ポケモン廃人、知らん学園に入学した。【完結】   作:タク@DMP

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第144話:VSレモンⅡ─雷神─

「──ブリジュラス。次は貴方の番よ」

 

 

 

「キィイイイイオオオオンッ!!」

 

【ブリジュラス ごうきんポケモン タイプ:鋼/ドラゴン】

 

 

 

 甲高い金属音混じりの咆哮が辺りに響き渡る。

 雨は降り続き、暗雲は立ち込め続けている。

 

「マリルリ、”ばかぢから”──ッ!!」

「エレクトロビーム──エンゲージ、さあ覚悟なさいッ!!」

 

【ブリジュラスの 特攻が上がった!!】

 

 倒れ込み、鉄橋の如き構えを取るブリジュラス。

 ブリジュラスの全身に電気が迸り、エネルギーが急速に充填されていく。

 そしてブリジュラスが口を開くと共に、ほぼ着弾時間ゼロでマリルリに雷が落ちた。 

 閃光が辺りを激しく照らす。 

 当然、そこには煙を吐き出しながら真っ黒こげになっている水玉ウサギの姿があった。

 観客席のラズとシャインは、昨日も模擬戦で猛威を振るったブリジュラスを前に言葉を失うのだった。

 彼らの手持ちを1匹だけで半壊させたブリジュラスは、特筆すべき強さだ。

 

「ッ……レモンのブリジュラスとハタタカガチは、他の手持ちとは比べ物にならないくらい強ェ」

「同意だ。他の4匹も前座と呼ぶには惜しい程の実力だが……あの二匹が頭抜けている」

「前はピカチュウも入れて、手が付けられねえのが3匹だったからな……」

「今はさながら女王を守護する親衛隊といったところか」

 

 遠い目をする二人。

 ラズはフルバトルでレモンに勝てたことは一度も無い。

 一方シャインは、フルバトルならばレモンへの勝ち星は多い。

 だがいずれも辛勝だ。楽に勝てたことなど一度もありはしない。

 彼をして他の仲間に「正直レモン君とはあんまりフルバトルしたくないんだよね……」とこぼすほどであった。

 そして昨日の試合でシャインは確信していた。

 逃亡中もずっと、レモンは居ない手持ちで戦術を練り続けていたはずだし、手持ちの強さもまた、この数週間の間に追いついている。

 間違いなく今のレモンは、自分よりも強い──と。

 

「何が厄介って、あのエレクトロビームと”じきゅうりょく”だ。ブリジュラスは戦闘中に自己強化を繰り返して、手が付けられなくなっていく」

「かと言ってヤツを一撃で倒せるほど、甘くはねえってこったな」

 

 そんな事はイクサも承知だ。

 特に今は雨が降り続いている。

 ブリジュラスはノーチャージで”エレクトロビーム”を撃ち続ける事が出来る。

 かと言って攻撃すればする度に防御が上がり、鉄壁の城塞と化していく。

 そして這う這うの思いでブリジュラスを突破したかと思えば、後ろにはハタタカガチが控えているのだ。

 手持ちが残り3匹でも正直足りない程であった。

 

「ありがとう、マリルリ……戻って!!」

「さぁ、次はどの子? パモ様の格闘技で突破してみる?」

「冗談じゃありませんよ……!! ”じきゅうりょく”があるのに……!!」

 

(……進化前・ジュラルドンの能力傾向からして特防は紙っぺらのはず……!!)

 

 イクサはボールを握り締める。

 唯一、ブリジュラスに大ダメージを与えられるのは特殊攻撃。

 此方も弱点を突かれる側ではあるが──頼れるのは彼女しか居ない。

 

「サーナイト!! 次は君だ!!」

「あくまでもパモ様を温存するのね。ハタタカガチとの相性バトルには勝てないのに」

「やってみなきゃ分かりませんよッ!!」

 

 ブリジュラスは溜め無しで”エレクトロビーム”を再び放つ。

 だが、”かげぶんしん”で分身したサーナイトはそれを華麗に躱してみせると、空中で手を大きく突き上げた。

 暗雲の切れ間から、時間外れな月の光が差し込む──

 

 

 

「”ムーンフォース”ッ!!」

「”ラスターカノン”」

 

 

 

 両者の攻撃はすれ違い、互いに直撃。

 イクサの読み通り、特殊防御力が紙っぺらのブリジュラスは一撃で倒れはしなかったもののサーナイトも上昇した特攻から放たれたラスターカノンを受けて、へたり込む。

 そこに、ブリジュラスは──再び砲口を開けて”ラスターカノン”を放つ。

 それをすんでのところで躱すと、サーナイトは更に加速してブリジュラスに接近、”ムーンフォース”を見舞うのだった。

 

「ッ……!?」

 

 しかし。

 ブリジュラスは斃れない。

 そればかりか、不動の城塞の如くサーナイトの前で鎮座している。

 

「ジュラルドンと一緒にしないで頂戴。特殊防御力も多少は改善してるわ」

「……マジかよッ……!!」

 

(本当に申し訳程度ってか、結構効いてるのだけどね? コレ)

 

 それでもサーナイトを前にして未だに耐えているのは、脅威そのもの。女王を守る城塞は伊達ではない。

 更に”じきゅうりょく”で防御力は向上しており、此処で仕留めることが出来なかった場合、パーモットでもブリジュラスは突破が困難となる。

 

(雨はもう直に降りやむ。此処で──倒す)

 

「サーナイト──」

「お終いよッ!! ”エレクトロビーム”!!」

 

 閃光が再び、迸った。

 鳴り響く雷の音でイクサの声はかき消された。

 雨が止む。

 会場の全員が息を呑んだ。

 サーナイトは、目を回し倒れていた──

 

「……戻って、サーナイト」

「もう少し健闘してくれると思ったのだけど。残りはパモ様だけね」

 

(──いや……もっと正確に言えば2匹なんだけどもね)

 

 レモンは目を伏せる。

 パーモットは”さいきのいのり”を持っている。

 手持ちのうち1匹を体力半分で蘇生させることができる技だ。

 当然それを彼女は失念していない。

 

(尤も。仮にハタタカガチに弱点を突けるポケモンが居たとしても関係無いわ。ギガオーライズしたハタタカガチの前では勝てない。削れた体力では、ハタタカガチの電撃は耐えられない。つまり、そこにギガオーライズを切るしかない)

 

「……いや、サーナイトは十二分に仕事をしましたよ」

 

 最後に、頼れる相棒を握り締める。

 

「行くよパモ様」

 

 ボールを思いっきり投げた。

 そこから飛び出したパーモットは、きゅっ、といつもの構えを取る。

 目の前で立ちはだかる相手・レモンが教えてくれた拳法の構えだ。

 

「……ブリジュラス、仕留めなさい。”りゅうせいぐん”──」

「”インファイト”ッ!!」

 

 一瞬で距離を詰めたパーモットはブリジュラスの鋼の身体に拳を何度も何度も何度も叩き込む。

 防御を捨てた攻撃を前に、合金はへしゃげ、傷がつき、そして──フィニッシュブローと共にブリジュラスの意識は刈り取られた。

 それが最大の隙となる。

 トドメと言わんばかりにパーモットはブリジュラスの顔面に回し蹴りを見舞うのだった。

 

「……ッ正気?」

 

【パーモットの防御と特防が下がった!!】

 

 レモンは戦慄する。

 後ろにはまだハタタカガチが控えている。

 にも拘わらず、防御を捨てる”インファイト”でブリジュラスを倒しにかかったのだ。

 これでは、幾らパーモットと言えどハタタカガチの攻撃で一撃で倒れてしまう。

 レモンも”さいきのいのり”を使わせるつもりなど毛頭無いからだ。

 

(となるとまさか……此処で切るの? ギガオーライズ!!)

 

(切るしかない……ハタタカガチと互角にやり合うなら、これしかない!!)

 

(……一騎打ちがお望みなわけね)

 

「やっとここまで追い詰めた……ッ!!」

「……追い詰めた? いいえ、追い詰められたのはそっちの方」

 

 レモンは胸の内から湧き上がる高揚感が抑えきれなかった。

 自然と口角が上がってしまう。

 自分が手塩にかけて育ててきた5匹の手持ちが倒され、残るはハタタカガチだけ。

 

(ああ、ピカチュウ。貴方と彼を戦わせてあげられないのが、本当に──残念でならないッ!!)

 

「ハタタカガチッ!! 出なさいッ!!」

「ぎゅらるるるるるるるッ!! ……ピピピピピ」

 

 

 

【ハタタカガチ オーデータポケモン タイプ:電気/毒】

 

 

 

 登場すると共に、尻尾を打ち鳴らし、女王の如き威容でパーモットを見下ろす頂点捕食者。

 頭部の電球は彼女の闘志に呼応するように光り輝き、煌めく。

 

「ついに出たねラスボス……パモ様ッ!! ギガオーライズだッ!!」

「ぱもっ!!」

 

 だが、イクサも怯みはしない。

 ギガオージュエルにカードを翳し、パーモットにオーラを纏わせる。

 電気のマントを翻し、王冠の如き電球がパーモットの頭に現れた。

 

「……残念だけど。先にギガオーライズを切ったそっちが力尽きるわ。これで漸く互角なのだから!!」

「じゃあ、切らざるを得なくすれば良い」

「……? ……まさか!!」

 

 レモンの余裕は消え失せる。

 体を電光化させ、飛び掛かろうとしたハタタカガチ。

 だが次の瞬間、彼女の身体が硬直する。

 

 

 

【サーナイトの みらいよち!!】

 

 

 

 ハタタカガチの身体が倒れ伏す。

 弱点であるエスパーの高威力技・みらいよち。

 それは、少し先の未来に攻撃を仕掛けるというもの。

 文字通り大ダメージを受けたハタタカガチは、プライドが傷つけられたのか怒りを露にして咆哮するのだった。

 

(……漸く理解したわ。サーナイトは無抵抗で倒されたんじゃない。ハタタカガチに攻撃を仕掛けて、ブリジュラスの攻撃を受けた)

 

「でもね、イクサ君」

 

 

 

「──ギッシャアアアアアアアアアアアアーッッッ!!」

 

 

 

 聞いた事も無いようなハタタカガチの叫びが会場中を揺るがす。

 

『み、耳が割れそうな咆哮だにゃーん!? ハタタカガチ、今までで一番荒れてるのにゃーん!!』

「……ハタタカガチを怒らせたのは失策だったわね。こっちも全力で行かない理由がなくなったから」

 

 レモンは口元に笑みを携えながらオーカードを翳す。

 

 

 

「──ギガオーライズ・フェーズ2」

 

 

 

 その言葉にイクサはたじろぎ、後ずさる。

 

「フェーズ、2……!?」

「……ぱもぱもっ!?」

「神鳴りが如何なるものか、受けてみれば良いわ」

 

 オシアス磁気が大量に溢れ出し、ハタタカガチの身体を包み込む。

 そこに現れたのは巨大なオーラの怪物。全身がオシアス磁気で構成された巨大な大蛇だった。

 その身体からは黒い暗雲が立ち込めている。まさに生きる雷雲も同然だ。

 会場の生徒の中には、思わず逃げ出すものが居る程の威容を放つそれは──イクサとパーモットを見下ろし、咆哮する。

 

 

 

「ギュラオオオオオオオォォォォォオオガッ!!」

 

【ハタタカガチ<ギガオーライズ・フェーズ2> タイプ:電気/毒】

 

 

 

 

「いつの間に、こんなものを!?」

「……たった昨日よ。ラズとの戦いの間に、追い詰められたハタタカガチが身に着けたの」

 

 そう言うレモンの瞳からは黒い稲光が迸る。

 完全にふたりはシンクロしているのだ。

 

「じょ、冗談じゃない!! フェーズ2って……オオミカボシが身に着けてた……!!」

「そうよ。アレと同一と思ってくれて良い。()()()()()()()()()()ッ!! ”10まんボルト”ッ!!」

 

 咆哮するハタタカガチ。

 その全身を稲光の弓矢に変えると、次々にパーモット目掛けて降り注がせる。

 瞬時にパーモットも自らの身体を電光化させて次々にそれを回避してみせる。

 

(パモ様が怯えてる!? 特性”ちくでん”が発動していないのか!?)

 

「さあ、逃げなさい逃げなさいッ!! 神鳴りからは逃れられないわッ!!」

「レモンさんが全力で来てくれてる……!! パモ様、僕らも負けてられないッ!!」

「ぱもっ!!」

 

 イクサの瞳からも紫電が迸った。

 両者のシンクロは完了。パーモットは稲光の間を縫って駆け上がり、天上で蜷局を巻くハタタカガチに向かって殴りかかる。

 だが、雷の弓矢がパーモットの身体を突き刺し、墜落するのがイクサには見えた。

 

(わざわざ特性パッチまで使って”ちくでん”に変えたのに……!! 特性を無効化してるのか!?)

 

(妙に自信たっぷりと思ったら、やっぱり特性を変えてたのね。でも残念。フェーズ2のハタタカガチは超電圧状態(ハイボルテージ)。あらゆる特性を無視して攻撃出来る)

 

 フェーズ2となったことで、ハタタカガチは性質そのものが変化していた。

 既にパーモットの”ちくでん”すら打ち破れるほどの電圧を手に入れていたのである。

 それが全身に纏う黒い稲光。

 全てを焼き焦がす神の雷。

 雷雲の化身──ハタタカガチ。

 

 

 

【特性:ハイボルテージ】

 

【ハタタカガチは 黒い電流を纏っている!!】

 

 

 

(今の僕の手持ちで、ハタタカガチの電気をまともに受けられるのはパモ様しか居ない……!! ()()()()()()ッ!!)

 

(なかなか当たらないわね。でも、毒技はもっと当たらない)

 

 互いに有効打を欠く状態であることは確かだった。

 パーモットはタイプ一致技を両方共半減されてしまう。故にイクサは元々、ハタタカガチを弱らせてから”さいきのいのり”で後方につなげようと考えていた。

 だが、この状況下では”さいきのいのり”を撃とうとした瞬間に致命傷を貰うのは確実だ。

 言ってしまえば”発動が遅い”。これに尽きる。

 一方のハタタカガチも、電気技があまりパーモットに対して有効打になり得ない。 

 毒技は等倍で通るが、その毒技の取り扱いに問題があるのだ。

 ハタタカガチの強さは、自身の身体を電気に変える電光化にあると言っても過言ではない。そして、自分の身体を電気に変えている間に使えるのは電気技のみとなる。

 当然の帰結であった。体が電気になっているのだから、他のタイプの技を使おうとすると必然的に実体に戻る必要がある。

 しかしギガオーライズしたパーモット相手に実体を晒したが最後、猛反撃を喰らうのは目に見えていた。

 イクサがよく遊ぶゲーム風に言うならば「モーションが弱い」。この一言に尽きる。

 実体化し、地面に向かってヘドロを吐き出す”ヘドロウェーブ”だが、電光化したパーモットならば容易に避けてしまうことがレモンには見えているのだ。

 つまり互いに、有効打にならない電気技で殴り合うしかないのである。

 パーモットの拳が、電気と化したハタタカガチを捉える。

 だが、ハタタカガチもまた、全身から光の矢を飛ばし、パーモットを狙い撃つ。

 互いの身体を削り合うような熾烈な戦いが続く。

 

「ッ……このままじゃジリ貧ね……!!」

 

 そして、互いにギガオーライズを使っていることで心身共に負荷がかかっていく。もう、時間は無い。

 ならば、最大出力で相手を落とすしかない。

 

「オオワザ……”らいごうのゆみや”ッ!!」

 

 

 

【ハタタカガチの らいごうのゆみや!!】

 

 

 大量の雷の弓矢を飛ばすハタタカガチ。 

 しかし、電光化したパーモットはそれを蹴り返し、他の弓矢にぶつけて相殺すると出来た隙間を塗ってハタタカガチに殴りかかる。

 だが、更に電光化したハタタカガチは、自らを巨大な紫電の束に変えると、パーモットに襲い掛かる。

 

「受け止めるッ!! パモ様、”ガンマバースト・ストーム”ッ!!」

 

 パーモットもまた、拳を握り締め、オオワザに真っ向から挑む。

 極雷同士のぶつかり合い。

 会場中に稲光が撒き散らされていく中、両者の激突は止まらない。

 互いの電気を放出し合い、互いを焼き切るまで止まりはしない。

 だが、それも限界が訪れた。

 全ての電気を放出しきった二匹は、ほぼ同時に弾け合う。

 

「ッ……これでも倒せないの!?」

「……これでも倒せないのか……!!」

 

 そして同時にイクサとレモンの瞳から紫電が消えた。

 オオワザを限界までぶつけ合ったことで、オシアス磁気は霧散。

 ギガオーライズが解除されてしまったのだった。

 地面に転がったパーモットからはオーラの鎧が消え失せ、ハタタカガチもまた纏っていたオシアス磁気の怪物が消え失せ、地面に落ちる。

 

「チッ、ガス欠ね……!! もう電光化は使えない……!!」

「マズい、解除された……!!」

「……流石ね、パモ様。私が育てた……ううん、イクサ君と共に戦ってきただけはあるわ」

「ぎゅらるるるるるるる……!!」

「ぱも……!!」

 

 両者は辛うじて起き上がり、睨み合う。

 電気を使い果たした以上、両者共にもう電光化は使えない。

 となれば、残るのは──小細工無し、オオワザ無しの純粋なぶつかり合い。

 パーモットは地面を蹴り、ハタタカガチは尻尾で地面を叩いて飛び掛かる。

 

「此処からは……殴り合いだッ!! パモ様ッ!! ”でんこうそうげき”!!」

「でも私も負けられない。私は……最強だからッ!! ハタタカガチ、”ヘドロウェーブ”!!」

 

 地面に向かって大量のヘドロを撒き散らし、その勢いでヘドロの壁を作り上げるハタタカガチ。

 だが、パーモットはそれを突き抜けてハタタカガチに殴りかかる。

 

「ッ……やっぱり突っ込んできたわね!! ”ドラゴンハンマー”ッ!!」

「叩き込めッ!! パモ様!!」

 

 ハタタカガチは自らの尻尾のパーツを分解・再構成させて大槌の形に変形させると赤い稲光──龍気を纏わせて振り下ろす。

 対するパーモットは、両拳に電気を纏わせ、ハタタカガチにぶつける。

 再びぶつかり合う両者。

 しかし、ハタタカガチは残る力の全力を以てパーモットを叩き潰すべく力を込める──

 

「ぎゅらるるるるるるるるッ!!」

 

 そして──力任せに尻尾が地面に振り下ろされた。

 フィールドは大きくへしゃげ、沈み込む。

 勝利を確信したハタタカガチは舌をチロチロと出すが──レモンの顔は浮かない。

 

「ッ……待ってハタタカガチ!! 手応えが──ッ!!」

「ぎゅらッ!?」

 

 ハタタカガチは目を丸くする。

 パーモットが、懐に潜り込んでいる。

 一瞬力を抜き、素早くハタタカガチのドラゴンハンマーを避けてみせたのだ。

 代償に、”でんこうそうげき”は不発に終わったが──

 

(チャンスは、此処しかない……ッ!!)

 

(冗談じゃないッ!! 全力出し切ったら悔いはない!? 負けたくないに……決まってるでしょッ!!)

 

「”インファイト”ッ!!」

「”ヘドロウェーブ”ッ!!」

 

 パーモットは大きく拳を振り切り──ハタタカガチの顎を撃ち抜く。

 だが、ハタタカガチもまた、斃れる寸前にヘドロをパーモットに浴びせかける。

 両者は──同時に仰け反り、地面に倒れ込んだ。

 

 

 

『ダ、ダブルノックアウトーだにゃーんッッッ!! こ、これは引き分け──』

 

 

 

 

「ぎゅらるるるるるるるる──ピピピピピ」

 

 

 

 駆動音。

 そして電子音が響き渡る。

 ハタタカガチは全身から火花を出しながらも起き上がる。

 

 

 

「ぱもぉ……ッ!!」

 

 

 

 そして──パーモットも立ち上がった。

 両者は互いに睨み合う。

 だが、もうパーモットは戦える状態ではなかった。

 ”さいきのいのり”すら使えない程に摩耗しきっていた。

 全身の毛は”でんこうそうげき”とギガオーライズの反動で真っ白に燃え尽きており、目は霞み、ふらふらだ。

 そして同じく反動を受けたイクサも、立っているだけでやっとだった。

 

「ッ……しゅるるるるる、ぎゅらるるるるるるる!」

 

 そして、尻尾で地面を叩き、再びハタタカガチは”ドラゴンハンマー”の態勢に入ろうとする。

 だが──ビキッ、と音が鳴り響くと共に、尻尾から身体のパーツがバラバラに崩れ落ち、オシアス磁気が抜けていく。

 

「ぎゅら、る──ッ!?」

「……」

 

 飛び掛かる前に、ハタタカガチは機能停止。

 目からは光を失っており、もう起き上がる事は無かった。

 

「……全く……最後の最後まで……貴方らしいわハタタカガチ」

「勝った……の?」

「ぱも……?」

 

 

 

『しょ、勝者チャレンジャーッッッ!! 1年サンダー寮のイクサ選手だにゃーんっっっ!!』

 

 

 

 ──歓声が上がる。

 熾烈なる戦いは終わり、今此処に、新たなる学園最強のトレーナーが決まったのだった。

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