ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】 作:タク@DMP
「先ずは貴方の出番よ、エクスレッグ!!」
「イワツノヅチ、君が先発だ!!」
【エクスレッグ バッタポケモン タイプ:虫/悪】
漆黒の外骨格に身を包んだバッタのポケモン・エクスレッグ。
大きな後ろ脚は常に折りたたまれており、バックパックのように背負い込まれている。
「貴方はとても運が悪い。二撃。二撃もあれば、イワツノヅチは沈められる」
「ッ……!!」
エクスレッグは高威力の格闘技”かかとおとし”を持つ虫ポケモンだ。
鋼/岩タイプのイワツノヅチと言えど、油断はできない。
幸い、速度ではこちらが上回っているが、身体が小さい故に小回りが利くエクスレッグ相手に攻撃を当てるのは至難の業だ。
故にイクサは、初手の行動を──すでに決めていた。相手が誰であっても、素早さが高いイワツノヅチならば一度は行動できる。
「”ステルスロック”だ、イワツノヅチ!!」
「──ッ!! てっきりソウブレイズ辺りに交代してくると思ったのだけど!!」
尻尾を振り回し、周囲に岩をばら撒くイワツノヅチ。
それらは空中に浮遊すると消えて見えなくなる。
一方のエクスレッグも、後ろ脚を解放すると高く高く飛び上がりイワツノヅチの身体を駆け上っていく。
「”かかとおとし”」
エクスレッグの身体が消えた。
──イワツノヅチの周囲を合計五匹のエクスレッグが取り囲み、次々に”かかとおとし”を見舞っていく。
当然本物は一匹だが、その攻撃を避け切れるはずもなく、イワツノヅチの脳天にエクスレッグの蹴りが叩き込まれるのだった。
「ゴオアアアアアアーッ!?」
「やっぱり痛いか──だけどッ!!」
「──しぶとい!! まだ倒れてないの!?」
オーライジングで只でさえ高い防御力は跳ねあがっており、一撃は耐えてみせたイワツノヅチ。
それでも格闘技は4倍弱点で、かなりの体力が削れている。脳天のパーツは罅割れており、既にオシアス磁気が漏れてしまっているのだ。
「”パワフルエッジ”!!」
体をバラバラに切り離したイワツノヅチは、それら全てから光の刃を生やし、次々にエクスレッグ目掛けて飛ばしていく。
だが、後ろ脚を解放したエクスレッグの速度は尋常ではなかった。それら全てを最低限の動きのみで躱し、そしてイワツノヅチに接近していく。
「”
そして正確にイワツノヅチの頭部目掛けて蹴りが加えられた。
流石のイワツノヅチも悲鳴を上げると、次々にパーツが地面に落ちていく。
先手を取ったのは──レモンの方だった。
「け、結局一撃も加えられなかった……!!」
「先ずは一匹。どうしたの? この程度かしら。あの威勢は……只の虚勢?」
『エクスレッグ、イワツノヅチを撃破!! チャレンジャーの手持ちは、残り5匹だにゃーん! 貴重なオーデータポケモンを失ってしまったにゃーん!!』
(……とはいえ、”ステルスロック”を撒かれた時点で、実は大分仕事されてるのよね。あれでポケモン1匹分くらいは体力持ってかれるもの。エクスレッグはもう引っ込められない)
(よくやったぞ、イワツノヅチ!! あのエクスレッグ相手に”ステルスロック”を撒けただけでも万々歳だ!! 問題は此処からなんだけど……!!)
虫、悪、格闘の3つの技範囲は非常に広い。
故に完璧に受けきれるポケモンと言うものが存在しない。
おまけにレモンのエクスレッグの特性は当然のように隠れ特性の”いろめがね”。
効果今一つの攻撃であっても、通常通りのダメージが通ってしまう。
「次は君だッ!! ソウブレイズッ!!」
「勝負を捨てた? それとも、もうオーライズを切るつもりかしら?」
(……ずっと考えてた。僕の世界の知識だけじゃあ、レモンさんには勝てない。常識破りの強さを持つ相手には、常識破りの戦術で挑むしかない!!)
「──ソウブレイズ、”ポルターガイスト”!!」
「決まったわね。”ふいうち”!!」
一瞬で姿を消し、分身してソウブレイズの背後に回り込むエクスレッグ。
しかし──ソウブレイズの目が光ると共に、エクスレッグの眼前には尖った岩が大量に現れるのだった。
車は急には止まれない。加速したエクスレッグも急には止まれない。
そのまま針の筵と化したソウブレイズの背中に突っ込む結果となってしまう。
当然、尖った岩が大量に突き刺さる訳で──
「バカなッ!? ”ステルスロック”を浮かせて動かした!?」
「そこかぁっ!! ”むねんのつるぎ”!!」
ざり、ざり、と剣を引きずるソウブレイズ。
岩が突き刺さって怯んだエクスレッグに向かって、炎を纏わせた一撃を見舞う。
エクスレッグの耐久力は然程高くはない。
そのまま炎によって魂魄を吸い取られ──悲鳴を上げながら、目の光を消してしまうのだった。
『おーっとっ!! チャレンジャー、此処で何とか巻き返した!! ほぼ無傷でエクスレッグを突破だにゃーん!!』
何とかポケモンの数が並んだのを見て──観戦していたデジーは思わずほっとした。
「全く、危なっかしいよ……!!」
「みーみみ……」
傍にいるミミロップも、綿毛で顔を思わず覆う。
見ている側も感じる程に、戦場の空気はヒリ付いていた。
「ッ……御見それしたわ。誰からそんな戦法聞いたわけ?」
「ゼラ先輩ですよ。あの人、使えるものは何でも使いますから」
「サバイバル科らしいわね──確かにあいつならやりかねない。でも、いざやられるまで思いつかなかったわ」
私、ゼラとはあんまりバトルしたことないし、とレモンは付け加える。
エクスレッグでもう一匹は持っていくつもりだったのか、彼女の眉間にしわが寄る。
「でも、受け売りだけで勝てる程私は甘くないわ。格闘戦がお望みなら……次はこの子ね。ガラガラ!!」
「ガタラララ!!」
【ガラガラ(アローラのすがた) ほねずきポケモン タイプ:炎/ゴースト】
レモンが二番手に選んだのは──ガラガラ。
燃える骨こんぼうを振り回す暴れん坊だ。
同じゴーストタイプ同士、ソウブレイズとは惹かれ合うものがあるのか、更に闘志を燃やす。
互いに弱点を突き合う事が出来る関係性であり、この勝負はどちらが勝ってもおかしくはない。
(とはいえ。あのソウブレイズ、鋼タイプの癖に特性が”もらいび”の所為でガラガラの最大火力の炎技が通らないのよね)
「さぁて、さっきの”ポルターガイスト”でステルスロックの位置は大体割れた。ガラガラ、踏まないように頼むわよ」
「……そこまで見えているのか……!! 動かしたのが逆に仇に……!!」
「炎が通らないのは分かってる。だから、こっちで行くわ。”ホネブーメラン”!!」
轟々、と鬼火を滾らせたホネこんぼうを、力いっぱいにぶん投げるガラガラ。
だが空中でそれは鬼火に包まれ、消え失せる。
「見えなくなった!?」
「ぼうぼう!?」
「……でも、こっちの方が速い!! ”ポルターガイスト”でホネを奪うんだ!!」
ソウブレイズの目が光る。
たとえ見えなくなっても、空中を高速で動くホネの軌道は読める。
読めるが──そのコントロールを奪おうとした瞬間、ソウブレイズは背筋が凍るような感覚を覚え、引き下がる。
「ぼうっ!?」
「残念。ゴーストポケモンの持ち物を奪おうだなんて、末代まで祟られても文句言えないわよ?」
ソウブレイズはすかさず、飛んできたホネこんぼうを剣で防ぐ。
だが、その衝撃は想像以上で、踏ん張りきることが出来ず、引き下がってしまうのだった。
【効果はバツグンだ!!】
(タイプ一致じゃないとはいえ、”ふといホネ”でガラガラの攻撃力は倍化してる!! 今の攻撃も相当痛いぞ……!?)
(ゴーストタイプになったことで執念も通常種以上。”ポルターガイスト”でもガラガラのホネは奪えないわ。さあ、どう来る──)
しかし。
大きなダメージを受けた途端、ソウブレイズの目つきが変わる。
「ギイイイイイインッ!!」
宝石で出来た目の色が狂気的なそれへと変貌。
そして、がぱぁ、と口が開くなり──自らの剣を噛むと、更に青白い炎を纏わせるのだった。
「ッ……!?」
「此処からがソウブレイズの本気ですよ、レモンさん。ゴーストタイプが執念深いなら……ソウブレイズも同じだ!!」
「ギィイイイイ……ッ!!」
「関係無いわ。消える”ホネブーメラン”で叩きのめしなさい!!」
「”ボディパージ”だ、ソウブレイズ!!」
飛んできたホネブーメランだったが、突如ソウブレイズの全身から弾け飛んだ宝石を受けて軌道が変わる。
だが、それでも今度は戻ってくる勢いで二撃目が襲い掛かる。
しかし──既に身体を軽量化させたソウブレイズは背中を反らせて躱すと、地面を蹴り、ホネブーメランが戻ってくるよりも早くガラガラに突貫するのだった。
「”ゴーストダイブ”だソウブレイズ!!」
「ッ……!!」
切りかかる寸前でソウブレイズの姿が消え失せる。
そして、背後からガラガラに襲い掛かり、斬撃を見舞う。
だが、ガラガラもそれを振り返りざまに──打ち返す。
「”シャドーボーン”ッ!!」
ホネこんぼうが、ソウブレイズの身体を貫いた。
だが、ソウブレイズの刀もまた、ガラガラの胴を切り裂いていた。
互いの身体から霊気が噴き出し──両者は倒れ伏す。
『あ、相討ち!! 相討ちだにゃーんっ!! ソウブレイズ、ガラガラ、共に戦闘不能っ!!』
「此処まで速度を上げても相討ちが限界か……!!」
「まさかガラガラが打ち負けるとは……思わなかったわ」
此処まで手持ちの数は互角。
しかし──肩をぐるぐる、と回すと──レモンは笑みを浮かべてみせる。
「君の出番だ、タギングル!!」
「そろそろ本気を出そうかしら? ドータクン!! 行きなさい!!」
「ッ……ドータクン!?」
【ドータクン どうたくポケモン】
現れたのは鋼色の銅鐸のポケモン・ドータクン。
赤い眼の部分は不気味に発光しており、常にゆらゆらと空中に浮いている。
(ドータクンは特性が”ふゆう”か”たいねつ”……でもブリジュラスやハタタカガチの事を考えると、きっと”ふゆう”だ!)
(ソウブレイズが倒れたこのタイミングでドータクンを止められるポケモンなんて、そうそう居はしないでしょう?)
(そしてこうやって出てきたってことは、ドータクンのやる事なんて一つしかない──!!)
「タギングル、”はたきおとす”だ!!」
「そう慌てないの。”あまごい”!!」
飛び出したタギングルは、即座にドータクンに張り手を浴びせる。
だが、頑強な身体を持つドータクンは、効果バツグンの攻撃を受けて尚、びくともしない。
そしてすぐさまヒレのような部分を上げると──不気味な呪文を唱え始めるのだった。
空には暗雲が立ち込めて、雨が降り始める。
【タギングルは ”メンタルハーブ”を叩き落とした!!】
「やっぱり!! 二度目の補助技は使わせない!! ”ちょうはつ”だ!!」
「……読めているわよ。ドータクン、”だいばくはつ”」
「いっ……!?」
タギングルが飛び掛かった瞬間──ドータクンの身体が大きく膨れ上がる。
そして、爆風が周囲に襲い掛かるのだった。
平然な顔で、黒焦げになったドータクンを見つめながら──レモンはそれをボールに戻す。
当然、爆風で吹き飛ばされたタギングルもまた、ごろごろ、と転がるのだった。
【ドータクンは力尽きて倒れた!!】
「さ、流石レモン……!! 爆発させて平気なポケモンには平気で爆発させるデース……!!」
「以前は”トリックルーム”を使わせていたが……今回は完全に雨ギミックに振り切ったようだな」
観戦していたバジル、そしてゼラも、一見情けも容赦もないレモンの戦術を前に唸る。
「みぃ!!」
「ミミロップ落ち着いて!!」
ミミロップが飛び出そうとするのを無理矢理抑え込むデジー。
ライバルが倒され、気が気でないのだろう。
「あら、意外って顔してるわね。私、勝負の範疇ならこう言う事もやるわよ」
「……は、判断が早過ぎる……!!」
「こっちも、タギングルにそれ以上暴れられでもしたらイヤだもの。これで互いに残り3匹──」
「──キャ、キャイ……!!」
黒焦げになっても尚、タギングルは地面を叩き、起き上がる。
まだ戦える、と言わんばかりに。
「……タギングル。まだ戦えるんだね」
「ドータクンの攻撃力の低さに助けられたわね。仕留められなかったのは残念だけど……此処からが本番よ。ギャラドスッ!!」
一見、数ではイクサが優位に見えるこの状況。
しかし、雨が降りしきる中、狂暴龍が咆哮を上げて空を舞う。
全長6メートルの巨龍が、タギングルを圧倒する。
「ッ……タギングル、”なげつける”だ!!」
「”りゅうのまい”」
”でんきだま”を投げ付けたタギングル。
だが、それを受けて痺れても尚、ギャラドスは天へと舞い上がるような踊りを続ける。
それを見てイクサの額につぅ、と雨粒混じりの汗が伝った。
”ラムのみ”だ。ギャラドスは──麻痺していない。
「さぁ、追いかけっこの始まりよッ!! ギャラドス、”アクアブレイク”!!」
”りゅうのまい”で速度を上げたギャラドスが地面に向かって突っ込む。
だが対するタギングルも”かるわざ”を発動させたことですんでのところで突撃を躱してみせる。
(”いかく”は発動しなかった!! あのギャラドス、”じしんかじょう”だ!! 此処でタギングルが倒されたら、後のポケモンが厳しい!!)
しかもギャラドスの水技は”あまごい”によって強化されている。
喰らえばサーナイトやパーモットでもただでは済まない。
何が何でも、イクサは此処でギャラドスを止めなければならないのだ。
そんな中、咆哮を上げながらギャラドスは更にタギングルを喰らわんとばかりに迫る。
「確実に仕留めるわ。”じしん”」
「”ダストシュート”ッ!!」
ギャラドスが巨大な尾を叩きつけようとした瞬間だった。
タギングルは指から噴き出させたインクを塊にして、ギャラドスの目玉目掛けて投げ付ける。
不意に飛んできたそれをギャラドスは避ける事が出来なかった。
もしも”アクアブレイク”で水を纏っていたならば防げた攻撃。
べちゃっ、と音を立ててギャラドスの顔面にペンキのような液体が広がった。
「ギャラガガガガッ!?」
【ギャラドスは 毒を浴びた!!】
「ッ……目潰し!? しかも毒まで!! だけど──ギャラドス!! ”じしん”!!」
”じしん”は全体攻撃。
暴れ狂うギャラドスは尻尾を振り回して地面を叩こうとする。
だが、次の瞬間、地面に散らばっていたステルスロックが作動し、ギャラドスに突き刺さるのだった。
悲鳴を上げる巨龍。だが、震動波もまたタギングルに襲い掛かり、吹き飛ばす。
「きゃ、きゃきゃきゃい……!!」
「みぃ……!!」
一瞬、観客席の方にタギングルは親指を突き立てると──そのまま力尽きる。
「お疲れ、よく頑張ったよ──タギングル」
「今度こそこれで3匹。でも、視界を封じた程度でギャラドスを倒せたつもり?」
「勿論そんな事、思ってないですよ……!!」
力には力。
雨が降りしきる今、ギャラドスと互角に戦えるポケモンは──
「──いけっ!! 次は君だ!!」
「りーるぅっ!!」
──マリルリしか居ない。
どこどこ、と胸をドラミングしたマリルリは、顔がカラフルに彩られた巨龍を前に闘志を見せる。
「全く懲りないわね。ギャラドス、”じしん”で全体攻撃ッ!!」
「ギャラゴオオオアアアアアアーッ!!」
尻尾で地面を撃ちつけて鳴らすギャラドス。
観客席までその振動は響き渡る。頑強なバトルフィールドでなければ床が抜けてしまっていたところだ。
震動波はそのままマリルリに襲い掛かる。襲い掛かるが──
「”じゃれつく”ッ!!」
「ッ……!?」
──それを耐えきったマリルリはギャラドスに飛び掛かり、その顔面をぽこぽことタコ殴りにする。
悲鳴を上げ、巨龍は地面に倒れてのたうち回る。
(顔を塗り潰された所為で、上手く尻尾を使えてない……!! ギャラドスが冷静さを失ってる──!!)
しかし、幸いペンキは雨によって徐々に流れ落ちようとしていた。
粘度があったので落ちるのに時間はかかったが、漸くギャラドスは元の視界を取り戻す。
「”アクアブレ──”」
「”アクアジェット”ッ!!」
だがそれでも、マリルリの速度には遠く及ばない。
顎を撃ち抜く勢いで拳が叩き込まれた。
脳まで響く衝撃を受けて、巨龍の身体は──倒れ込む。
「これで──そっちが後2匹!!」
「……参ったわね。此処まで手持ちが早く削れる予定じゃなかったのだけど」
(どの口が……!! こっちもギリギリ綱渡りなのに……!!)
既にマリルリも体力が限界だ。
その上で、後に控えているのは──レモンのエース格。
此処まで戦ってきたポケモンとは、更に別次元の強さを誇る2匹。
マリルリ、サーナイト、パーモットが残っていても足りない、と思わせる面子だ。
「──ブリジュラス。格の違いを分からせてやりなさい」