く終わったのだ……数千年続いたオシアスの呪いが……!!」

「デジーに頼んでみる? 涙流す機能の実装」

「……考えたことも無かったな。そうか……これからどうするのか、何にも考えておらんかった」

「じゃあ一緒に考えないかい? 捨て身でオーラギアスに挑もうとしたもの同士さ」

「茶化すな!! ……先ずは迎えに行くとしよう。あやつらを」

 

 ふと、脳裏に──ロータスの顔が浮かび、そして消えた。ミコは、ふっと笑ってみせる。彼が聞いたらどんな顔をするだろうか。クラウングループは滅び去り、オーラギアスも捕獲されたのだ、と聞いたら。

 

 

 

(──見てるか? あやつら、まんまとやってみせおったわ。妾とオマエで出来んかった事をな)

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